内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百九十二話 時空管理局へ

未知の脅威「エクリプスウイルス」と、危険な次元犯罪者カレン・フッケバインの追跡を行っていた特務六課。

 

しかしその最中、別次元から現れた「地球防衛宇宙軍」の巨大探査艦隊と偶発的に遭遇してしまう。

 

事情聴取のため時空管理局本局への同行を求めるなのは達だったが、主権国家の正規軍としての威信と安全を重んじる藤堂司令はこれを断固拒否。

 

交渉は平行線を辿っていた。

 

決裂の危機を救ったのは、カレンの凶刃により重傷を負っていた特務六課部隊長・八神はやてだった。

 

彼女が病床から示した指揮官としての誠意と、「不当な身柄拘束の禁止」「機密保持の徹底」という確約を受け、藤堂は渋々ながら本局への同行を承諾する。

 

その後、未知のウイルスに対して全艦規模の徹底的な防疫処置を即座に実行する防衛軍の姿に、なのはやフェイト達は「治安組織」と「軍隊」の根本的な思想の違いを見せつけられていた。

 

一方、はやてからの報告を受けた本局のリンディ提督は、戦艦や未知の技術(IS)を擁する艦隊の入港という事態に戦慄する。

 

彼女が最大の脅威と見なしたのは、防衛軍そのものではなかった。

 

その強大な軍事力を「違法兵器」と見なして不当に拿捕しようと企む、管理局内部のタカ派や傲慢な官僚たちの存在である。

 

もし彼らが防衛軍を挑発すれば、自衛のための徹底抗戦により、本局そのものが戦場と化してしまう。

 

最悪の事態を防ぐべく、リンディは次元港を完全封鎖。

 

時空管理局本局は今、外部の敵に対してではなく「身内の暴走」を抑え込むための、かつてない異様な厳戒態勢へと突入しようとしていた――。

 

 

「第二の第九十七管理外世界の異次元艦隊が、本局へ向かっているだと……!?」

 

その信じ難い一報は、時空管理局本局の中枢を瞬く間に駆け巡り、蜂の巣をつついたような騒ぎを引き起こしていた。

 

未知の技術体型。巨大な戦艦群‥‥

 

そして、それらを運用する地球防衛軍‥‥報告書に並ぶ事実に対し、一部の幹部局員たちの目は野心と焦燥にギラついていた。

 

「未登録の質量兵器だぞ! あれを野放しにするなど到底認められん!」

 

「ならばただちに武装解除させ、艦艇を管理下に置くべきだ!」

 

「未知の技術に対する危機管理が甘すぎる! せめてISとやらの技術解析だけでも――」

 

未知の軍事技術に対する、管理局内部の危機意識の暴走。

 

傲慢に満ちたタカ派の幹部たちは、あわよくば未知の兵器を己の権力基盤に取り込もうと息巻いた。

 

しかし、彼らが武装隊に非常呼集をかけようとした矢先、本局の次元港はすでに物々しい警備態勢によって完全に封鎖されていた。

 

しかも、配置についた重武装の局員たちは、デバイスを『外(宇宙港)』ではなく、『内(本局内部)』に向けていたのだ。

 

「ハラオウン統括官! これは一体何の真似だ!?」

 

憤慨した幹部局員たちが、司令室のリンディ・ハラオウンの元へと怒鳴り込んできた。

 

「未確認艦隊から本局を防衛するならともかく、なぜ身内である我々の立ち入りを禁ずる! 奴らは違法兵器を多数所持した集団だぞ、ただちに武装解除を——」

 

「黙りなさい!!」

 

リンディの冷たく、そして重圧感のある声が、幹部たちの怒鳴り声を一瞬で凍り付かせた。

 

そこには、普段の温和な母性的な笑みとはまるで違う、百戦錬磨の提督としての顔があった。

 

「彼らは特務六課の部隊長が身の安全と機密保持を確約し、正当な交渉の末に本局へ招待した客人です。それを不当な理由で拘束しようなど、管理局の信用を地に堕とす行為。断じて許しません!!」

 

「で、ですが、奴らの保有する兵器は質量兵器だ! 万が一本局で暴れられでもしたら……!」

 

「だからこそです!」

 

リンディは鋭い眼光で幹部たちを射抜いた。

 

「彼らは一国家の正規軍です。誇り高き軍人を不当に扱えばどうなるか……彼らが自衛権を行使する事態になれば、本局そのものが戦場になります。未知の脅威に対するあなた方の過剰な危機感のせいで、数多の局員の命を危険に晒すことなど、私が絶対にさせません!」

 

一歩も引かないリンディの圧倒的な覇気に、幹部たちは忌々しげに舌打ちをし、踵を返すしかなかった。

 

一方、本局へと向かう地球防衛宇宙軍の旗艦内でも、緊迫した空気が漂っていた。

 

藤堂司令は、腕を組みながらメインモニターに映る時空管理局本局の巨大な施設を見据えていた。

 

八神はやてという個人の誠意は認めたものの、組織としての時空管理局を完全に信用したわけではない。

 

「……通信長、次元潜航艦『伊400』へ暗号通信。通常空間には浮上せず、本局近海の亜空間にて待機を命じろ」

 

「はっ。伊400を亜空間にてスタンバイさせます」

 

藤堂の指示に、ブリッジクルーが即座に対応する。

 

伊400の任務は本局を攻撃することではない。

 

あくまで本隊が不当拘束を受けた場合、退路を確保し、艦隊を安全宙域まで離脱させるための最後の保険だ。

 

常に最悪の事態を想定するのが指揮官の務めだった。

 

艦内の別の区画では、星彩とヴィテクが窓の外に広がる本局の景色を険しい表情で睨みつけていた。

 

「……まさか、自分からこんな場所に来ることになるなんてね」

 

「きゅ~」

 

星彩の言葉に、ヴィテクが苦々しく同意する。

 

二人の脳裏に蘇るのは、かつて管理局員を名乗る者たちから受けた「密猟」のトラウマだった。

 

自分たちは希少な能力や存在価値を狙われ、道具として売り捌かれそうになった。

 

その組織の本拠地に足を踏み入れるのだ。

 

警戒心を解くことなど到底不可能だった。

 

「連中が少しでも妙な動きを見せたら、私が真っ先にブッ飛ばしてやる」

 

彼女らの手は、いつでも技を撃てる様に無意識のうちに気を溜めていた。

 

やがて、アースラⅡの先導により、防衛軍の巨大な艦隊が時空管理局本局の次元港へと厳かに滑り込んでいく。

 

その威容は、港で待ち受けるリンディ配下の武装局員たちを大いに威圧した。

 

艦が接舷され、エアロックが接続される。

 

「全員、通達があるまで艦内にて待機。いかなる挑発にも乗るな。だが、火の粉が降りかかれば躊躇なく振り払え」

 

藤堂の厳命が全艦に響き渡る。

 

本局の港に立ったのは三人。

 

指揮官である藤堂、彼女の護衛兼外交交渉を務めるミーナ、そして元管理局であり現ラボラトリー・アクエリアス戦術長で、管理局とのパイプ役として同行するティアナ・ランスター。

 

「……行きましょう。彼らの『誠意』とやらを、見極めに」

 

藤堂の言葉にミーナとティアナが無言で頷く。

 

ティアナも元職場とは言え、今の自分の立場は管理局員ではなく防衛軍軍人‥‥

 

此処は元職場ではなく敵地に近い環境だった。

 

重いゲートが開き、三人は異次元の巨大組織の懐へと、静かに足を踏み入れた。

 

重厚な扉が開き、藤堂たちは時空管理局本局の特別会議室へと案内された。

 

室内には円卓が置かれ、その奥で待っていたのは、提督の制服に身を包んだリンディ・ハラオウンだった。

 

彼女の背後には、信頼のおける数名の執務官が護衛として控えている。

 

「遠路はるばるのご足労、感謝いたします。リンディ・ハラオウンです」

 

柔和な笑みを浮かべ、優雅に一礼するリンディ。

 

しかし、藤堂の鋭い眼光は、その笑顔の奥にある「百戦錬磨の司令官」としての冷徹な光を見逃さなかった。

 

「地球防衛宇宙軍、艦隊司令の藤堂です。こちらはグラーフ・ツェッペリン副長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ……そして、当ラボラトリー・アクエリアスの戦術長であるティアナ・ランスター」

 

ミーナとティアナが軍人らしく一糸乱れぬ敬礼を返す。

 

藤堂は促されるまま席に着くと、出された茶には一切手を付けず、単刀直入に切り出した。

 

「提督殿。港からここへ来るまでの道中、やけに物々しい歓迎を受けたが……魔法の杖の向きが少々間違っているのではないか?あれではまるで、外の敵ではなく『内側の何か』を警戒しているようでしたが?」

 

その言葉に、リンディの護衛局員は肩がビクッと跳ねる。

 

しかしリンディは表情一つ崩さず、静かに頷いた。

 

「お見苦しいところをお見せしました。ですが、あれは八神部隊長が貴女たちと結んだ『確約』を、完全に履行するための措置です……我が局内にも、未知の技術や武力に対し、短絡的な振る舞いに出ようとする者が少なからずおりますので」

 

自分たちの恥部とも言える内部事情をあっさりと認めたリンディに、藤堂は微かに目を細めた。

 

(なるほど、飼い犬の躾はできているというアピールか?いや、我々に『局全体が敵対しているわけではない』と示すための防波堤か?)

 

「結構な心構えです。おかげで、我が軍の『見えない護衛』に出番を命じずに済んでおります」

 

「……そ、それは何よりです」

 

藤堂の放った『見えない護衛(亜空間で待機する伊400)』という牽制に、リンディの護衛たちが僅かに色めき立ったが、リンディは片手でそれを制した。

 

双方が、言葉の裏で互いの手札と覚悟を探り合っている。

 

「さて、それでは早速本題に入りましょうか?ハラオウン提督」

 

藤堂は、リンディを真っ直ぐに見据えた。

 

「我々がここに足を運んだのは、時空管理局という巨大組織の権威に屈したからではない。特務六課……八神はやて部隊長の、己の命すら懸けた指揮官としての誠意に報いるためだ。だが、彼女は現在重傷を負い、部隊の指揮は万全ではないと聞く」

 

藤堂の視線が、傍らに立つティアナに向けられた。

 

「彼女の不在に乗じ、本局の上層部が特務六課の頭越しに我々をどうこうしようというのであれば、この対話は無意味だ。我々はいかなる干渉も撥ね退け、直ちにこの宙域から退去する……特務六課という部隊は、貴局においてどれほどの権限と発言力を持っているのか?まずはそれをお聞かせ願いたい」

 

それは、管理局内部の政治的力関係を突く、極めて鋭い問いだった。

 

「タカ派の介入を許すような腰抜けの組織なら、交渉相手として信用に値しない」という通告でもある。

 

重い沈黙が会議室に降りた。

 

ティアナが、思わずリンディの横顔を見つめる。

 

リンディはゆっくりと目を伏せ、そして、決然とした声で口を開いた。

 

「……特務六課は、本局が直轄する独立部隊です。そして今回の『エクリプスウイルス』および次元犯罪者カレン・フッケバインの追跡に関する全権は、彼らに委ねられています」

 

リンディは藤堂を見据え返し、言葉に力を込めた。

 

「彼女らが結んだ協定は、時空管理局本局が結んだ協定と同義です。八神部隊長の不在中は、私の権限の及ぶ限り、特務六課の独立性と貴方たちの安全を保証いたします。少なくとも、本局の受け入れ手続きに関して、私の許可なく干渉することは認めません」

 

「提督殿の覚悟と、特務六課への信頼は理解した……情報提供と事情聴取、協力させてもらう」

 

「感謝します、藤堂司令」

 

リンディが小さく息を吐き、安堵の微笑を浮かべた。

 

軍としての威信を背負う者と、巨大組織の理不尽を背負う女。

 

対極の立場にある二人の指揮官の間に、危ういながらも確かな『対等な交渉のテーブル』が構築された瞬間だった。

 

緊張感が僅かに和らいだ特別会議室の中央に、リンディが端末を操作して立体投影モニターを展開した。

 

青白い光が室内の空気を染め、宙に一人の女性の姿と、複雑な分子構造のようなデータが浮かび上がる。

 

「次元犯罪者、カレン・フッケバイン。高機動戦闘と強力な武装に長けた、広域指定の危険人物です」

 

リンディの凛とした声が響く。

 

藤堂は腕を組んだまま、鋭い眼光で空中のデータを睨みつけた。

 

「彼女の目的は単なる破壊活動や強盗ではありません。最大の脅威は、彼女が保持し、意図的に散布しようとしている未知の生体兵器……『エクリプスウイルス』です」

 

「エクリプスウイルス……」

 

藤堂の低く重い声に、リンディが頷く。

 

「はい。現在、管理局の科学班が総力を挙げて解析中ですが、非常に厄介な性質を持っています。このウイルスは通常の生物学的な感染ルートに加え、周囲の『魔力』を媒介にして自己増殖し、感染者の精神と肉体を凶暴化・変異させるという恐るべき特性が確認されています。我々時空管理局の防衛システムの多くは、魔法技術を基盤としています。隔離のための結界魔法すらも、このウイルスは魔力として取り込み、侵食してしまう。……八神部隊長が後れを取ったのも、彼女の強大な魔力が逆にウイルスの標的となり、戦術を大きく制限されたためです」

 

魔法を主力とする組織にとって、魔力を喰らって増殖するウイルスはまさに天敵。その事実を突きつけられた管理局側の焦燥感は明らかだった。

 

しかし、藤堂の表情は微塵も揺るがない。

 

彼女は背後に控えるミーナへ視線だけで合図を送った。

 

「ヴィルケ副長。我が軍のデータを統合しろ」

 

「ハッ」

 

ミーナが手元の小型コンソールを操作すると、管理局の青いデータの上に、防衛軍がもたらした赤と緑の解析データが重なり合う。

 

魔法陣ではなく、純粋な物理演算と科学的アプローチによる解析図だ。

 

「接触空域にて我が軍のIS(インフィニット・ストラトス)搭載センサー群によって取得した、感染区域周辺の環境データです。温度、魔力密度、粒子濃度、感染反応の推移を照合しています」

 

ミーナの淡々とした報告に、リンディが目を見開く。

 

「つまり……こちらの結界が感染を防げなかった一方で、貴軍は物理的な隔離によって感染区域そのものを封じ込めた、と?」

 

「魔法というシステムに依存しすぎたが故の盲点だな」

 

驚愕するリンディに、藤堂が静かに告げた。

 

「我が軍の艦艇は、未知の宇宙空間や過酷な環境での作戦を想定している。魔力などという不確定要素には頼らない。感染区域を物理的に封鎖し、汚染物質を除去するための自動除染システムだ。いかに魔力を媒介にしようと、少なくとも、現時点で確認された感染経路は遮断できている。現に、我が艦隊に感染者は一人も出ていない」

 

「……見事ですね。純粋な科学技術の極致、といったところでしょうか?」

 

リンディが感嘆の息を漏らす。防衛軍の持つ「未知の技術」が、今回ばかりは管理局の弱点を補完していた。

 

「ただし、これは感染拡大を防ぐための措置にすぎない。病原体そのものの性質については、我々にも未知だ。絶対に安全だとは言わん」

 

藤堂がモニターの「カレン・フッケバイン」の顔写真を指差した。

 

「病原体そのものの根絶と、それをばら撒く元凶を叩く必要があります。彼女たちの目的が何であれ、これ以上のバイオハザードは我々としても看過できない。……我々防衛軍の『科学・物理兵器』による防疫と制圧。そして特務六課の『魔法』による追跡能力。互いの手札を合わせれば、奴の足取りを掴み、追い詰める盤面は作れるはずだ」

 

「……ええ、その通りです」

 

リンディが力強く頷く。

 

「ハラオウン提督。貴女たち特務六課が持つカレンの逃走ルートと魔力痕跡のデータを、全て我が軍の戦術コンピューターに回せ。ウイルスの魔力反応ごと、ISの超広域センサーで炙り出します」

 

「はい……! すぐに手配します!」

 

タカ派の蠢く不穏な本局の奥深くで、時空管理局と地球防衛宇宙軍という、決して交わるはずのなかった二つの組織が「共通の敵」へ向けて確かな共闘の歩みを始めた瞬間だった。

 

数分後。時空管理局のメインフレームから、強固な暗号化通信を経て防衛軍の旗艦『ラボラトリー・アクエリアス』へとデータが転送された。

 

ミーナの指先が、手元のコンソール上で目にも留まらぬ速さで踊る。

 

「特務六課からの魔力痕跡データ、受信完了。直ちに我が軍の戦術コンピューターへリンク……ISの超広域センサー網と同期させます。照合開始」

 

会議室の中央に展開された立体投影モニターが、瞬時に青から赤を基調とした防衛軍の戦術マップへと切り替わる。

 

広大な次元海図の中で、無数の情報が演算され、ノイズが削ぎ落とされていく。

 

防衛軍のテクノロジーがもたらす圧倒的な情報処理速度に、リンディの背後に控えていた護衛の執務官たちが息を呑むのがわかった。

 

「……出ました。管理局の魔力痕跡と我が軍のウイルス環境データを統合した予測ポイント。第93管理外世界、その外縁部に存在する放棄された旧時代の資源採掘宙域です」

 

ミーナの報告と共に、マップの一点に赤い警告光が点滅した。

 

「ビンゴ、ですね」

 

リンディが鋭い視線を投影図に向ける。

 

「そこはかつて、大規模な次元震によって放棄された宙域です。周囲には強い磁気嵐とデブリ帯が広がっており、通常の次元航行艦では接近すら困難な場所……隠れ家としては最適でしょう。ですが、なぜそんな辺境に?」

 

「散布手段ですよ」

 

静かに答えたのは、藤堂の傍らに立つティアナだった。

 

彼女はかつて管理局で培った知識と防衛軍の戦術長としての分析力をフルに回転させていた。

 

「採掘用のアステロイド群には、掘り出した資源を射出するための巨大なマスドライバー(電磁カタパルト)が残されているはずです。単なるマスドライバーではありません。旧時代の次元転移施設と接続された、長距離質量投射システムです。もし、カレン・フッケバインがそれを修復・再起動させ、エクリプスウイルスを搭載した質量弾を撃ち出そうとしているとしたら……」

 

「多次元世界への同時多発的なバイオハザードが引き起こされる、ということか」

 

藤堂の低い声に、会議室の空気が一気に凍りついた。

 

「魔力を媒介に増殖するウイルスを無差別にばら撒く……もしそんなことになれば、管理局の防衛網は完全に麻痺します。彼女の目的が何であれ、絶対に阻止しなければなりません!」

 

リンディが拳を握りしめる。

 

藤堂は腕を組んだまま、冷徹に盤面を見下ろした。

 

「敵の狙いと居場所が割れた以上、後手に回る理由はない。直ちに出撃する。我が艦隊の主砲で周辺空域のデブリごと物理的に制圧し、ウイルスの散布ルートを絶つ。同時に突入部隊を降下させ、病原体と目標を制圧する」

 

藤堂はそこで言葉を切り、リンディへと視線を向けた。

 

「ハラオウン提督。特務六課の部隊には、目標の逃走経路の封鎖と、万が一ウイルスが漏れ出した際の結界による『遅滞戦術』を頼みたい。完全な隔離は不可能でも、時間を稼げれば我が軍の物理滅菌が間に合う」

 

「承知しました。高町教導官やフェイト・T・ハラオウン執務官をはじめ、六課の全戦力を以て貴軍の作戦をサポートさせます」

 

「……藤堂司令」

 

その時、ティアナが一歩前へと進み出た。

 

彼女の瞳には、一切の迷いがない、ひとりの軍人としての強い意志が宿っていた。

 

「私にも、前線への出撃許可を‥現地の地理情報の解析と、もし敵が管理局式の結界トラップを張っていた場合の解除なら、私が最も適任です」

 

リンディは、少し驚いたようにティアナを見つめた。

 

かつて、高町なのはの教え子として機動六課で不器用に背伸びをしていた少女。

 

だが、今目の前に立っているのは、未知の軍事組織にあって確固たる地位を築き、自信に満ちた表情を浮かべる立派な『戦術長』だった。

 

藤堂はティアナを静かに一瞥し、微かに口角を上げた。

 

「許可する。ランスター戦術長、お前の分析力と銃さばき、存分に発揮してこい」

 

「ハッ!」

 

踵を鳴らし、見事な敬礼を見せるティアナ。

 

彼女の胸中には、複雑な思いが渦巻いていた。

 

(なのはさん、フェイトさん、はやてさん……あなた達が私に教えてくれたことは、今も私の中に息づいています。でも、今の私は『防衛軍の軍人』だ。あなた達とは違うやり方で……仲間を守り抜いてみせる)

 

「交渉は成立だな。提督殿」

 

藤堂が席を立ちあがった。

 

「タカ派の連中が余計なちょっかいをかけてこないよう、留守番を頼む」

 

「ええ。この本局の底で蠢く影は、私が全て抑え込みます。どうか、ご武運を」

 

リンディもまた立ち上がり、深々と頭を下げる。

 

二つの異なる組織。異なる思想。

 

しかし、平和を脅かす理不尽な悪意に立ち向かうという一点において、彼らは間違いなく連帯していた。

 

会議室で藤堂、ミーナ、ティアナ、そしてリンディとの間で情報共有が行われている時、時空管理局本局、特別次元港‥‥そこは今、かつてないほどのピリピリとした緊張感に包まれていた。

 

港を埋め尽くすように停泊する装甲に身を包んだ地球防衛宇宙軍の巨大艦隊。

 

その圧倒的な威容もさることながら、港の入り口を封鎖しているのは、防衛軍の兵士ではなく、管理局の制服を着た重武装の局員たちだった。

 

「止まれ! ここから先はハラオウン提督の厳命により、いかなる者の立ち入りも禁ずる!」

 

武装隊の隊長が、魔力光を帯びたデバイスを構えながら鋭く警告する。

 

「ですが、我々は本局の監査部の者で——」

 

「許可証のない者は例外なく通せない! これ以上接近すれば、反逆行為と見なして直ちに身柄を拘束する!!」

 

「なっ……! ハラオウン提督の私兵風情が、増長するなよ!」

 

タカ派の幹部から差し向けられたと思しき局員たちが忌々しげに舌打ちをし、渋々引き返していく。

 

リンディ・ハラオウン子飼いの精鋭部隊は、内部の不穏分子を近づけまいと、文字通り鉄壁の防陣を敷いていた。

 

防衛軍との無用な摩擦を避け、確約を守り抜くためのリンディの強い意志の表れだった。

 

しかし、その厳重すぎる警備を、コンテナの陰から痛切な思いで見つめている少女がいた。

 

特務六課、フロントアタッカー。スバル・ナカジマである。

 

(……駄目だ。あの警備じゃ、隙なんて全然ない。強行突破しようとすれば、間違いなく戦闘になるし、そうなれば、八神部隊長やなのはさんに迷惑がかかる……)

 

スバルはコンテナの壁に背中を預け、ギュッと拳を握りしめた。

 

唇を噛みしめ、その瞳には焦燥と抑えきれない感情が揺れている。

 

彼女の視線の先、巨大な艦艇群の奥に停泊している一隻の戦艦‥『ラボラトリー・アクエリアス』。

 

スバルがどうしてもあの艦に行かなければならない理由。

 

それは、つい先ほど、防衛軍側と接触があったリンネたちから聞かされた、ある『事実』だった。

 

(ギン姉が、あそこにいる……!)

 

ある事件をきっかけに離れ離れになり、ずっと消息を追い続けていた最愛の姉。

 

まさか、別次元から現れた未知の軍隊——地球防衛宇宙軍の戦艦の副長になっているなど、夢にも思わなかった。

 

生きていた。

 

無事だった。

 

それどころか、あんな大きな艦を任される立派な軍人として、今、すぐ目の前の港にいるのだ。

 

(会いたい……一目でいいから、ギン姉に会いたい! 声を聞きたいっ……!!)

 

胸の奥から湧き上がる衝動が、スバルの足を何度も港へと向かわせようとする。

 

しかし、一歩でも踏み出せば、味方であるはずのリンディの武装隊と衝突することになる。

 

それは、重傷を負いながらも防衛軍との協定をとりまとめた、はやてやなのは達の苦労を無に帰す行為に他ならない。

 

「くそっ……! なんで……なんでこんな時に……!」

 

スバルは悔しさに任せて、ドンッとコンテナを叩いた。

 

その時だった。

 

港の全域に、重低音のサイレンが鳴り響いた。

 

『——全艦、第一種戦闘配置。これより本艦隊は抜錨し、第93管理外世界へ跳躍する。各艦、発進シークエンスへ移行——』

 

防衛軍の冷徹な機械音声が、出撃の時を告げる。

 

アクエリアスの巨大なスラスターが青白いプラズマの光を放ち始め、周囲の空間が微かに震え出した。

 

それはラボラトリー・アクエリアスが出航準備を行っている証拠だ。

 

「出撃……!? 嘘でしょ、もう行っちゃうの!?」

 

スバルは思わず身を乗り出した。

 

今ここで逃せば、姉は危険な戦地へと向かってしまう。

 

次元の海へ出れば、次にいつ会えるかなど誰にも分からない。

 

(嫌だ……! また離れ離れになるなんて、絶対に嫌だ……!!)

 

理性よりも感情が勝った。

 

スバルがデバイス『マッハキャリバー』を起動し、制止を振り切ってゲートへ飛び出そうとした、まさにその瞬間——。

 

「——待ちなさい、スバル」

 

背後から、凛とした、しかしどこか懐かしい声が響いた。

 

同時に、スバルの肩を力強い手がガシッと掴む。

 

「……え?」

 

振り返ったスバルの目に飛び込んできたのは、防衛軍の女性用士官軍服を纏った人物‥‥

 

その顔はスバルが誰よりもよく知る、かつての相棒のものだった。

 

「ティ、ティア……!?」

 

そこには、リンディとの会談を終え、アクエリアスへの帰艦を急いでいたティアナの姿があった。

 

「相変わらず、後先考えずに突っ走る癖は直ってないわね……そんな顔で飛び出していったら、武装隊に撃たれるわよ」

 

ティアナは呆れたように息を吐きながらも、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。

 

「てぃ、ティア!?……どうして此処に……!? ち、違うの、あたしは……アクエリアスに、ギン姉が……!」

 

この場にティアナが居た事にも驚いたが、スバルは必死に事情を説明しようとする。

 

そんなスバルをティアナは静かに手で制した。

 

「分かっている。ギンガさんのことでしょう?」

 

「っ……! ティア、知っていたの!?」

 

「ええ。今の私の、直属の上官だからね」

 

ティアナはそう言うと、武装隊が守るゲートの方へと視線を向け、それから真っ直ぐにスバルの瞳を見つめ返した。

 

「……スバル。あんた、あの艦(アクエリアス)に乗り込む覚悟はある?」

 

その問いかけに、スバルはハッと息を呑んだ。

 

ただ「姉に会いたい」という抑えきれない私情だけで、強引に突っ走ろうとしていた自分。

 

もしあのまま強行突破していれば、命懸けで交渉をまとめたはやての誠意も、本局のタカ派を必死に抑え込んでいるリンディの顔も、全て泥で塗り潰すことになっていた。

 

しかし、ティアナは「六課の戦力として乗り込む覚悟はあるか」と問うている。

 

先ほどの会談で、防衛軍と特務六課の共同作戦が正式に決定したのだ。

 

ならば、六課からの戦力提供、あるいは連携のための連絡員としてスバルが防衛軍の艦に乗ることは、戦術的にも政治的にも完全に筋が通る。

 

密航者としてではなく、誇り高き一人の魔導師として。

 

「……ある! 私に、やらせて!」

 

スバルは迷いを振り切るように顔を上げ、強く言い放った。

 

「エクリプスウイルスを止めるためにも、カレン・フッケバインを捕まえるためにも……そして、ギン姉に会うためにも!特務六課のフロントアタッカーとして、絶対に役に立ってみせる!」

 

ギュッと握りしめた拳。

 

その瞳には、先ほどまでの焦燥感は消え去り、かつて機動六課で共に過酷な戦いをくぐり抜けた頃と変わらない、真っ直ぐな闘志が宿っていた。

 

「いい返事ね」

 

ティアナは満足そうに微笑むと、スバルの背中をバンッと気合いを入れるように叩いた。

 

「なら、胸を張りなさい。あんたは今から、特務六課を代表して我が艦に出向する『立派な増援』よ。コソコソ隠れる必要なんてどこにもないわ」

 

ティアナは踵を返し、スバルを伴って堂々とゲートの方へと歩き出した。

 

「止まれ! 許可なき者の立ち入りは——」

 

二人の接近に気づいた武装隊の隊長が、再びデバイスを構えて鋭く制止する。

 

しかし、ティアナは歩みを止めることなく、懐から防衛軍の身分証と、先ほどリンディから直接受け取ったばかりの『合同作戦暫定行動許可証』のホログラムを突きつけた。

 

「地球防衛宇宙軍、ラボラトリー・アクエリアス戦術長、ティアナ・ランスター。ならびに、特務六課所属、スバル・ナカジマ」

 

ティアナの凛とした声が、周囲の空気を引き締める。

 

「ハラオウン提督の承認に基づく、両組織の合同作戦における戦術リンクと部隊連携のため、彼女を我が艦に帯同させます……通していただきましょうか?」

 

毅然としたティアナの態度と、リンディの署名と高度な暗号認証が入った正規の許可証を見て、武装隊の隊長は息を呑んだ。

 

「……承認コード、確認しました。ご苦労様です、ランスター戦術長。ナカジマ士長」

 

隊長がデバイスを下ろして敬礼すると、鉄壁の防陣を敷いていた重武装の局員たちが、ザッ、と一糸乱れぬ動きで道を空けた。

 

スバルは信じられない思いで、その間を通り抜けた。

 

ほんの数分前まで、力ずくで突破しようとしていた分厚い壁を、ティアナは言葉と正規の手続きだけであっさりと越えてしまったのだ。

 

「す、すごいよ、ティア……!」

 

「ふふん。伊達に軍で揉まれてないわよ。ただ、なのはさんたちには事情をちゃんと説明しなさいよ」

 

「う、うん。分かった」

 

誇らしげに笑うかつての相棒と共に、スバルはついに、ラボラトリー・アクエリアスの巨大なエアロックへと足を踏み入れた。

 

重厚な駆動音と共にゲートが閉じられ、艦内の気圧調整が始まる。

 

外部の音が完全に遮断され、代わりに艦の心臓部である動力炉の低い振動が、足元から伝わってくる。

 

「ようこそ、ラボラトリー・アクエリアスへ。スバル」

 

「うん……!」

 

スバルの胸は、かつてないほど激しく高鳴っていた。

 

この巨大な艦のどこかに、ずっと探し続けていた姉がいる。

 

そして、心強い相棒と共に、世界を脅かす未知のウイルスと凶悪な犯罪者に立ち向かうのだ。

 

『——全艦、次元跳躍スタンバイ。各部、最終チェック完了。カウントダウン開始——』

 

冷徹な機械音声がブリッジからの号令を伝える。

 

直後、ラボラトリー・アクエリアスは巨大な質量を震わせ、青白い光の尾を引きながら、時空管理局本局の次元港を静かに、しかし圧倒的な推進力で飛び立った。

 

姉との再会、そして因縁の敵が待ち受ける第93管理外世界へ向けて。

 

スバルの新たな戦いが、今ここから始まろうとしていた。

 

エアロックを抜け、銀灰色に統一された『ラボラトリー・アクエリアス』の艦内通路を歩くスバルの足取りは、ひどく浮ついていた。

 

時空管理局の艦船とは根本的に異なる、無骨でありながらも洗練された機能美を持つ防衛軍の構造‥‥すれ違う乗組員たちの、一切の隙がない洗練された動き。

 

それらすべてが新鮮で圧倒的だったが、今のスバルにとって一番の関心事はただ一つだけだった。

 

「珍しく緊張しているわね、スバル」

 

前を歩くティアナが、肩越しに振り返ってクスリと笑う。

 

「そ、そりゃするよ……! だって、ずっと探していたギン姉が、この艦の副長さんなんだよ!? ティアだって、再会した時はびっくりしたでしょう!?」

 

「まあね。私も最初は目を疑ったわ。でも、今のギンガさんは立派にこの巨大艦を束ねる指揮官の一人よ。あんたも特務六課の代表として行くんだから、あんまり情けない顔を見せないことね」

 

「うっ……善処します」

 

スバルが頬を両手で挟んで気合を入れ直しているうちに、二人は艦の中枢部へと続く重厚な扉の前に辿り着いた。

 

『ブリッジ・メインゲート。ランスター戦術長のIDを認証』

 

無機質な電子音声と共に、分厚い隔壁が左右にスライドする。

 

途端に、複数のオペレーターたちが交わす緊迫した報告の声と、幾重にも展開されたホログラムモニターの青い光がスバルの視界に飛び込んできた。

 

「主機出力安定! 次元層への突入角、オールグリーン!」

 

「対デブリ用シールド展開。第93管理外世界への到達まで、あと400秒!」

 

そこはまさに、巨大艦の頭脳たる戦闘艦橋。

 

その中央、一段高くなった指揮座の傍らで、メインスクリーンを見上げながら的確に指示を飛ばしている女性の背中があった。

 

「各部、油断しないで。現空域の磁気嵐は想定以上に強いわ。推進剤のバランス調整をシビアに‥‥」

 

凛とした、それでいて包み込むような優しさを持つその声。

 

スバルの心臓が、ドクンと大きく跳ねた。

 

ティアナが一歩前に出て、敬礼の姿勢をとる。

 

「ランスター戦術長、本局での会談より帰還しました。ならびに……藤堂司令とハラオウン提督の承認のもと、特務六課より『頼もしい増援』をお連れしました」

 

「お疲れ様、ティアナ。増援というのは‥‥っ!?」

 

振り返った女性——ギンガ・ナカジマの言葉が、ふっと途切れた。

 

防衛軍の女性士官服に身を包み、かつてよりも少し大人びたその顔立ち。

 

しかし、エメラルドグリーン色の瞳と、驚きに見開かれたその表情は、スバルの記憶の中にある『大好きな姉』そのものだった。

 

「……ギン姉」

 

震える声で、スバルは一歩を踏み出した。

 

本当は、特務六課の魔導師として立派に敬礼をするべきなのだろう。

 

だけど、限界だった。

 

「ギン姉……っ!」

 

気がつけば、スバルはブリッジの階段を駆け上がっていた。

 

そして、弾かれたようにギンガの胸へと飛び込む。

 

「うわっ……ととっ。こらこら、相変わらず突進力が凄まじいわね、スバルは」

 

ギンガは一瞬だけ目を丸くした後、勢いよく飛び込んできた妹の体を、副長としての威厳も忘れて力強く抱きとめた。

 

「ギン姉……っ、生きていた……ほんとに、生きて……っ!」

 

「……うん。ごめんね、スバル。ずっと心配かけて。でも、こうしてまた会えた」

 

スバルの瞳から、大粒の涙がボロボロと溢れ落ちる。

 

ギンガは優しく微笑みながら、スバルの頭をポンポンと撫でた。

 

かつて、二人が幼い頃から何度も繰り返してきた、温かくて安心する撫で方だった。

 

出撃直後の緊迫したブリッジだったが、誰も二人を咎める者はいなかった。

 

オペレーターたちは計器に向かいながらも口元を微かに綻ばせ、ティアナは腕を組んで壁に寄りかかり、どこか誇らしげにその光景を見守っている。

 

しばらくして、ようやくスバルはギンガの胸から顔を上げた。

 

制服の袖で乱暴に涙を拭い、照れくさそうに笑う。

 

「ごめん、ギン姉……いきなり、子どもみたいに泣いちゃって」

 

「ふふっ。いいのよ、スバル。私も……貴女がこんなに立派な魔導師になってくれて、本当に嬉しいわ」

 

ギンガはスバルの両肩を掴み、その姿を眩しそうに見つめた。

 

そして、妹の顔から涙が引いたのを確認すると、ギンガはスッと表情を引き締め、防衛軍の副長としての顔に戻った。

 

「さて。感動の再会はここまでよ、スバル」

 

「うん!」

 

スバルもまた、居住まいを正して力強く頷く。

 

「現在、我が艦隊はエクリプスウイルスを保持する次元犯罪者カレン・フッケバインの潜伏先へ向けて次元跳躍中。まもなく作戦宙域に到達する」

 

ギンガの毅然とした声がブリッジに響く。

 

「スバル。貴女には特務六課からの出向戦力として、ティアナと共に突入部隊の先陣を切ってもらいたい」

 

「……本当なら、副長として貴女を前線には出したくない。でも……エクリプス感染区域への突入には、高機動魔導師による近接制圧能力が必要になる。特務六課の中で、その任を最も適切に果たせるのは貴女よ」

 

「……うん。ギン姉の妹だからじゃない。六課のフロントアタッカーとして行く」

 

力強く頷くスバル。

 

「ギン姉が守っているこの艦隊を、私も絶対に守ってみせるよ!」

 

その頼もしい姿に、ギンガは満足そうに頷き、そしてティアナへと視線を向けた。

 

「ランスター戦術長。ただちに戦術ブリーフィングを開始。目標宙域到達と同時に作戦を展開する」

 

「了解(アイ・マム)……行くわよ、スバル」

 

「望むところだよ、ティア!」

 

涙はもう乾いていた。

 

愛する姉の背中を守るため、そして新たな仲間と共に因縁の敵を討つため。

 

特務六課のストライカーは、決意の炎を燃やして戦場へと赴く。




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