地球が暗黒星団帝国の占領下から脱してから数日後‥‥
選抜艦隊や第七艦隊、ヤマト、雪風・改が帰還した後に地球連邦政府は大忙しであった。
地球の各地は初めての外宇宙の星間国家からの占領下を経験したことで再び荒廃してしまい、白色彗星帝国との戦いからようやく立ち直りかけていた経済やら軍事やらを始めとする何もかもが完全に瓦解してしまったのだ。
後々、束やディアーチェ、古代進達も復興の為に働くこととなっているのでその手のことが苦手な軍人たちは内心で悲鳴をあげていた。
そんな中、真田、トチローたち技術者、科学者たちはメガロポリス東京に打ち込まれた重核子爆弾の調査へと赴く。
爆弾自体の起爆装置、そして暗黒星団帝国本星にあった起爆装置は共に解除されているのだが、不発弾状態なので、何が切っ掛けで起爆装置が作動するのか分からない。
よって、技術調査の後、この重核子爆弾は早々に宇宙空間での爆破処理が決まった。
地面に突き刺さった重核子爆弾を引っこ抜く作業にあたってはパワーのある戦艦にぶっ太く、頑丈なワイヤーが何百本と括りつけられた。
その作業には春藍、武御雷、無人戦艦が使用された。
重核子爆弾除去作業の光景はマスコミにも中継されて、地面から引き抜かれた際は歓声があちこちから沸き上がった。
宇宙空間まで運ばれた重核子爆弾は充分に安全距離が保たれた後、各戦艦の波動砲によって処分されたのだった。
さて、艦隊が帰還し、重核子爆弾が処分されてから数日経過したある日‥‥
時空管理局・次元航行本部
コンソールに着信を知らせるシグナルが点灯して、アラームが鳴る。
それはしばらくの間、遠のいていたアラーム音だった。
「っ!?ま、まさか!?」
当直に当たっていたオペレーターはアラーム音を聴いて慌てて回線を繋いだ。
そして映し出された画面には束とディアーチェが映っていた。
『地球防衛宇宙海軍 内惑星艦隊司令官兼宇宙戦艦武御雷艦長の月村束です』
『同じく地球防衛宇宙海軍 内惑星艦隊副司令官兼宇宙戦艦武御雷副長のディアーチェ・K・クローディアである』
「じ、時空管理局本局勤務、オペレーターの‥‥です!」
オペレーターは慌てたのか、自身の階級を答えてしまう。
『時空管理局の艦が一度地球に接近し、次元潜航艦部隊と接触したという情報があったので伝わっているかと思いますが、我が地球は暗黒星団帝国の占領下にあり、通信が出来ない状況が続いていました。しかし、ようやく暗黒星団帝国を退けることに成功したので再びハラオウン執務官らの返還についての協議を再開したく、今回こうして交信をした次第です』
『なお、ハラウオン執務官らは占領下の情勢下にいたが無事であったので次回以降の会談の際に出席できると思う』
束とディアーチェからの連絡を受けたオペレーターは情報の量にパニックになりかけたが、とりあえず担当責任者であるクロノに報告するとともに依然と同じように次回の交信日時を取り決めた。
「ええ!?それは本当なの!?クロノ君!」
『ああ、僕のついさっき当直者から聞かされたんだ。フェイトたちも無事だそうだから次の交信日には誰かしらは同席できるらしい』
当直にあたっていたオペレーターからもう一つの地球との交信が再開された件を聞いた際、クロノはなのはに連絡を入れた。
「よ、よかった‥‥あっ、スバルとかはやてちゃんには私から伝えとくね」
『ああ、頼む』
クロノからの連絡を受けたなのはは驚きつつも喜びの感情を覚えた。
親友や元部下、そして義理とはいえ愛娘が無事であったと言うのだから喜ばないわけがない。
とはいえ、クロノも忙しそうなのではやてやスバルたちへの連絡を自分が行うと伝えて通信を終えた。
フェイトやティアナたちと関係があるスバルやなのはたちはもう一つの地球との交信再開を喜ぶ者が居たのは当然であるが、その反面交信再開についてもう一つの地球の存在を危惧する者たちも当然ながら居た。
とはいえ、船の数もそろっていないし、根拠地のおおよその座標はこれまでの接触で分かってはいるが、正確な座標も分かってない。
とりあえずフェイトたちが帰還する際にどうにか入手すればよいと言うこととなり、しばらく静観することとなった。
一方、もう一つの地球に居る件のフェイトたちの方はと言うと‥‥
「え?以前捕虜になった管理局員たちと追加で二名の局員と一緒に?」
「うん。ついでにミッドチルダに連れて帰ってもらえるかな?」
「‥‥」
束からの突然の申し出にフェイトは困惑した。
以前、第二次土星沖海戦時に太陽系内への侵入を試みた挙句にホワイトアーチャーⅠ・Ⅱに拿捕された次元航行艦『クライスラー』の乗員は全員が宇宙要塞ソロモンの収容施設にて拘束されていたが、暗黒星団帝国の侵攻の際にソロモンがどういうわけか放置されていたために白兵戦を覚悟して臨戦態勢でいたにも関わらず無視されて肩透かしを食らった要塞要員共々無事であったのだ。
おまけにシリウス恒星系にて第一重雷装駆逐隊を拿捕しようとして交戦した次元航行艦『サンタフェ』以下五隻の次元航行艦部隊の生存者である小鳥遊ホシノと梔子ユメが現在、東京湾内にて停泊している晴風型重雷装駆逐艦沖風にて拘束されていたのだ。
これ以上無駄飯食らいを抱え込んでいる余裕は地球連邦には無いし、処罰はこちらに任せるとクロノ・ハラウオンから言質を取っていたこともあって、拘束した者たちの中でも特に危険が高い者を中心に入国禁止命令をしてから送還したほうがいいということになったのだ。
当初、これを上申した束であったが、当初、束の予測では彼らは地球連邦の法律を破ったのだから、そのまま強制送還で終わりなんて甘っちょろい処分を反対されるかと思った。
しかし、束の予測とは裏腹にまさか連邦政府上層部がそのまま束の上伸を採用するとは思っていなかった。
まぁ、連邦政府としても終戦の混乱期でもあるし、下手に収監したままにしたり処刑したりしたら国際問題になるかもと扱い兼ねていたこともあって、渡りに船であったのだが…。
「わ、分かりました」
「なんか、ごめんね。後処理を押し付ける感じになっちゃって‥‥」
「い、いえ‥そんな事は‥‥でも、その捕まった局員からこの地球の情報が洩れるって事はないでしょうか?」
捕虜になった局員たちはもう一つの地球の情報を得ようと侵入して来た輩だ。
彼らがミッドチルダに戻れば自分たちが得た情報を嬉々として報告するに違いない。
もしも、その報告の中にこの地球に対して不利な情報が入っていたら、管理局はこの地球に侵攻するのではないかと言う不安がフェイトにはあった。
暗黒星団帝国との戦争に勝ったとは言え、今の地球は疲弊している。
そんな中で管理局からの侵攻を受けた時、この地球は管理局に対してどう対応するのか?
管理局員である自分が本来ならば縁も所縁もないもう一つの地球を心配するのは妙であるが、次元漂流した自分たちを温かく迎えてくれた恩がこの地球にはある。
だからこそ、自分が所属している組織がこの地球に迷惑をかけるのは何としても防ぎたかった。
「うーん‥その辺は大丈夫だと思う。彼らは正確な地球の座標を掴んでいる訳ではないし、せいぜい収監された要塞の座標くらいだろうね。まぁ、仮に時空管理局がその要塞を攻略してこの地球の情報を得ようとした時は‥‥」
「し、した時は‥‥?」
「軍は全力を持ってソレを排除するだけだし」
「‥‥((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
束は微笑を浮かべているがその目は決して笑っておらず、管理局がこの太陽系に侵攻して来るならば、容赦なく排除する気満々なのだとフェイトは悟った。
さて、それから数日後‥‥
暗黒星団帝国による地球占領を跳ね返してから二回目の交信が行われることとなった。
「ええい、またか?またメンテがあったとでもいうのか?」
ところが、再び防衛軍側が通信回線を開くのに手古摺っていた。
「いやいや、今度は通信システム自体を取り換えたらしくて‥‥」
ディアーチェは前回同様にシステムメンテナンスかと束を問い詰めたが、今回は通信機器そのものを総取り換えを行ったらしく、束にも連絡が来ていなかったのだ。
その原因は北野たちが行った司令部潜入作戦の際、通信機器を一度全て破壊してしまった事が影響している。
その為、説明書片手に束が操作していた。
その間、フェイトは昨日の出来事を思い出していた‥‥。
捕虜を一緒に連れて帰ってほしい旨を伝えられた後、本局との久々の交信の際に誰が出席するのかという話になったが…。
「私は今回辞退しようかと思います」
「え!?ど、どうして?ティアナだって久しぶりにミッドのみんなと会いたいでしょう?」
ティアナが交信の出席を辞退したのだ。
理由を聞いたがフェイトとしてもある意味納得する理由だった。
「それはそうなんですけど、私は結構雰囲気が変わったってヴィヴィオからも言われまして‥‥なのはさんもその点については気づく筈です」
「うん、そうだろうね」
「当然、なのはさんは私にどうしてそうなったのかを問い詰められたら雰囲気が最悪になってしまいます。折角の交信再開がそんな空気が悪いのはヴィヴィオたちにも可哀そうですから」
そう、ティアナや神堂、シャルロットはパルチザン活動に参加して質量兵器を用いた実戦‥すなわち命の奪い合いを経験した‥所謂戦場帰りだ。
良くも悪くも管理局にいた頃よりも雰囲気が大きく変わった。
何かと鋭いなのはのことだ、必ずティアナに聞いてくるし、事実を知ったら絶対に揉める。
それは神堂とシャルロットも似たようなものだ。
その為、ティアナや神堂、シャルロットは今回の交信では体調不良と言う出まかせで誤魔化すことになった。
シルビアは『お二人の再開の場を邪魔するわけには‥‥』とティアナと同じくヴィヴィオとなのはのために今回の交信を辞退した。
まぁ、ヴィヴィオとアインハルトもだいぶ雰囲気が変わったし、少し違和感があるかもしれないがティアナたちと異なり、戦場体験をしたと言っても彼女たちが殺し合いに参加した訳ではない。
そう思っていると、束がようやく準備を終えたらしく合図をしてきたので意識を切り替えた。
同時刻 管理局 本局
先日、防衛軍側が管理局へ伝えた日時と時間に通信を知らせるアラーム音が鳴る。
オペレーターは早速通信回路を開く。
モニターには先日、交信を入れた束とディアーチェの姿が映し出される。
『地球防衛宇宙海軍 内惑星艦隊司令官兼宇宙戦艦武御雷艦長の月村束です』
『同じく地球防衛宇宙海軍 内惑星艦隊副司令官兼宇宙戦艦武御雷副長のディアーチェ・K・クローディアである』
「こちら時空管理局本局です」
とまぁ、形式上の挨拶やらを終えたが、
「フェイトちゃん!!ヴィヴィオ!!それにアインハルトちゃん!」
「久しぶりなのは」
「なのはママ久しぶり!!」
「お久しぶりです」
管理局側のモニターにはなのはがモニターに食いつく勢いでフェイトとヴィヴィオ、アインハルトに声をかける。
なのはは本来勤務日であったがわざわざ有給を使ってまで駆けつけてきたのだ。他には非番だったスバルや責任者のクロノがいるが他の面々は三回目以降になりそうだという。
フェイトはそんな、なのはにちょっと引き気味なのだが、ヴィヴィオに関してはなのはに笑みを浮かべながら手を振り、アインハルトは一礼する。
「暗黒星団帝国に地球が占領されたってはやてちゃんから聞いて物凄く心配したんだよ!?ケガとかしなかった!?」
「えっ?あ、ああ‥うん‥‥ダイジョウブダッタヨ」( ̄▽ ̄;)
フェイトとしては、ティアナたちがパルチザン活動に参加するし、ヴィヴィオとアインハルトはヤマト艦内で敵の工作ロボットや操られた軍人と格闘戦やらかすはで気が引けるが今言うべきことではないと誤魔化した。
「あれ?フェイトさん、ティアはどうしたんですか?今日来てないんですか?」
スバルが交信の席にティアナが不在事に気づき、フェイトにティアナの事を尋ねる。
「ああ、ティアナは神堂さんやシャルロットさんと一緒に風邪を引いちゃって…シルビアが面倒を見てくれているよ」
「ええ!?ティアが風邪!?」
スバルとしては久々に話したかったティアナがいなかった上に風を引いたという話は驚いたが、当人たちが居ないので納得するしかない。
「そっか‥そっちの地球が暗黒星団帝国に占領されている時、フェイトちゃんもヴィヴィオも大丈夫だった?収容所みたいなところに連れて行かれなかった?」
「うん。情報管制や夜間の外出禁止とかはあったけど、比較的に自由に過ごせたよ」
「ヴィヴィオたちは平気だった?怖いことはなかった?」
「うん!いろんな宇宙の気象とかを見れたよ!!リオやコロナにも見せたかった!!」
「えっ?」
ヴィヴィオの返答になのは唖然とする。
なのはとしてはヴィヴィオとアインハルトも地球にいたのだと思っていたが、何故か宇宙の話が出て首を傾げた。
「ああ、二人はヤマトに乗って暗黒星団帝国の本星への殴り込みに同行したんだよ」
束がなのはにヴィヴィオとアインハルトが暗黒星団帝国戦役時、何処にいたのかを説明する。
「「ええええーーーー!?」」
なんと二人があのヤマトに乗って地球を占領した敵の本星までの航海に同行したと聞いて驚愕することとなった。
「ヴィヴィオ、本当に大丈夫だったの!?危険な目に遭わなかった!?」
流石に育ての親として警戒しなければならず、なのははヴィヴィオに問いただす。
「だ、大丈夫だよ~」
「はい。あれは人生において貴重な体験でした」
ヴィヴィオもアインハルトもなのはが心配するような事態にはなっていない事は、モニター越しとなるが、今のヴィヴィオとアインハルトの様子を見れば一目瞭然であった。
結局、今回の交信は顔合わせの回となり詳しい送還交渉は次回以降と言う事になった。
その日の午後
海鳴市 月村邸
「ディアーチェ!宴をやりに来たぞ!!」
八神・リインフォース・シュベルトが一升瓶片手に同僚数名と乗り込んできた。
「どわぁ!?シュ、シュベルトか!?」
「「えっ!?シグナムさん!?」」
ディアーチェ以下、既に慣れている面々は相変わらずという雰囲気という感じだが、ヴィヴィオとアインハルトは初対面な為、シグナムと間違えた。
「相変わらずですな、シュベルト殿」
彼女と共に入って来たのはハロウィンイベントの際に会った『イェジー・サンダーク宇宙海軍中尉』である。
「お久しぶりですな、月村一佐。このたびは敵本星撃破、おめでとうございます」
「ああ、これはどうも」
彼は束に挨拶するとともに敵本星撃破の功績をたたえていた。
ヴィヴィオとアインハルトはシュベルトがシグナムのそっくりさんだと思い至ると先ほどまで行っていたストライクアーツの練習をリンネ・ギンガ・昴・箒と再開した。
すると‥‥
「ほう。格闘技ですか、実に興味深い」
「そう言えば中尉はユーラシア管区の軍格闘技に精通しているんだったな」
「ええ、システマなどの軍隊格闘術はある程度」
サンダーク中尉はユーラシア管区のロシア軍区出身であり、軍人の家系に生まれた。
そのためか軍隊格闘術に幼い頃から精通しており、賞を授与されることもあった。
「どれ、では少し参加させてもらってもよろしいだろうか?」
「え!?わ、分かりました!」
ギンガは驚いたが、地球の格闘技に興味もあったし、サンダーク中尉の方が軍での経歴は先輩なので断るわけにはいかなかった。
「では、開始の合図を‥‥」
カーン!
合図代わりの鐘の音を合図にギンガは一気に距離を詰め、腹に一発見舞った。
しかし‥‥
(えっ!?)
「ふっ‥‥」
サンダーク中尉に見舞った一発が異様に軽いものになったことに驚いたギンガの一瞬の隙を突いてサンダークは腕をつかんで一気に投げ返した。
「がはっ!?」
「一撃入れる際のスピードは素晴らしいものだな。だが、驚いて止まってしまうのは減点だ」
「そこまで!!」
その後、ギンガやヴィヴィオとアインハルト、それにフェイトたちも今の技はどういうわけか聞いた。
「先ほどの技は、システマという」
システマとはロシア軍特殊部隊の隊員教育メソッド。様々な戦闘状況を想定した実践的格闘術である。
システマは呼吸法と脱力による特殊な方法で受けた衝撃を極限まで散らし、ダメージを無効化するのだ。
まぁ護身術の側面が強いが‥‥
昴とリンネは勿論の事、ヴィヴィオとアインハルトは地球の格闘術にも興味を惹かれることになったのは言うまでもなかった。
次回 修羅場
次話の前に新登場人物設定を投稿します!
更新時間は何時がいいですか?
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