内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百五十六話 氷川丸救出作戦

時空管理局との外交交渉と捕虜・救助者の送還に関する会議中に突如として発生した氷川丸に対するスペース・ジャック。

 

ロシア組は交渉に来た時空管理局側の仕業かと疑ったが、物理的、戦術的にそんなことは無く、捕虜として収監されていた一部局員の独断であるという結論に至った。

 

兎にも角にもまずは事態の収拾‥氷川丸乗員の救出と反乱の鎮圧が最優先となり、地球連邦防衛宇宙海軍と時空管理局による初の共同作戦が実施されることとなった。

 

 

武御雷 中央作戦室

 

※宇宙戦艦ヤマト2199にて登場した中央作戦室をイメージしてください。

 

「では、これより氷川丸救出作戦について説明する」

 

ディアーチェが救出作戦の概要の説明を始めた。

 

「まずは管理局の者たちによる説得を行うこととする」

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「ん?何だ?」

 

ディアーチェの言葉にまずアイロが口をはさんだ。

 

「テロリストと対話の必要なんてあるの?」

 

「「「ちょ!?」」」

 

アイロの暴言に特別に入室が許可されたリンディとクロノ、はやては慌てた。

 

いくらスペース・ジャック事件を起こしたとはいえ、氷川丸を占領しているのは自分たちと同じ時空管理局の局員だ。

 

説得で解決できるのであれば説得で解決したいという思いがあったのだ。

 

「まずは交渉を行うことが前提ではないでしょうか!?それに何故こんなことをしたのか彼らの目的を確認しなければなりません!!」

 

クロノがそう言うが、アイロとカチューシャは息ぴったりに、

 

「「テロリストとは交渉の必要なし。テロリストとの戦いは戦争である!!」」

 

と言い放った。

 

これはテロリストと長年戦った過去を持つ米露の共通認識だったのだ。

 

「ま、まぁ。テロリストの要求には屈しないという姿勢はいいと思うけども、一旦抑えてくれない?」

 

束が二人の考えに一定の理解はしつつも両者を抑えた。

 

「というか、二人とも副長は?副長の出席も要請したはずだけど?」

 

束は他の艦の艦長らが副長を連れてきていたにも関わらず、米露の艦は艦長と戦術長しかいなかったので気になっていた上、嫌な予感がしたので聞いた。

 

「サラの事?サラなら伊16にデルタフォースと一緒に乗り込んでいるわよ?なんか『私のトミーガンが火を噴く機会があるかもしれませんね‥その時はこの私の手で45口径神話を証明してあげます』って言いながら怖い顔して伊16に移乗したけど?」

 

「うちのノンナも伊16に乗り込んでいたわね?どこから持ってきたのかAK-47を磨きながら『カラシニコフ神の裁きを下せるとよいのですが‥‥』ってブツブツ呟いていたけど‥‥?」

 

((絶対、銃撃戦やらかす気だ‥‥))汗

 

サラ・ダグラスは元々、艦内にトミーガンことトンプソンサブマシンガンである『トンプソンM1/M1A1』を私物として持ち込んでおり、時折艦内の射撃場で45口径弾を乱射しているのだ。

 

ノンナ・ジューコワに関してもロシアの伝説的アサルトライフルであるAK-47を筆頭にAK-74M、AK-12、AK-15等を艦に持ち込んでいたのだ。

 

そもそもこの二人が何故、伊16に移乗しているのか?

 

それは、管理局側と合流する前に時間を遡る。

 

「通信長」

 

「はい」

 

「秘匿通信でアリゾナとモスクワを呼び出して」

 

「えっ?は、はい」

 

束は秘匿通信でアリゾナとモスクワ‥アイロとカチューシャを呼び出したのだ。

 

『どうかしたんですか?秘匿通信なんて‥‥』

 

『一体何の用よ、もうすぐ時空管理局との合流なんでしょう?』

 

「その時空管理局と邂逅する前に、ちょっと御二人にしてもらいたい事があるんです」

 

『してもらいたい事?』

 

『何?まさか、機雷かミサイルでもバラ撒いておくの?』

 

カチューシャは何やら物騒な事を言っており、束は内心呆れつつ頭を抱えたい衝動になる。

 

(カチューシャ艦長はどうも血の気が多いな‥‥)

 

「いえ、デルタフォース、スペツナズそれぞれの精鋭を伊16に移乗させてもらいたいのです」

 

『えっ?デルタフォースを?』

 

『どうして伊16に移すのよ』

 

「考えたくはありませんが、捕虜の中にはどうも我々地球の事を格下に見ている者もおり、捕虜にされた事でプライドを大きく傷つけられた筈です。そんな彼らが僅かな隙を見つけた際、氷川丸を占領する可能性も捨てきれません」

 

『あいつらが?』

 

『まぁ、確かに有り得ないとは言い切れないわね』

 

「万が一、氷川丸がスペース・ジャックされた際、次元潜航艦の伊16ならば、氷川丸のレーダーに引っかからず、異次元から氷川丸に接近できます。そして、接舷した後、デルタフォース、スペツナズの精鋭を送り込んで乗員の救助と鎮圧を行ってもらいたいので、御二人が認める精鋭を伊16に移乗させていただきたい」

 

『なるほど、分かったわ』

 

『そんな事態になったら、スペツナズの精鋭があっという間にテロリストどもを鎮圧してやるわ』

 

『デルタフォースの精鋭も厳しい訓練を行ってきた精鋭よ。イワンに遅れはとらないわ』

 

『ヤンキーの出番何てないわよ、テロリストの鎮圧なんてスペツナズだけで十分よ』

 

『それはこっちのセリフよ。サボり癖があるイワンはすっこんでいなさいな』

 

『なんですって!?』

 

『あら?確か‥事実を衝かれて逆ギレかしら?』

 

『ムキー!!』

 

「ちょっと、二人とも、時間がないんだからサッサと行動に移して‥‥これ以上揉めるようなら、引き返してもらうよ」

 

『Yes Ma'am‥‥』

 

『Да‥‥』

 

束が口論を始めた二人を黙らせてさっさと実行に移すように伝える。

 

そして、その選別に互いの副長が志願したのだ。

 

とは言え、副長と言う職であり、サラもノンナもデルタフォース、スペヅナズの隊員ではないので、論外なのだが、どうも二人とも血気盛んな性格であったことや、軍人としての勘が働いたのかは分からないが、伊16にデルタフォースやスペヅナズが移乗する際に艦長を説き伏せて勝手に伊16に乗り込んだと言う。

 

これには地球側のアイロとカチューシャを除いた参加者全員が内心で嫌な予感を抱いていた。

 

「え、えっと‥話を戻しまして、まず交渉を試みて話を聞かなかったら突入。実行犯の生死は現場判断に委ねるとして、最悪主犯格は生きた状態で捕縛するように。それと反乱に参加していない局員への攻撃は一切禁止とすることや、氷川丸乗員の安全を最優先にということで‥‥」

 

「「了解!!」」

 

束が頭を抱えつつ、アイロとカチューシャにリンディたちの説得が失敗した場合の作戦を伝えた。

 

デルタフォースとスペヅナズは北米管区とユーラシア管区ロシア軍区が管轄する特殊部隊だ。

 

現場指揮官らへの指揮は二人に任せられることになっているので、釘を刺したわけである。

 

伝統的に銃社会なアメリカ…北米管区や容赦しないロシア軍区では容疑者を容赦なく射殺しかねないので、万が一に備えてである。

 

とりあえずそれで納得した雰囲気になり、管理局組は説得のための準備や通信の為に一度各々の艦に戻った。

 

作戦室に残っているのは束とディアーチェ、アイロとカチューシャの四人である。

 

「で、突入陣容は?」

 

「デルタフォースは現場指揮官に収まったサラ・ダグラス以下デルタフォース要員四名。装備は艦内戦を想定していたので、コスモガンやAK-01レーザー突撃銃、防弾チョッキにヘルメット。あとはサラがM1A1トンプソンを装備」

 

(おいちょっとまてぃ!!M1A1トンプソンって確かレーザー銃じゃなくて二次大戦頃に運用された実弾銃ではないか!?大丈夫なのか!?)

 

サラの装備を聞いて不安になるディアーチェ。

 

「スペヅナズは精鋭のアルファ部隊から選りすぐりの四名を動員。基本はデルタフォースと同じだけど、ノンナがAK-47を装備していることとヘルメットをアルティンに変更しました」

 

(って、そっちもか!?)

 

サラが実銃のトンプソンを装備しているのと同じくノンナも同じく実銃を装備している事を知り、心の中で突っ込むディアーチェだった。

 

ちなみに防弾チョッキはかつて宇宙戦艦ヤマト保安部が艦内用に装備していた物の改良型であり、アルティンは現実にてロシア特殊部隊が運用している装甲バイザーが付いたチタン製のヘルメットであるが、この世界では改良されて宇宙戦艦の船体装甲と同じコスモナイトを混合して作成されたことで現実の物よりも強固になっている。

 

「アルファ部隊を動員したというのか‥‥」 汗

 

「当り前よ。万が一会談中に何か発生したら我がロシアの名に泥が付くわ」

 

「それはステイツも同じなのだけどね‥‥」

 

それから十分後‥‥。

 

 

「貴方たちは一体何をしているのか分かっているんですか!?」

 

『やかましい女狐!!』

 

管理局側による説得が始まったのだが、予想通りというか上手く行っていない。

 

当初は援軍に来たと思い込み、リンディに地球の宇宙艦船の拿捕を手伝う様に要求していたが、まずリンディが何でこんなことをしでかしたのかある程度、穏やかに聞いたら‥‥

 

『我々を犯罪者のように扱う世界は野蛮人しかいない!!そんな奴らが居る世界は我ら管理局の管理下に置かれるべきだろう!!こいつらの世界座標や此処にある全ての船を持ちかえれば失態もチャラだ!!それどころか、大きな栄誉を手に入れることができるのだぞ!?』

 

‥‥要はこんな感じのことを言ったのだ。

 

おまけに彼らはリンディとは別の派閥‥‥強硬派の局員であり、地球で捕虜となった屈辱が暴発したので、余計に面倒になっている。

 

最も、対話の最中に相手が言い放った発言から参加しなかった低ランク魔導師の局員は牢に入ったままであることや、乗員の犠牲者は出ていないことが確認されたので、多少は安心できたが、これは事前に束が氷川丸の乗員たちの装備を非殺傷の武器にしておいた事が功を奏したのだ。

 

「今、管理局は地球連邦と貴方たちの送還について会談中だったんですよ!?それに相手方の船をジャックするとは‥‥管理局員の風上にも置けません!!貴方たちの行いのせいで、管理局の心象は最悪になりましたし、これが引き金でもう一つの地球と戦争になったらどないするんですか!?」

 

はやても普段の優しい雰囲気はどこへやら。

 

「‥‥」

 

かなり激怒していた上、後ろにいるなのはも覇気を放っていた。

 

『小娘は黙っていろ!どうせ我らを不当に裁いた上で罪を着せるつもりだったのであろうが!!』

 

なのはの覇気に気づいていないのか、そのまま暴言を吐く元艦長。

 

 

その頃‥‥

 

 

『‥‥とまぁ、現状はこんな感じ。時空管理局艦の元艦長以外の同調者は最悪殺害しても構わないから非同調者と氷川丸の乗員たちの安全を最優先にして。それと主犯である元艦長は受け答えが出来れば問題ないから生け捕りにして』

 

「Yes Ma'am!!」

 

「Да, мэм.!!」

 

管理局側の通信を傍受して、説得が失敗したものと判断した束は伊16のデルタフォース、スペツナズ隊員たちに作戦の目的を告げる。

 

「通常空間へ浮上‥気づかれない様にゆっくりとな」

 

伊16が氷川丸の艦底部にゆっくりと浮上を開始していた。

 

「や、八神艦長!」

 

「どうしたんや!?」

 

かなりイラついていたはやてにオペレーターが声を掛けた。

 

「ひ、氷川丸の艦底部を見てください!!」

 

「ん?って、あれはっ!?伊16!?‥やっぱり異次元に潜っていたんか‥‥」

 

氷川丸の艦底部近くに伊16が異次元からゆっくりと浮上し、氷川丸に接舷しかけていた。

 

 

氷川丸艦内

 

伊16は氷川丸の艦底部に接舷時、ハッチからはデルタフォースとスペヅナズアルファ部隊が次々と氷川丸の艦内に数秒で乗艦し、展開した。

 

「全員、移乗完了」

 

「よし、作戦開始!!」

 

「Roger」

 

「Да」

 

艦内に侵入することに成功した米露のデルタフォースとスペヅナズアルファ部隊は共に行動するといがみ合ったり作戦行動に支障をきたす可能性があったので、それぞれ艦の左舷側と右舷側に分かれて進行し、艦内の主要部分の奪還、氷川丸の乗員たちの救助を行う方針であった。

 

「では、我々は右舷側を」

 

「こちらは左舷側ですね」

 

デルタフォースとサラは右舷側を進んでいたが、

 

「な、なんだ!?こいつらは!?」

 

氷川丸を占拠した強硬派魔導師と遭遇した。

 

デバイスがまだ局員全員に返還されておらず、艦内の何処に収納されているのかまだ判明していなかったのか、目の前にいた局員は氷川丸の乗員から奪った衝撃銃を手に持っており、その衝撃銃を構える。

 

「下がっていなさい!さぁ!!45口径弾の鉛弾をご馳走しますよ!?」

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!!

 

 

 

「がはぁあああああ!?」

 

サラは愛用のトンプソンサブマシンガンを乱射して敢えて頭と身体は撃たずに両足と両手を撃ち抜き、魔導師を半殺しにした。

 

魔導師はデバイスが無くとも個人結界が作用したのか、幸い死亡はしなかったがかなりえらい状況である。

 

「さあ!艦橋に急ぎますよ!!イワン共に後れを取るわけにはいきませんからね!!」

 

「Yes Ma'am!!」

 

(サラ副長って怒ると怖いなぁ‥‥)

 

デルタフォースの隊員たちを鼓舞しながらサラは愛用のトンプソン片手に突き進んでいた。

 

「おっと、『ノンナさん?まさかとは思いますけど‥‥?』」

 

 

氷川丸 左舷側艦内通路

 

 

『艦内でドア破壊用爆薬使おうとか考えていませんよね?この船は艦齢が古いんですから下手なことすると空気が外部に漏れる事態が起きかねませんよ?』

 

「ちっ‥爆破は中止。普通に殴り込みますよ」

 

「了解」

 

サラが心配した通り、C97爆薬でドアをふっとばそうとしていたノンナは破壊を中止して、AK-47を構える。

 

※2197年に正式化されたプラスチック爆弾で、C4爆弾の改良発展型。

 

ガチャ!

 

 

「あっ‥‥まぁ、いいでしょう。カラシニコフの裁きの時間です」

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!

 

 

代わりにスペズナヅアルファ部隊の隊員が氷川丸のドアの鍵部分にレーザー突撃銃を乱射して、鍵を破壊。

 

そこにノンナが体当たりをしてドアから部屋に飛び込んだ。

 

「5.56㎜のお味はどうですか!?」

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

 

 

「どわぁぁぁぁぁー!?」

 

またも結界の作用で死亡はしなかったが、高ランク魔導師は一時行動不能となった上にスペズナヅ隊員たちにボコボコに殴られた。

 

※ロシア系の隊員に暴行行為を行おうとしていたタイミングであったので止む無し。

 

 

氷川丸 艦橋

 

『か、艦長!こいつらつよ‥ぎゃぁぁぁぁー!?』

 

『うぉ!?こいつらいつの間に!?へぶぅ!?』

 

「ば、馬鹿な‥‥何故、我々が魔法もロクに使えない蛮族なんぞに‥‥!?」

 

次元航行艦クライスラー元艦長は次々と上がる同志たちの報告に茫然とするしかなかった。

 

リンディやはやてたちに暴言を吐きつつも『どうせ本局に帰してくれるはずだ。手柄を横取りされたくないだけだろう』と思い込んで好き放題していたのだが、いつの間にか地球軍の兵士たちが艦内に侵入しており、艦内のあちこちから自分の考えに同意した局員たちが制圧され、折角占拠した区画も次々と奪還されているのだ。

 

それも自分たちが野蛮だと忌避し、格下に見ていた質量兵器で‥‥

 

「く、くそっ!艦橋前でなんとしても食い止めろ!!」

 

彼は残った数少ない部下にそう指示するが、

 

バン!!

 

「っ!?」

 

艦橋のドアが一気に開き、

 

「武器を捨てて投降しなさい!!」

 

いつの間にか両手にトンプソンサブマシンガンを持ったサラを先頭にデルタフォースが右舷側ドアから突入して、

 

「さぁさぁ!!5.56㎜を味わいたくなければ大人しくしなさい!!」

 

スペズナヅが長年運用し続けてきたヘビーシールドを前面に出したノンナ率いるスペズナヅアルファ部隊が左舷側ドアからほぼ同時に突入してきた。

 

慌てて艦長や幹部局員たちが応戦しようとするが‥‥

 

「「抵抗現認!!発砲許可!!」」

 

二つの特殊部隊から銃撃を受けた元クライスラー艦長らはたとえ個人結界があったとしても無理があった為に胴体と首から上を除いた両手両足を蜂の巣にされ、拘束されることとなった。

 

彼らにとって不運だったのは列強二国の…それも米露の特殊部隊を敵に回したことであったと言える。

 

 

武御雷 作戦室

 

「うん‥そう‥‥分かった」

 

「‥終わったのか?」

 

ディアーチェが氷川丸を奪還できたのかを問う。

 

「うん。鎮圧したよ‥管理局艦に連絡を入れて」

 

「了解」

 

束は奪還した氷川丸からの連絡を受けて、管理局の次元航行艦に通信を送るように指示を出す。

 

「氷川丸は奪還しました。幸い氷川丸の乗員、反乱を起こした局員たちに死者は出ませんでした。しかし、反乱を起こした局員側に負傷者が出たようなので、先に彼らをそちらに移送しますので、手当の準備をお願いします」

 

突入したデルタフォース、スペズナヅも束から主犯格以外の反乱者たちの生死は無視しても構わないと言われてはいたが、殺害すれば管理局との外交に厄介な火種を産む結果となると分かっていたいので、敢えて殺しはしなかった。

 

それに生きて本国に戻り、彼らが此処での体験を吹聴する事でもう一つの地球の兵士の強さを広める結果となる。

 

『分かりました。大変なご迷惑をおかけしました』

 

クロノはクラウディアを氷川丸に接舷し、反乱を起こし返り討ちに遭った局員たち、そして捕虜となった局員たちを収容した。

 

「‥‥」

 

ただ、反乱を起こしたのが管理局の局員たちと言う事で、負傷した局員、捕虜となった局員たちを引き取りに来たクラウディアの乗員たちも、『こいつらも反乱を起こすんじゃないか?』と疑いの視線と『面倒な事を起こしやがって』と恨みがましい視線を受けながら負傷者と捕虜の移送を行う。

 

勿論、彼らが変な事をする筈もないのだが、地球側とすればもはや管理局員は信用できないので、クラウディアの乗員たちは武器を構えたデルタフォース、スペズナヅ隊員たちの監視下で移送作業は行われた。

 

クラウディアが負傷者と捕虜の移送作業を行っている中、はやてが艦長を務めるヴォルフラムは本来の任務である護衛として待機しているのだが、やはり警戒されているのか、地球艦隊各艦の主砲が自分たちをロックしているのが嫌でも分かり、いつ攻撃されるのか不明たため、はやてたちとしては生きた心地がしなかった。

 

「はぁ~‥それにしてもあの連中、ホント面倒な事をしてくれたモンや‥‥」

 

氷川丸とクラウディアを見つめつつはやては呆れながらも溜息をつく。

 

「親書の内容が何であれ、これで管理局はもう一つの地球からの信用を完全に失ったわ」

 

今更対等な同盟だろうが、交流だろうが、管理局がすり寄った所で今回のこの一件で全てが水の泡となった。

 

地球連邦政府、そして防衛軍は時空管理局を完全に敵対組織と認識しただろう。

 

「そうだね。私もあの人の言動はとても許せるものじゃあなかったよ」

 

なのはもはやての意見に賛同する。

 

「それで、はやてちゃん」

 

「ん?なんや?なのはちゃん」

 

「ティアナは居た?」

 

「うんにゃ、居らんかった。多分ティアナはもう一つの地球に居るんやろう。考えてみれば、もう一つの地球に残るティアナが軍人でもないのに、地球の艦に乗っている訳があらへんからね」

 

「そう‥‥」

 

(これで、ティアナと会う機会は永遠に失われちゃった訳か‥‥)

 

(あの人たちがやったのはもう一つの地球からの信用を無くすだけじゃない‥‥)

 

(私からティアナとO・HA・NA・SHIをする機会を永遠に奪ったんだ‥‥)

 

もう一つの地球と国交が結ばれなければなのはは二度とティアナと会う事はない。

 

会えなければ話す事も出来ない。

 

はやて以上に反乱を起こした局員たちへの怒りはなのはの方が高かった。

 

後にこの出来事は氷川丸占拠事件としてもう一つの地球の歴史に名を遺す事件となった。

 

 

氷川丸の乗員たちが救出され、反乱を起こした局員たち、そして捕虜として氷川丸に収容されていた局員たちがクラウディアに収容された後、武御雷にて再び会談が行われたのだが、空気は正直に言って重苦しい。

 

リンディたちは気まずそうにしていたし、アイロ、カチューシャは管理局組をまるで不審者でも見るかのような目で見ていた。

 

「さ、先ほどの件については誠に申し訳ございませんでした」

 

「申し訳ございません」

 

管理局組が頭を深々と下げる。

 

リンディたちとしてはこの場に穴があったら入りたい程の羞恥で会ったに違いない。

 

束が予想した最悪なシナリオの事件が起きてしまったが、氷川丸に収容されていた捕虜は全員予定よりも早くクラウディアへと収容される事となり、あとは武御雷に居るフェイトたちだけとなった。

 

地球側としては親書も受け取ったし、捕虜は帰したので、あとはフェイトたちを連れてさっさと自分たちの星へ還ってくれと願うばかりであった。

 

 

リンディたちがあまりにも無意味で、完全な負け戦となる外交交渉を始めた頃、武御雷の展望室では‥‥

 

「氷川丸がスペース・ジャックされたなんて‥‥」

 

氷川丸が反乱を起こした局員たちに占拠された事はフェイトたちの耳にも入る。

 

一部の局員たちによる暴走だろうが、まさかこんな暴挙に出たことにフェイトは驚愕する。

 

「わ、私たちはどうなるんですか?」

 

「もしかして、また地球側に拘束されるのですか?」

 

ユメとホシノは不安そうだ。

 

「だ、大丈夫だよ‥きっと‥‥ウン、タブン‥‥」

 

フェイトも確信が持てないのか、目を泳がせながら二人を宥める。

 

「「‥‥」」

 

そんなフェイトの態度のますます不安になる二人。

 

そこへ、

 

「あっ、居た、居た、フェイト!!」

 

レヴィがヴィヴィオとアインハルトを連れて展望室に入って来た。

 

「えっ?」

 

「青い髪のフェイトさん!?」

 

ユメとホシノはレヴィの容姿を見て驚く。

 

「レヴィ、どうしたの?」

 

「さっきの放送聞いたでしょう?」

 

「う、うん」

 

「一部の局員たちがバカな事をしたみたいで、フェイトたちも変に疑われるかもしれないから、ボクが一緒に居てあげてって王様が言っていたの」

 

「ディアーチェが?」

 

「うん」

 

ギンガについては通信関係の仕事があるので、席を開ける事が出来なかったので、ディアーチェはレヴィにフェイトたちのお目付け役を頼み、皆で展望室に居る事となった。

 

「あっ、そう言えば‥‥」

 

すると、レヴィは何か思い出したかのように声を出す。

 

「ん?どうしたの?」

 

「いやぁ~艦は違うけど、こうしてフェイトと一緒に展望室に居るとあの時の事を思い出すなぁ~と思って」

 

「えっ?あの時?」

 

「ほら、一緒にお揃いの衣装を着てショーをやったじゃない」

 

「‥‥ああ、あの時の!?」

 

フェイトは最初、レヴィが何を言っているのか分からなかったが、ようやく思い出して声を上げる。

 

「実はあの時のショー、動画に撮ってくれた人が居て、それを貰ったんだ」

 

レヴィはタブレット端末を操作してフェイトたちが参加した太陽系赤道祭の動画を再生した。

 

ユメ、ホシノ、ヴィヴィオ、アインハルトも興味津々な様子でタブレット端末の画面を覗き込む。

 

すると、画面には‥‥

 

『ら、雷神の如くササッと登場!立ち塞がる悪には容赦なく死の鉄槌を下す!!わ、私こそが正義の象徴、雷光の死神!!フェイト・テスタロッサ・ライトニング――――っっっっ!!!!』

 

フリフリの衣装を着て、即席の舞台でやけくそ気味に顔を赤らめたフェイトが叫ぶシーンが再生された。

 

「ああああああー!!」

 

自身の黒歴史とも言える場面を再生されてフェイトは声を上げ、

 

「「「‥‥」」」

 

アインハルト、ユメ、ホシノは固まり、

 

「うわぁ~フェイトママ可愛い~!!」

 

ヴィヴィオは目を輝かせながら見ていた。

 

「ちょっと、レヴィ!!ヴィヴィオたちに何てモノを見せるのよ!!」

 

「えっ?でも、あの時の舞台は面白かったでしょう?」

 

「私にとっては黒歴史だよ!!」

 

「この時の衣装いる?餞別代りに持って行ってもいいよ」

 

「いらないよ!!」

 

「えぇ~フェイトママ結構似合っていたのに‥‥バリアジャケットのデザインもこの衣装にしてみない?」

 

「しません!!」

 

「じゃあ、この映像は?」

 

「それもいらない!!」

 

「私は欲しいかも‥後でなのはママにも見せたいし」

 

「ちょ、ヴィヴィオ、何を言っているの!?」

 

自分の黒歴史がこれ以上拡散されるかもしれない事にフェイトはあたふたするのであった。




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