内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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今回は次元世界側の話がメインです!


※ちなみにボラー側の登場人物の内、ヤマトⅢとヤマト3199双方に登場した人物は3199版の姿をイメージしてください!ボラー連邦軍の軍服も基本は3199版です!


第百七十四話 次元世界の対話の準備と裏工作

地球連邦がガルマン・ガミラスと初接触し、属国ではあるがボラー連邦加盟国と交戦する事態になった頃、

 

次元世界でも動きがあった。

 

なんせ、時空管理局が自信満々で送り込んだ派遣艦隊が大敗北し、命からがら逃げ延びてきた事実がマスコミ各社に露呈し、関係各所だけでなく、遺族団体からも抗議が殺到していたのだ。

 

おまけに、この派遣艦隊の三分の二に近い次元航行艦が轟沈した結果、次元世界の治安維持にも支障が出てきたのだ。

 

これには流石の三提督からも圧力が掛かり、最低でも治安維持を出来るレベルまで艦艇数が復旧するまでの期間は停戦協定を結ぶことに決まった。

 

とはいえ、強硬派としては不満しかなく‥‥

 

「くそっ!あの老いぼれどもめ!」

 

「何故我々時空管理局が、あんなテロリスト共と交渉をせねばならんとは!」

 

と、会談自体に反発していた。

 

まぁ、彼らの中にも一旦休息期間を設けて大兵力で鎮圧するべきという慎重派もいたのですぐに暴発するということが無かったのが幸いだが、それでも不満があった。

 

「それで?停戦条約の条文への裏工作はどうだ?」

 

「駄目です。ハラオウンの女狐どもや“陸”が主導権を握っているせいで全く干渉できません!」

 

今回の停戦条約は三提督からの要請で、リンディら“海”の穏健派及び“陸”が主導して進めていたのだ。

 

地球連邦に送った書状は“海”の強硬派が主導して作成した結果、地球連邦側の印象を悪くした前科があった上、今回の大敗によって“海”や“空”の強硬派に任せてはエルトリアとは絶対に停戦が出来ないと判断した三提督の英断ともいえるだろう。

 

「くそ…!何か手立てはないのか!?」

 

「……一つだけ、禁じ手がございます」

 

「なんだ……?」

 

「『狂鳥』どもを解き放つのさ。奴らなら、我々の手を汚さずに今回の停戦協定の場を荒らしてくれる。それにその罪はエルトリアもしくは『狂鳥』どもが被ってくれる」

 

「おぉ。それはいい手だ。早速手配しろ、ただし我々の存在がバレぬようにするのを忘れるな」

 

「承知しております」

 

薄暗い会議室で交わされた強硬派の密約。その依頼は、次元世界の裏社会を拠点とする武装集団「フッケバイン一家」の元へともたらされた。

 

さて、強硬派が怪しいたくらみをしていた頃、はやてはなのはやフェイトと話していた。

 

「はやてちゃんが無事で本当に良かったよ~」

 

「うん‥‥ヴォルフラムが沈んだって聞いたときは生きた心地がしなかったし‥‥

 

なのはとフェイトははやてにそう話す。

 

「ありがとうな…?」

 

はやても意気消沈気味ではあるが、そう返す。

 

「それで、何があったの?」

 

なのはの言葉にはやては説明する。

 

エルトリアがいつの間にか時空管理局どころか、第二の地球やその地球が交戦したというこれまでの星間国家群に匹敵するであろう艦艇を有していた事、次元潜航艦の存在、航宙機の存在など‥‥

 

「エルトリアが次元潜航艦に宇宙で使える航空機を‥‥」

 

「うん。時空管理局よりもどちらかと言うともう一つの地球寄りの兵器ばかりを持っとった」

 

はやての体験談を聞いたなのはは唖然としたが、フェイトは全く違う印象を抱いた。

 

(やっぱりね‥‥)

 

そう、フェイトは第二の地球での体験から、時空管理局に対して独立宣言するのだから事前に長い時間をかけて何かしらの手段を有していると見抜いていたのだ。

 

「それで、これからはどうなりそうなの?」

 

「一応、エルトリアとは停戦協定を結ぶ交渉に進むと思うんやけど‥‥」

 

はやてはクロノたちと話した懸念を話す。

 

「管理局の強硬派が何かしらの妨害工作をしてくるんじゃないかと思っている」

 

「で、でもそんなことするかな?」

 

なのはは争いを一時的とは言え、止める行為なのにそれを妨害するなんて信じられないようだが、フェイトはあり得ると思った。

 

地球にいた際に束の部屋に合った戦史の本を読んでみた際に書いてあったが、古今東西、どこの国家でも休戦や終戦の為の会議を行おうとすると、国内の反対派が進行を妨害したりクーデターを起こして戦争を続けようとしたりしてきたのだ。

 

長い間、次元世界の守り手として活動してきた時空管理局もここ最近は驕りなどから傲慢な態度が目立つ。

 

そんな行動があからさまな強硬派がこのまま黙って時空管理局の大敗を認めるとは到底思えない。

 

「何をするか予想がつかないんよ…。だから、今回の停戦条約締結に乗り気なエルトリア側も頭を抱えているみたいなんよ」

 

「え?そうなの??」

 

なのはは、はやての言葉に意外そうな返答をする。

 

エルトリア側としては、時空管理局側を徹底的に攻撃したいはずだと思っていたのだ。

 

とはいえ、エルトリア側としても事情があった。

 

そもそも今回の独立戦争自体、エルトリア側としても交渉で独立が成せるのであればやぶさかではなかったのだ。

 

まぁ、案の定と言うべきか時空管理局側が認めずに武力鎮圧に乗り出してきたので戦争に発展したわけだが…。

 

その為、エルトリア側も戦略構想が星系防衛のみであり、未だ時空管理局本局まで遠征して攻略戦をするなんて大それたことなど出来る戦力も、人材も、時間的猶予も無かったのだ。

 

先のエルトリア星系攻防戦でもエルトリア側の艦艇も複数轟沈し、救難活動をした結果多少の人員は救助出来たが、これまで育成してきた多数の優秀な人員はどうしても失ってしまったのだ。

 

エルトリア側としても人材再育成と教育、艦艇建造には時間が必要な上にそもそも一星系の人的資源にも限りがある。

 

よって、時空管理局との停戦交渉の場は是が非でもほしかった上、多少なりとも休戦期間が欲しかったのだ。

 

とはいえ、エルトリア側にも強硬派が居るのでそこら辺の調整しなければならないようだ。

 

「ねぇ、はやて」

 

「ん?どしたんフェイトちゃん?」

 

「一応、会談メンバーには信頼できる面々だけで固めたほうが良いと思うよ?」

 

この提言が後に良い方向に進むことになったのは皮肉である。

 

 

その頃、次元世界のとある宙域では‥‥。

 

 

「カレンー!なんか時空管理局から依頼がきたぜー?」

 

「へぇ……。お堅い管理局のお偉いさん方も、随分と切羽詰まっているみたいね」

 

狂鳥…フッケバインファミリーに強硬派から依頼が来ていた。

 

カレンは手元の端末に表示された依頼書を眺めながら、面白そうに唇を歪めた。

 

依頼の内容は至極単純、「エルトリアとの停戦交渉を物理的に妨害し、交渉を破綻させること」‥そのための資金と、管理局の警備網のバックドア(抜け道)の提供までご丁寧に添付されていた。

 

「自分たちの手を汚さずに平和の芽を摘もうなんて、正義の味方にしてはずいぶんと腹黒いやり方だと思わない?しかも、これって私たちフッケンバインの罪になるってことでしょ?」

 

「カレン、受けるのか? 罠の可能性もあるぞ?」

 

ファミリーの一人である「ヴェイロン」が懸念を口にするが、カレンはフッと鼻で笑った。

 

「ふふ、罠だとしても、暴れ回るついでに管理局の面子を丸潰れにしてやれるなら安いものよ。それに、第二の地球だかエルトリアだか知らないけど……未知の兵器には興味があるしね。さぁみんな!準備して! 久しぶりの大仕事よ!」

 

フッケバイン一家が歓声を上げる中、カレンの瞳は獲物を狙う猛禽のように鋭く光っていた。

 

まぁ、この行為が後々強硬派を破滅に導くことになるとは誰も予想できなかったが‥‥。

 

 

さて、地球を襲ったリベリア星第一艦隊だったが、そもそも監視ポイントから勝手にいなくなっていたことや、バース星からガルマン・ガミラスの艦隊を追跡していたという報告が来たことにボラー連邦軍の司令部は頭を抱え、辺境巡視艦隊584という部隊に捜索を命じた。

 

 

辺境巡視艦隊584 旗艦 ガノンダ型航宙母艦「ラブロコフ」

【挿絵表示】

 

「まったく‥‥。属国とはいえ満足な監視業務も出来んのか‥‥?」

 

そう艦橋の椅子に座って愚痴るのは司令官兼政治将校のヴィルキ・ボローズである。

 

彼は元々、ガルマン星の総督であり優秀な将校であったが、偶々本国に用事があって側近のチェフ・レバルスと共に座乗艦の「ラブロコフ」に乗り、統治・防衛を部下たちに任せた上で小艦隊と共に帰国していたタイミングでデスラーによってガルマン星を奪われてしまった。

 

彼自身は優秀な将校であり、統治事態も苛烈な方法で各地の属国惑星や植民地星の経営を台無しにしてしまうことが多いボラー本国出身の将校の間でも長年にわたってガルマン星を経営してきた実績があったことや、そもそも彼自身は失態を犯していないという点があったことから本来なら処罰はされなかった。

 

とはいえ、他の将校たちの手前。無罪放免というわけにも行かなかったベムラーゼ首相の判断によって辺境巡視艦隊584部隊の指揮官兼政治将校にされてしまったのだ。

 

おまけにこの艦隊の規模は旗艦であるガノンダ型を含めても、

 

ガノンダ型航宙母艦×1

【挿絵表示】

 

新型クロトガ型戦艦×7

【挿絵表示】

 

アマンガ型ミサイル戦艦×8

【挿絵表示】

 

ベレチューシャ型火力投射艦×2

【挿絵表示】

 

というボラー本国軍の所属としてはさみしい艦隊規模なので、腐ってしまうのも致し方ない。

 

「ボローズ様、とはいえここで良い働きを見せれば本国に帰還することも夢ではございませんぞ?」

 

「レバルス、ことはそう簡単なことではないぞ?」

 

ボローズは側近の政治将校であるレバルスの言葉に頭を抱えつつ、酒を煽ったが彼の不満も分からなくもない。

 

そもそも、この艦隊自体が本来はガルマン軍がいないであろう宙域の巡視艦隊である。

 

それをいきなり最前線近郊に向かわせろと言われたせいで故障中である「ラブロコフ」のボラー砲の修理が終わっていないのに向かうことを強いられているのが現状だったのだ。

 

「全く‥‥一体どこに行ったのだ?リベリア星の連中は?」

 

ちなみに、この任務が彼が死ぬことなく手柄を上げることになるとは誰も予想できなかった。

 

ボローズたちはリベリア艦隊の残した空間航跡を辿り第十一番惑星外縁部まで到達していた。

 

「ボローズ様! 前方に艦影反応! 強大な重力震を検知しました!」

 

「なんだと? リベリアの艦隊か?」

 

「いえ、艦影が違います……こ、これは! ガルマン・ガミラスの艦艇です!」

 

メインスクリーンにノイズ混じりの映像が映し出される。

 

そこには、緑色に塗装された見慣れたガルマン・ガミラスの巡洋艦の姿があった。

 

ボローズは肘掛けを強く握りしめた。

 

ガルマン星をデスラーに奪われた忌まわしい記憶が脳裏を過る。

 

「ガルマン・ガミラスだと……! おのれ、こんな辺境で何を……!」

 

「ボローズ様! 奴らの数は多くありません! 今こそ我々の力を見せつける絶好の機会ですぞ!」

 

側近のレバルスが好戦的な笑みを浮かべて進言する。

 

しかし、ボローズは怒りに任せて突撃を命じるような愚将ではなかった。

 

彼の元・ガルマン総督としての卓越した戦術眼が、スクリーンの映像に違和感を覚えたのだ。

 

「待て、レバルス……よく見ろ」

 

「は……?」

 

「ガルマン・ガミラスの艦隊の周囲を囲んでいるあの見慣れぬ艦影……あれは我々のデータにはない。それに、あの無駄のない陣形……ただの哨戒部隊ではないぞ」

 

スクリーンを拡大すると、ガルマン・ガミラスの艦艇と並走するように、青みがかった灰色の装甲を持つ未知の艦艇――地球連邦軍の艦艇――が整然と陣形を組んでいた。

 

(あの未知の艦隊……もしや、あれが噂に聞く『新たな勢力』か? ガルマン・ガミラスと共に行動しているだと……?)

 

ボローズの頭脳が高速で回転する。

 

ここで手負いの18隻で突撃すれば、返り討ちに遭う可能性が高い。

 

だが、この「未知の艦隊とガルマン・ガミラスが結託している」という極秘情報を本国に持ち帰れば、あるいは……。

 

「レバルス、全艦に第一級戦闘配備を命じよ。ただし、一切の攻撃は許可せん」

 

「なっ……! 攻撃しないのですか!?」

 

「馬鹿者! 故障中のラブロコフを含めたこの戦力で、あの練度の高い混成艦隊に挑むなど自殺行為だ。……だが、運命の女神はまだ私を見捨ててはおらんらしい」

 

ボローズの口角が僅かに吊り上がった。

 

「奴らの通信電波、機関の出力データ、ワープ航跡……すべてを記録しろ。我々はこの情報を手土産に、必ずや中央へ返り咲く。……いや、状況次第では……」

 

ボローズの瞳に、単なる復讐心ではない、野心と打算の炎が灯った。

 

時空管理局が内紛の火種を抱え、次元世界が揺れ動く中、ボローズのこの判断が、地球連邦、ガルマン・ガミラス陣営とボラー連邦の勢力図に予想外の波紋を呼ぶこととなる。

 

 

次元世界や外宇宙で各勢力が緊迫した駆け引きを繰り広げていたその頃‥‥

地球連邦軍が誇る最前線の一つ、月基地(ルナベース)の一角では、宇宙の命運とは全く無関係な局地戦が勃発していた。

 

「ハ・ル・ト・マ・ンッ!! またこんなに散らかして!!」

 

月基地の堅牢なチタン合金の扉を蹴り開けたゲルトルート・バルクホルン(トゥルーデ)の怒声が、無機質な廊下に響き渡る。

 

彼女の目の前に広がるのは、地球連邦の最新鋭設備が備えられたはずの個室……ではなく、脱ぎ散らかされた制服、読みかけの漫画雑誌、そして食べかけのお菓子の包み紙が形成する「地獄のジオラマ」だった。

 

「むにゃ……あと五分……いや、五時間……」

 

ゴミの山――もとい、衣類と雑誌のミルフィーユ構造の頂点付近で、ドイツが誇る超絶エース、エーリカ・ハルトマンが毛布にくるまりながら幸せそうに寝言を呟いている。

 

(どうしてこの天才は、戦場の宙以外ではこうも駄目なのだ……!?)

 

バルクホルンは頭痛を堪えるようにこめかみを押さえた。

 

現在、彼女たちはドイツが就航させた最新鋭空母、グラーフ・ツェッペリン所属の航空隊配属が決まっており、次元探査を専門とする調査戦艦ラボラトリー・アクエリアスの就役を待つためにグラーフ・ツェッペリンと共にこの月基地に出向してきている。

 

地球連邦軍の規則正しい生活態度はバルクホルンにとって心地よいものだったが、相棒にとっては単なる「窮屈な縛り」でしかなかったらしい。

 

「起きろ!!ハルトマン!! 今日は技術部と合同でミーティングがある日だろう!? それになんだ?この部屋は!?足の踏み場もないぞ!」

 

「あっ、トゥルーデ。おはよう~……」

 

ハルトマンはゆっくりと薄く目を開けると、ベッドの上から面倒くさそうに片手を上げた。

 

「そこは私の『戦略的エントロピー地帯』だから気をつけて。左へ三歩進んだところにあるチョコバーの地雷原を踏むと、クローゼットから雪崩が起きるトラップになっているから……」

 

「お前の部屋は要塞か何かか!!?」

 

バルクホルンがツッコミを入れたその時、開け放たれたドアの隙間から、月基地に配備されている地球連邦製の最新鋭自動清掃ドローンが「ウィーン」と軽快な駆動音を立てて入ってきた。

 

ドローンはハルトマンの部屋の惨状をカメラアイで捉え、内部のAIで瞬時にゴミの分別と清掃ルートを計算し始めた。

 

……が。

 

『ピピッ……警告。規定容量ヲ大幅ニ超過。清掃不能オブジェクト多数。……システムエラー。処理能力ノ限界ニ達シマシタ』

 

プシュー、と虚しい排気音を立てて、ドローンのカメラアイが明滅し、そのまま機能停止してしまった。

 

最新鋭のAIすら、ハルトマンの作り出した混沌(カオス)の前に敗北したのである。

 

「ほらね。地球連邦の最新技術でも、私の芸術的な空間配置には勝てないんだよ」

 

ブチっ!!

 

「自慢することかッ!!」

 

ハルトマンのドヤ顔に、ついにバルクホルンの堪忍袋の緒が切れた。

 

額に青筋を浮かべたバルクホルンは、ズカズカと部屋に踏み込む(チョコバーの地雷原は持ち前の身体能力で強行突破した)。

 

「いいだろう。機械やAIに処理できないなら、私が直々に『制圧』してやる!」

 

「わあああ!? トゥルーデ、目がマジ! 目がマジだよ!?」

 

バルクホルンは怒りのパワーを発揮して、はハルトマンが寝ているベッドのマットレスごと、彼女を軽々と持ち上げた。

 

「まずは貴様をシャワールームに放り込み、その間にこの部屋を原型がなくなるまで清掃(殲滅)してくれる!!」

 

「いやあああ! 私の完璧なエコシステムが壊されちゃう! 誰か助けてー! 基地の備品(マットレス)が曲がっている、曲がっているからぁ!」

 

月基地の堅牢な防音壁ですら防ぎきれないハルトマンの悲鳴が響き渡る。

 

外宇宙でどれほどの危機が迫っていようと、この二人の日常(ドタバタ)だけは、決して揺らぐことはないのだった。




次回 狂鳥の強襲と勘違い
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