内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百六十八話 査問と試行錯誤

クイントが防衛軍病院の病室にて目覚め、防衛軍も太陽系外の惑星探査や次元世界への探査を半ば決めていたその頃、

 

ミッドチルダ‥時空管理局からの独立を宣言したエルトリア共和国‥‥

 

勿論、管理世界からの独立なんて時空管理局が許す筈もない。

 

案の定、時空管理局はエルトリア共和国に対して武力による鎮圧に乗り出した。

 

しかし、管理局員の中にはあそこまで大々的に独立を叫び、時空管理局がそう易々と独立なんて認める筈がない事、

 

時空管理局が武力行使をして来る事なんてエルトリア側も予測して、対時空管理局対策を万全にしているのではないか?と、思っている局員も居た。

 

だが、管理局員の大半が、

 

『エルトリアの鎮圧なんて簡単に出来る』

 

と、楽観視している局員が大半であった。

 

自信満々でエルトリアへと遠征していく時空管理局の艦隊‥‥

 

そして、エルトリア星系でエルトリア共和国の宇宙艦船と時空管理局の艦隊が衝突した。

 

鎮圧に出動した管理局員たちもエルトリアの艦隊なんて初戦で全滅できると思っていた。

 

しかし、実際に戦ってみると彼らの思惑は大きく外れた。

 

エルトリア軍の重魔導粒子衝撃砲と艦載機部隊によって管理局の主力艦隊は壊滅し、後方に居た部隊も異次元からの刺客によって、はやてが艦長を務めるヴォルフラム以下の艦艇に大きな被害を出した。

 

戦闘不能・航行不能となったヴォルフラムは機密保持のために自沈処分となった。

 

幸いにしてヴォルフラムの乗員に死者は出ず、乗員たちはクロノが艦長を務めるクラウディアに移乗し、本局へと帰還行動に入った。

 

エルトリア軍との交戦及びエルトリア星系必死に撤退し、残存部隊を指揮して本局まで命からがら帰ってきたクロノ、はやて、そしてナタルは上層部から呼び出されていた。

 

会議室では“陸”“海”“空”の高官たちが待っていた。

 

「では、帰還早々で済まないが、早速報告をしてもらおうか?」

 

「はい」

 

会議室に重苦しい沈黙が流れる中、最初に口を開いたのはクロノだった。

 

彼は手元の端末を操作し、ホログラムモニターにて凄惨な戦場の記録映像を映し出した。

 

そこには、管理局が誇る最新鋭艦が、光の奔流によって紙細工のように切り裂かれる光景が記録されていた。

 

クロノは毅然とした、しかしどこか苦い声で報告する。

 

「報告します。我々が対峙したのは、単なる独立派の武装集団ではありません。エルトリア共和国が投入した戦略兵器は、我々が保有している次元航行艦のアルカンシェル以上の威力があり、シールドを容易に貫通。直撃を受けた場合、防御は実質不可能です」

 

クロノはもう一度端末を操作し、時空管理局の次元航行艦が重魔導粒子衝撃砲に被弾する映像を再生する。

 

「加えて、エルトリア軍は次元の海でも使用できる艦載機を多数保有し、それを運用していました」

 

映像を操作して、次にエルトリア軍が使用している艦載機の映像を再生する。

 

高速で接近し、近距離でミサイルを撃ち込んでくるエルトリア軍の艦載機群の姿。

 

威力に関しては当然、重魔導粒子衝撃砲よりは劣るが、高速で‥しかも複数で行動し、ミサイルを一斉射して来るエルトリア軍の艦載機。

 

対空兵装がない時空管理局の次元航行艦はなす術なく多数のミサイル攻撃を受けて被弾する。

 

「エルトリアの連中、管理世界の住民でありながらまさか野蛮な質量兵器を使用するとは‥‥」

 

艦載機部隊が使用しているミサイルを見て、“海”の高官は忌々しそうに呟く。

 

「先行した艦隊は全滅に近い壊滅状態となり。残存艦艇も40%以上が深刻な損傷を負っています。幸い、ヴォルフラムの乗員はクラウディアに収容されましたが、もし撤退の判断が数分遅れていれば、我々もここに居られなかったでしょう」

 

ナタルが冷徹な数字を突きつける。

 

「ば、馬鹿な……そんな馬鹿なことがあってたまるか!!」

 

高官の一人が、机を叩いて立ち上がる。

 

「エルトリアはついこの間まで管理局と共同で次元航行艦を建造できるレベルの星だった筈だ。そんな高度な魔導技術、どこに隠し持っていたというのだ!? 報告の改竄ではないのか?」

 

「全て事実です」

 

クロノは冷ややかな視線で高官を見据える。

 

「楽観的な予測に基づき、ろくな威力偵察も艦隊運用も行わずに付け焼き刃な艦隊を送り込んだ結果がこれです。我々は『自分たちが最強である』という幻想によって、あまりにも大きな代償を支払いました」

 

「ハラオウン提督。貴官は我々を批判するつもりか!?」

 

「批判ではなく、現状の分析を述べているのです」

 

「八神艦長の艦も大きな被害を受けたと報告を受けましたが?」

 

リンディが話を逸らすかのように、はやてにヴォルフラム喪失の原因を尋ねる。

 

「はい」

 

続いて、自身の艦、ヴォルフラムを自沈まで追い詰められたはやてが、沈痛な面持ちで補足した。

 

「クラウディア、ヴォルフラム、ドミニオンを中心とした後方支援部隊を襲撃した正体不明の敵艦‥彼らは通常空間のレーダーを完全に無効化し、『次元の隙間』から直接攻撃を仕掛けてきました。これは、現在の管理局における次元航行理論を根底から覆す技術です」

 

「次元の狭間だと?」

 

「そんな所から攻撃が出来るのか?」

 

「はい。彼らは次元潜航艦を保有しています」

 

「次元潜航艦‥‥」

 

「それは一体どんな艦なのかね?」

 

聞き慣れない艦種に高官たちは首を傾げ、はやてに質問をする。

 

「自艦の周囲に人工的に次元断層や亜空間断層を発生させて、その空間に潜る事が出来る艦です。もう一つの地球においても同様の艦が居り、私は以前この目でその艦を見た事があります」

 

「もう一つの地球が保有‥‥」

 

「まさか、もう一つの地球がエルトリアに技術提供を‥‥」

 

「そうかもしれないな‥‥その次元潜航艦とやらの艦、あの質量兵器を使用する高速小型艇‥‥これらの技術はきっともう一つの地球がエルトリアに武器や技術を横流ししたに違いない」

 

此処でまさかのエルトリア軍の予想外の兵器がもう一つの地球からの提供だと主張する高官たちが現れた。

 

「あいつら、エルトリアを使って間接的に我々時空管理局の戦力を削ろうとしているのだな」

 

「エルトリアの独立運動も、もう一つの地球が焚きつけたのではないか?」

 

「ま、待ってください。それを決めつけるのは早計です!!」

 

はやては、険悪になる会議室の空気を鎮めるように、静かに、しかし重い言葉を続ける。

 

「確かにエルセアの背後には、我々の知らない『何か』が存在している可能性があります。あの技術力は、一惑星の開発速度を遥かに超えています。そして彼らは本気で、この管理局が管理する秩序そのものを塗り替えようとしていますが、その『何か』がもう一つの地球である確固たる証拠がありません!!」

 

「何を言うか!?」

 

「次元潜航艦や小型高速艇の技術をエルトリア、そしてもう一つの地球が保有していたのが何よりの証拠ではないか!?」

 

「確かにエルトリアともう一つの地球は同じ艦種を保有していますが、それがもう一つの地球から提供された技術である証拠とは言い切れません。実際にもう一つの地球、そしてその地球とこれまで戦ってきたガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国も、もう一つの地球と同じような技術の宇宙船を保有していました。同じような技術があるから、もう一つの地球が黒とは言い切れません。もう一つの地球がエルトリアに技術提供をしておらず、管理局の勝手な憶測でもう一つの地球に対して武力行為に及べば、管理局はエルトリアともう一つの地球との二正面作戦を取らざるを得ない状況になります」

 

「それに確実にもう一つの地球の宇宙艦船の技術は管理局よりも上です」

 

クロノが捕捉するようにもう一つの地球の宇宙艦船と時空管理局の次元航行艦との技術力の差を指摘する。

 

「……で、では、今後の対策はどうするのだ?」

 

“空”の高官が今後のエルトリアの対応について尋ねる。

 

「勿論、管理局は今後もエルトリアの独立なんて認めない‥いや、認めてはならない!!」

 

「そうだ!!今回は遠征に出した艦艇の数が少なかったのだ!!」

 

「本局と周辺の管理世界に駐屯している次元航行艦全艦を出せば、今度こそエルトリアの艦船など、次元の海の藻屑に変えてやる!!」

 

“海”としては当然、このまま負けてエルトリアの独立を認める訳にはいかず、第二次遠征を主張する。

 

「待ってください!!」

 

そこでナタルが声を上げる。

 

「今回、管理局が全ての戦力を投入していないようにエルトリアに関しても全ての戦力を投入していない可能性もあります」

 

ナタルの言葉に、会議室の温度がさらに数度下がったような錯覚を覚えるほどの静寂が広がった。

 

彼女の鋭い眼光は、感情に任せて再戦を主張する将官たちを真っ向から射抜いていた。

 

「な、何だと、バジルール艦長。君はエルトリアが出し惜しみをしたと言うのか?」

 

「その通りです」

 

ナタルは手元の資料を宙に投影し、エルトリア艦隊の陣形図を指し示した。

 

「今回の戦闘において、エルトリア軍は一貫して『自星系の防衛ライン』を死守することに徹していました。彼らが保有する次元潜航艦の隠密性能、および艦載機の機動力があれば、敗走する我々の背後を突き、本局近海まで追撃して壊滅させることも可能だったはずです。しかし、彼らはそれをしなかった。これは、彼らにとって今回の戦いが『実力行使による警告』に過ぎないことを示唆しています」

 

「バカな、そんなもの憶測に過ぎないではないか」

 

「その通りだ。連中は艦船が少なく、追撃すれば本局や他の管理世界からの増援を恐れて追撃してこなかったとも考えられるではないか?」

 

「そうかもしれませんが、本局を出る際、『エルトリアの鎮圧はこの戦力で十分だ』とあなた方は自信満々に仰っていましたが、その結果がコレです。格下のテロリスト、野蛮だと主張する質量兵器の前に我々はなす術無く敗北しましたが?」

 

「「「‥‥」」」

 

ナタルの指摘に“海”の高官たちは黙り込み気まずそうに視線を逸らす。

 

「しかし! このままエルトリアの独立を認めれば、管理局の威信は失墜する! 他の管理世界もエルトリアに追随して独立を叫び始めたらどうするつもりだ!?」

 

「だからこそ、慎重になるべきだと言っているのです!!」

 

はやてが毅然とした態度で立ち上がった。

 

「今、強引に全戦力を投入して返り討ちに遭えば、それこそ管理局は崩壊します。それに……もし高官の皆様がたがおっしゃる通り、エルトリアの背後に『もう一つの地球』が存在していた場合、我々が次に相手にするのは、あの波動砲を備えた艦隊や、ワープ航法を自在に操る軍隊になるのですよ?」

 

「……っ!?」

 

ガミラスや彗星帝国といった、次元を超えて版図を広げる巨大軍事国家と渡り合ってきた「もう一つの地球」の戦歴は、管理局の記録にも断片的に残っていた。

 

それらと正面衝突することの恐ろしさを、現場の人間である彼らは痛感していた。

 

会議室の重苦しい空気の中、それまで沈黙を守っていたリンディが口を開く。

 

「バジルール艦長、ハラオウン提督、八神艦長。今回の戦場を体験して来た貴方たちから見て、今後エルトリアに対して管理局が取るべき『現実的な』次の一手は何だと考えているのかしら?」

 

三人は顔を見合わせ、ナタルが代表して答える。

 

「一時的な停戦と外交官の派遣です。 武力による解決は、現在の我々の技術では不可能‥もしくは再建に長い期間を有します。なので、まずはエルトリアがどこまで本気なのか、そしてその背後に誰がいるのかを、戦場ではなく交渉の場で引きずり出す必要があります」

 

「ふざけるな!!君は次元の守護者たる我々時空管理局が、テロリストに頭を下げろというのか!?」

 

「テロリストではありません。彼らは管理世界から独立した一国家として我々の前に立ち塞がっているのです」

 

ナタルの冷徹な言葉が、将官たちのプライドを粉々に砕いていく。

 

エルトリア星系に漂う時空管理局の次元航行艦の数多の残骸。

 

それは、魔法技術を絶対と信じ、科学技術と質量兵器を軽視してきた管理局が迎えた、時代の転換点なのかもしれない。

 

「け、検討しよう。ただし、もし交渉が決裂した場合は……」

 

「その時は、時空管理局という組織と管理世界の存続を賭けた、本当の意味での『終末戦争』になるでしょう‥それくらいの覚悟が必要と言う訳です」

 

クロノのその言葉を最後に、会議室のモニターには、今もなおエルトリア星系で静かに、しかし力強く光り続ける共和国艦隊の灯火が映し出されていた。

 

重苦しい会議が終わり、会議室に居た高官たちは次々と退出する。

 

「くそっ、テロリスト相手に交渉だと?妄想も大概にしろ‥‥」

 

「それに、このまま独立なんて認めれば、管理局の威信に傷つくのは当然で、その他の管理世界にも独立なんてふざけた戯言を言い出す世界も増えるぞ」

 

「何としても交渉で纏まるような事がないようにしなければ‥‥」

 

会議室を後にした将官たちの足取りは重く、そしてその背中には隠しきれない焦燥と、どす黒い敵意が渦巻いていた。

 

彼らにとって、時空管理局は次元世界の絶対的な法であり、秩序そのものだった。

 

その権威が、魔導技術の未発達な「質量兵器」を操る辺境の惑星に傷つけられた。

 

その事実は、彼らのエゴが許容できる範囲を遥かに超えていた。

 

彼らは会議室を出た後、本局内のある所へと向かう。

 

本局のさらに深部、遮蔽回路が幾重にも張り巡らされた非公式の小会議室に数名の高官が集まっていた。

 

「堅物のバジルールやハラオウンの若造の報告内容はどこまで信じる?」

 

“海”の高官が、葉巻の煙を吐き出しながら低く呟く。

 

「火のない所に煙は立たぬ。実際、我々の艦隊は惨敗した。だが、交渉など言語道断だ。エルトリアの独立を認めれば、管理局の政策に反発を強めている連中が雪崩を打って離反するぞ」

 

「ああ。そうなれば管理局の予算は削減され、我々の地位も危うい。それだけは避けねばならん」

 

一人の高官が冷酷な光を瞳に宿して身を乗り出した。

 

「エルトリアの背後に『もう一つの地球』がいる……あの豆狸たちはそれを不確定だと言ったが、我々にとってはそれが『真実』でなければ困るのだよ」

 

「ほう、と言うと?」

 

「エルトリアという一惑星の反乱なら、これは管理世界内の不祥事だ。だが、外敵である『もう一つの地球』による侵略・技術供与の結果だということにすれば、これは『次元世界全体の危機』にすり替わる。全管理世界に非常事態宣言を出し、強制的に戦力を徴用する大義名分ができる」

 

高官たちは顔を見合わせ、邪悪な笑みを浮かべた。

 

「……なるほど。交渉に向かう外交官の船が、エルトリア、あるいは『地球製と思われる正体不明機』に襲撃されたとしたら……?」

 

「その瞬間、停戦の余地は消える。管理局は全戦力をもってエルトリア、そしてその背後にいるとされるもう一つの地球を討たねばならなくなる。たとえそれが、ハラオウンの若造が言った『終末戦争』になろうともな」

 

一部の高官たちが、エルトリアとの交渉、そしてその交渉の先の未来について邪悪な企みを検討している中、会議室を出たクロノ、はやて、ナタルの三人は、本局の展望デッキに立っていた。

 

「あの様子では納得していないな、あの連中たちは‥‥」

 

ナタルが硬い声で呟く。

 

それは彼女の武人としての直感で、先程の会議で見せた高官たちの言動が、反省ではなく、次なる策謀への準備であることを告げていた。

 

「ああ。管理局の歴史は長い。長すぎて、自分たちが負けるはずがないという傲慢さが、組織の骨の髄まで染み付いている」

 

クロノは無意識に展望デッキの手すりを握りしめる。

 

「はやて、ヴォルフラムのデータに、何か不自然な点はなかったか? あの次元潜航艦の動き‥‥まるで我々の出方を知り尽くしているようだったが‥‥?」

 

「残念ながら、無かったで‥‥恐らく此方の無線を傍受をされたか、哨戒中の次元潜航艦の哨戒網に運悪く引っかかってしまったか‥‥いずれにしても戦場が相手のホームグラウンドやったからな‥‥相手は地の利を生かして来た‥‥としか言い切れへん」

 

「それを含めて、エルトリアとの交渉‥‥これは『何か』を企んでいる者がいるのは間違いないだろうな」

 

「もしそうなら、今度の外交交渉も……」

 

「決裂する可能性が高いな‥‥独立を容認する代わりにエルトリアに対して高い関税や通行料金を取る、保有している兵器を全て破棄するか保有数に制限をかける‥‥などのエルトリアにとってのむことが出来ない無理難題な要求をするかもしれない。元々彼らは交渉を成功させる気なんて微塵もない。むしろ、エルトリアを怒らせて此方に攻撃をさせて戦闘継続の大義名分を得る‥‥」

 

「そんなっ!? それじゃあ、交渉に行く人たちも、エルトリアの人たちも‥‥!」

 

はやての声が震える。

 

管理局が守るべき「次元世界の平和と管理」「法の正義」という名の盾。

 

それが今、組織自体の腐敗とプライドによって、次元世界を焼き尽くす「火種」へと変わろうとしていた。

 

さて。その頃、エルトリア共和国との繋がりを時空管理局本局から一方的に疑われていること等知る由もない地球連邦では大きなプロジェクトが開始されていた。

 

※実際問題、地球側はエルトリア共和国とは一度も接触していないので、寝耳に水な上にひどい言いがかり。

 

 

宇宙艦艇ドック

 

「オーライ!オーライ!!」

 

現在、暗黒星団帝国の地球占領を脱し復興が推し進められていた地球の各地にあった大型宇宙艦艇建造用のドックがフル稼働していた。

 

しかし、作業員たちは頭を抱えずにはいられなかった。

 

 

 

「探査船なんだろ?なのに‥‥なんでこんなにデカいんだよ!!」

 

 

「おまけにまだ建造工程がまだ半分も進んでないんだぞ?二割でこれだぞ??」

 

そう、建造予定の艦がデカすぎたのだ。

 

何しろ、その大きさはメートルではなく、キロなのだ。

 

現在建造されている艦は、完成すれば地球連邦史上最大の大きさの宇宙艦艇となりえるジュピター級超大型調査採掘艦である。

【挿絵表示】

 

全長1400mという常識はずれな大きさを有する採掘艦で、あまりにも巨大な船体に比例するように大型の波動エンジンを四基備え、移民船のような居住区まで備える規格外船である。

 

それはまさに移動式の宇宙マンションと言っても過言ではない。

 

探査採掘の際に採取した気体資源の確保の為に船体に巨大なタンクを複数備え、艦首側には大型装甲コンテナを二基と四基のタンク型コンテナを備えるほか、艦首最先端に艦橋を備えている。

 

その船体規模に見合うように船体各所に対空用のパルスレーザーを格納している他、艦載艦として二隻のバラクーダ級砲艦が搭載されており、さらには艦載機を二個飛行隊の搭載可能としている上にパブリク突撃ミサイル艇を複数隻搭載可能となっているレベルの巨大さだ。

 

とはいえ、そのデカさのせいで、建造が遅々として進んでいないのだ。

 

これを地球各地の建造所で合計九隻も建造を開始しているので各地の造船技師たちも頭を抱えざるを得ないわけだ。

 

「てか、乗員はどうすんだよ!?船体が此処まで多いと、動かす人間も大勢必要だろう?」

 

「あっ、それは最近月村財閥が完成させた完全自立思考型のアンドロイドで穴埋めするって」

 

「いや‥‥それ、ダイジョブか?」

 

そんな会話をしつつも、作業員たちは必死に作業を続けていた。




次回 新型艦の建造に向けて
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