魔法戦記リリカルなのはforceのキャラたちのイラストをステルス兄貴さんにいただきました!
フッケバインの面々
アルナージ
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カレン
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サイファー
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ステラ
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トーマの友人
アイシス
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エクリプスウイルスの謎を追い、第93管理外世界の放棄された採掘拠点へと降り立った第一次次元世界探査艦隊と時空管理局特務六課。
しかし、そこにあったのはフッケバインの頭領カレンの謀略によって残された、民間兵器メーカー『ヴァンデイン・コーポレーション』に関する極秘資料だった。
その裏には、時空管理局本局の一部高官とヴァンデイン社の深い癒着、そして管理世界の正義を揺るがす組織的腐敗の影が潜んでいた。
地球防衛軍の第一次次元世界探査艦隊司令官・藤堂とクラウディア艦長クロノの密談により、地球側が「盾」、特務六課が「槍」となり、黒幕を暴くための共同作戦が始動する。
なのは、フェイト、スバルをはじめとする六課の面々は、組織の闇に直面しながらも、管理局の真の正義を取り戻すための戦いに身を投じる決意を固めた。
一方、ラボラトリー・アクエリアスでは、同じ召喚系魔導士として地球防衛軍の保護下にある少女たち——星奈、愛里寿、リンネとキャロが出会い、それぞれの幻獣たちと共に心を通わせる温かな絆の時間が育まれていた。
そして今、エクリプスウイルスの根源とヴァンデイン社の陰謀が眠る第16管理世界『リベルタ』へ向け、艦隊は新たな次元の海原へと進路を取る――。
ラボラトリー・アクエリアスの温かな光に満ちたラウンジで、キャロは子供たちに囲まれながら、優しく微笑みかけていた。
「パートナーを……覚醒させる方法、ですか?」
キャロの問いかけに、星奈、愛里寿、リンネの三人はこくりと頷いた。
目の前で小さな体を震わせ、おそるおそるキャロの指先を見つめている星彩、足元でふかふかの耳をピクピクさせているヴォイテク、そしてリンネの頭上で優雅に炎を揺らす鳳仙。
彼女たちは、ティアナからキャロの話しを聞いてから自分たちの相棒である幻獣たちが秘めているはずの「真の姿」や「力」について、ずっと気になっていたのだ。
「はい……! この子たちは私たちを守ろうとしてくれているんですけど、本当の力とか、いざという時にどうやって引き出してあげればいいのか、よくわからなくて……」
星奈が少し不安そうな顔で自分の肩に乗る星彩を見つめると、星彩は気丈に胸を張りながらも、どこか寂しげな鳴き声を漏らした。
キャロはその様子を温かい瞳で見つめ、ふっと柔らかく目を細めた。
「うん……その気持ち、すごくよく分かります。私も、昔はまったく同じでしたから」
キャロは優しく自分のバリアジャケットのデバイスに手を触れ、懐かしむような、それでいて誇らしい笑みを浮かべた。
「私にもね、初めてフリードの本当の力を引き出した時の思い出があるんです。あれは……機動六課の任務で、初めて起きた事件(ファースト・アラート)の時でした」
キャロの脳裏に、機動六課に初めて配属されて起きた事件が蘇る。
暴走するリニア。
強力な力を持つガジェット。
貰ったばかりのデバイス。
そして生まれ故郷を追放された原因である自らの力‥‥
不安だらけの中、自分の相棒であったエリオ・モンディアルがガジェットによって暴走するリニアから崖下に落とされてしまった。
彼を助けるために自身も崖から飛び降り、その最中で自分がこれまで忌み嫌っていた力を解放し、フリードを覚醒させた。
「あの時、私は怖かったけれど、『このエリオ君を助けたい』『もっと強くなりたい』って心の底から強く願ったんです。そしたら、フリードが私の想いに応えてくれて……それまでの小さな姿から、大きな本当の姿へと、一気に力を解放してくれたんです」
「本当の姿……!」
愛里寿が息をのんで見上げると、リンネも目を輝かせた。
キャロはデバイスを操作し、ホログラムスクリーンに当時の記録データを映し出した。
そこには、普段の愛らしいマスコットのような姿のフリードと、並び立つようにして記録された――大空を焦がすような威厳と圧倒的な巨体を誇る、巨大な竜としての覚醒状態のフリードの姿が鮮明に映し出されていた。
「これが……フリードの本当の姿……!」
星奈が感嘆の声を漏らし、星彩はホログラムに映る巨大な竜の姿を凝視した。
星彩の心に、小さな焦燥と、どこか諦めのような感情がよぎる。――私たちが覚醒したら、もう二度とこの姿には戻れなくなってしまうのではないか?
ずっとその巨体のまま、ただの戦いの道具になってしまうのではないか?
その小さな震えを敏感に感じ取ったキャロは、優しく星彩の頭をそっと撫でた。
「大丈夫だよ、星彩ちゃん。心配しなくてもいいんです」
「えっ……?」
「覚醒しても、ずっとそのまま戻れないわけじゃないの。フリードもね、戦いが終われば、こうしてまた私の肩に乗れる可愛い姿に戻れるんです。必要に応じて、力が必要な時だけ本当の姿になって、普段はこうして一緒に寄り添っていられるの」
キャロの言葉を聞いた瞬間、星彩の瞳にパッと鮮やかな光が灯った。
――元の姿に戻れるの……?
大きくて強い力も手に入れられて、でも大好きな主さまとこうして一緒にいられるの……?
星彩はぱたぱたと小さな羽を動かし、星屑のような光を散らしながら、主である星奈の顔を嬉しそうに見上げた。
愛里寿の足元のヴォイテクも、リンネの頭上の鳳仙も、まるで自分たちの未来の姿を想像したかのように、頼もしく胸を張りながら楽しげに鳴き声をあげた。
「そっか……! ずっとこのまま大きくなっちゃうわけじゃないんだ!」
星奈はホッとしたように顔を輝かせ、自分の肩にすり寄ってくる星彩を愛おしそうに抱きしめた。
愛里寿もリンネも、それぞれのパートナーを優しく撫でながら、心の底から安堵と期待の笑みを浮かべる。
「キャロさん、ありがとうございます……! 私、なんだかすごく勇気が湧いてきました!」
「うん。この子たちと本当に心を通わせることができれば、きっといつか自然と力が応えてくれるはずだから。焦らなくても大丈夫ですよ」
ラウンジを包んでいた緊張や不安はすっかり消え去り、そこには温かな絆と、未来への希望に満ちた笑顔だけが残されていた。
「あの……キャロさん。真の姿に解放させる時って、その姿を事前に強くイメージする必要があるんですか?」
リンネが小さな首を傾げながら、興味津々といった眼差しで尋ねた。
頭上の鳳仙もまた、小さな羽を揺らしてキャロの言葉をじっと待っている。
星奈と愛里寿も「たしかに……!」という表情で身を乗り出した。
自分たちが思い描いた形になるのか?
それとも元々決まった姿があるのか?
召喚士としての疑問が尽きない様子だ。
キャロは顎にそっと指先を当て、少し考えるように首を傾げた後、優しく微笑んだ。
「うーん。私の経験から言うと、特に姿を事前にイメージした事は無いかな。真の姿はおのずとパートナーが答えてくれるから……召喚士はその信頼に応え、パートナーを心から信用してあげることが一番大切なんです」
「パートナーが……答えてくれる……」
星奈は自分の肩に乗る星彩を見つめた。
星彩は誇らしげに小さな胸を張り、きらきらとした瞳で星奈を見返している。
「姿をこちらから決めるんじゃなくて、この子が元々内に秘めている本当の力を、信じて受け止めてあげる……そういうことなんですね?」
「ええ。この子たちはね、大好きな主を守りたい、助けたいと思った時に、一番頼もしい姿を見せてくれるの。だから星奈ちゃんたちも『どんな姿になるのかな?』って楽しみにしながら、日頃からたくさんの絆を深めていってくださいね」
「「「はいっ!」」」
三人は顔を見合わせ、晴れやかな笑顔で強く頷いた。
その後も、ラウンジでは時間の許す限り温かな交流が続いた。
「ちなみに、普段のおやつとかはどうしているんですか? ヴォイテク、すごく食いしん坊で……」
「ふふ、フリードも甘いものが大好きですよ。召喚獣によって好みも違うから、色々と試してみるといいかも‥ただし体調管理は十分に気を付けないといけないよ」
「鳳仙は炎の精霊だから、熱いエネルギーが好きみたいなんだけど……それとお風呂が苦手なんですけど‥‥」
キャロは後輩である幼き召喚士たちに、パートナーとの接しかたや日頃のケア、精神的な寄り添い方について、時に先輩として、時に優しいお姉さんとして丁寧にアドバイスを送っていた。
その様子を、ラウンジの入口付近で壁に背をもたれながら見守っていたスバル・ナカジマは、目元をゆるめて口元をほころばせていた。
(……なんか、すごくいい光景だなあ)
過酷な任務と組織の闇、そして次元を越えた不穏な戦雲が垂れ込める艦内において、そこだけがぽっかりと暖かな陽だまりに包まれているようだった。
「スバル、あんた何をそんなニコニコ見ているの?」
後ろから声をかけてきたのは、相棒のティアナ・ランスターだった。
手に書類ファイルを抱えたティアナも、スバルの視線の先を見て、ふっと表情を和らげる。
「ティア。いやさ……あの子たちがすごく楽しそうにしているなって思ってさ。キャロもすっかり立派なお姉さん、ううん……立派な『先輩召喚士』なんだなぁって」
「ふふ、そうね。機動六課に入ったばかりの頃は、自分の力に怯えて下を向いてばかりいたキャロが、今じゃあんなに堂々と後輩たちを導いている……なんだか感慨深いわね」
スバルは自分の胸に手を当て、力強く頷いた。
「うん! あんな温かい笑顔や絆を守るためなら、どんな厳しい戦いだって乗り越えられる気がするよ。……あたしたち『槍』が、あの子たちの未来をしっかり切り拓いてあげなきゃね!」
「ええ、その通りよ。藤堂司令やクロノ艦長、なのはさんやフェイトさんたちと一緒に……ヴァンデイン社の陰謀も、組織の腐敗も、全部暴いて叩き潰してやろうじゃない」
ティアナの強い眼差しに、スバルもガッツポーズで応える。
軍艦の殺伐とした空気を感じさせないラウンジの陽だまりの中で、新しい世代の絆は着実に根を張り、それを護る大人たちの決意もまた、よりいっそう強固なものへと変わっていくのだった――。
窓の外の暗黒の宇宙空間では、見えない次元の海原を越えるためのエンジンが静かに鼓動を高めている。
第16管理世界『リベルタ』へ向けて進む艦隊の中で、新たな世代の絆もまた、確かな一歩を踏み出そうとしていた――。
その頃、地球では外交方向で大きな動きがあった。
度重なるボラー連邦の威圧行動や、ガルマン・ガミラスからの要請についに地球連邦政府はガルマン・ガミラスの母星であるガルマン星への外交使節団の派遣を決定した。
ヤマトを旗艦とする地球の外交艦隊はガルマン・ガミラス特使艦隊と共にガルマン星へと向かったが、道中にガルマン・ガミラス特使艦隊と別れて行動していた為に、ガミラス時代からの歴戦の指揮官であったユーリ・ダゴンからの攻撃を受けてしまう。
ゲルバデス級航宙戦闘空母五隻からの強襲を受け、ヤマトは防空戦闘を強いられるが、後方から観測していた特使艦隊からの急報を受けたデスラーからの叱責を受けて、ダゴンは攻撃を中断。
ダゴンは艦隊司令を更迭の上で謹慎処分となってしまったが、それはともかくとして、ガルマン星についたヤマト。
ガルマン星はかつてのガミラスとイスカンダルのように二連星であり、ガルマン星の衛星に近い惑星はかつてのイスカンダルのように美しい星であった。
その後、ガルマン星にてデスラーとの会談を行った後、ガルマン星の状況を見て回るヤマト乗員達だが、やけに星の気候が寒く、ガルマン人やガミラス人たちの農家の野菜も全く育っておらず、ガルマン星近郊のボラー連邦の属国だけでなく、ボラー本国もこの事態に直面していると捕虜から聞き出したとタランが説明していた。
また、その頃、ガルマン星の近くのバース星から多数の艦艇と共にバース艦隊の旗艦であるアーコフ級強襲戦艦『ラ=ジェンドラ』がガルマン星攻略の為に出撃していた。
バース軍総司令にして、バースの大公でもあるラム=ラジェンドラは部下たちに自分たちの星の困窮ぶりや、最近ではこの寒冷化のせいでボラー式機関すらも動力不調に悩まされているせいで惑星の電力確保すら怪しい。
しかし、それでも我々はやり遂げなければならない!と訓示を行い、部下たちを鼓舞していた。
「――我らの星、バースは今、かつてない極寒の闇に晒されている!」
アーコフ級強襲戦艦『ラ=ジェンドラ』の壮大なブリッジに、バース軍総司令ラム=ラジェンドラ大公の威厳に満ちた声が響き渡っていた。
その厳めしい面容には、重い疲労の色と、それを押し殺すような不退転の決意が刻まれている。
画面に映し出されるバース星の地表は、かつて青々と栄えていた姿を完全に失い、見渡す限りの白い氷原と暴風雪に覆われていた。
「作物が全滅しただけではない。この異常な寒冷化は、我らの誇るボラー式熱機関の性能をも急速に奪い去りつつある! 街の発電プラントは次々と沈黙し、民は凍える夜に怯え、明日の糧すら失いかけているのだ……! ボラー本国すらこの天変地異の前に混乱し、我らへの救援など望むべくもない!」
集まったバース軍の将校や兵士たちは、息をのんで総司令の言葉に耳を傾けていた。
その瞳には落胆と、しかし同時に最後の望みを賭ける熾烈な光が宿っている。
「だが、指をくわえて死を待つわけにはいかん! 見よ、我らの眼前に聳えるガルマン星を!」
ラジェンドラが大手を振るうと、メインスクリーンにガルマン星とその伴星の雄姿が映し出された。
かつてボラー連邦の圧政下にあったその星は、デスラー率いるガルマン・ガミラス帝国の手によって解放され、今や強大な新興国家の中心地として君臨している。
「あの星にも寒冷化の影は忍び寄っている。しかし、彼らには技術があり、莫大な資源と強靭な艦隊がある! 我らが生き残る道はただ一つ……ガルマン星を攻略し、その富とエネルギーを奪取すること、あるいは彼らと対等の条件で交渉のテーブルに着かせることだ! 我らの糧と熱を、我ら自身の腕で掴み取るのだ!」
「おおおっ……!」
ブリッジ内から、地鳴りのような歓声と決意の唱和が沸き起こった。
「ボラーの威信のためではない! 我らバースの同胞と、凍える子供たちの未来のために! 全艦、出撃せよ! ターゲット、ガルマン星!」
「「「ヴィネシュラ(永遠に)!ラジェンドラ!」」」
重厚なアーコフ級強襲戦艦を筆頭とするバース艦隊が、凍てつく宇宙空間へと一斉に推進火力を点火した。
その光の群れは、飢えと寒さから立ち上がった人々の、あまりにも悲壮な執念そのものであった。
その頃、ガルマン星の首都郊外――。
「……まるで、氷の世界だな」
古代進は、厚手の防寒コートの襟を立てながら、吐く息を白く染めて溜め息をついた。
ヤマトの外交使節団としてガルマン星に降り立った彼らを迎えたのは、熱烈な歓迎の式典だけではなかった。
視察として案内された農村地区には、冷害によって立ち枯れた巨大な農作物の畑と、不安そうに空を見上げるガルマン人の開墾民たちの姿があった。
「ええ……。デスラー総統の戴冠によって活気に満ちているはずのこの星ですが、気候の悪化は深刻です」
隣を歩く島大介が、手元のデータ端末を見つめながら眉をひそめる。
「タラン副官の話じゃ、この寒冷化はガルマン星だけじゃない。ボラー連邦の支配下にあるバース星や周辺の惑星系全体に及んでいるらしい。ボラー本国もこの原因不明の異常気象に悲鳴を上げているそうだ」
「原因不明の寒冷化……。宇宙規模での環境異変ということか」
古代の脳裏に、かつて地球を襲った無数の危機がよぎる。生命を育むはずの太陽や星々が、理由もなく牙をむく恐怖。
それは、政治や思想の対立を超えた、全宇宙的な脅威の予兆のように思えた。
その時、古代たちの通信機が甲高いく警告音を鳴らした。
『古代艦長代理! ヤマトブリッジの真田です!』
「真田さん! どうしました!?」
『ガルマン星の監視衛星網が、接近する大規模な艦隊を捉えた! 識別コードはボラー連邦属国・バース星軍! 旗艦はアーコフ級強襲戦艦……直ちにヤマトへ戻ってくれ!』
「バース軍だって!? デスラー総統との会談が終わったばかりのこのタイミングで……!」
古代は島と顔を見合わせると、すぐさま疾走を開始した。
「島、ヤマトを急発進させよう! ダゴン艦隊との戦闘に続き、こんなところで全面戦争になれば、せっかくの外交交渉が無駄になる!」
「わかっている! だが相手は困窮しきったバース軍だ……追い詰められた獣ほど恐ろしいものはないぞ!」
晴れやかな外交の舞台から一転、ガルマン星の上空には再び戦雲が垂れ込めようとしていた。
ボラーの圧政と寒冷化の恐怖に脅かされ、生き残りを賭けて押し寄せるバース軍。
突如として現れた未知なる敵と、内部に抱える腐敗の闇に対峙する地球と特務六課。
そして、星の垣根を越えて育まれつつある、幼き召喚士たちの絆――。
様々な思惑と運命が絡み合う中、次元の海と深遠なる宇宙の双方で、時代の大きなうねりが加速していく。
「全機、緊急発進(スクランブル)! ヤマト、主機関始動!」
ガルマン星の宇宙港に急ぎ戻った古代進は、ブリッジに駆け込むなり叫んだ。
メインスクリーンには、ガルマン星の防衛領域へ刻一刻と接近してくる無数の光点――バース星軍の艦隊データが赤く点滅している。
「古代! 敵艦隊の先頭はアーコフ級強襲戦艦『ラ=ジェンドラ』! その他にガノンダ型航宙母艦および新型クロトガ型、アマンガ型、ベレチューシャ型あわせて五十隻を超える大艦隊だ!」
分析台の真田志郎が鋭い眼光でデータを解析しながら報告する。その声には重い警戒感が漂っていた。
「相手はただの侵攻部隊じゃない……言葉通りの『背水の陣』だ。全艦、異常なまでの高出力で突撃姿勢をとっている」
「……生き残るための必死の覚悟、か」
古代は握りしめた拳にぐっと力を込めた。先ほど視察した寒冷化に苦しむ農村の情景と、重なるようにバースの民の凍える姿が頭をよぎる。
(ボラーの支配下で抑圧され、いまや星の命運すら尽きかけている……! だからといって、奪うことでしか生き残れないなんて、そんな悲劇があっていいはずがない!)
「真田さん、デスラー総統の動きは!?」
「総統府より連絡! ガルマン・ガミラス帝国軍総司令部も直ちに迎撃艦隊を編成中だ。だが……ユーリ・ダゴン提督の更迭直後で、軌道上の即応戦力が手薄になっている!」
その時、通信機から重厚で威厳に満ちた声が響き渡った。
『……案ずるな、古代』
ブリッジ中央のメインモニターに、漆黒の軍服を纏ったガルマン・ガミラス帝国総統、アベルト・デスラーの姿が映し出された。その瞳には、かつての冷徹さと、自らの民を背負う絶対の王としての誇りが宿っている。
『我が帝国の新しき戴冠の地を荒らす不遜な企み、断じて見過ごすわけにはいかん。我が親衛艦隊をもって、ただちにあの愚かな一群を散らしてみせよう』
「デスラー総統!」古代は必死に画面へ乗り出した。「待ってください! バース軍が侵攻してきたのは、単なる侵略野心からではありません! 彼らの母星もまた、原因不明の激しい寒冷化で全滅の危機に瀕しているんです!」
『なに……?』
デスラーの眉がぴくりと動く。
「彼らは追い詰められているんです! ここで撃滅してしまえば、残されたバースの民は飢えと寒さで滅びるしかない……! お願いです、まずは対話の道を!」
『対話、か……』
デスラーは僅かに目を細め、静かに息を吐いた。
『古代、君の甘さは相変わらずだな。だが……我がガルマン・ガミラスもまた、かつて星の寿命という絶望に苛まれ、彷徨った歴史を持つ。他者の絶望を笑うほど、私は落ちぶれてはおらんよ』
デスラーの視線が、遥か彼方から迫るバース艦隊へと向けられる。
『良いだろう。ヤマトに先陣を許す。だが古代、彼らが言葉を聞き入れぬならば……その時は我が帝国の鉄槌が下ると思え』
「感謝します、デスラー総統!」
通信が切れると同時に、古代は一気に指令を飛ばした。
「ヤマト、第一・第二主砲、対空パルスレーザー準備! ただし、攻撃は威嚇および敵艦の機関停止を最優先とする! バース艦隊旗艦『ラ=ジェンドラ』へオープンウェーブ通信を接続!」
「了解! 通信回線、開きます!」
相原の操作とともに、ヤマトから宇宙空間に向けて広域通信波が照射された。
一方、迫り来るアーコフ級強襲戦艦『ラ=ジェンドラ』のブリッジ。
「総司令! 前方の宇宙港より、地球連邦軍艦「ヤマト」が急発進! 我らの進路を塞ぐように回頭中!」
「さらに後方、ガルマン星軌道上よりガミラス型の大型艦隊が展開を開始しました!」
副官の悲鳴に近い報告に、ラム=ラジェンドラ大公は微動だにせず、ただ前方を鋭く睨みつけた。
「フン、地球の艦か……! 我らの悲願の前に立ち塞がるというなら、何者であろうと打ち砕くまで! 全艦隊、砲撃準備――」
その時、ブリッジ全体に古代進の切迫した声が響き渡った。
『――こちらは地球連邦派遣艦隊旗艦『ヤマト』、艦長代理の古代進だ! バース艦隊総司令、聞こえるか!』
「なに……!? 我らの軍用回線に直接割り込んできただと!?」
『ラジェンドラ大公! あなたがたの目的は分かっている! バース星を襲う異常寒冷化と食糧難……あなた方は民を救うために戦っているのだろう!?』
ブリッジの将校たちが一瞬、ざわめいた。自分たちの悲痛な叫びを、なぜ敵であるはずの地球人が知っているのか。
『だが、力づくでガルマン星を奪っても、誰も救われない! ガルマン星もまた、同じ異常気象の脅威に晒されているんだ! 戦い合えばお互いに傷つき、飢えを加速させるだけだ!』
「黙れええっ!」
ラジェンドラは大喝し、通信マイクをひったくるように掴んだ。
「貴様ら恵まれた星の者に、我らバースの苦しみが分かってたまるか! 明日のパンもなく、凍えて死んでいく子供たちの涙を見たことがあるのか!? 我らにはもう時間がないのだ! 交渉などという温い言葉で、我が民の腹が満たせるか!」
ラジェンドラの瞳から、熱い涙が一筋こぼれ落ちた。それは怒りではなく、あまりにも重い責任と絶望から搾り出された涙だった。
「我が命はどうなろうと構わん! だが、バースの種を絶やすわけにはいかんのだ! 全艦、撃てえええっ!」
『ラジェンドラ大公――っ!』
『ラ=ジェンドラ』の主砲から放たれた高エネルギー光線が、ヤマトの波動防壁を激しく揺らした。
「ヤマト、前方に展開するバース艦隊へ向け、通信回線を最大出力で開放!古代艦長代理の声を届けるんだ!」
真田の怒号にも似た指示がブリッジに響く中、ヤマトは押し寄せるバース艦隊の猛砲撃の中を突き進んでいた。激しい衝撃が船体を揺らし、波動防壁が火花を散らす。
「古代! 敵主砲の直撃コースだ!」
「回避運動! 迎撃は主砲の威嚇射撃のみ! 相手の動力を削ぐことに集中しろ!」
古代進は操舵席の島に叫びつつ、握りしめた通信マイクへ向かって魂を込めた声を吐き出した。
『ラジェンドラ大公! 届いてくれ! あなたが守りたいのは、バースの民の未来のはずだ! 今ここで互いに命を奪い合って、何が残るというんだ!』
『黙れと言ったはずだ、地球人!』
メインスクリーンに映し出されたラム=ラジェンドラ大公の顔は、激昂と苦痛に歪んでいた。アーコフ級強襲戦艦『ラ=ジェンドラ』のブリッジで、彼は叫び続ける。
『我らには猶予などない! 明日の活力も、凍える子供たちを温める熱も、すべてが尽きかけているのだ! 奪わねば滅びる……! それが我らに遺された唯一の選択なのだ!』
『違う! 滅びの運命に抗う方法は、奪うことだけじゃない!』
古代の強い眼差しが、モニター越しにラジェンドラの瞳を射抜いた。
『俺たち地球も、かつて絶望的な危機に瀕した。だからこそわかる! 追い詰められた時こそ、差し伸べられた手を取る勇気が必要なんだ! ガルマン星のデスラー総統も、あなた方の苦境を理解しようとしている!』
『……なんだと? あのガミラスの総統が……我らボラーの属国であった者を助けるとでも言うのか!?』
「そうだ!」
そこへ、重厚で静かな声が割り込んだ。回線に介入したのは、ガルマン・ガミラス帝国総統アベルト・デスラーであった。
『ラジェンドラ大公と言ったな。我が帝国もかつて母星を失い、冷たい宇宙を彷徨った。他者の飢えと凍える苦しみ……それを無下にあしらうほど、今の私は狭量ではない。我が帝国のエネルギー供給網と物資を、バースの救済に割く用意がある』
「総統……!」
ラジェンドラは息をのんだ。周囲のバース軍将校たちも、信じられない思いでスクリーンのデスラーを見つめている。
『ただし――我が領土を侵す敵には容赦せん。武器を収め、対話のテーブルに着くか。それとも我が親衛艦隊の藻屑となるか……選ぶがいい、大公』
「……くっ……!」
ラジェンドラは拳を握りしめ、肩を激しく震わせた。自分たちの悲痛な叫びが届いたという現実と、これまで背負ってきた重圧が溢れ出す。
「……全艦……砲撃を、停止せよ……」
「大公!?」
「武器を収めろ! 我らは……生き残るために戦ってきたのだ。対話で民が救われるのならば、私の誇りなどいくらでも捨てる……!」
ラジェンドラは通信画面の古代に向かって、重く頭を下げた。
『……地球の指揮官よ。無謀な牙を剥いた無礼を許してほしい。我が民に……光を示してくれたことに感謝する』
「ラジェンドラ大公……伝わって、よかった」
古代は深く胸をなで下ろし、晴れやかな空気が戻ったガルマン星の宙(そら)を見つめた。
銀河系中心部のガルマン星で、ガルマン・ガミラス、地球、バース艦隊と壮絶な戦闘が行われている頃、次元の海を隔てた遥か彼方――第16管理世界『リベルタ』へと進路を取る、第一次次元世界探査艦隊と特務六課は‥‥
クラウディアのブリッジで、クロノ・ハラオウン艦長は手元のモニターに映し出された銀河系の各種観測データを眺め、深く眉をひそめていた。
「クロノ艦長、何か気になることでも?」
副官の言葉に、クロノは腕を組んだまま呟いた。
「……地球防衛軍の観測データと、本局から送られてくる管理世界の次元変動データに、奇妙な符合があるんだ」
「符合、ですか?」
「ああ。ヴァンデイン・コーポレーションが暗躍している第16管理世界『リベルタ』周辺の次元歪曲率と……地球側が属する宇宙で起きている、大規模な『星系の原因不明の寒冷化現象』。発生した時期とエネルギーの異常波形が、完全に一致している」
クロノの言葉に、ブリッジ内に緊張が走る。
「エクリプスウイルス、ヴァンデイン社の陰謀、そして組織の腐敗……。それらは単に管理世界の利権争いにとどまらず、次元の壁を越えて多次元宇宙全体の環境そのものを破壊しようとしているのかもしれない」
「そんな……! では、あの子供たちの住む世界で起きている危機も、すべて根は一つだというのですか!?」
クロノは力強く頷き、前方の次元跳躍ゲートを見つめた。
「ああ。だからこそ、僕たちは負けるわけにはいかない。地球防衛軍という『盾』と共に、僕たち特務六課は『槍』となって闇を穿つ」
クロノは通信機を取り出し、全艦へ向けて静かに、しかし断固とした口調で命じた。
「なのは、フェイト、スバル……そして各員。これより第16管理世界『リベルタ』領域へ突入する。相手は巨大な組織と、次元をも歪める未知の脅威だ。――全員、気を引き締めてかかってくれ!」
『『『了解!!』』』
通信の向こうから返ってくる、なのはたちの力強い声。
ラボラトリー・アクエリアスで互いを思いやり、未来への希望を燃やした少女たちと幻獣たちの絆。
そして、過酷な運命の中で生き残るために命を燃やす宇宙の人々。
交錯する数々の想いを乗せて、次元艦隊は漆黒の次元洞へと果敢に飛び込んでいった――。
その頃、幾重もの次元の波を越え、第一次次元世界探査艦隊と特務六課は、暗雲に覆われた第16管理世界『リベルタ』領域へと到達していた。
クラウディアのブリッジで、クロノ・ハラオウン艦長がホログラムマップを指し示す。そこには、都市部の地下深くへと伸びるヴァンデイン・コーポレーションの密造プラントと、異常なエネルギー反応を示すエクリプスウイルスの発生源が浮かび上がっていた。
「これより潜入作戦を開始する。地球防衛軍の艦隊には『盾』として外宙域の警戒と封鎖を担当してもらう。そして……僕たち特務六課が『槍』となり、最深部へ突入する」
「了解です、クロノ艦長!」
バリアジャケットを纏った高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、スバル・ナカジマたちがキリッとした表情で頷く。
「なのは、フェイト、スバル。相手は本局高官の裏残党とヴァンデインの私設軍隊だ。強力な兵器やエクリプスウイルスの影響も予想される。……決して無理はしないように」
「はい! 大丈夫です、クロノ君。私たちが必ず、組織の闇を暴いて……管理局の本当の正義を取り戻してみせます!」
なのはは愛用のレイジングハートを強く握りしめた。隣でフェイトもバルディッシュを構え、力強い眼差しを向ける。
「スバル、準備はいい?」
「バッチリです、フェイトさん! ラウンジで留守を守ってくれてるあの子たちのためにも、あたしたち大人がビシッと道を切り拓かなきゃですね!」
スバルはリボルバーナックルを力強く打ち鳴らし、ニッと頼もしい笑顔を見せた。
「特務六課、出撃!」
クロノの号令とともに、なのはたちは暗雲立ち込めるリベルタの地表へと一斉に飛び立った。
ヴァンデイン社の陰謀と組織の深い腐敗、そして全宇宙を揺るがす異常気象の真相へ挑むべく、「槍」たる彼女たちの命がけの戦いが、今まさに火蓋を切ろうとしていた――。
次回 ヴァンデイン社の主張