内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百六十七話 衝撃と混乱

エルトリア星系において時空管理局が予想外の大敗を喫していたその頃‥‥

 

地球のとある病院で動きがあった。

 

地球 メガロポリス東京 連邦中央病院 病室

 

「う、うぅ~‥‥」

 

隔離のような厳重な監視と警備が行われていた病室にて寝ていた女性は、長い眠りから目を覚ました。

 

「こ、ここは‥‥?確か私は、スカリエッティの研究所に突入して‥‥それで‥‥はっ、メガーヌやゼスト隊長はっ!?」

 

「あっ、先生!!例の患者さんが目を覚ましました!」

 

そう、ギンガとスバルの母親であるクイントだ。

 

彼女はコールド・スリープを解除された後、束の月村家直伝の法術による措置で洗脳からも目を覚ましたのだ。

 

ちなみに、それを見た看護師からの報告に対して軍医官が…

 

「どっちの意味でだ!?」

 

と聞いて、

 

「両方の意味です!!」

 

と看護師が返したので、クイントはただ困惑するしかなかった。

 

ただ、暴れる様子も無かったので、軍医官もまさか洗脳がこんな短時間で解けた事実に驚愕した。

 

その後、報告を受けた束とディアーチェが聴取にやって来た。

 

「さてと、まずは自己紹介を‥私は月村束と申します。こちらは副官のディアーチェです」

 

束は早速、クイントに自己紹介をし、クイントにディアーチェを紹介する。

 

「ディアーチェ・K・クローディアです」

 

束に促されてディアーチェはクイントに一礼して自己紹介をする。

 

「それで確認を‥まず貴女の名前はクイント・ナカジマさんですか?」

 

「は、はい。あ、あの‥‥」

 

「はい?」

 

「此処は管理局関連の病院ですか?」

 

「それを踏まえて貴女には状況の説明といくつかの事情を聞きたいのですが‥‥?」

 

「は、はい」

 

そしてクイントに現状を伝えると同時に彼女から聴取を始めると、いろいろと分かった。

 

なんでも彼女はスカリエッティの研究所に突入して、罠にはまってから意識を失ってからの記憶がなかったのだ。

 

気がついたらスカリエッティの研究所からこの病室に居たと言うのだ。

 

(多分、スカリエッティによる洗脳のせいかな?)

 

知識として知っている本来の歴史のギンガの洗脳を知っていた束はギンガとクイントの洗脳された時期の違いから洗脳の方法が違う事で覚えているかいないかが違っていたのでは?と考えていた。

 

「それで、改めて言うが貴様が生きていた星とこの地球は色々と異なると明言しておくぞ?」

 

「は、はい」

 

そんなことを束が思っていた時にディアーチェはクイントにこの星の話をしっかりと説明していた。

 

クイントはここが自身の故郷とは違うことやスカリエッティの根回しによって家族の下には既に自分のクローン体が遺体として送られていたことにショックを受けたが、病院や病室から見える街並みがミッドチルダとは全然違うことから納得せざるを得なかった。

 

「そう‥ですか‥‥私はもう家族に会えないんですね‥‥」

 

クイントはディアーチェの説明を聞き自分の現状を理解すると俯き暗い顔をする。

 

洗脳されていたとは言え、地球防衛軍の艦艇に忍び込んだ上に軍人数名を倒したのだ。

 

身柄を拘束されるのは当然だし、この地球はミッドチルダとは国交を結んでいないので、生まれ故郷であり、家族が居るミッドチルダにはもう二度と戻れない。

 

「一応‥ですけど、この地球にも貴女の事を知っている人がいます」

 

束はそんなクイントに対して、彼女の事を知る人物がこの世界に居る事を伝える。

 

「えっ?」

 

すると、クイントは顔を上げる。

 

「ただ、その人は貴女の知っている人であって知らない人になりますが、同一人物にあたります。もっともその人も貴女と同じ事が言えますが‥‥」

 

「?」

 

束の説明に首を傾げるクイント。

 

「まぁ、会ってもらえれば分かります。どうぞ、入って来て」

 

「‥‥えっ?」

 

束の合図である人物が病室に入って来た。

 

「か、母さん!!」

 

そこにはギンガが居り、目が覚めているクイントの姿を見ると、クイントに抱き着く。

 

クイントも反射的にギンガを抱きしめる。

 

「も、もしかしてギンガ‥ギンガなの?」

 

「うん‥‥うん‥そうだよ!!」

 

「ギンガ!!」

 

久々の母子の感動の再開を邪魔しちゃまずいと束とディアーチェは退出した。

 

 

軍病院 廊下

 

「それで?どうするのだ??彼女の身柄は?」

 

「それなんだよねぇ~」汗

 

ディアーチェの言葉に束は頭を抱えていた。

 

彼女がミッドチルダに居る家族の戻れるかはかなり怪しい。

 

ガンビア・ベイが通過したあのワームホールが本当に並行世界に行ったのか?

 

それともギンガが居た管理世界の中の過去に行ったのかは分からないが、今後の展開次第では、もしかしたら彼女は家族の下に帰ることが出来るかもしれない。

 

しかし、そのためには管理局との関係が改善し、国交を結ぶ必要があるのだが、それが一体いつになるのか分からない。

 

「それにアヤツは洗脳されていたとはいえ、ガンビア・ベイで乗員を負傷させたのだろう?その件についてはどうする?」

 

「そこは情状酌量がなされるように報告書を藤堂長官に提出するよ。軍医官の診断書を添えてね」

 

クイントがガンビア・ベイに侵入し、乗員たちを殴り飛ばした時、それは決して彼女の意志ではなかった事は判明されているので、情状酌量の余地はある筈だし、藤堂長官も理解してくれるだろう。

 

ただ彼女はもうしばらくは検査入院が必要だ。

 

経過観察を行い、問題なしと判断されて退院となる。

 

「退院後の面倒はどうする?アヤツにとってこの世界は異世界も同然‥着の身着のまま放り出すのか?」

 

「そんなことはしないよ。忍さんとも相談して家で引き取るよ。ギンガちゃんも居る訳だし、クイントさんも安心して暮らせるでしょう。ギンガちゃんだって近くに母親が居た方が安心できるだろうしね」

 

「まぁ、そうなるな」

 

ディアーチェはクイントを月村家で引き取る件については束の話を聞いて納得する。

 

 

束とディアーチェが廊下で話し込んでいる中、クイントが入院している病室では‥‥

 

「ギンガ‥‥大きくなったわね‥それにしてもどうして貴女もミッドチルダじゃなくてこの世界に居るの?」

 

ベッド脇にある椅子にギンガは腰掛けて、クイントと‥母と久しぶりの会話をする。

 

「うん‥‥母さんが居なくなってから色々あってね‥‥」

 

ギンガはクイントに彼女が知らないミッドチルダでの生活の事、そしてどうしてミッドチルダから地球に居るのかを話した。

 

「そう‥ギンガもスバルも管理局員に‥‥」

 

「うん。私は私の手で、母さんの事件の真相を突き止めようと捜査官になって、スバルは十二歳の頃に巻き込まれた空港火災でなのはさんに助けられてから、なのはさんへの憧れと誰かを助けるために管理局員を目指したの‥‥でも、私は次元の海での捜査中に次元震に巻き込まれてこの世界に‥‥母さんの事件もその後、スバルたちが解決したみたいだよ」

 

「でも、ギンガ。捜査中に次元震に巻き込まれたのに、どうやって知ったの?」

 

「私がこの世界に来てから一年半ぐらいに知り合いの執務官の人たちが次元遭難して救助して、その人から聞いたの‥私は、この世界に来てからこの世界の軍に入隊してね」

 

「軍に!?どうして軍に入ったの?」

 

「私がこの世界に来たばかりの頃、地球は別の星からの侵略を受けて地球で生物が住めるのはあと一年って期間までに追い詰められていて‥‥」

 

ギンガはクイントにこの世界に来たばかりの頃の地球の状況を語る。

 

「それで、ヤマトが大マゼラン星の中にあるイスカンダルって言う星まで行って地球に充満する放射能を除去する機械を持ってきて、救われたの‥その間に私も何か自分に出来る事はないかって思って、この世界の軍の士官学校に入って、軍人になった訳」

 

「私が居なくなった後、ギンガは物凄い経験をしてきたのね」

 

自分もそうだが、ギンガのこれまでの人生はまさに波乱万丈な人生だと思うクイントであった。

 

ギンガとクイントは面会時間ギリギリまで話した。

 

病室から出る際、ギンガは何だか名残惜しい様子でクイントの病室を出たが、クイントはちゃんと生きていると自分に言い聞かせて病室を出た。

 

病室の外では束とディアーチェが自分を待っていた。

 

「あっ、束さん、ディアーチェさんも‥待っていてくれたんですか?」

 

「うん‥どうだった?久しぶりの親子との会話は?」

 

「母さんには聞いてほしい事、話したい事がいっぱいで今回の面会時間だけでは全然足りませんでした」

 

ギンガはそう言うが、それでも何処か嬉しそうな顔をしていた。

 

中央病院でギンガとクイントが再会を果たしていた頃、防衛軍司令部では‥‥

 

先日、モスクワの艦長であるカチューシャから齎された情報を元に幕僚会議が開かれていた。

 

「ボラー連邦にガルマン帝国か‥‥」

 

「銀河系中心部でそのような星間国家が存在しているとは‥‥」

 

「しかもそのカチューシャ艦長が救助した亡命希望者の情報では、ボラー連邦、ガルマン帝国双方、地球と同等‥いや、それ以上の科学技術と軍備を持っていると見ていいな‥‥」

 

「その亡命希望者は元々ボラー連邦に属する星の住人なのだろう?大丈夫なのか?亡命をさせて‥‥」

 

「ボラー連邦のスパイと言う可能性もありますし、仮にスパイでないとしてもボラーの属国の人間が亡命‥つまりは勝手に逃げ出したのだ。ボラーが地球に対して何かしらの報復をしてくるのではないか?」

 

亡命希望者‥カチューシャが救助したボラー連邦属国のリベリア所属のクラーラについての扱いについてもスパイ説やボラー連邦からの報復についての意見が出た。

 

ただ、彼女からボラー連邦についての情報も地球側に齎されたのだが、現時点では地球側はその情報の真意を確認する方法が無い。

 

銀河系中心部へ調査を行いたいが、下手に調査隊を派遣してボラー連邦、ガルマン帝国との戦闘に巻き込まれ、地球がボラー連邦、ガルマン帝国から攻撃を受ける恐れもある。

 

「ですが、現状は銀河系中心部でボラー連邦、ガルマン帝国が戦争を行っている状況ですが、その戦争の決着がついた時、どちらかの星間国家がいずれ地球へ侵攻して来る危険もあります」

 

「その他に例の時空管理局の件もあります」

 

「時空管理局か‥‥」

 

「はい。現状、彼らの宇宙船技術はまだ地球のレベルには達していませんが、いずれは地球と同等のレベルに達してもおかしくはありません」

 

宇宙へ出る技術を持っているのだから、その技術を今後、更に発展させる事は十分に可能な筈だ。

 

それがいつになるのかは分からないが、時空管理局がその技術を手にしたら地球への侵攻もこれまでの時空管理局の行動から十分に考えられる。

 

「情報では、時空管理局は複数の植民地を保有しているみたいではないですか‥‥それらの植民地に所属する武装艦全てを徴収すると、地球艦隊の総数を上回るでしょう」

 

「技術が伴わなくとも、数で押し切ると言う訳か‥‥」

 

「‥‥」

 

この時、防衛軍の幕僚たちはガルマン帝国がデスラーが建国した星間国家であると言う事、時空管理局も独立を叫ぶエルトリアとの戦いに敗れ、もう一つの地球にちょっかいをかける余裕が無い事を知る由もなかった。

 

「時空管理局が多数の植民地を保有しているのであるならば、まだ彼らが認知していない惑星もある筈‥‥その中には地球人が居住可能な惑星もあるのではないでしょうか?」

 

「しかし、それは時空管理局の領海を犯す事にならないか?」

 

「彼らの主張では全宇宙が時空管理局の領海のようですから、既に我々は時空管理局の領海を犯している事になります」

 

幕僚の一人がかつて時空管理局の強硬派の局員が言い放った主張を皮肉を込めて言う。

 

「これまで鹵獲・回収した時空管理局の艦船のデータ解析からある程度の座標は入手しております」

 

「銀河系中心部で起きている星間戦争には十分な監視が必要と同時に地球側もこれまで停滞させていた宇宙開発にも着手すべきではありませんか?」

 

ボラー連邦とガルマン帝国との戦争に首を突っ込むつもりは毛頭ない。

 

だが、これまで外宇宙からの侵略者たちとの戦争で停滞していた宇宙開発も進めたい。

 

銀河系中心部では戦争が起きているので、そこへ調査隊を派遣するのは危険であるが、次元宇宙であるならば、銀河系中心部よりかは比較的に安全かもしれない。

 

しかもその宇宙には地球人が住める星があるかもしれない。

 

「‥‥一先ず、銀河系中心部で起きている星間戦争については、太陽系外周の監視と警備を強め、次元宇宙への調査隊を派遣については大統領、連邦政府との意見を交えた上で決める。そして、亡命希望者については救助したカチューシャ艦長に一任する」

 

いずれにしても全てが慎重な対応が必要な事例だった事で、この幕僚会議ではあくまでも今後の方針が決められただけであった。

 

一方、防衛軍の幕僚会議でも話題が上がったその時空管理局であるが、エルトリア軍のまさかの反撃で手痛い反撃を受け、残存艦はクロノの指揮の下、本局へと撤退の最中にあった。

 

「エルトリア軍がまさかここまでの軍備を整えているとは‥‥」

 

クロノはエルトリア星系での戦いは未だに信じられない様子だ。

 

決してエルトリア相手に慢心している訳ではなかった。

 

それに今回の遠征でエルトリアを占領出来るとは思っていなかった。

 

せいぜい、エルトリアの宇宙軍の半数を葬り去るくらいは出来ると思っていた。

 

しかし、実際はどうだ?

 

エルトリアの宇宙軍の半数どころか、此方が半数以上の艦を失う大敗北となった。

 

それに彼らは管理局にとって未確認の兵器も保有していた。

 

「それで、はやて。君の艦を撃沈した姿が見えない艦についてだが、君はその見えない艦の事を知っているみたいだったが?」

 

ヴォルフラムを始めとする後方部隊の艦を一方的に襲撃して来たエルトリアの新兵器についてクロノは、はやては何かを知っている様子だったので、本局への報告前に彼は、はやてから事情を聞いた。

 

「地球が暗黒星団帝国に占領されて、地球との交信が不通になった時期があったやろう?」

 

「ああ、あの時はどうしたのかと気になったな‥‥」

 

「そんで、私がリンディさんから密かに『もう一つの地球に何があったのか調査するように」って言われて、もう一つの地球に向かったんや‥‥」

 

「なるほど‥それで、地球が暗黒星団帝国に占領されている事実を知ったのか‥‥」

 

「うん。でも、その最中、哨戒中の暗黒星団帝国の艦船に見つかって追いかけられたんや」

 

「暗黒星団帝国の艦船に!?よく逃げ切れたな」

 

「うんにゃ、捕捉されたで‥‥もう一つの地球を占領したんやから、艦船技術は当然、管理局よりも暗黒星団帝国の方が上やった」

 

「どうやって生き残ったんだ?」

 

「防衛軍の艦船に助けてもらったんや‥‥それが、今回、ヴォルフラムを沈めた艦と同じ艦‥‥次元潜航艦やったんや」

 

「次元潜航艦‥‥それはどんな艦なんだ?」

 

「文字通り、宇宙空間で自分の周囲に別次元の断層を人工的に発生させてその次元断層に潜って自分の姿を消して、次元断層から攻撃してくるんや‥‥」

 

「人工的に次元断層を作る‥‥そんな事が可能なのか?」

 

「どんな仕掛けなのか分からへんけど、実際に次元跳躍も似たような技術やし、移動やなくて、姿を消す技術に転用したと思っているんや」

 

「なるほど‥‥しかし、今の管理局では次元潜航艦を作るのは無理だな‥‥それ以前にその艦の対策も必要と言う事か‥‥」

 

「そうやね‥‥今の所、対策は相手の魚雷を撃ち尽くす事しか対策があらへん」

 

「そんな兵器をエルトリアが持っているなんて、本局の連中が信じるか疑問な所だな」

 

はやてから次元潜航艦について情報を聞いたクロノは本局へと今回の敗戦を報告した。

 

クロノからの知らせを受けた本局は当然、蜂の巣をつついたような大騒ぎであった。

 

 

時空管理局 本局

 

「なにっ!?遠征艦隊が壊滅だと!?」

 

「そんなバカなっ!?」

 

「何かの間違いではないのか!?」

 

絶対に勝つと思っていただけにクロノから齎された遠征艦隊の敗北の報告を信じない者もいた。

 

しかし、被害報告から見ても遠征艦隊のほとんどが未帰還となっている事から嫌でも信じざるを得ない。

 

その被害の中に、はやてが艦長を務めていたヴォルフラムの艦名もあった。

 

「まさか、はやてさんの艦までも‥‥」

 

リンディはヴォルフラムの撃沈に驚愕した。

 

あのはやてが艦長を務める艦が沈むとは考えられなかった。

 

やがて、敗残兵となった遠征艦隊が本局へと帰還した。

 

リンディは居ても立っても居られずに、本局のドックへと向かいクロノたちを出迎えた。

 

ヴォルフラムは自沈したが、はやてたちヴォルフラムの乗員たちは無事だったので、クロノ、はやて、ナタルの姿を見たリンディはホッと胸をなでおろした。

 

「ハラオウン提督、八神艦長、バジルール艦長、帰還早々に申し訳ございませんが大会議室に向かってください」

 

三人に一人の局員が声をかける。

 

クロノたちは何故呼ばれたのか容易に想像がついた。

 

クロノ、はやて、ナタルはやれやれと思いつつ本局の大会議場へと向かった。




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