内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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今年もよろしくお願いします!


第百五十三話 最後の交信

フェイトたち‥管理局員たちのミッドチルダへの帰国が近づく中、束とディアーチェが旧列強各国に振り回されつつ護衛艦艇の手配を行っていた中、リンネがデバイスを受け取るという騒動があった日の翌日‥‥

 

現時点では管理局との最終確認を含めた最後の交信(送還の打ち合わせ)が行われていた。

 

今回の交信では、地球側から束とディアーチェ、千冬の他にティアナとフェイトが参加し、管理局側にはクロノやリンディ、はやて、スバルが参加していた。

 

今のところ、管理局側の艦の運用を指揮するのはクロノに内定していることから確認事項をその場で確認できるようにクロノは管理局員らの帰還交渉役として参加しており、リンディは今後の地球連邦と管理局との交渉役として同行する事なり、はやての艦は護衛の名目でクロノの艦と共に赴く予定であることから同席していた。

 

なお、はやてがなのはの代わりに居る理由は他にもあり、なのはが交信の席に居たら、ティアナと通信越しでもまた顔を合わせたら喧嘩になってしまう可能性が十分にあるので、ある程度は冷静に対話できるはやてがなのはの代理で来ていたのだ。

 

勿論、今日の交信の後、その内容をはやてはなのはに伝えるつもりであった。

 

前回のなのはとティアナとの口論の中、交信の席での空気はバチバチとした緊張感が漂い、本来の交信内容を伝えにくい空気となってしまったので、今回なのはを交信の席に呼ばなかったのはある意味で正解であったのかもしれない。

 

ただ、この後でなのはは今日の交信の席に出席しなかった事を後悔する事になるとは知る由も無かった。

 

一方でスバルに関してはティアナからの要望もあったので、今日の交信の席には出席していた。

 

「では、そちらがこの宙域に到着できる日程から考慮して一週間後と言う事で‥‥」

 

『はい、確認しております』

 

束とクロノが日程の最終確認をしていた頃、はやてはティアナの変わりように内心動揺していた。

 

(うわぁ~‥なのはちゃんに見せてもらった写真を見てある程度は覚悟しとったけど、確かに今のティアナ、めっちゃインパクトがあるわ‥‥なんかシグナムに通じるような見た目や‥‥)

 

はやてはなのはに前回の交信の際におけるティアナの顔写真を見せてもらっていたので覚悟していたが、写真で見るのと映像越しとはいえ、実際に見るのとは違うと思いつつ自分の知るティアナとは別人のような凄みを感じていた。

 

『あっ、それとこちらにいる女性が今回の送還の際に管理局側の護衛として艦を指揮する八神はやて艦長です』

 

「お久しぶりですね。八神艦長」

 

『あっ、はい!それとシリウス恒星系で内惑星艦隊旗艦にもお会いしました』

 

「あ、あの艦の‥‥」

 

はやてと束は以前会っていたので、束は軽く挨拶したがシリウス恒星系での演習の際に出てきた管理局艦の艦長であったのかと思った。

 

『いや、あの艦に同乗していただけですので‥‥あの時は、わざわざこちらの要望で艦名を教えていただきありがとうございます』

 

はやてはあの時の要望に応えてくれたことに感謝したが、束は問題ないと流した。

 

一応、はやてとも座標と日程の再確認をしつつ、通達事項があったことを束は思い出した。

 

「ああ、忘れるところだった。今回の送還に際してこちらも複数の艦が同行することになっているのでご連絡しておきます」

 

『複数の艦ですか?』

 

クロノはわざわざ連絡することかと頭を傾げたが、

 

「はい。アメリカやロシア、欧州等の艦が同行しますので一応‥‥」

 

そう。あの後、各国が総動員で調整を行った結果、他の艦も同行することになったのだ。

 

 

・北米管区 アリゾナ級護衛戦艦『アリゾナ』

【挿絵表示】

 

・ユーラシア管区ロシア軍区 金剛改型装甲巡洋艦『モスクワ』

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・欧州管区イタリア軍区 ドレッドノート級主力戦艦丙型『イタリア』

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・欧州管区ポーランド軍区 金剛改型装甲巡洋艦『ワルシャワ』

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・東南アジア管区タイ軍区 金剛改型装甲巡洋艦『トンブリ』

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・内惑星艦隊総旗艦 春藍級簡易型戦略指揮戦艦『武御雷』

【挿絵表示】

 

・ホワイトハンター級大型戦艦『ホワイトハンターⅠ』

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・コロンブス級多目的輸送艦『氷川丸』

【挿絵表示】

 

・秋月型突撃駆逐艦 『チャールズ・F・アダムズ』 『グロームキイ』

【挿絵表示】

 

・伊14型次元潜航艦 『伊16』

【挿絵表示】

 

 

また、ホワイト艦隊からはホワイトハンター級のホワイトハンターⅠが同行し、束とディアーチェは整備が終わった武御雷で同行するのだ。

 

これだけの艦に加えてコロンブス級輸送艦で他の局員を輸送することになる。

 

これでは何も知らない管理局側が錯乱して誤射しかねないので、事前に打ち合わせておかなければいけない。

 

『な、なるほど‥‥』

 

(これって地球側の意思表示かしら?下手なことをしたら容赦しないという‥‥)

 

リンディは深読みしていたが、束としても内心頭を抱えていたのだ。

 

なんせ、ポーランド軍区とタイ軍区の艦、そしてホワイトハンター級一隻と自身の乗艦である武御雷だけで行こうと考えていたのだが‥‥

 

「ちょっと待ったぁ!!北米管区からも出す!!」(アリゾナ級一番艦アリゾナの整備・点検と駆逐艦一隻が何とか間に合ったぁ!!)

 

「何おう!!我がユーラシア管区ロシア軍区からも出す!!」(独自艦は間に合わなかったから金剛型の改良型の装甲巡洋艦と駆逐艦で代打ということにしよう‥‥)

 

何と面子を気にした北米管区がドック整備員たちを総動員して整備点検が八割方完了していたアイロ艦長の乗艦である『アリゾナ』の整備を無理やり半日で間に合わせ、ユーラシア管区ロシア軍区は北米管区に負けられないとシベリアの地下都市にあった宇宙艦艇ドックにて整備中で無傷だった金剛改型装甲巡洋艦『モスクワ』に新任の艦長を配置して間に合わせたのだ。

 

おまけに欧州管区内でも目立っていなかった欧州管区イタリア軍区も波動砲部分が破損していたドレッドノート級戦艦『イタリア』を防御力強化型の丙型に修理ついでに改装して間に合わせたのだ。

 

これには流石に断れなかったので、受け入れざるを得なかった。

 

その結果、艦が増えること自体は護衛戦力が多くなるので問題にはならなかったものの、地球連邦内でもいまだに強力な派閥である北米管区とユーラシア管区ロシア軍区の思惑が交差するような艦隊編成になってしまったのだ。

 

この列強諸国の強引な横槍のせいで極東管区からも虎の子の次元潜航艦一隻を同行させるしかなくなった始末である。

 

※ちなみにイタリア軍区やポーランド軍区、タイ軍区は癒し的な存在として扱われていた。

 

(いや、これ絶対砲艦外交になるじゃん‥‥)

 

(止めてもあの二国は絶対に聞かんからなぁ‥‥)

 

束・ディアーチェ共に内心、冷戦の時代から地球情勢を引っ掻き回す両大国の存在に頭を抱えていた。

 

時空管理局・地球連邦、双方共に組織・国家内で交差する思惑で互いに深読みする事態になったが、特に表立って問題にはならなかった。

 

それはともかくということで、ティアナとスバルの話し合いの時間が持たれた。

 

「この前の交信じゃあ、あんな空気にしちゃって悪かかったわね、スバル」

 

『う、うん‥‥』

 

この前のなのはとの口論もあるが、やはり雰囲気が変わり過ぎるティアナにタジタジとなるスバル。

 

「まぁ、今のアンタが思っている様に変わり過ぎている私と話辛いと思うけど、前はなのはさんと口論になって、アンタと沢山話せなかったら、今日は改めて来てもらったのよ」

 

『い、いいよ。気にしていないから‥‥それにティアがミッドに戻れば色々と話しをすることも出来るし‥‥』

 

ティアナはまずスバルに謝罪したが、スバルはティアナがミッドチルダに帰ってきたら沢山話せるから大丈夫と言った。

 

それを聞いたフェイトとティアナ本人は少し申し訳なさそうな表情をした。

 

「その‥ことなんだけどね‥‥スバル、ハラオウン提督‥‥」

 

『ん?』

 

『なに?ティア』

 

「私、ティアナ・ランスター及び神堂慧理那、シャルロット・デュノアの三名は本日付で時空管理局を辞職します。そしてミッドチルダには帰還せず、こちらの地球に残留する事を決めました」

 

『『『『はぁ!?』』』』

 

「退職届けはフェイトさんに預けますので、フェイトさんがミッドチルダに帰還後はそちらで受理して下さい‥‥」

 

『いや、いや、いや!!ちょっと待ってよ!!ティア!!もしかして、前の交信でなのはさんと喧嘩したせいなの!?それなら、あたしも一緒になのはさんを説得するから!!』

 

さらっとティアナが発言した内容にクロノやリンディ、はやて、スバルは驚愕した。

 

その中で特にティアナとは訓練校~機動六課を共に過ごしたスバルは驚愕したせいか動転して喧嘩が原因かと思って頓珍漢なことを言い出した。

 

「あ、あのねぇ~流石にそんな子供みたいな理由な訳ないでしょうが‥‥」

 

これには流石のティアナも毒気が抜けた返答をした。

 

ミッドチルダに戻らない理由が、『なのはと口論をしたから』 なんて家出少女みたいな理由で戻らない訳がない。

 

「これは前々から私たち三人で考えていたのよ。それで、フェイトさんたちの帰国が近づいたから私たちは決心したのよ」

 

『え、えっと‥‥フェイト?これはどういう事かしら?ランスター補佐官が言っているのは事実なのかしら?』

 

ティアナの発言にリンディは困惑しつつ、義娘でもあるフェイトに尋ねる。

 

「はい」

 

『これは本当に彼女たちの意思なの?』

 

「ええ。私も何度か確認をしましたが、三名の意思は固いみたいです。ランスター補佐官たちはミッドチルダへの帰還を望まず、この世界への残留を希望しています」

 

一応、公的な場なのでフェイトは落ち着いた態度でリンディに報告する。

 

『と、止めなかったんか??フェイトちゃんは!?』

 

管理局員であり、一陸士から執務官補佐と言う準エリートにまで上り詰めたにも関わらず地球へ残ると言う選択したティアナと管理局員として誇りを持って働いていたはずの二名の行動に理解できないはやては割り込む形ではあったがフェイトに聞いた。

 

「私だって止めたよ。でもね、三人ともしっかりとした理由があったし、何度説得しても意思が固かったから‥‥」

 

『そ、そうなんか‥‥』

 

(参ったなぁ~まさか、ティアナがミッドに戻って来へんって‥‥)

 

(なのはちゃんになんて説明したらええんや‥‥)

 

はやてはフェイトの姿勢にしっかりと説得したが、それでも残留の意思を曲げずにミッドチルダへの帰国を拒んだことを察して、引き下がった。

 

そして、交信後になのはへの説明について頭を抱えたくなった。

 

これがフェイトではなく、なのはだったら、パルチザン活動への参加はもとよりミッドチルダへの帰還拒否なんて、ディバインバスター‥いや、スターライトブレイカーを打ち込んでも止めただろう。

 

『ね、ねぇ、ティア。どうしてもミッドに還ってこないの?ティア、執務官になるのが夢だったんでしょう?もうすぐで念願の執務官になれるのに‥‥』

 

リンディとはやがフェイトと行ったやり取りを見ていたスバルであるが、彼女はやはり諦めきれないのかティアナの説得を試みる。

 

「ええ、今日アンタを呼んだのもこうして最後に会って話をする為よ。それに管理局の執務官の資格なんてこの広い宇宙‥次元の海じゃあなんの役にも立たない事が身に染みて分かったのよ」

 

『そ、そんなっ!?‥‥じゃ、じゃあ、もう二度と会えないの‥‥?』

 

「‥‥そうね‥ミッドとこの地球が国交を結ばない限りはね‥‥でも、それは難しいと思うわ」

 

『‥‥』

 

“陸”所属のスバルも今、ティアナが居る地球とミッドチルダが将来的に国交を結ぶのは難しい事なのは何となくだが察している。

 

そもそも、地球は科学技術のみで発展してきた国家な上に星間国家としてはかなりずば抜けた戦力を有している。

 

片や時空管理局は魔導科学で発展し、多数の管理世界(実質は植民惑星)を有した巨大組織。

 

地球連邦が管理局を‥ミッドチルダを国家として扱うかは不透明な上に、時空管理局も魔導技術を用いない世界(星)に対してはかなり傲慢な体制だ。

 

それは“海”に所属しているハラオウン親子、はやても理解している。

 

本音を言えば、国交は結びたい。

 

しかし、それは対等な国交でなければならない。

 

管理局が魔導技術は無く、高度な質量兵器・科学技術を有するこの地球を対等な国家として認めるか不透明な状況だ。

 

「だから、スバル‥‥今日は時間が許す限り目一杯、語り合いましょう」

 

『う、うん‥‥』

 

その後、ティアナとスバルは実質これが最後の話の場ということで制限時間ギリギリまで語り合い、交信を終えることになった。

 

しかし、これが今生の別れとなるとスバルもティアナも本人たちが自覚のないまま目には涙を溜めていた。

 

そんな二人の様子を見て束やディアーチェは少し申し訳ないと思っていた。

 

暗黒星団帝国の襲来が無ければ、もっと早い段階でフェイトたちをミッドチルダに帰国させていた筈だし、ティアナたちはパルチザン活動に参加する事も無く、人を殺す事も無かった。

 

それか暗黒星団帝国襲来前に帰国の準備が整っていれば、ティアナたちはきっと地球への残留を希望せず、フェイトたちと共にミッドチルダに帰還していたかもしれない。

 

束としては前世の記憶を持ちながらも、暗黒星団帝国襲来前にフェイトたちを帰国させることが出来なかった事を悔やむ。

 

ティアナとスバルが今生の別れをしている中で、束はクロノに話しかける。

 

「ハラオウン提督」

 

『なんでしょう?』

 

「捕虜となった局員たちはどう対処するか分かりませんが、ハラオウン執務官たちがミッドチルダに戻った際、そちらの監察部のような部署からの事情聴取が予測されると思うのですが‥‥」

 

『ああ、確かにそれはあり得ますね』

 

クロノ自身も束から話を聞いて管理局が帰国者にはこの地球に関する情報を引き出そうとするだろうと判断する。

 

「捕虜となった局員たちに関しては、地球から受けた屈辱を晴らすつもりで嬉々として情報提供をするでしょう。しかし、彼らは収容された要塞以外の情報はほとんど持っていません。よって彼らよりも地球の情報を持っているのは‥‥」

 

『フェイトたち‥と言う事ですね』

 

「はい。ハラオウン執務官はハラオウン提督らの親族と言う事で彼らも手荒な真似はしないと思うのですが‥‥アライアンスさんに関しては‥‥」

 

束はシルビアの身を案じる。

 

『‥‥』

 

シルビアは次元航行艦の一オペレーターであり、家柄もクロノのような高魔力の魔導師・管理局員のエリート一家とは言えない、ごくごく平凡な家庭出身者の管理局員‥‥

 

魔導レベルも平均だ。

 

ヴィヴィオに関しては養女とは言え、管理局のエース・オブ・エース、高町なのはの親族であり、未成年者‥‥

 

アインハルトも未成年者であり、管理局高官の八神はやてとも親しい間柄で若干手出しがしにくい存在だ。

 

ヴィヴィオ、アインハルト、フェイトに手荒な真似が出来ず、もう一つの地球に関する情報が引き出しにくいとなると、管理局はシルビアをターゲットにする可能性が高い。

 

「彼女の身の安全の保障をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

『管理局がそこまでの事を‥‥と、言いたい所なのですが、この地球の情報‥となると、多少手荒な事をしてでも得たいと思う部分はありますね‥‥分かりました』

 

束たち地球側としても管理局側に地球の情報を与えて太陽系に管理局からちょっかいを出されたくはない。

 

なので、クロノにシルビアの身の安全を保障させた。

 

しかし、クロノがシルビアの事を全力で守ってくれる確約保証はないのだが、此処はクロノを信じるしかなかった。

 

そして、つつがなく管理局との最後の交信は終わった‥‥

 

 

はやては交信の後になのはに説明するために本局内の通路を歩いていた。

 

そしてなのはやスバルのためにもう一つの地球と何とか国交を結べないか思ったが‥‥

 

「もう一つの地球と国交を何とか結べたら‥‥いや、無理やな」

 

即座に無理と思い至った。

 

「せめて、未成年者の労働については文化の違いと言う事で説明し理解を求めていけばなんとかなったかもしれへんけど、通信ポッドを弄ったり、無断で向こうの地球へ艦を派遣した件、おまけに地球の艦に対してアルカンシェルを発砲した件については擁護出来へんな‥あの二つの件がなければワンチャンあったのかもしれへんのにな‥‥」

 

管理局、管理世界において未成年での就労に関して文化が異なるので、もう一つの地球に関しては説明しそれについて理解してもらうほかない。

 

実際に地球でも発展途上国等では未成年でも就労している子供はいるし、日本でも明治時代の初めは未成年者の就労・結婚は普通にあった。

 

地球防衛軍は専守防衛を概念においているので、もう一つの地球である地球連邦政府が管理局や管理世界に対して自分たちの理念や法を押し付ける事はないだろうが、管理局は自分たちが決めた法律や概念を押し付ける傾向があるので、もう一つの地球と国交を結べばきっと管理局は自分たちの方が上の立場だと決めつけ、もう一つの地球に対して管理世界の法律や概念を押し付けるだろう。

 

もう一つの地球‥地球連邦政府及び防衛軍はそうした管理局の横暴さに対して不信感を抱いているのだろう。

 

これではすぐに国交を結ぶのは不可能だ。

 

まぁ、はやては知る由もないが、地球連邦には現状宇宙における外交官がほぼいない上に国交・条約を結んだ経験もないために即座に国交を結ぶことには二の足を踏む状況なので、余計にややこしい状況になり果てかねない。

 

この後のなのはへの説得にも気が重い上にはやてには別の気が進まない事案があった。

 

それは最後の交信終了後にリンディから、

 

『はやてさん』

 

『なんでしょう?』

 

『可能なら地球側の艦艇をしっかりとデータをとっておいてくれる?』

 

『は、はぁ‥‥』

 

『でも、正確な報告は私やクロノ、レティにのみでお願い』

 

『えっ?ええ、まぁ構いませんけど‥‥』

 

そう言われたのだ。

 

元々、ある程度のデータ収集はするつもりだったので問題は無かったが、リンディもはやて同様、地球側の艦船データを欲しがるのには理由があった。

 

『地球側は私たち時空管理局の次元航行艦を拿捕したり回収したりしているでしょう?』

 

『ええ‥‥あっ、もしかして‥‥』

 

はやてはリンディの言葉にある可能性に思い至った。

 

地球の艦隊がこれまでの管理局の行動を地球に対する侵略行為と捉え、暗黒星団帝国を崩壊させたように、地球が占領される前‥管理局が太陽系に対して大規模な侵攻をする前に次元世界へ大挙して攻め込んでくる可能性を抱いた‥‥

 

それが知れたら、強硬派が何をしでかすか分からない。

 

現時点で地球側がこの次元世界へ来る事が出来る性能を持つ艦を有しているのか?

 

それをリンディは知りたかったのだ。

 

『そういうこと‥向こうの随伴艦に関してだけど上層部への報告は『護衛艦がいた』程度に済ませて頂戴』

 

『わ、分かりました‥‥』

 

リンディから極秘の頼まれごとを託されたはやてであったが、

 

(もう一つの地球がミッドに対して侵攻‥‥は、考えたくもないけど、これまでの管理局の行動から絶対に無いとは言い切れへんけど‥‥)

 

(それにリンディさんが言う通り、向こうは管理局の次元航行艦を鹵獲・回収しておるから、当然航海ログとかは解析している筈やから、次元世界に来る可能性は充分にある)

 

(ただそれが、侵攻やのうて調査‥開拓の可能性もあるが、そこで管理局の次元航行艦と鉢合わせでもしたら‥‥)

 

次元世界で管理局の次元航行艦と地球の調査船団がもしも鉢合わせとなった時、穏便に済むかという疑問もはやてにはあった。

 

管理局側は次元世界全てを管理局の領海と認識しているので、地球の調査船団を拿捕するに決まっている。

 

地球側が管理局によって、調査船団が拿捕されたと知れば今度は奪還のために調査ではなく武装艦が次元世界に送り込まれてくる‥‥

 

そうなれば、もう一つの地球と管理局との武力衝突に発展しかねない。

 

(仮に次元世界で地球の調査船団と鉢合わせした際は、穏便な対応をするように徹底せなあかんな‥‥)

 

(地球の船なら、対話で十分に理解してくれる筈やし‥‥)

 

はやてが、リンディからの密命、そして管理局のこれからの事を考えていると、

 

「はやてちゃん」

 

「ん?あっ‥‥」

 

はやてに声をかける人物がおり、彼女が振り向くとそこにはなのはの姿があった。

 

(な、なのはちゃん‥‥!!)

 

「はやてちゃん、もう一つの地球との交信はもう終わったの?」

 

「えっ?ああ、うん。ついさっき、終わったところや‥‥」

 

(ヤバッ、なのはちゃんにティアナの件をどう伝えるかまだ考えておらんかったのに、まさかのなのはちゃんとカミングアウトしてしもた‥‥)

 

「それで、いつフェイトちゃんたちが戻って来るのか分かった?」

 

「うん、今日の交信はもう一つの地球と最後の交信で、フェイトちゃんたちの帰国日時を決める内容やった‥‥」

 

「そう‥それで、いつフェイトちゃんたちは戻って来るの?」

 

この時、なのははフェイトたちと共にティアナも当然、ミッドチルダに戻って来ると思っていた。

 

「フェイトちゃんたちは‥‥」

 

はやてはとりあえず、フェイトたちの帰国日時を伝える。

 

「そう‥とりあえず、フェイトちゃんたちが戻って来たら、ティアナとはたっぷりとO・HA・NA・SHIをする必要があるからね‥‥」

 

この時、なのはから黒いオーラが出ているように見えたはやてであった。

 

しかし、その黒いオーラは、この後のはやての言葉で引っ込むことになるのだった‥‥

 

 

一方、その頃月村邸では‥‥

 

「星奈ちゃん?どうしたの??」

 

やや深刻そうな表情をした星奈がリニスとギンガの下を訪れていた。

 

「リニスさん、ギンガさん。私のルシフェリオンにも大人モードを搭載して頂けませんか?」

 

「「ええ!?」」

 

星奈がある野望を抱えてリニスとギンガに唐突なお願いをしていた。

 

彼女の頼みを聞き、リニスとギンガは唖然とした表情を浮かべるのであった。

 

 




次回 別れと対面へ向けて
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