内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百四十五話 重核子爆弾制圧

地球から遥か彼方の二重銀河にて、地球の選抜艦隊がサーグラス率いる艦隊と戦っている中、地球でも動きがあった。

 

新月の深夜、パルチザンたちはいよいよ最終目的である重核子爆弾占領作戦を実行に移した。

 

「諸君、よくここまで戦ってくれた。だが、これが我々にとって最後の戦いとなるだろう。これより我々は重核子爆弾に突入し、起爆装置を解体する。編成は‥‥」

 

重核子爆弾突入前に最後のミーティングが開かれる。

 

そこで、各々の班のメンバーと役割が発表される。

 

古野間、北野、ティアナ、そして雪の部隊は重核子爆弾の起爆装置の解体を主目標とし、コールはスペード1

 

ダイヤ班、クラブ班各員は爆弾周囲を固め、襲来するであろう敵援軍の撃破。

 

スペード班、ハート班はスペード1と共に爆弾内部へと突入し、スペード1の援護を行う。

 

西住まほ率いる戦車隊は陽動として、敵の三脚戦車、パトロール戦車の駆逐と爆弾方面に向かうのを阻止する事となった。

 

その際、まほは、

 

「出来ればIS部隊も少数で構わないので、こちらにも回してもらいたい」

 

と、IS部隊の投入を要望した。

 

暗黒星団帝国襲来前は宇宙空間での作業用パワードスーツ程度の認識であったが、パルチザン活動においてISは空からの援護として艦載機よりも小回りが利く兵器として認識されていた。

 

篠ノ之束としては、ISを本来の目的である宇宙空間での作業用パワードスーツとして採用してくれた地球連邦政府に感謝していたが、自分の居ぬ間にまさか地球が外宇宙からの侵略を受けて、地球が占領されてしまい、その地球解放のためにISが自分の居た世界で危惧されていた兵器としての利用が行われてしまった事は嘆かわしい現実であるが、この世界の地球は今まで自分が住んで居た地球と異なり、ISの力を自分たちの力だと勘違いしている女性権利団体はない。

 

二度の外宇宙からの侵略を受けた事で地球人全体に纏まり感があり、精神的にもこの世界の地球人の方が信頼出来た。

 

なので、今後もISを兵器としての利用するにしても他国を攻める為ではなく、地球を守るために使ってくれると事だろうと篠ノ之束はそう思ってくれるに違いない。

 

陽動も完璧に熟さなければならないので、藤堂はまほの陽動部隊にもISの部隊を配置した。

 

「こちらのIS部隊は突入口を作った後、直ぐに展開し、上部より、突入部隊を掩護し、しかる後、ダイヤ班、クラブ班と共に爆弾周辺の警戒活動を行え」

 

その後、各々が時計合わせを行いまほは戦車が格納されている倉庫へと向かい、ダイヤ、ハート、クラブ、スペード各班員は突入の為に自分たちが掘った穴に向かう。

 

「雪さん」

 

突入口が出来るのを待つティアナはおもむろに隣に居る雪へ声をかける。

 

「ん?なに?」

 

「以前、あの爆弾の中にある人が待っていると言っていましたが、一体誰が待っているんですか?」

 

ティアナは先日、雪がパルチザンのアジトに戻ってきた時に呟いていた言葉の意味を尋ねる。

 

一体誰があの爆弾の中で雪を待っているのだろうか?

 

まぁ、あの爆弾の中で待っていうと言うのだから暗黒星団帝国所属の人物なのだろうが、その人物と雪との関係が気になったのだ。

 

「私の命の恩人であり、倒すべき‥敵よ」

 

「は、はぁ‥‥」

 

(恩人であり倒すべき敵?)

 

(一体、どういう人なんだろう?)

 

雪の言葉でますます雪の待ち人が気にあるティアナであった。

 

一方、神堂とシャルロットは待機状態のISをギュッと握りしめていた。

 

「いよいよ、これが最後だね」

 

「え、ええ‥そうね」

 

管理局時代、神堂もシャルロットも次元航行艦勤務だったので、直接自分の手で人を殺し、自分が殺されるような戦場ではなかった。

 

しかし、次元漂流をして、暗黒星団帝国の占領下を経験して、こうしてパルチザン活動に参戦している中で二人は殺し殺される戦場に身を置いている。

 

肌の色や装備から地球人やミッドチルダの人間らしくは見えないが、それでも人は人‥‥

 

お互いに初めて占領軍の兵士を殺した時は、アドレナリンの分泌が多く興奮状態であったが、戦闘終了後に冷静になると吐いていた。

 

この後の戦闘でも殺し殺される戦いが始まる。

 

ISには絶対防御機能があるので、生身のまま突入する部隊よりも生存確率が高いのは幸いなのだが、IS部隊に所属しているからには突入部隊を一人でも多く爆弾内部に送り込まなければならずその為、一人でも多くの敵は斃さなければならない。

 

「管理局のエース・オブ・エースの高町一尉や元機動六課部隊長の八神二佐ならもっとスマートに出来たのかな?」

 

神堂は、なのはやはやてがこの世界に居たらもっと簡単に事を運べたのかと問う。

 

「さあ、それはどうかな?」

 

しかし、シャルロットは神堂の意見に対して懐疑的だった。

 

空戦属性があり、魔力ランクがSクラスのなのはとはやてなら空を飛んで非殺傷制定の魔法で敵を殺さずに無力化できるかもしれないが、この地球には空気にはAMAが含まれており、魔導師にとっては禁足地のような世界だし、例えSクラスの魔導師とは言え、二人だけでは戦況をひっくり返すには人数が足りない。

 

そんな思いがシャルロットにはあった。

 

やがて重機が突入ポイントまで来ると、天井部分の地面に穴をあける。

 

突入口が出来ると、パルチザンたちは次々と地上へと出る。

 

IS部隊は直ぐにISを纏う。

 

その中にはシャルロットと神堂の姿もあった。

 

ダイヤ、クラブ班のパルチザンたちは対戦者バズーカを構え、爆弾周辺を警備していたパトロール戦車に向けて対戦車弾を放つ。

 

爆弾の下部からは自動噴射梯子をバルコニーまでに噴射する。

 

「っ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「敵襲だ!!」

 

それに気づいた爆弾外部に居た警備兵たちは声を上げる。

 

下から来るパルチザンに対して上から銃撃を浴びせようとした警備兵であるが。更にその上から銃撃が浴びせられる。

 

それは神堂やシャルロットたちIS部隊からの銃撃であった。

 

「ぐはっ!!」

 

「ぐわっ!!」

 

「上からも来たぞ!!」

 

「こちらもジェットパックを‥‥」

 

「ダメだ!!間に合わない!!」

 

重核子爆弾上部での銃声に爆弾周囲を警備していたパトロール戦車も気づき、パルチザンの襲撃だと判断して急行するが、そこには対戦車バズーカを構えたダイヤ、クラブ班のパルチザンたちの姿があった。

 

「対戦車兵器!?」

 

「撃て!!」

 

パトロール戦車の戦車兵たちが待ち構えていたパルチザンの兵士たちが持つ武器に気づいたが、遅かった。

 

ズガーン!!

 

爆弾周辺のパトロール戦車はたちまち対戦車バズーカの攻撃を受けて炎上し、粉砕された。

 

爆弾周辺、爆弾上部で戦闘が始まっている中、雪たち突入部隊は梯子を急いで登る。

 

(こんな時、スバルかノーヴェが居たら楽なのに‥‥)

 

スバルとノーヴェが使用する魔法の一つ、ウィングロードとエアライナー‥‥

 

ティアナ自身もスバルのウィングロードにはお世話になった時もあった。

 

あの魔法が此処で使えたら、不安定な梯子を使って登る必要はなく、それに一度に大勢の人数を乗せて現場に送る事が出来る。

 

梯子を登りながらティアナはそんな事を考えていた。

 

IS部隊の援護もあり、突入部隊はほぼ無傷でバルコニー部分に上がる事が出来た。

 

 

重核子爆弾 内部 指令室

 

「アルフォン少尉!!敵です!!」

 

一人の兵士が慌てた様子で爆弾内部にある指令室へと入り、そこに居たアルフォンに報告を入れる。

 

「来たか‥‥しかし、パルチザンは一体どうやってあのバリアを突破して来た?」

 

暗黒星団帝国のバリア技術は地球よりも優れていた。

 

現にこの爆弾が地球に迫った時、地球からのミサイルを始めとする迎撃兵器をバリアで防ぎ、突破して来た。

 

地球の科学技術ではこのバリアを突破するなんて不可能だ。

 

一体どうやってバリアを突破してきたのかアルフォンは気になって伝令の兵士に尋ねる。

 

「そ、それが、地球人は地下にトンネルを掘っていたようです」

 

「地下‥トンネル‥‥ハハ、我々には思いつかない方法だな」

 

「はい。全くもって野蛮な発想です」

 

「だが、我々はその野蛮な方法で敵に侵入を許す結果となった‥‥」

 

アルフォン自身、まさか地下にトンネルを掘って侵入してくるなんて気づきもしなかった。

 

「いかがいたしましょう?少尉」

 

「爆弾内部の警備兵を集結させて迎撃にあたらせろ‥‥それとバリア発生装置を停止」

 

「停止!?しかし、それでは‥‥」

 

アルフォンの命令を聞いて伝令兵は驚愕する。

 

「既に内部に入られているのではもうバリアの意味はない。市街地に展開中の戦車部隊を始め、全ての部隊を此処に集結させるのだ」

 

「は、はい!!」

 

アルフォンの命令を受けて伝令兵は急ぎ命令を伝達するために指令室を出る。

 

「フフ、雪‥やはり来たか‥‥そして勇敢なる地球人たちも‥‥」

 

アルフォンは口角を上げながら椅子から立ち上がり、指令室を出た。

 

しかし、既に市街地ではまほ率いる陽動部隊が占領軍戦車隊部隊と既に戦闘を行っており、アルフォンの命令を受けて爆弾のある地区まで辿り着ける戦車は皆無に近い。

 

頼みの綱である三脚戦車もIS部隊がその機動力を活かして砲塔の死角に接近し、弱点でもある胴と足の付け根に対戦車バズーカを連発して三脚戦車を着実に破壊していく。

 

 

重核子爆弾 内部

 

「さて‥‥行こうぜ‥‥!!」

 

古野間を先頭に雪、北野、ティアナは爆弾の起爆装置を目指して内部へと突入する。

 

そして、爆弾内部の通路を立ちはだかる警備兵を斃しながら進んで行くと、通路の途中で、パルチザンの兵士たちが通路の物陰に隠れており、進めていない状態に遭遇する。

 

「どうした?」

 

「自動狙撃銃座です!!三人ほどやられました‥‥」

 

パルチザンの侵入を受けて警備兵の他に警備システムも発動していた。

 

「厄介ですね‥‥」

 

自動狙撃銃座は天井部に敷かれているレールの上を通る仕様となっていた。

 

「私が囮になるので、その隙に銃座を破壊してください」

 

するとティアナが囮を買って出る。

 

「そんなっ!?危ないわよ!?」

 

「でも、このまま此処で時間を無駄に消耗する訳にはいきません」

 

そう言ってティアナは部屋の中に飛び込むと、咄嗟に左側に跳ぶ。

 

自動狙撃銃座はティアナを狙うが、ティアナは自分自身に身体強化の魔法を施していた。

 

元々魔力量が少なく、AMAで満たされている環境下で魔法を使用してもほんの短時間しか使用出来ない。

 

しかし、ティアナは元々運動神経が良い方であり、管理局の訓練校、初めて配置された救助部隊、そして機動六課では身体を動かす機会ばかりだった。

 

機動六課卒業後、執務官補佐になってからは前線勤務から主に事務仕事ばかりだったので、運動不足となるも、次元漂流して以降は定期的に運動をし、パルチザン活動に身を置くようになってからはかつての勘を取り戻すまでになった。

 

そこに短時間とは言え、身体強化の魔法を自身にかけたので、自動狙撃銃座はティアナの動きについていけず、その隙に古野間、雪、北野が自動狙撃銃座を破壊する。

 

自動狙撃銃座を破壊し、爆弾内部を進むパルチザンたち。

 

途中に作業アームやバリケード等の妨害を受けるも、それらを排除して順調に進んでいた。

 

進んで行くにつれて警備する敵兵の数も減っている。

 

「もうすぐ爆弾の最深部だな‥‥」

 

古野間がそう呟くと、

 

ピピ‥‥

 

北野のトランシーバーが着信を知らせる。

 

「こちら、スペード1、どうぞ」

 

『こちらダイヤ1‥敵の戦車が陽動部隊の防衛網を突破してこちらに押し寄せている‥‥我々だけでは防ぎきれんかもしれん‥‥でき‥‥だけ‥‥急いでくれたまえ‥‥』

 

「長官!?‥‥長官!!」

 

着信を入れたのはダイヤ部隊を率いていた藤堂からで、一部の敵戦車隊が陽動部隊の攻撃を掻い潜りこちらに向かっているとの事だ。

 

通信状態も悪く所々にノイズが混じっている。

 

「くそっ、急ぐしかねぇぜ‥‥!!」

 

そして、爆弾の中心部へとたどり着くとそこには大きな柱のような構造物があった。

 

「これが爆弾の中央シャフト‥‥」

 

「起爆装置は一体何処に‥‥」

 

「爆弾の外見からきっと最上部だろう。それにこのシャフトには螺旋階段がある」

 

地下に行くための階段や通路らしき構造物は見当たらない。

 

ならば、自分たちが目指すのは上に続く螺旋階段の上‥‥

 

そこにこの爆弾の起爆装置が有る筈だ。

 

「螺旋階段とは言え、遮蔽物がないので、格好の的になりそうですが‥‥」

 

「止まる訳にはいかねぇ‥‥お前たち援護を頼むぞ」

 

「了解!!」

 

スペード、ハート班の援護を受けつつ螺旋階段を上る古野間、北野、雪、ティアナの四人。

 

そして螺旋階段を登り終えると‥‥

 

爆弾の起爆装置があると思われる部屋のドアを開けるとその部屋の中心には‥‥

 

「あ、あれはっ!?」

 

「あの新型歩行戦車か‥‥!?」

 

「工場は破壊した筈なのに‥‥!!」

 

以前、生産プラントで破壊した例の新型歩行戦車が一機いた。

 

戦車の生産プラントは破壊し、囚われていた技術者たちも全員救出した筈なので、占領軍があの新型歩行戦車を持っている事が信じられなかった。

 

自分たちの知らないところで密かに生産されていたのか?

 

そんな疑問を雪が解決してくれた。

 

「量産された一号機の他に試作の零号機が完成していたのよ」

 

「そう言えば、カザンの奴がそんな事をほざいていたな‥‥」

 

(それに乗っているのね‥‥私が見える?)

 

(ここまで‥‥ここまでやってきたわよ‥‥アルフォン少尉‥‥)

 

雪にはあの新型歩行戦車に乗っているのがアルフォンであると確信があった。

 

そして、それは当たっており、新型歩行戦車のコックピットにはアルフォンが座上しており、コックピットから雪の姿を捉えたアルフォンは、

 

(雪‥‥私は此処にいる‥‥君が倒すべき敵は此処にいるぞ!!)

 

彼自身も腹を決めて雪と戦い暗黒星団帝国の軍人としての職務を全うしようとした。

 

ガチャ、ガチャ、ガチャ

 

搭載されているビーム砲を連射しながら歩行戦車は迫って来る。

 

「散開して、各自攻撃を!!」

 

「立ち止まったらあっという間に蜂の巣になるぞ!!絶対に止まるな!!」

 

一対四と言う数の上では雪たちのアドバンテージがあるのだが、アルフォンは数の戦力を覆せるほどの歩行戦車に乗っている。

 

歩行戦車はビーム砲だけでなくロケットランチャーも搭載されているし、死角から接近しようとするとセンサーが感知して手榴弾を投擲して来る。

 

戦車というよりも地上型ISと言った方が正しい様な兵器だ。

 

しかし、ISと異なりこの戦車には絶対防御能力が備わっていない。

 

もしも暗黒星団帝国がISを接収していたら、この歩行戦車にもISの絶対防御能力が付与されていたに違いない。

 

そう思うとISが暗黒星団帝国に接収されていなかった事が不幸中の幸いだ。

 

それともう一つ、此処は重核子爆弾の内部‥‥

 

下手に暴れて爆弾の起爆装置を作動させる訳にもいかず、アルフォンは行動の制限がなされており、同じ歩行戦車でも生産プラントで戦った時よりも動きが緩慢なのも雪たちに味方した。

 

やがて三脚戦車同様、歩行戦車の足の付け根を狙われて、歩行戦車は手足をもがれた蟹のように稼働を停止した。

 

「雪さん、下がって‥‥」

 

「出て来い!!貴様が乗っているんだろう!?アルフォン!!」

 

雪同様、古野間もこの歩行戦車の搭乗員がアルフォンだと読んでいた。

 

コスモガンを構えながら歩行戦車に近づくと、

 

バシュン!!バシュン!!

 

「ぐっ‥‥」

 

「うわっ‥‥」

 

「ちっ‥‥」

 

まだかろうじていきていたレーザーの照射を受けて北野、ティアナ、古野間は被弾する。

 

「北野君!!ランスターさん、古野間さん!!」

 

「くそっ‥‥俺としたことが‥‥しくじったぜ‥‥」

 

「うぅ~‥‥」

 

「最後の最後で、油断を‥‥」

 

「喋らないで!!今、手当てを‥‥」

 

「それどころじゃ‥‥ないようだぜ‥‥」

 

歩行戦車のコックピットからは無傷のアルフォンが出てきた。

 

雪はコスモガンを構え、銃口をアルフォンに向けるが、その銃身はカタカタと小さく震えていた。

 

「雪‥‥私を撃てるか?‥‥私を倒すことが出来たら、その時こそ、重核子爆弾の秘密を教える‥‥そう、言ったね‥‥」

 

「撃つんだ!!雪さん!!」

 

「撃てまい‥‥だが、私は君を見逃すわけにはいかない‥‥撃つ‥‥」

 

アルフォンも銃を構えて、銃口を雪に向ける。

 

雪と異なり、彼には躊躇する姿勢が見られない。

 

アルフォンと雪、互いに銃のトリガーに掛けられた指が動く‥‥

 

バシュン!!

 

バキューン!!

 

「「‥‥」」

 

銃声がした後、互いに二人は姿勢を崩さなかったが、アルフォンの額から血が流れだすと、彼の手から銃が床に落ち、次いでアルフォンの身体も崩れるかのようにして床に倒れる。

 

「アルフォン少尉!!」

 

雪はアルフォンに近づく。

 

彼女が放った一撃は彼の心臓部近くを撃ち抜いていた。

 

軍人として‥人としての雪の生存本能が無意識に銃の引き金を引き、アルフォンを撃った。

 

雪がアルフォンの傷口を見ると、そこから血は流れておらず、代わりに配線と機械の基盤のようなモノが見え、バチバチと小さく火花が散っている。

 

「あ、あなた方はロボット?」

 

アルフォンの傷口を見て、雪はアルフォンが‥‥暗黒星団帝国の人間が普通の人間ではないことを知る。

 

もっともティアナたちは事前にルシフェリオンからの情報で暗黒星団帝国の人間が半機械の生命体である事を知っていたのだが、雪にその情報を伝えるのを忘れていた。

 

「違う‥‥顔を見たまえ‥血が流れているだろう?私はサイボーグだ。首から上だけが本物の肉体で、体は全部作り物さ」

 

アルフォンは自分の正体について自嘲めいた笑みを浮かべて語る。

 

「だが、感覚はある。撃たれれば痛みはあるし、体の機能にも支障をきたす‥‥少しでも生物に近づこうとする悪あがきだ」

 

機械の身体ならば、通常の肉体と比べて強靭で痛みを感じないようにすればいいのだが、そこは通常の肉体のようにしたかった‥‥

 

機械の身体ながらも通常の人間の身体により近づけたかった‥‥

 

その辺りは半機械の生命体ながらも、自分たちは人間だと証明したい暗黒星団帝国の人間としてのプライドだったのかもしれない。

 

「どうしてあなた方はそんな身体に?」

 

雪は暗黒星団帝国の人間が半機械生命体になった理由を尋ねる。

 

その辺は未だに不明だったので、ティアナとしても興味があった。

 

「私たちの星はあまりにも機械文明が進み過ぎ、人間は脳だけあればあとは何でも機械でやれるようになった。だが、肉体的には退化してしまった‥‥地球人より高等生命体であるかもしれないが、人類の種としての生命力は衰退してしまったのだよ」

 

(そりゃあ、機械同士の身体じゃあ、子供は生まれないものね‥‥)

 

子供がどうやって生まれてくるのかくらい、ティアナだって知っている。

 

首から下が機械の身体では、当然子供は生まれない。

 

子供が産まれなければ種としての存続は出来ない。

 

「今の我々は生命ですら機械によって作り出している‥‥母の身体から次世代を担う命が産まれる事もないのだ‥‥」

 

暗黒星団帝国側も当然、人口減少問題には着手していたようだ。

 

クローンによる人工生成を行っていたようだが、それも上手くいっていない様だ。

 

「それで、あなた方は地球に?」

 

「そうだ。我々は適合する生命体を見つけるために宇宙をめぐり戦争を繰り返してきた。だが、そうやって占領した星々の生命体の悉くが、我々とは不適合だった。そんな中で、見つけたのが地球だ。地球にはまだ若々しい生命が充満している。我々が地球に来たのは、地球人の健全な肉体が欲しかったからだ‥生命を生み出すことのできる肉体が欲しかったからだ‥大地を踏みしめる血肉の通った足が欲しかったからだ‥‥いくら感覚を持つサイボーグの身体でも所詮は作り物‥‥本物の肉体を得る事が出来なければ、いっそ重核子爆弾で‥‥」

 

アルフォンの話を聞いて雪は合点がいった。

 

マゼラン星雲で暗黒星団帝国と初邂逅した際、ゴルバを指揮していたメルダースは宇宙間戦争の為にイスカンダルのイスカンダリウム、ガミラスのガミラシウムを採掘しようとしていた。

 

そして、その宇宙間戦争は暗黒星団帝国に住む人類の存亡をかけていた事、

 

マゼラン星雲で暗黒星団帝国と戦った事で、暗黒星団帝国が地球を認知してしまい、その結果、地球にやって来たのは決してマゼラン星雲での雪辱を果たしに来ただけではなかった事を‥‥

 

(もしも管理局の次元航行艦が暗黒星団帝国と邂逅していたらと思うとゾッとするわね)

 

アルフォンの話を聞き、ティアナはミッドチルダも暗黒星団帝国に狙われていた可能性があったことに身震いする。

 

地球人とミッドチルダの住民の大きな違いはリンカーコアの有無であるが、なのは、はやて、グレムアの様に地球出身者の中にもリンカーコアがある者がいるとなると、身体の組成は地球人とミッドチルダの住民はほぼ変わらないし、ミッドチルダに住む住民全てがリンカーコアを有しているわけではない。

 

その為、地球人が暗黒星団帝国の住民と適合する肉体であると言うのであるならば、ミッドチルダの住民の肉体も暗黒星団帝国の住民と適合する事になる。

 

暗黒星団帝国がミッドチルダではなく地球を狙った事で、ミッドチルダは破滅を免れたのだ。

 

「雪、私は君を愛し、尊敬していた。生命を生み出すことのできる女性を‥‥どんな状況であろうともただ一人だけの男を想う君を‥‥そして、君から想われる古代と言う男を羨んでいた。だから君が欲しかった‥‥浅はかな男だよ‥君を自分のモノにしたとしても、私が望むモノを手に入れられないと言うのに‥‥」

 

アルフォン自身も分かっていた。

 

どんな方法を用いても雪が手に入らない事を‥‥

 

「君たちとこうして直に会うのはこれで二度目だな‥‥皆、良い目をしている‥‥」

 

アルフォンは傷つきながらも立ち上がった古野間たちに声をかける。

 

生産プラントでは物陰から一方的に視認しただけであったので、直接目で互いを認識できる距離で会ったので、政府要人奪還作戦において地下で戦った時、以来だ。

 

「地球人は素晴らしい‥‥なに事にも屈服せず、自由を信じて戦っている‥‥」

 

これまでの戦況から科学技術、頭脳において自分たちよりも劣っている筈の生命体ながらも、故郷を奪還するために戦っている地球人の底力と精神力をまじまじと見せつけられた。

 

「アルフォン少尉‥‥」

 

「約束を忘れてはいない‥‥重核子爆弾の秘密を教えよう‥‥この爆弾は起爆装置だけを解体してもダメだ。かといって、本星にあるコントロール装置を破壊しても自動的に起爆装置が働いてしまう二重構造になっている。まず、ここの起爆装置を解体し、しかる後、本星のコントロール装置を破壊しなければならない‥‥これが解体図だ」

 

アルフォンは雪に記憶媒体らしき機器を手渡す。

 

「一度、古代と言う男に会ってみたかった‥‥」

 

「アルフォン少尉‥‥」

 

「雪、私は‥‥君を‥‥」

 

そう言い残してアルフォンは息を引き取った。

 

「アルフォン少尉‥‥」

 

「敵でなく、味方として出会えたら‥‥良い友になれたかもしれませんね‥‥」

 

雪とアルフォンの姿を見て、ティアナはポツリと呟いた。

 

「「‥‥」」

 

確かにアルフォンは敵であり、政府要人奪還作戦の時は、彼の為に味方が大勢やられた。

 

それでも最後には重核子爆弾の解体に一役かってくれた。

 

北野と古野間はアルフォンの亡骸を前に敬礼し、ティアナもそれに続いてアルフォンに向けて敬礼をした。

 

その後、アルフォンから貰った解体図に従い、地球側の起爆装置は解体された。

 

重核子爆弾の占領と起爆装置の解体、そしてアルフォンの戦死が地球全土にゲリラ報道された。

 

この報道を受けて世界各地に潜伏していた防衛陸軍や防衛空軍が一斉に蜂起。

 

 

瞬く間に各地の主要都市や首都は奪還され、すでに殲滅されていたアフガニスタンを除いた各地から次々と勝利の報告が届いてきた。

 

その結果、いまだに交戦状態にあったモスクワが最初に勝利を宣言し、地球・ガミラス戦争後に再建されたクレムリンに地球連邦と旧ロシア連邦の旗が掲げられた。

 

それからわずか五分という僅差でハワイ、アラスカを含むアメリカの各主要都市や軍事基地が奪還され、ホワイトハウスに星条旗が地球連邦の旗と共に掲げられた。

 

その後にイギリス・ドイツといった各国の首都や都市に旧国旗や地球連邦の国旗が掲げられていった。

 

 

※ちなみにイギリスでは復活したパンジャンドラムがしっかりとまっすぐ走って何故か大活躍したと言う‥‥。

 

 

地球占領の切り札である重核子爆弾の占領と総司令官代行のアルフォンの戦死を受けて占領軍の地上部隊は次々と武装解除の後、防衛軍に投降した。

 

対暗黒星団帝国戦役の半分がこの日、終わりを迎えたのだった。




次回 敵本星の正体

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