突如発生したワームホールに飲み込まれ、並行世界と思われる空間へ来てしまったガンビア・ベイ。
ワームホールが発生した際に生じたプラズマ現状によって損傷した船体や機関部の修理の為に近くにあった惑星に降下した。
その際に休息もかねて惑星探査を実施することになった。
惑星?の海岸近く‥‥
「なんというか、妙に落ち着く森ね」
「そうですね」
美咲とターニャは惑星探査に参加していた。
一見すると、地球の森とほぼ変わらないが…。
「ん?これは、少し地球の物とは異なる果実ですね?」
「そうね。下手に食べたりしなければ大丈夫だと思うけど‥‥」
ターニャが森林の中にある一本の木に地球には存在しない形、色をした木の実を見つける。
ただ、この木の実が食用なのかは当然不明なので、二人は口にしたりはしなかった。
と、こんな感じでよくわからない植物が多いので調査も一苦労である。
そんな彼女たちを遠くから見る眼があった。
ガンビア・ベイ 格納庫
「いろいろな植物や動物のサンプルが集まりましたね~」
クリスは格納庫内に集められたサンプル群を目の当たりにしてそう話す。
植物は一見すると地球の物と変わりない物が多かったが‥‥
「鳥とか小動物の類はなんかファンタジーっぽい見た目ですねぇ」
鳥に関して大体は変わらないものの、小動物は体表や毛がファンタジー物に出てくるような見た目であったり、何か魔法のようなオーラを纏っていたりもした。
なお、動物に関しては、何を食べているのか生体が不明なので、画像や動画のみの採取となっている。
「それで、艦の修理はどのくらいまで進みましたか?」
スミスはサンプルを見ながら聞くが、
「船体の方はほぼ終わりましたね。ただ、機関部の修理にはもうしばらくいただきたいです…」
「そうですか‥‥」
技術長からの報告に肩を落とした。
早く宇宙に戻って帰る方法を探したいのだが、機関部が直らないとどうにもならない。
「機関部の損傷が予想以上でして‥‥」
何でも、重要箇所は破損していなかったそうだが、それ以外の箇所の大半が大なり小なり破損してしまったせいで余計に時間が掛かっているそうなのだ。
「出来るだけ急いでもらえますか?」
「はい!」
今の所、調査隊から異常があるような報告は上がってこないが、此処は未知の惑星‥‥どんな生物が生息しているのか分からないし、気象も変動するかもしれない。
未知の惑星よりも宇宙空間の方が安全だとスミスはそう思っていた。
彼女と技術長は機関部修理の話題と動植物のサンプルだけに気を取られて気付いていなかったが、サンプルの中に綺麗な結晶が存在していることに気づいていなかった。
この結晶体はロストロギアと呼ばれる物で、素手もしくは素肌で触れた際にその握った人物の記憶を投影するという物だ。
何故、回収した隊員は気が付かなかったのか?
その理由は万が一を考えて宇宙服を着た上で調査をしていたからである。
ヘルメットはしていないとしても分厚い手袋は毒草などへの対策にはなるからだ。
その為、調査に出ていた隊員は鉱物資源だと判断して気づかずに回収してしまったのだ。
これが面倒な事態に発展するとは思いもよらずに‥‥
ガンビア・ベイ 近くの浜辺
「うおー!見ろよ!ペガサスそっくりの馬だぞ!!」
その頃、浜辺では調査から戻った隊員や訓練生たちが海水浴をしていたのだが、そこにペガサスに似た翼を持つ馬の群れがやって来たのでちょっとした騒ぎになっていた。
「「「「きゃー!可愛いー!!」」」」
特に女性隊員たちからは大ウケである。
何しろ地球では空想上の生き物であり、これまで地球が開拓した惑星でもそのような生物は存在していなかったからである。
しかし、それを見てギンガやティアナたち、元管理局組は嫌な予感がしていた。
(ティ、ティアナさん。あれって確か管理局が保護対象に指定している魔法生物じゃなかったっけ!?)
(えぇ‥‥、間違いないわね。『マナペガサス』…。危険性はないけど懐くことはほぼない上に人前に出てくることはほとんどないって話だったけど‥‥)
ティアナたちの目の前では、隊員たちと楽しそうに戯れるマナペガサスの群れの姿があった。
特にみやこや美咲が子供のマナペガサスに懐かれていた。
(みやこ、すっごいなつかれているわね‥‥)
(ちょっとうらやましいかも‥‥)
ティアナはみやこがなつかれている光景に唖然とするが、神堂はうらやましいと思っていたようだ。
その頃、ガンビア・ベイに怪しい影が迫っていたのだが、誰も気づいていなかった。
それから十分後‥‥
ガンビア・ベイ 格納庫
「な、なんですかこれ~!」
スミスの悲鳴が格納庫内に轟く。
「「あ、あはは‥‥」」( ̄▽ ̄;)
みやこと美咲を含めた全訓練生と乗員が艦に戻ってきたのだが、懐いたマナペガサスの群れ(十頭以上)がどうやっても離れてくれずに、艦内へ一緒ん乗り込んできてしまったのだ。
「い、一体どうしたら‥‥」
スミスは頭を抱えるが‥‥。
「おぉ~ちゃんとオムシス製の餌でも食べてくれるな?」
「よかった、よかった!」
餌の問題に関して主計科は問題なさそうな対応をしていたので、置いておくとしても、
「衛生的に艦内に未知の惑星の生物を大量に入れていいんですかぁ‥‥!?」
衛生面を考えるとあまりよろしくない状況だ。
地球には無い病原菌を体内に潜伏させている可能性もある。
かといって、追い出すのもかわいそうだし、何より‥‥
「そう言いながらスミス艦長。貴女もペガサスの頭を撫でまわしているじゃないですか‥‥」
「え、えええっと‥それは‥‥」 目逸らし~
鯨伏が指摘するように当のスミスもマナペガサスの頭を撫でまわしたり、可愛がる仕草をしていたので人のことは言えない。
※当のマナペガサスも大喜びの様であるが…。
「ま、まぁ地球に戻るまでは留めておきません?それに、地球の環境で生活出来るのかすら、分かりませんし‥‥」
ギンガは折衷案を出し、何とか収まった。
そんなほほえましいトラブルが解決されたその時、
『警報!艦内に侵入者あり!!』
この一分前、格納庫内に仮設置されたサンプル保管場所をある保安部員が点検していた。
「さ~てさて、さっさと終わらせて飯にすっかな~。って、ん?」
彼は目の前に誰かが立っていて、サンプルをあさっているのを見つけた。
「おい、あんた!!一体何をして‥はっ!?」
そこには仮面を着け、青を基調としたボディースーツを身に纏い、ローラースケートと何かの装置を両手につけた女性が立っていたのだ。
「だ、誰だ!貴様、ぶへぇ!?」
保安部員はコスモガンを取り出して問い詰めようとしたが、即座に腹を殴られて失神した。
すると、そこに‥‥
「先輩、何かあったんすか?って、はぁ!?」
訓練生のキャロライン・雷電がやって来たのだ。
目撃された女性は解放されたままだった格納庫の外に逃走を図った。
『艦内に侵入者あり!!』
キャロラインは直ぐに艦内に侵入者が居る事を報告し、警報が発せられたわけだ。
艦外
「ばぎゃは!?」
「くっそ!追え追え!!」
艦の外で作業中だった技術科が何人か吹っ飛ばされた為に戦術科・保安部、そして非番の隊員たちが総出で侵入者を追いかける羽目になった。
「私も行ってきます!」
「ギンガさん!」
ギンガもデバイス片手に追いかけていった為にティアナは慌てた。
彼女もデバイスは持ってはきたものの、自室にある。
かといってコスモガンでは不安だ。
「ど、どうしましょう‥‥!」
すると、そこにスミスが立っていた。
一丁のライフルを片手に持って‥‥
「あっ、そうだ!」
ティアナは良いことを思いついた。
その頃、ギンガは森の中を単身追いかけていた。
バリアジャケットを纏い、ブリッツキャリバーで追いかけながら彼女は相手に何か既視感があった。
青いボディースーツを纏った女性は仮面で顔は分からないが、母が使っていたリボルバーナックルのようなデバイスを両手に展開して、ウィングロードで逃走している。
(あの侵入者、私やスバルと同じウィングロードを使っている!?)
ギンガ、スバルが使用するウィングロードは管理局の中でも珍しい部類の魔法で、ミッドチルダを始めとする管理世界でもその使用者はギンガ、スバル、そしてノーヴェくらいしか確認されていない。
(それにあのリボルバーナックルとローラーブーツ‥何だか母さんに似ているような‥‥いやいや!そんな訳ないわ!!気のせいよね!!)
ギンガは侵入者が使用していた魔法、装備が今は亡き母、クイント・ナカジマにそっくりだと思うも、首を振ってそれを否定する。
クイント・ナカジマは自分が八歳の頃に死んでいる。
なので、自分が追っている侵入者がクイントである筈がない。
「そこの侵入者!!止まりなさい!!」
ギンガはかつて亡くなった母にその面影を相手に思い描いていたが、とにかく身柄を確保することを優先した。
艦内から何らかのデータや物品を取られていたら、それこそ問題だからだ。
ウィングロードで相手の正面に回り込んだところ、相手も応戦する構えを見せた。
「やる気ね‥‥仕方ないわ‥実力で制圧するわよ!」
「‥‥ッ!!」
そうして二人の魔導師が戦いを始めた。
その頃、
「はっ、はっ、はっ、はっ、は‥‥!」
ティアナとシャルロット、そしてスミスは森の中を全力で走っていた。
アストロバイクでもあればもう少し早く現場に到着できるのだろうが、今回の訓練は元々宇宙空間での訓練ばかりだったので、陸上移動手段のアストロバイクは積んでいなかった。
なので、こうして自分たちの足で現場に向かっているのだ。
ギンガが魔導師であることは、ガンビア・ベイ内では元管理局組の三人とスミスしか知らない。
よって、ギンガの応援にティアナ、シャルロットが向かうことになったのだが、コスモガンでは威力不足が懸念されたのだ。
なんせ、実習中であったので訓練用か威力を落とした物しか艦内に無かったのだ。
その為、スミスが個人的に持ち込んでいた武器に白羽の矢が立った。
『スプリングフィールドM1903小銃 狙撃銃仕様』である。
この銃は実弾を撃つことを前提に開発された第一次及び第二次世界大戦時のライフルである。
名銃であることには違いないのだが、スミス艦長は知り合いにお願いしてコスモガンとして使えるように改造してもらい、コスモライフルとなっていたのだ。
おかげで、パラライサーモードも実装されており、拳銃タイプよりもはるかに長射程になっていたのだ。
しかし、スミス艦長はそこまで狙撃の腕は良くないので、ティアナが借り受けて確保に使用することとなり、シャルロットは補助要員、スミスは監督役として同行していたのだ。
そして‥‥
「いた!」
「あ、あれが、魔導師同士の戦い‥ですか‥‥」
ティアナたちはようやくギンガと艦内に侵入した謎の魔導師に追いついた。
空中には二本の螺旋‥ギンガと謎の魔導師のウィングロードが敷かれ、二人はその上をローラーブーツで高速に移動し、拳や蹴り、防御、バスターを撃ちあっている。
二人にとっては慣れた光景であるが、スミスは初めて魔導師同士の戦いを見ることとなり、唖然としていた。
「くっ!相変わらず早い!!」
(スバルのお姉さんだけあって、スバルよりも早いわね)
(ん?あの魔導師が着ているスーツ‥‥あれって‥‥)
(いや、でも、なんであのスーツを着ている人が此処に‥‥?)
(それにあんな髪形、あのリボルバーナックルを装備したナンバーズなんてJS事件の時、確認されていなかった筈‥‥)
(となると、一体此処は何処なのよ!?)
(まさか、JS事件の時に出現していない未知のナンバーズなの!?)
ティアナは謎の魔導師が身に纏っている青いボディースーツには見覚えがあった。
「ティ、ティアナさんは見たことあるんですね」
ティアナは狙撃しようとしたが、手古摺っていた。
なんせ早く移動する目標なので、照準も一苦労である。
しかもギンガとコンタクトが取れないので、連携が出来ない。
下手に発砲すれば謎の魔導師ではなく、ギンガに当ててしまう危険性もある。
そんな彼女の姿を見たスミスの言葉に、
「まぁ、昔似た人物と一緒に仕事していたので‥‥」
と、答えた。
詳しく話せば長くなるので‥‥
「でも、早く援護しないとちょっとヤバそうですよ‥‥」
シャルロットは戦況がギンガに不利である事を伝える。
「わ、分かっているけど、あそこまで素早く動いたり、密着されると‥‥」
相手は両手に螺旋回転するシリンダー付きのナックルを装備しているが、ギンガは左手のみ‥‥
装備の差もあるが、素人目からしても相手の実力の方がギンガよりも上に見える。
相手の接近を許し、咄嗟にシールド魔法のディフェンサーを張っても相手はそのシールドを粉砕してギンガの身体に拳をぶつける。
「くっ‥つ、強い‥‥」
(この魔導師の戦い方、ヴィヴィオのストライクアーツともアインハルトのカイザーアーツとも違う‥‥)
(どちらかというと私やスバルと同じ、シューティングアーツ‥‥!?)
(私やスバル、母さん以外にシューティングアーツをしていた魔導師が居るって言うの!?)
装備、魔法もそうだが、眼前に居る謎の魔導師の戦闘スタイルに関してもますます疑問が募るギンガ。
ディフェンサーを破ったのもギンガの打撃魔法の一つ、ナックルバンカーであるが、自分のナックルバンカーよりも相手のナックルバンカーの威力は段違いだ。
勿論ナックルバンカーの他にリボルバーシュート、リボルバーキャノン、ナックルダスターの格闘魔法を繰り出してくるがどれも自分やスバル以上の威力と速さだ。
相手との距離を取って態勢を立て直そうとするが、相手のスピードが速くそれを許さないし、ディフェンサーもあまり意味をなさない。
「ぐっ‥このままじゃあ、ちょっと不味いわね‥‥」
防衛軍の軍人になってから、様々な訓練や体験をしてきて管理局員時代よりは強くなったと自負したつもりであったが、眼前の謎の魔導師は自分以上の実力者である事は疑いようが無く、今のギンガでは勝てる見込みが薄い。
時間が経つにつれ、ギンガは相手のサンドバッグ状態でボコボコに殴られる。
「っ!?‥がはっ!!」
謎の魔導師のアッパーをくらい、ウィングロード上に倒れるギンガ。
相手はギンガに止めを刺そうと大振りに拳を振り上げる。
「今だ!!」
バキューン!!
ティアナは謎の魔導師がギンガと相対した際の僅かな隙を突いて狙撃した。
大振りな攻撃は、攻撃力は高いがその分、隙が出来てしまうのだ。
その隙をティアナは見逃さなかった。
「ぐっ‥‥!?」
パラライサーモードで放たれたショックエネルギーは、正確に謎の魔導師の眉間に命中した。
その衝撃で仮面は粉砕され、地面に叩き落した。
謎の魔導師もまさか別方向からショックエネルギー弾が飛んでくるとは思ってもみなかった様だ。
地面に落ちる前に木々の葉がクッションになり衝撃を和らげたので、謎の魔導師は死んではないみたいで、意識を失っている。
「ありがとう、ティアナ!」
ギンガが地面に落ちた謎の魔導師の身柄を確保しようと駆け寄ったのだが‥‥
「えっ?」
謎の魔導師の顔を見てギンガは固まる。
彼女には信じられなかったからだ。
「う、うそ‥そ、そんな‥‥??」
仮面が粉々に破壊され、その下に露になった謎の魔導師の素顔は‥‥
「か、母さん‥‥?」
かつて捜査中に死亡した彼女の母親、『クイント・ナカジマ』その人であったからだ。
次回 魔導師の正体