内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百七十三話 追跡者と改良

ガルマン・ガミラスから、地球への外交を担当するジュラの座乗艦を含めた全権大使艦隊が出発した頃、

 

地球では新たな艦艇の改良や改修作業が急ピッチで行われていた。

 

「だー!やっぱしこうなったか!」

 

「だから設計段階で下部にも砲塔を付けろって言ったのに!」

 

まずは、極東管区の肝いり新型突撃宇宙駆逐艦の『長波型』に欠陥が露呈したのだ。

 

先んじて、Block1という形で『長波』『清霜』『高波』の三隻が建造されたのだが、船体下部に砲口装備を装備していなかったのだ。

【挿絵表示】

 

これは、量産性向上と耐久性増大という狙いがあったのだが、現場や建造部門からは船体下部にも主砲を搭載すべきと何度も意見具申や上申があったのだ。

 

にもかかわらず、設計を強行した結果。

 

「なんで、旧型のサラミス級巡洋艦に負けてんだよ!?」

 

そう。試験相手になった旧型のサラミス級巡洋艦…しかも、波動エンジン搭載以外の改修を受けていないタイプである『ウラジオストク』相手に大敗を喫してしまったのだ。

【挿絵表示】

 

原因は、長波型よりも下方に位置した『ウラジオストク』が艦の両舷前後に装備する20㎝単装砲を連射して攻撃したのだが、長波型三隻は下方への砲撃手段が空間魚雷とミサイル以外は無い上に対空火力が高いサラミス級巡洋艦の対空火器に全弾迎撃されてしまった。

 

その為、船体を下方に向けようとしている間にハチの巣にされてしまって三隻とも撃破判定を食らってしまったのだ。

 

これでは、近々計画されている次元世界探査艦隊に同行させることが困難になってしまう。

 

おまけに艦設計を担った設計本部も面子丸つぶれになったので、至急改良をしろという無茶ぶりである。

 

「だったら最初っから下部に砲塔つけとけよ!?」

 

そりゃ現場からこんな苦情が来るのも当然である。

 

とはいえ、やらなければ現場が怒られる。

 

その為、現在建造中だった長波型四番艦の『陽炎』の設計を一部修正し、船体下部に船体上部にもあった連装主砲を搭載。

 

これをBlock2として就役させることとなった。

【挿絵表示】

 

※もっとも、現場では『改長波型』や『陽炎型』とも呼ばれることになったが、これは別の話である。

 

 

そして欧州管区にて建造された二種類の新型巡洋艦の艦名も決まった。

 

 

イタリア・ドイツ案をポーラ級巡洋艦

【挿絵表示】

 

イギリス案をロンドン級巡洋艦

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と命名された。

 

双方共に似たり寄ったりな外観や生産コストが同一であることから併用していくことが暫定的に決定されたが、この時、欧州管区でも最近は影が薄かったフランス軍区がとんでもない艦を就役させたので、大騒動になった。

 

 

 

 

欧州管区 フランス軍区

 

 

「ここに!ジャンバール級戦艦の就役を宣言する!!」

【挿絵表示】

 

ジャンバール級宇宙戦艦。欧州管区フランス軍区が欧州管区内の他の軍区にも秘匿して建造した超弩級戦艦であり、暗黒星団帝国の地球占領以前から建造が進められていたが、余りの巨大さと新機軸を盛り込んだ影響で相当遅くに就役することとなってしまった。しかし、その性能は折り紙付きであり、春藍級に匹敵する。

 

波動砲はアンドロメダ級を参考にし、主砲や副砲はアンドロメダ級はもとより春藍級をも凌駕する数を備えた。

 

その威容は春藍級をも圧倒するものであるが、その過剰ともいえる兵装には他の管区や欧州管区内の他の軍区関係者が引くレベルであった。

 

「武装積みすぎだろ‥‥」

 

特に、同時期にドレッドノート級よりは性能は上ではあるが、アンドロメダ級のような艦隊旗艦クラスには劣る性能を有するコンテ・ディ・カブール級宇宙戦艦の建造があと少しで完了するイタリア軍区関係者は大いに困惑した。

 

コンテ・ディ・カブール級宇宙戦艦

【挿絵表示】

 

なんせ、コンテ・ディ・カブール級は常識的な範囲での武装と量産性、運用性、装甲厚というドレッドノート級に僅差で勝るレベルに抑えた戦隊旗艦級戦艦として設計建造されるという堅実な設計である。

 

用は堅実な設計と身の丈に合った設計を突き詰めた結果の艦が、コンテ・ディ・カブール級だったので、身の丈以上の艦を作り上げたフランス軍区に呆れたというのもあった。

 

また、同時期に中国軍区の『定遠型護衛戦艦』二隻も就役した。

【挿絵表示】

 

艦名は『定遠』及び『鎮遠』と命名されたが、ジャンバール級に話題を掻っ攫われてしまって、新聞でいうと二面の記事レベルの扱いになってしまった。

 

これには中国軍区も苦虫を嚙み潰したような反応を示したが、そもそも無理して完成させた独自艦である。

 

ここは堅実に行こうという幹部の意見もあって、特段揉めることは無かった。

 

 

さて、一旦視点をガルマン・ガミラスの方に戻そう。

 

 

ジュラを乗せたデウスーラ・ローザを旗艦とするガルマン・ガミラス全権大使艦隊はガルマン星系を出て、地球のある方向に向けて航行を続けていた。

 

デウスーラ・ローザ

【挿絵表示】

 

 

 

しかし、それを見ていた者たちが居たのだ。

 

「司令官殿、ガルマン・ガミラス帝国軍の艦隊がガルマン星系を出撃していきます」

 

「何?」

 

それは地球連邦に亡命したクラーラの故郷の星であり、ボラー連邦の傘下国であるリベリア星の艦隊であった。

 

ボラー連邦の第三主力艦隊に派遣した補給艦隊が撃滅させられたリベリア星であったが、そもそもの話。第三主力艦隊もバーガー率いる宙雷戦隊の強襲で全滅しており、誰も正確な報告が出来ていなかったのだ。

 

一応、第三主力艦隊やリベリア星補給艦隊の更に背後に展開していた新型クロトガ型戦艦数隻が離脱に成功し、本国に第三主力艦隊とリベリア星の補給艦隊が壊滅したとだけは伝えられた為に、ベムラーゼ首相が仰天したのだ。

 

第三主力艦隊の再編と第四主力艦隊の出撃準備を命じる傍らで、作戦に協力したリベリア星の政府高官たちをほめつつ、新型のクロトガ型戦艦やアマンガ型ミサイル戦艦、ベレチューシャ型火力投射艦といった本国艦隊が有している艦艇を多数供与し、ガルマン星系の監視とガルマン・ガミラス帝国軍艦艇の襲撃を命じられたのだ。

 

もっとも、ベムラーゼ首相としてはボラー連邦の勢力圏内に進む場合のみ攻撃してほしいと思っていたのだが、言葉足らずなベムラーゼの欠点が災いし、ガルマン・ガミラス艦艇を無差別に攻撃するべきなのだなとリベリア星の軍部が受け取ってしまったのだ。

 

「よし!ベムラーゼ首相のご期待に応える絶好の機会だ!目的地まで追撃し、ガルマン・ガミラスの艦隊を撃滅するぞ!」

 

「しかし、閣下。司令部からの命令は…」

 

「ふん!さっさと撃滅し戻って再度監視を継続すればよいだろう!何より何処かしらに向かうにしてもそこはガルマン・ガミラスの影響圏下のはずだ!ならばガルマン・ガミラスの同盟国を減らすという手柄も立てられるはずだ!」

 

「おお!成程!!」

 

…はっきり言って、この指揮官はドアホウである。

 

確かに時には独断専行も必要な場面が必ず存在する。しかし、今現在のリベリア星の第一艦隊が司令部から受けていた命令は『ガルマン星系を出入りする敵艦隊及びガルマン・ガミラスに組する勢力の監視と分析、及び輸送艦隊の襲撃』である。

 

通商破壊戦や補給線寸断、監視任務においては司令部からの命令に従うことは基本であり、動く際には確認を取ることが求められる。

 

そこまで宙域を離れないのであれば問題は無いかもしれないが、相手の艦隊はどこへ行くのすら分からない上、艦隊規模でいえば全権大使であり、デスラーの娘であるジュラの護衛艦隊は精鋭ぞろいな上に数もかなりの物である。

 

おまけにジュラの艦隊の目的地はかつてのガミラス帝国や白色彗星帝国、暗黒星団帝国をはねのけた地球連邦である。

 

地球についてはボラー連邦もリベリアも知らないので除外するとしても、見た目からして数が多いガルマン・ガミラスの艦隊をつけて報告するだけならまだしも、襲撃すると言うのは馬鹿がすることである。

 

もっとも、リベリア側としてはベムラーゼ首相からお褒めの言葉をいただいた関係で舞い上がっており、まともな判断力が失われていたというのもある。

 

そしてこの行動がこのボラー連邦VSガルマン・ガミラス帝国の戦いという銀河情勢を良くも悪くも大きく動かしてしまうことになるとはこの時は誰も知らなかったのは言うまでもない‥‥。

 

「よし、ワープ軌跡の追跡に成功したぞ! 目標艦隊、依然として同一座標へ向けて航行中!」

 

「追え! 絶対に見失うな! ベムラーゼ首相への最高の手土産になるぞ!」

 

リベリア艦隊の艦橋では、功名心に憑りつかれた司令官が鼻息を荒くして指示を飛ばしていた。

 

彼らの視線の先には、ジュラを乗せたデウスーラ・ローザを中心とするガルマン・ガミラス全権大使艦隊が先行している。

 

ボラー連邦から供与された新型艦の性能に絶対の自信を持っていた彼らは、相手が「わざと追跡を許している」可能性など微塵も考えていなかった。

 

一方、その頃、彼らよりも宇宙空間を先行する全権大使艦隊の旗艦、デウスーラ・ローザの艦橋では、追跡者の存在などとうの昔に把握されていた。

 

護衛隊長のバーガーはジュラにこの愚かな追跡者の対処についてジュラに意見を求めていた。

 

『ジュラ様、後方よりボラー連邦の艦船と思われる艦隊が我が艦隊を追跡しております。その距離は徐々に詰まってきております。どうも連中はド素人の集団の様で、自らのワープアウト時の航跡波を消すことさえしておりません。ジュラ様、いかがなされますか? 我が護衛艦隊の反転攻撃をもってすれば、あの程度の小バエ、数分で宇宙の塵にできますが?』

 

バーガーの言葉に、艦長席に座るジュラは静かに首を振った。

 

「必要ありません。私たちの目的はあくまで地球との『外交』です。無用な戦闘で艦隊を消耗させることも、訪問先である地球の付近を血で汚すことも、お父様‥いえ、デスラー総統の御名に傷をつけることになります」

 

『ですが、敵は距離を詰めており、このままではいずれ追いつかれます』

 

「彼らが先に手を出してきたならば、正当防衛としての迎撃は許可します。ですが、今はそのまま航行を続けてください」

 

『ザー・ベルク』

 

バーガーは敬礼した後、通信を切った。

 

ジュラはバーガーとの通信後、手元のコンソールに表示された美しい青い星のデータを静かに見つめた。

 

かつて父の星、ガミラスが戦い、そして和解した勇者たちの星‥‥

 

そして、数多くの美味しい食べ物がある星‥‥

 

ジュラとしては自分たちを追いかける愚か者たちよりも、地球の方に興味津々な様子であった。

 

それから数日後‥‥

 

ガルマン・ガミラスの全権大使艦隊が、ついに太陽系外縁部、旧第十一番惑星宙域付近へとワープアウトした。

 

途中、親ボラー連邦派の惑星国家、バース星があるバジウド星系では、追跡するリベリア艦隊が手出し無用の通信を送った事で、ガルマン・ガミラスの全権大使艦隊はバース艦隊と遭遇することなく、バジウド星系を通過していた。

 

ボラーの属国の一つであり、その中でもいろいろな意味で特別な扱いを受けているバース星の指導者(大公)にして国防軍最高司令官であるラム・ラ=ジェンドラの指揮下にある参謀たちとしては、特大の獲物をリベリアに取られる件について抗議したが、追跡しているリベリア艦隊が、『これはベムラーゼ首相、直々の命令であり、我々の行動の妨害はボラー連邦に対する反逆である』とバース現地政府に打電すると、バース側もベムラーゼの直々の命令では逆らえず、ガルマン・ガミラスの全権大使艦隊と追跡するリベリア艦隊をスルーしたのだった。

 

「目標艦隊、通常空間へ遷移! 我々も出ます!」

 

直後、リベリア星の第一艦隊もまた、獰猛な猟犬のように彼らの背後にワープアウトしてくる。

 

「ハハハ! 逃げ場のない通常空間に出たな! 全艦、主砲およびミサイル発射管開け! 目標、あの艦隊の旗艦だ! 一斉射撃、撃てぇッ!」

 

ドアホウな司令官の号令により、リベリア艦隊から無数のビームとミサイルが放たれた。

 

宣戦布告すら省いた、完全な奇襲攻撃である。

 

「敵艦隊、発砲しました!」

 

「シールド展開! 各艦、迎撃戦よーい! ジュラ様を死んでも守り抜け!」

 

バーガーが吼える。

 

ガルマン・ガミラスの護衛部隊の練度はデスラーが選抜しただけあって圧倒的だった。

 

「別方向へ囮ミサイル発射!!」

 

放たれたミサイルの群れは、各艦から放たれた囮ミサイルと正確無比な対空砲火によって次々と誘爆し、ビームの直撃は強力な磁気シールドによって弾き返される。

 

「なに!? なぜ当たらない! ええい、構わん! 突撃しつつ面制圧で押しつぶせ!」

 

焦るリベリア艦隊司令官がさらなる前進を命じた、まさにその時だった。

 

『警告する。貴艦隊は現在、地球連邦の太陽系絶対防衛圏に侵入している。直ちに戦闘行為を停止し、武装を解除せよ。繰り返す』

 

全周波数帯域域に、強力な通信波が割り込んできた。

 

ガルマン・ガミラスの全権大使艦隊とリベリアの追跡部隊のワープアウト反応を捉えた地球防衛軍の第十一番惑星基地所属のパトロール部隊が現場に出動し、警告を送って来たのだ。

 

「な、なんだ?あの艦隊は!? どこから湧いて出た!?」

 

リベリア艦隊としては自分たちの横腹を突くような宙域から、突如として正体不明の艦隊が姿を現したのだから戸惑うのも無理はない。

 

「識別信号、ありません!!ボラーのデータバンクにも該当なし!!ガルマン・ガミラスと異なる別の勢力と思われます!!」

 

「ふん、辺境の野蛮人がしゃしゃり出てくるな!!邪魔なあの艦隊もまとめて吹き飛ばせ!!」

 

まともな判断力を失っているリベリア艦隊の司令官は、あろうことか地球連邦の哨戒艦隊に対しても攻撃を命じてしまった。

 

数発のビームが、哨戒艦隊の旗艦であるパシフィック級軽装甲巡洋艦こと、パトロール艦のシールドを叩く。

 

「敵艦隊より攻撃を受けました。シールド出力低下、微小」

 

地球側の艦橋では、オペレーターが淡々と報告を上げた。

 

哨戒艦隊の司令官は、ふぅと大きなため息をつき、被弾したことへの怒りよりも「また面倒なことになった」という顔で指示を出した。

 

「警告はしたぞ。こちら、第三十四哨戒艦隊。これより自衛戦闘に移行する」

 

「全艦、敵艦隊の懐に飛び込め!」

 

旗艦のパトロール艦が加速し、それに続くように護衛艦群も速度を上げてリベリア艦隊に肉薄する。

 

地球防衛軍第三十四哨戒艦隊の動きは、リベリア艦隊の予想を遥かに超えて迅速かつ洗練されていた。

 

「各艦、目標を敵艦隊の主力に設定!」

 

「諸元入力完了!!」

 

「射撃用意よし!!」

 

「てぇーっ!」

 

司令官の号令と共に、パトロール艦とそれに続く護衛艦群の砲門が火を噴いた。

 

青白いショックカノンの奔流が、絶対零度の宇宙空間を切り裂いてリベリア艦隊へと殺到する。

 

「なっ……敵の反撃!? ええい、各艦シールド最大張――」

 

リベリア艦隊司令官の指示が終わるより早く、ショックカノンは彼らが絶対の自信を持っていた最新鋭クロトガ型戦艦の装甲を、まるで紙のように易々と貫き、次々と爆散させていった。

 

ボラー連邦から供与された強固な装甲も、波動エネルギーを応用した地球の兵器の前では何の役にも立たなかったのだ。

 

まぁ、ガルマン・ガミラスの宇宙艦船のエネルギー波も地球とほぼ同じ波動エネルギーを使用しているので、当然地球艦のショックカノンもボラー連邦の宇宙艦船に有効だった。

 

「ば、馬鹿なッ!? 我が軍の最新鋭艦が、あんなちっぽけな辺境の船に落とされるだと!?」

 

司令官は信じられないものを見る目でメインスクリーンを見つめた。

 

彼我の戦力差は圧倒的であるはずだった。

 

相手は辺境惑星に所属する小規模な哨戒部隊‥‥

 

一方、こちらは本国から供与された最新鋭艦で構成された艦隊‥‥

 

にもかかわらず、一方的に蹂躙されているのは自分たちの方だった。

 

「左舷より空間魚雷接近! 回避間に合いません!」

 

「機関部被弾! 出力低下、航行不能になります!!」

 

「司令官閣下! 第四戦隊、全滅しました! このままでは我が艦隊は全滅です!!」

 

司令官の下には悲鳴にも似た報告が次々と飛び込んでくる。

 

地球側の艦艇は、圧倒的な機動力でリベリア艦隊の懐に飛び込み、的確に急所を穿っていく。

 

対するリベリア艦隊の反撃は、狂気のせいで照準も投げやりで地球艦に致命的なダメージを当てる事が出来なかった。

 

戦闘は、ものの数分で決着がついた。

 

リベリア艦隊は旗艦を含む過半数の艦艇を失い、残存艦も航行不能に陥るか、完全に戦意を喪失して降伏のシグナルを発していた。

 

あの「ドアホウ」な司令官の乗る旗艦も無惨に大破し、彼らの野望は太陽系の入り口で木っ端微塵に砕け散ったのである。

 

周囲の安全を確保した第三十四哨戒艦隊の旗艦パトロール艦から、再び全周波数帯域域に通信が入った。

 

今度は、警告ではなく、ガルマン・ガミラス側に向けられたものだった。

 

第三十四哨戒艦隊も当然ガルマン・ガミラスの全権大使艦隊の存在には気づいていた。

 

しかし、ガルマン・ガミラスの全権大使艦隊は攻撃態勢を取らなかったので、第三十四哨戒艦隊はまずは攻撃して来たリベリアの追跡艦隊を先に排除したのだ。

 

『こちら地球防衛軍・第三十四哨戒艦隊。貴艦らの所属、目的を述べよ。繰り返す、貴艦らの所属、目的を述べよ』

 

ジュラは第三十四哨戒艦隊旗艦のパトロール艦へ通信を送る。

 

『当艦はガルマン・ガミラス帝国、全権大使座乗艦デウスーラ・ローザ。こちらに交戦の意思なし。繰り返す、こちらに交戦の意思なし。地球連邦及び地球防衛軍との会談を求む。繰り返す、地球連邦及び地球防衛軍との会談を求む』

 

デウスーラ・ローザからの通信を受け取った第三十四哨戒艦隊旗艦のパトロール艦の艦内は驚愕する。

 

「ガルマン・ガミラス‥‥」

 

「それってこの前、司令部から通達があったガルマン帝国の事か!?」

 

「でも、ガミラスって‥‥」

 

「司令官、一体どういう事でしょう?」

 

「わ、分からん‥一先ず、第十一番惑星基地及び地球司令部へ緊急伝だ!!」

 

「は、はい!!」

 

第三十四哨戒艦隊旗艦のパトロール艦からの緊急伝は司令部を驚愕させたのは言うまでもなかった。

 

「なにっ!?ガルマン帝国の使者だと!?」

 

「はい。それに、その使者の艦隊を追跡する様にボラー連邦の宇宙艦船と思われる艦船も確認されました」

 

「ガルマン帝国にボラー連邦の艦が一度に‥‥それで、対処は?」

 

「はっ、ガルマン帝国側は交戦の意思がなかったそうですが、ボラー連邦側は発砲した為、武力対処を取ったとの事です」

 

「‥‥」

 

地球側は銀河系中心部での戦乱に首を突っ込まず、別次元の探査を行おうとした矢先にその戦乱原因の勢力が一度に太陽系に来てしまった‥‥

 

(大統領も頭を抱えている事だろう‥‥)

 

「至急、大統領官邸に連絡をとってくれ」

 

「承知しました」

 

藤堂は急ぎ、大統領と連絡を取る。

 

「大統領、既にご承知かもしれませんが、太陽系内にガルマン帝国及びボラー連邦の宇宙艦船が出現しました」

 

『うむ、私も先ほど、その知らせを聞いた‥‥藤堂長官、彼らはやはり地球を狙っているのかね?』

 

「ボラー連邦側は臨検にあたったパトロール部隊に発砲したとの事ですが、ガルマン帝国側は交戦の意思がないとの事です」

 

『‥‥長官、対処を誤れば地球はガルマン帝国、ボラー連邦の双方から狙われることになる。慎重な対応を頼む』

 

「承知しております」

 

大統領との通信を終え、藤堂はガルマン帝国が一体何の目的で太陽系内に来たのか?

 

藤堂はスクリーンに映し出された『デウスーラ・ローザ』のシルエットを見つめながら、静かに口を開いた。

 

「まずは相手の真意を確かめねばならん。第十一番惑星基地の第三十四哨戒艦隊に伝えよ。ガルマン・ガミラスの全権大使艦隊を地球軌道まで丁重に、かつ厳重に護衛しろとな」

 

「よろしいのですか? 万が一、罠であった場合は‥‥?」

 

参謀長の西郷が懸念を口にするが、藤堂は力強く首を横に振った。

 

「相手はあの『ガミラス』の名を冠している。かつての過酷な戦い、そしてイスカンダルへの旅路を経て、我々はガミラスと和解した。その名を継ぐ者たちが、無用な流血を望むとは思えん。それに、先のボラー連邦とやらの艦隊への対応を見る限り、彼らに敵対の意志がないのは明白だ。それに……」

 

(ボラー連邦からの亡命者の話では、相手は銀河系中心部の二強の星間国家‥‥対応を誤ればかつてのガミラス戦役以上の被害を地球は受けるやもしれん)

 

「それに?」

 

「未知の次元への探査を控えた今、無用な戦端を開くわけにはいかん。彼らが対話を求めているのなら、我々も誠意をもって応えるべきだ。全艦隊に第2種警戒態勢を維持させつつ、使者を迎え入れる準備を進めよ」

 

「はっ! 直ちに第三十四哨戒艦隊、並びに各方面軍へ通達します!」

 

司令部は、緊張感を保ちながらも新たな来訪者を迎え入れるための慌ただしい動きへと移行していった。

 

 

デウスーラ・ローザ 艦橋

 

【挿絵表示】

 

『こちら地球防衛軍・第十一番惑星基地所属、第三十四哨戒艦隊。ガルマン・ガミラス全権大使艦隊の地球への訪問を歓迎する。これより当艦隊が、地球軌道上の指定宙域まで先導を行う。航行中は武装の火器管制システムをオフにし、我が艦隊の指示に従い、本艦に続航されたい』

 

パトロール艦からの毅然とした通信に対し、ジュラは艦長席で微笑みを浮かべ、落ち着いた声で返答した。

 

「こちらガルマン・ガミラス帝国全権大使艦隊旗艦、デウスーラ・ローザ。地球防衛軍の厚意に感謝します。我々は貴艦隊の指示に従い、指定宙域まで随伴しましょう。地球への道案内、よろしくお願いいたします」

 

全権大使であるジュラを乗せたデウスーラ・ローザを含む艦隊は第三十四哨戒艦隊のパトロール艦、護衛艦を先頭に太陽系内へと突入した。

 

ジュラは眼前の宇宙空間をジッと見つめる。

 

その先には、美しく青く輝く地球が待っているはずだ。

 

「お父様が認めたヤマトの戦士たち‥‥そして、美味しいスイーツと食文化の数々‥‥地球とは、どれほど素晴らしい星なのでしょうね」

 

ジュラの瞳は、外交という重責よりも、まるでこれから遠足に向かう少女のようにキラキラと輝いていた。

 

(やはり、そっちが本命ですね)

 

メルダをはじめとする艦橋のクルーたちは、心の中で密かに盛大なツッコミを入れたが、もちろん口に出して総統の愛娘の機嫌を損ねるような愚か者はこの艦にはいなかった。

 

こうして、リベリア艦隊というドアホウな招かれざる客を排除した地球防衛軍の護衛のもと、ガルマン・ガミラス全権大使艦隊はついに太陽系の中枢、地球へと足を踏み入れることとなる。

 

かつての仇敵であり、後に無二の友となったガミラス‥‥

 

その名を継ぐ新たなる帝国の使者と、次元世界への進出を目前に控えた地球連邦‥‥

 

彼らの来訪と会談が、この先の銀河の勢力図、そして地球の運命にどのような変革をもたらすのか。

 

歴史の巨大な歯車は、太陽系という舞台でまた一つ、大きく動き出そうとしていた。




次回 次元世界の対話の準備と裏工作
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