式典後‥いや、この地球に残ると決意した時に宇宙戦士訓練学校への進学を決意したティアナたちであったが‥‥。
地球連邦大統領 官邸 (ブルーハウス)
「こ、これはっ‥‥!?」
「う、うむ‥‥」
「なんと、まぁ‥‥」
大統領官邸において、式典から帰って来た大統領と官僚たちは束たちが預かって来た時空管理局からの外交文書を読んでいたのだが、全員が何ともいえない表情であった。
どうにも文書の内容が、上から目線と言った感じであり、自分たちが如何に素晴らしい組織なのかと言う内容と質量兵器の危険性を説いており、尚且つ防衛軍の宇宙艦船がいかに危険な兵器なのかと言う事、反対に魔法・魔導師の素晴らしさしか言っていないのだ。
最後の技術交流は一考の余地有りではあるが、流石に情報・技術流出やら何やらが不安しかないので、技術省と軍部も反発したのだ。
「うーむ‥‥どう返答したモノか‥‥」
「大統領、現時点において積極的な交流は見送りつつも外交の為のパイプや窓口は念のために残しておくべきではないでしょうか?」
大統領は管理局と今後どう付き合うべきなのかと悩んだが、閣僚のこの一言を採用することにした。
この後も太陽系内・地球連邦の領海内に迷い込む管理局艦や次元世界の民間船は来る可能性は大きいだろうし、今後計画されている惑星探査・開拓プロジェクトの際にどこまで管理局が実行支配しているのか確認が必要になるからである。
それに、一応は話せる地球外の星間国家なのだ。
交信が出来る窓口を残しておくに越したことはない。
そんなわけで、束とディアーチェ経由で時空管理局側に伝達したが、内容は技術交流や外交関係の樹立を保留にすること以外は会談で伝えた内容と変わりなかった。
しかし、軍が決めた様に侵略目的・諜報活動目的で管理局の艦が地球連邦の領海に入り込んだ場合は問答無用で撃沈する事は決定事項となり、救助をするのはあくまでも遭難した時のみとする事となった。
地球連邦政府のこの返答に対して時空管理局の幹部たち‥‥特に強硬派の幹部局員たちは怒り狂ったが、クロノやリンディたち穏健派や“陸”からすれば、この程度で済んでよかったと冷や汗を流していた。
※ちなみにクライスラー元艦長ら氷川丸を占拠した者たちは三大提督からも怒りを買ったことでクラウディアとヴォルフラムの帰還後、即決裁判を行うことが決定し、無期懲役もしくは終身刑になるのではないかと言われている。
それから一か月後‥‥
地球連邦 極東管区 宇宙戦士訓練学校(宇宙防衛大学)教員室
「う~む‥‥このご時世に短期受講者が三名も‥‥」
宇宙戦士訓練学校こと、宇宙防衛大学の教員室では新入生管理を担当している教員が頭を抱えていた。
この宇宙戦士訓練学校には短期受講者制度と言うものがあり、卒業試験や基準は一般受講生と変わりないが短期間で宇宙戦士(地球防衛宇宙海軍軍人)としての栄誉を得ることが出来るというものだ。
入学後は一般生徒と同様に扱われることで特に特別扱いはされないが、約三年かけて学ぶ内容を半年から一年くらいで身につけねばならない関係でかなり厳しいので希望者はそうそういない上、その過程を受けるにふさわしいと軍部の人間からの推薦も必要なのだ。
なので、軍部経験者かつ尉官階級で早期に退役した人物が士官課程を受ける形で現役復帰するためにこのコースを受けることが一般的であるのだが、今回は訳が違った。
元軍人でもないのに女性が三名もこのコースを志願してきたのだ。
「おまけに推薦人が軍部のお偉いさんばかり‥‥月村少将にクローディア大佐、空間騎兵隊第一都市防衛隊の古野間隊長に宇宙艦隊の北野哲、極めつけは藤堂長官や西郷参謀長まで‥‥一体何なんだ?この三人は‥‥?」
それに軍部における上層部やエリート士官たちが推薦しているので、扱い兼ねていたのだ。
なにせ此処までの推薦人を得る程の人脈がこの三人にあるのかと疑問だらけだからだ‥‥
しかし、実際に軍のお偉いさんたちからの推薦人を有している。
無下に断る訳にはいかない。
「あら?どうしたんですか??」
そこにある人物がやって来た。
「あっ!宗谷校長!!」
「もう校長は辞めてください。今は臨時とはいえ本来はまだ教頭なんですから‥‥」
そこにいたのは退役が間近である土方提督に代わって臨時で校長を務めている宗谷真雪であった。
「それでどうしたんですか?」
「それが、今日司令部から届いた短期受講者のリストなんですが‥‥」
新入生管理担当の教官から話を聞き、リストに目を通した真雪は、
「あら、確かにすごい方たちが推薦していますね?しかし、それだけこの三人は期待されているということではないですか?」
「ま、まぁ確かに‥‥」
「ならば、公平かつ厳しく指導してくださる方のクラスに配属したらこれまでの生徒たちにもいい刺激になると思いますよ?」
「は、はぁ‥‥」
真雪は楽しそうにそう話す。
それは久々に良い人材を見つけたという顔であった。
「この戦術科志望のティアナ・ランスターさんという方は古庄教官のクラスに配属させましょう。航空隊‥いえ、機密事項で一部の生徒しか知らないはずのIS隊志望のシャルロットさんも同じ戦術科で入れることにして同じクラスに‥‥神堂さんは機関科コースですから専門授業以外は同じということで‥‥まぁ、全員古庄教官のクラスということにしますか‥‥」
「しょ、承知しました」
真雪はそう言いつつ、管理担当の教師に入校許可章の発行と書類を送付するように指示をした。
それから一週間後…
宇宙戦士訓練学校 第一クラス‥通称 古庄クラス
「おはよ~」
「おう土門!おはよう!」
候補生の一人である土門竜介が寝ぼけまなこで教室に入って挨拶をすると、同期で親友の揚羽武が元気に挨拶を返した。
「どうした、どうした。やけに眠そうだな?」
「いやな?古庄教官の課題が難しくてさぁ~‥‥消灯時間ギリギリまでやっていたら教官に見つかってどやされて余計に眼がさえちまって‥‥」
土門が眠そうな態度であった為に揚羽が聞くと、どうも教官である古庄が先日出した課題が難しく、消灯時間ギリギリまでかけて終わらせたのだが、寝ようとしたタイミングで巡回の教官に見つかって『消灯していないとは何事か!?』と理不尽に怒られたそうな。
おまけにそのせいで眼が冴えた為に余計に眠れなくなったのでたちが悪い。
「お、おう。そうだったのか‥‥まぁ、やけに難しかったよなぁ。あの課題‥‥」
揚羽も先日出された課題に手古摺ったらしく、遠い目をしていた。
「そう言えば二人とも知っている?」
そこに声をかけてきたのは、同期の京塚みやこである。
「なんか、二日前に短期受講者の入学試験をやったらしいんだけど~」
「ん?この時期にか?珍しいな??」
みやこのセリフに揚羽は頭を傾げつつも話を聞く。
「なんでも、古庄教官が作ったテストをあっさりと解かれちゃったせいでショックだったんだって。それで昨日の課題がかなり難しくなったとか‥‥」
「はぁ!?俺たち完全なとばっちりじゃねぇか!?」
その内容に土門も揚羽も憤慨した。
どう言いつくろってもとばっちりだからだ。
「京塚さん。そう言った不明確な噂は流してはいけませんよ」
そう話すのは同じクラスの同期にしてこの宇宙防衛大首席である美咲七波である。
「古庄教官がそんな私的な理由で課題の難易度を上げるとは思えません。ですから新規生は事実だとしても奮起を促すという名目だと思いますよ?」
「美咲って、相変わらず生真面目だね~」
「まぁ、今日このクラスに三名の新入生が入るという話は聞きましたが」
みやこが美咲に生真面目だと返す傍ら、七波の親友であるターニャ・L・コジマはしれッと一大ニュースを伝えた。
「マジかよ!?」
「しかも全員女性だそうで‥‥」
ターニャがクラスの同様に対して詳しく説明をしようとしたが、
ガララッ!!
「っ!!全員起立!!」
このクラスにて学生長である美咲は教官が入室してきたので起立するように指示し、全員が起立した。
(学生長とは生徒会長やクラス委員長のような物で、現実の防衛大にもあります)
「全員、古庄教官に礼!」
「「「「「おはようございます!」」」」」
「はい、おはようございます。着席してください」
「全員、着席!!」
入室してきたのはこのクラスの担任である古庄薫教官であった。
彼女の指示を受け、美咲の合図で全員が着席した。
「では、出席の確認を取る。まず、土門候補生」
「はっ!」
「揚羽候補生」
「はい!」
「雷電候補生」
「はい!」
「板東候補生」
「はい!」
「京塚候補生」
「はっ!」
「美咲候補生」
「はっ!」
「コジマ候補生」
「はっ!」
「よし、全候補生の出席を確認した。それと先日出した課題の未提出者もなし‥と‥‥よし、では今日の予定を伝達する前にこのクラスに新入生が入ることになったという噂は耳にしているな?その者たちを紹介する」
「マジかよ‥‥」
ザワザワ‥‥
新入生への期待でクラスの面々はザワつく。
「静かに!!では、ランスター候補生、神堂候補生、デュノア候補生!入れ!!」
「「「はい!!」」」
そうして途中転入生の三名が入室した。
「おお、全員女性か‥‥」
「仲良くなれると良いけど‥‥」
男女問わず、候補生らは色々な感想を内心で思った。
「ティアナ・ランスター候補生です」
ティアナが自己紹介をすると、
(((あの人、何か美咲の声に似ている!?)))
(何となく私の声に似ている!?)
と、ティアナと美咲の声が似ているとクラスメイトはおろか、美咲自身もそう思った。
「神堂慧理那候補生です」
「シャルロット・デュノア候補生です」
「「「よろしくお願いします!!」」」
「この三名は短期受講者の試験も突破している。よって諸君らと同じ過程を進んでも問題ないとみなされた者たちだ。変に気を使わずに同期として接するように」
古庄は三人が自己紹介したのを確認し、指定の席への着席を命じた。
「さて、今日の予定を伝える。まず、全員の射撃訓練を行った後に各科のコースに分かれて教習を受ける。よって‥‥」
そうして朝の連絡指示後に射撃訓練場へと全員は移動した。
宇宙戦士訓練学校 射撃訓練場
この訓練場ではコスモガンの射撃訓練が行われる。
勿論事故防止のため、コスモガンの出力は最低限となっている。
バン!バン!バン!
「終了!評価確認!!」
土門と揚羽はコンビで実習を受けていた。
「ちっ。少し命中率が落ちたか?」
「いやいや、いい方だと思うぜ?」
どうやら土門の射撃精度が若干落ちたようで、普段よりも命中数が少なかった。
この日は移動する標的に射撃して当てられるかという課題であり、臨時で担当教官になっていた太田功二尉は
『射撃は瞬発力と集中力こそが勝負だ!根性を出して撃てば当たる!!』
と豪語し、射撃訓練の際には面倒見よく指導をする熱血教官である。
まぁ、根性論を持つ彼であるが腕の良いものは素直にほめるし、何をどうすれば良いのかも指導するので候補生たちからの評判はそこまで悪くない。
ただ、機械頼りになりがちな候補生とは正反対で、砲術訓練の際にも人力による射撃を重要視していなかった候補生に対して『万が一装置が故障、あるいは戦闘時の被弾で破壊されていたらどうする?射撃員?その射撃員も死傷したことで艦橋からの遠隔のみだったらどうする?』と聞き、
『万が一に備えるのが我ら防人の仕事だろうが!!』
と舐めていた候補生を一括した過去がある。
「土門!貴様、多少の射撃の不備を自覚しているのは良いことだが、グジグジいじけるな!それと揚羽!貴様ももう少し、射撃精度を何とかせい!!貴様の腕では万が一の際に敵に命中させられんぞ!!」
「「はっ、はい!!」」
その太田に一喝されたことで土門と揚羽は慌てて返事をした。
「全く‥お前ら!貴様たち既存生徒に比べてあの新入生三名を見よ!」
太田はその後に他の生徒達にもティアナたち三名を見るように言ったことで、全員の視線が三人に向けられた。
そこには‥‥
ダン!ダン!ダン!ダン!!
「え‥‥?」
「うっそぉ!?」
ティアナ、神堂、シャルロットの三名は移動する標的にほぼすべてを正確に命中させていたのだ。
そもそもティアナは管理局員時代から射撃の腕はピカイチであったし、パルチザン時代にも実戦で鍛えられていたので命中精度が極めて高くなっていたのだ。
おまけにいつの間にか標的の急所を狙いだしていた。
神堂やシャルロットはそこまで腕前が高いわけではなかったが、彼女たちも実戦で鍛えられていたので、移動する標的自体に当てられるようになっていたのだ。
「そこまで!う~む、よくやった!いついかなる時も敵にしっかりと当てることが重要なのだ!故に‥‥!!」
太田教官が指導をしている中、土門は、
「へっ!やってやろうじゃねぇか‥‥!」
とティアナたちにライバル心を宿していたようで、揚羽は、
「やれやれ‥‥」
土門の性格からこうなると思っていたようで、呆れていた。
その頃、時空管理局本局にクラウディアとヴォルフラムがようやく帰還した。
帰還したことをプロパガンダにしようと思った局員からリークされたことで、大勢の記者たちがドックに殺到したためにフェイトたちが艦を降りられなくなっていた。
「凄い数の記者たちですね」
「全く、一体どこから情報が漏れたんや?」
大勢の記者たちの姿を見ながら呆れたように呟く。
「どう見ても管理局‥“海”の内部からでしょう」
そんなはやてにグリフィスは、管理局からのリークで集まったに違いないと言う。
はやては頭を抱えていたが、どうにかせねばならない。
「しょうがない。此処は私が行くよ」
「えっ?フェイトちゃん?」
「彼らの目的はもう一つの地球から戻って来た私たちだし、私が行けばマスコミの数も減るでしょう?」
「ま、まぁ‥それはそうなんやけど‥‥」
「それじゃあ、行って来るね」
「では、私も行きます」
「私も‥‥」
フェイトの他にユメ、ホシノも一緒に行くと言う。
「それじゃあ、私も‥‥」
「シルビアはもう少し待って」
「えっ?」
「前に言った通り、貴女を保護しないといけないでしょう?だからその体制が整うまで、シルビアは、はやてたちと居て」
「わ、分かりました」
ドックには十中八九、査察部の人間が待ち構えている。
保護体制が整う前に査察部に連れていかれたら、シルビアはどんな目に遭うのか分かったモノではない。
彼女を守るためにフェイトは、シルビアには待ってもらう事にした。
ユメとホシノに至っては、一か月の軟禁生活だったので、情報らしい情報なんて集める事は不可能なので、フェイトと共に降りて査察部とマスコミを引き付ける役として同行してもらう。
「それじゃあ、行くよ」
「「はい!!」」
フェイト、ユメ、ホシノがヴォルフラムのタラップに出ると、記者たちはすぐさま写真を撮り始める。
沢山のフラッシュの光に包まれ、フェイトたちは目を細める。
英雄の外線の様にタラップを降りると、
「ハラオウンさん!!向こうの地球での生活はどうでした!?」
「向こうの地球がどこかの星間国家に占領されたと聞きましたが!?」
「ハラオウンさん!!何か一言お願いします!!」
記者たちがフェイトに押し掛ける中、その記者たちを押しのけてフェイトに近づく者たちが居た。
その者たちは黒い管理局の制服を身に纏いサングラスをかけていた。
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、小鳥遊ホシノ、梔子ユメの三名ですね?」
「はい、そうです」
「「はい‥‥」」
フェイトは堂々と答えるが、ユメとホシノは事前に査察部が来ると言われていたのだが、実際に査察部の人間を見て若干ビビッている。
「我々は査察部の者です。帰国早々お手数ですが、少々事情をお訊ねしたいので、ご同行をお願いします」
「分かりました」
「あと、お荷物とデバイスもこちらで一時お預かりいたします」
「どうぞ」
「壊さないでくださいよ」
「後でちゃんと返してください」
フェイト、ユメ、ホシノは査察部の局員に自身のデバイスを手渡す。
その後、三人が査察部の局員たちに連れていかれ、ようやくマスコミがいなくなったので、なのは、ヴィヴィオ、アインハルト、シルビア、そして両艦の乗員が退艦することが出来た。
次回 実地研修と新たな帝国