内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

181 / 212
第百四十三話 動乱の前

此処で時系列は少し過去に巻き戻り、視点は地球へと移る。

 

アルフォンの屋敷を後にしてパルチザンと合流を図る雪。

 

そんな雪の姿をアルフォンは屋敷のバルコニーから見送っている。

 

「少尉、よろしいのですか?尾行をつけなくて‥‥」

 

すると、兵士の一人がアルフォンに尋ねる。

 

雪は必ずパルチザンと合流する。

 

占領軍としてはパルチザンの殲滅は地球占領維持にとっては重要な案件だ。

 

今ならば、雪を尾行すればパルチザンの下へと向かう筈だ。

 

しかし、アルフォンは、

 

「ああ、構わない」

 

雪に尾行は着けなくて良いと言う。

 

アルフォンは少尉ながらも今は地球占領軍総司令代行と言う肩書きをもっており、尚且つ下士官、兵士からの評判も良い。

 

その彼が雪に尾行をつけるなと言うのだから、兵士は雪に尾行をつける事はしなかった。

 

「君は誰かを好きになった事はあるかい?」

 

アルフォンは兵士に恋愛経験を尋ねる。

 

「いえ、恥ずかしながら‥‥」

 

すると、その兵士は恋愛経験は無いと答える。

 

「そうか‥‥誰かを好きになる‥‥本国の上層部や軍幹部は要らぬ感情だと言うが、本来の目的達成後には必要不可欠な感情だと思っている」

 

「は、はぁ‥‥」

 

「私は‥‥最後は愛する者の手によって果てたいと思っている。そうすることによって、愛する者の心の中で私は永遠に生きる事が出来る」

 

「‥‥」

 

兵士はこの時、アルフォンは死を覚悟しているのだと悟った。

 

それと同時に自分たちの敗北も予感していた。

 

 

(もし、アルフォン少尉が私を泳がせてパルチザン本部の場所を探ろうとしているのなら‥‥)

 

アルフォンは雪に尾行をつける必要はないと言っていたが、雪の方はそんなアルフォンの心情など分かる筈もないので、尾行されていると想定してパルチザン本部ではなく、市街地のあちこちを回ってパルチザン本部を目指した。

 

実際に彼は、雪が白い花としてスパイ活動している時、それを逆手にとってパルチザンを罠にかけた経緯があるので油断できない。

 

本部の場所は事前に北野から聞いていたので、向かうには問題なかった。

 

市街地のショッピングモールや公共交通機関をいくつも乗り換えて人混みに紛れながら雪はパルチザン本部を目指した。

 

地下道を警戒しつつ歩いていると、

 

「止まれ!?誰だ!?」

 

パルチザンの歩哨に発見された。

 

「地球防衛軍所属、森雪です」

 

「森雪だと!?」

 

歩哨の一人がライトで雪を照らす。

 

「ま、間違いない。この人は森雪だ」

 

歩哨の一人は軍属だったので、雪の事を知っていた。

 

「貴方、ヤマトがどうなっているのか知らない?」

 

雪は軍属の歩哨にヤマトがどうなっているのかを尋ねる。

 

「ヤマトは現在、暗黒星団帝国本星を目指していると聞きました」

 

「それじゃあ、古代進、島大介は?」

 

「ヤマトに乗り込んでいる事が確認されています」

 

古代たちがイカルスに到着し、ヤマトを発進させる直前、藤堂がヤマトに通信を送った際、第一艦橋で地球を脱出した古代たちの姿を確認していたので、地球を脱出したヤマトの乗組員たちは無事にイカルスに‥ヤマトに到着した事が判明した。

 

「本当に!?」

 

「は、はい‥‥」

 

食い気味に尋ねてくる雪に軍属の歩哨はタジタジだった。

 

「と、兎も角、長官の下にご案内いたします」

 

「ええ、お願いするわ」

 

歩哨たちと共に雪はパルチザン本部へと案内される。

 

「雪だ!!」

 

「森雪だ!!」

 

「生きていたのか!?」

 

白い花の正体を知らないパルチザンのメンバーたちは雪が生きていた事に驚いていた。

 

「森雪、ただいま敵中より帰還いたしました」

 

雪は藤堂の前で敬礼しながら戻って来た事を報告する。

 

「雪‥‥」

 

藤堂は雪の生還にほっこりとした笑みを浮かべる。

 

「長官‥‥ヤマトは‥古代君たちは無事だったんですね?」

 

「うむ、君のおかげだ。作戦上、無線封鎖をして戦況を知る事は出来ないが、ヤマトの事だ。今も立派に戦っている事だろう」

 

「はい‥長官、私もパルチザンとして戦います」

 

「うむ。分かった」

 

藤堂は雪の参戦を許可した。

 

「雪さん!!」

 

「えっ?雪さん?」

 

そこへ、偵察から戻って来た北野とティアナが雪の姿を見て声を上げる。

 

北野は雪が生きており、白い花として諜報活動をしている事を知っていたので、雪はいつか戻って来るだろうと分かっていたが、ティアナはヤマト乗員の雪がヤマトではなく、地球のパルチザン本部に居る事に驚いた。

 

「北野君‥と、ランスターさん!?どうして此処に!?」

 

一方で、雪も北野がパルチザン活動をしているのは知っていたが、まさかティアナがパルチザン本部に居た事に驚いた。

 

「私もパルチザンとして戦っているんです」

 

「えっ?でも、それは‥‥」

 

ティアナが地球人ではなく、ミッドチルダと言う異世界の住人である事を知っているのは防衛軍でもごく一部の者なので、此処で大っぴらには言えない。

 

ティアナもその空気を読んだのか、

 

「分かっています。ですが、地球連邦と防衛軍には助けてもらった恩、衣食住を提供してもらった恩があります。その恩人が困っている中、ただジッと事態の改善を待つ事は出来なかったんです」

 

「‥‥」

 

雪も防衛軍の軍人としてティアナの言っている事が分からない訳でもない。

 

しかし本来は、ティアナにとっては今回地球で起きているゴタゴタは関係ない筈だ。

 

それにもかかわらず、ティアナは命の危険が伴うパルチザンとして活動している。

 

伊達や酔狂で命をかけるなんて出来はしない。

 

ティアナの決意は本物なのだと雪は判断した。

 

「‥‥分かったわ。北野君、それで重核子爆弾の様子はどうだった?」

 

「はい、当初はパトロール戦車と歩兵が多かったのですが、警備に当たっている戦力が日増しに減っていました。ただ、爆弾の周囲を覆っているバリアだけは未だに健在です」

 

「そう‥‥」

 

これまでのパルチザン活動で占領軍の戦力は確実に減っていた。

 

地球の解放には重核子爆弾の占領が絶対の条件だ。

 

しかし、地表から攻め込むにはまだまだ爆弾の警備をしている敵勢力は油断できない。

 

何より爆弾の周囲を囲っているバリアを解除できなければ、爆弾に近づくことも出来ない。

 

「バリアを解除する方法は何かないの?」

 

雪がバリアの解除方法を尋ねる。

 

「あのバリアは恐らく重核子爆弾の中に発生装置と解除装置があるものと思われます」

 

重核子爆弾が飛来したあの日の夜、調査に向かっいた軍の調査隊のセンサー車はバリアに引っかかって重核子爆弾に接近できなかった。

 

そして、カザンを斃した時、彼の周囲を調べたが、バリアの解除装置らしき機器も見つからなかった。

 

その結果からバリアの解除装置は重核子爆弾の内部にあるものと推察される。

 

では、どうやってパルチザンたちは重核子爆弾の占拠をもくろんでいるのか?

 

「じゃあ、重核子爆弾の近くには接近できないと?」

 

「地表からは現状不可能です。なので、我々は地下から攻め込もうと、現在重核子爆弾の真下まで続くトンネルを採掘中です」

 

「な、なるほど‥‥でも、バリアは地中には届いていないの?」

 

「その辺りはまだ分かりません」

 

採掘中のトンネルはまだ重核子爆弾の近くまで届いていないので、地中にもバリアが張られているのか不明なので、今後の掘削作業次第である。

 

勿論、その作業には雪、ティアナ、シャルロット、神堂も参加していた。

 

パルチザン活動をしている中で、男、女なんて関係ない。

 

レーザードリルで地下の岩を削り、トンネルを掘る。

 

重機やISを使えば、その音で占領軍にバレてしまうので、こうした小さな掘削工具で掘るしかない、

 

重機を使うのはトンネル開通の最後‥‥突入口を作る時だけだ。

 

「ふぅ~‥‥」

 

「まさか、パルチザン活動の中でこんな作業を行うとは思ってもみなかったよ」

 

ティアナが一息つくと、シャルロットも苦笑しつつまさか建設作業みたいな事をするとは意外だと言いながら砕かれた岩石をトンネル外へと運ぶための箱に入れる。。

 

「ISが使えれば良いんだけど、やっぱり音でバレると元も子もないからね」

 

神堂も苦笑しつつISが使えない事に言及する。

 

 

いかに高性能なISと言えども駆動音が大なり小なりする上に、上空や地上では気にならない音でも地下のトンネル内での掘削作業ではどうしても音が大きくなってしまう。

 

それに戦闘になった際に掘削作業でISのエネルギーを消費していたら不利になるし、狭いトンネル内ではISの力を出し切れない。

 

なので使用禁止なわけだ。

 

 

「神堂さん、すっかりISにハマっているね」

 

この世界で、ISに乗って戦闘を行って以降、神堂はISにどっぷりとハマってしまったようだ。

 

「そりゃそうよ。機械の手助けがあるとはいえ、空を自由に飛び回れるのよ。管理世界じゃあ、空戦魔導士にバカにされていたけど、此処では空戦属性どころか魔力が無くても空を飛べるのよ。あぁ~ミッドに帰る時にISを一基持ち帰りたい」

 

「それは無理だよ。ISは軍の所有何だし」

 

「それくらい分かっているわよ。でも、そうすると‥‥この世界の残留も視野に入れた方が良いかも‥‥」

 

「「えっ?」」

 

神堂のこの発言にティアナとシャルロットは固まる。

 

「この世界に残留って‥‥」

 

「神堂さん、ミッドに還らないの?」

 

「まだ、決めた訳じゃないけど、それも選択肢の一つって事よ」

 

「「‥‥」」

 

神堂の残留発言にティアナとシャルロットは神妙な顔つきになる。

 

やがて、トンネルは重核子爆弾の近くへと近づく。

 

「そろそろ、重核子爆弾の真下のはずだが‥‥」

 

「バリアが地中まで張っていたら‥‥」

 

「重核子爆弾の占領は根本から見直さなければならない‥‥」

 

緊張した面持ちで、レーザードリルで慎重に掘り進めるパルチザンたち。

 

そして、重核子爆弾の真下に到達すると、トンネルは重核子爆弾の真下に到達した。

 

「バリアは無かったぞ!!」

 

「やった!!」

 

トンネルは到達したが、突入口はまだ作っていない。

 

このまま突入しても無謀だ。

 

パルチザンたちは一時、引き返していく。

 

「そうか、バリアは無かったか‥‥」

 

「はい。いよいよ作戦を実行に移す時ですね」

 

「うむ」

 

トンネル開通の報告を受けた藤堂は決戦の時が近づいている事を予感した。

 

「トンネルが開通したと言う事は‥‥」

 

「いよいよ決戦の時ね‥‥」

 

コスモガンを手入れしながら雪とティアナはこの後に控える重核子爆弾占領について語り合う。

 

「ランスターさんもやっぱり、参加するの?」

 

「はい。勿論です。此処まで来て最後の作戦に不参加なんて出来ません。雪さんも参戦するんですか?」

 

「ええ‥‥あの中にはある人が待っているのよ‥‥」

 

「えっ?ある人?あの爆弾の中に?」

 

「‥‥」

 

ティアナの問いに雪は頷く。

 

(一体誰が待っているんだろう?)

 

(重核子爆弾の中で待っているって事は敵兵よね?でも、重核子爆弾を守っている敵兵が待ち構えているのは当然だろうし…)

 

雪の意味深な発言にティアナの疑問は深まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

暗黒星団帝国本星、ヤマト世界の地球、それぞれの箇所で決戦の時は迫っている中、異世界、ミッドチルダでは‥‥

 

 

「ティアやフェイト執務官たち今頃、どんな生活を送っているのかな?」

 

下宿先のマンションにて、スバルは遠い世界に居る友人たちの安否を心配していた。

 

ヤマト世界の地球の現状は、旧機動六課の一部の関係者には緘口令付きで説明されていた。

 

友人が次元漂流した事でスバルもティアナの現状を知っている一部の関係者であった。

 

そして、地球の現状‥‥暗黒星団帝国の占領下に置かれている事も知っていた。

 

暗黒星団帝国が地球を占領下に置いているせいで地球との交信が途絶えており、スバルたちミッドチルダに居る旧機動六課のメンバーはティアナたちの現状を知る手立てが無い。

 

地球には『便りがないのは良い知らせ』と言う言葉があり、その意味は『連絡がないということは、何も問題がなく無事であることの証拠』だというたとえであるが、スバルはもう一つの地球が暗黒星団帝国とか言う何処かの星間国家に占領されている所まで知っている。

 

占領下と言うモノがどんなモノなのかを知らないスバルは占領されている地球に居るティアナたちの身を案じるのは当然の事だった。

 

「占領下ね‥‥それってどんな世界なんだろう?」

 

スバルの部屋に来ていたルキノが占領下の地球の現状を想像する。

 

「古代ベルカ時代みたいに住民が奴隷化‥‥なんて事もあるかも‥‥」

 

ルキノと同じくアルトが古代ベルカ時代にあった奴隷制度を口にする。

 

「えっ!?奴隷!?ティアやフェイト執務官が!?」

 

「そ、そうとは限らないけど‥‥」

 

スバルが声を上げ、アルトがビクッとなりながらもスバルを宥める。

 

「で、でも、ティアたちが大変なのは変わりないでしょう!?」

 

地球が暗黒星団帝国に占領されてからそれなりの時間が経っているが、ルキノがミッドチルダに戻ってきてスバルの部屋で地球の現状を聞いてこうなった。

 

「そ、それはそうなんだけど‥‥」

 

「い、急いで地球に行ってティアたちを助けないと!!」

 

「それは無理だよ、スバル」

 

ルキノが現状、暗黒星団帝国に占領されている地球へ向かうのは無理だと言い放つ。

 

「どうして?ティアたちが危険な目に遭っているのに!?」

 

「私たちも地球の現状の確認に行ったけど、近くの海には暗黒星団帝国の艦がうろついていて、発見されて追いかけられた時は私も八神艦長も死を覚悟したわ。管理局の次元航行艦と暗黒星団帝国の艦、地球の艦では性能の差が有り過ぎるのよ。管理局の次元航行艦全てを地球に送っても多分、地球を救う事は出来ないと思う」

 

ルキノは地球との交信が無かった事で、地球側に何かあったのかと調査に赴いた時の話をした。

 

「死を覚悟したって、それでどうやって助かったの?」

 

ルキノが自分たちの眼前にこうしている事から何かがあって助かった訳だ。

 

何があって生き残ったのかをアルトはルキノに尋ねる。

 

「実は防衛軍の人たちに助けてもらったの」

 

「防衛軍の人たちに?」

 

「でも、地球は占領されているんでしょう?それがどうして?」

 

「軍の全てが地球に居た訳じゃなくて、次元の海に出ていた部隊もいたらしく、地球の占領を知ってから次元の海でゲリラ活動をしているみたいで、その部隊に助けられたんだけど‥‥」

 

ルキノは防衛軍に助けられて時の話をしたのだが、少々言葉を濁す。

 

「ん?どうしたの?」

 

「あっ、うん‥その時に助けてくれた防衛軍の艦が物凄く変わった艦で‥‥」

 

「変わった艦?」

 

「どう変わっているの?」

 

「潜水艦みたいな形で異次元に潜れる艦だった」

 

「異次元に潜れる艦?」

 

「そんな事できるの?」

 

「理論上は出来ると思う‥‥管理局の次元航行艦でも出来る次元跳躍は異次元を通って通常の空間をすっ飛ばして距離を短縮するんだけど、その異次元を移動ではなくて自分の姿を隠すために使うなら‥‥」

 

「それじゃあ、管理局の次元航行艦でも出来るんじゃない?」

 

「同じ異次元の中を通ると言っても移動するのと隠れるのは似て異なるんだよね。それに管理局の中に次元跳躍の技術を隠れ蓑にする事を考え付く人が居ないから管理局はまだその技術を持っていないよ。次元跳躍の時、エンジンが止まったら異次元に閉じ込められちゃうからちゃんとした技術を確立する必要があるんだ」

 

「異次元に閉じ込められるって‥‥」

 

「こわ~‥‥」

 

「そんな事があったから、地球の軍は諦めていない‥八神艦長も地球は一年以内に暗黒星団帝国から地球を奪還すると思っている。今は向こうの地球を信じて待つしかないよ。スバル」

 

「う、うん」

 

ルキノの話を聞いて熱くなっていたスバルも冷静になった。

 

ただ、ルキノが言ったようにはやての予想は当たる事をスバルが知るのはもう少し先の事であった。




次回 敵本星決戦

更新時間は何時がいいですか?

  • 午前0時
  • 午前8時
  • 午前7時
  • 正午
  • 午後3時
  • 午後6時
  • 午後8時
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。