(今回はステルス兄貴さんのお話を参考にさせて頂きました。)
内惑星系艦隊の時空管理局艦『ノア』に対する懸命な救助活動により一人だけだが尊い人命が助けられた。しかし防衛軍としてはこの艦を見過ごすわけにはいかないので、とりあえず司令部に報告をあげた。
「これが例の艦か‥‥?」
藤堂と土方が見ているパネルには防衛軍、ガミラス、そして第十一番惑星を攻撃してきた艦とも違う形をした艦が映っている。
各所から煙を噴いているが、パネルに映っている様子から爆発の恐れは薄いようだ。
救援艦隊からの報告で、搭載されている推進機関も我々防衛軍やガミラスとも異なる。
第十一番惑星を攻撃した艦船と共にこの船も調査する価値は十分にある。
ガミラス戦役時、冥王星海戦からの帰還途中、火星付近で突然ワープしてきた船と同じ機関を使用している可能性があり、あの時の船は機関の損傷が激しく調査不能だったため、今回は調査できるかもしれない。
「それで、生存者は?」
「月村の報告によれば乗員は一名の十代前半の少女を除いて全員死亡していました」
「そうか‥‥それで、人種は?」
「送られた報告では、肌の色はガミラス人や第十一番惑星を攻撃してきた宇宙人とは異なり、我々地球人類と同じ肌の色をしていたとのことです」
「‥‥」
「それと、ネームプレートの他に乗員の何名かがカード状の金属板あるいは水晶らしき物を身につけていたようです。恐らく彼らの星の民族品かお守りのような物なのでしょう」
「そのネームプレートは読めそうなのか?」
「幸い彼らの言葉は地球の英語等に極めて似ているようです。名前もそうですが、所属機関や地名らしい表記も確認できました」
「そうか‥‥生存者がいたのは本当によかったがたった一人だけとは‥‥」
「はい。彼らの遺体は丁重に弔うよう手配をしておきます」
「うむ」
救援艦隊は病院船『氷川丸』にこの不明艦の乗組員の遺体と生存者を収容させ、工作艦『明石』『ヴェスタル』に船体を曳航させて地球への帰還航路についた。
地球への帰路の途中、束はギンガとリニスが居る医務室を訪れた。
「リニス?」
「あっ、艦長。どうしました?」
「ちょっといいかな?」
「はい。大丈夫ですが?」
「リニス」
「はい」
「リニスの見解から例の時空管理局が地球に対し、何らかの武力行為に及んだとして、地球は勝てる?」
未だに詳しい情報が入らない時空管理局に対して少し警戒気味の束。
今、地球は謎の侵略者に狙われている状況で更に時空管理局までもが地球に対し武力行為を行って来れば、地球は二正面作戦を取らなければならない。
しかし、復興したとは言え、防衛軍に二正面作戦を取れるほどの余裕はない。
波動エンジンでなく、ワープ機関を備えている艦船を有する時空管理局。
果たしてどのような相手なのか?
ギンガやドゥーエと同じ世界出身者でもあるリニスに例の時空管理局の次元航行艦のデータを見せ、意見を聞いてみた。
「そうですね‥‥私がミッドに居たのはもう十年以上前ですから‥‥その間に管理局の造艦技術も上がっているとおもいますが、このデータを見る限りでは、今の防衛軍の艦船技術の方が上回っています」
リニスの意見から予想される現在の管理局の次元航行艦と防衛軍の艦船スペックでは防衛軍の方が上だと言うが、現段階ではそれはあくまで予想に過ぎず、詳しい結果は地球に戻り、詳しい調査結果を待つしかなかった。
「出来れば、敵対はしたくないものだね。その時空管理局とは‥‥」
もし、管理局と戦うと言う事になれば、ギンガの故郷の人達と戦うと言う事であり、その中にはもしかしたら、ミッドにいるギンガの家族や知り合いと殺し合いをするかもしれないからだ。
「そうですね‥‥」
リニスはそっと目を閉じ、束の言葉に同意した。
「もし‥‥もし、管理局と防衛軍が戦う事になれば、リニスは戦える?」
「‥‥」
束はあくまで可能性に過ぎないが、もし管理局が地球に対し武力行為を行ってくれば、当然地球側としては之を迎え討たなければならない。
その時、ミッドで居住経験のあるリニスに戦えるかどうかを訊ねる。
リニスの中には不安要素があった。
それは他ならぬフェイトの事だった。
今、どこでどんな生活をしているのか分からないが、優秀な魔導師故、管理局と何ら関わりを持っていてもおかしくない。
いや、もしかしたらフェイトは管理局員になっているかもしれない。
もし、管理局と関わりを持っていたり、局員になっていれば、その先兵として戦場に出てくるかもしれない。
自分はかつての弟子であり、娘の様に育てたフェイトを殺すかもしれない。
否、敵対し、自分の前に敵と現れたのであれば、自分は防衛軍軍人として完膚なきまでに叩き潰さなければならない。
故にリニスの返答は‥‥
「戦います。今の私は、防衛軍の軍人であり、貴方の使い魔なのですから」
と、迷いなく答えた。
そのころテレザート宙域に展開していたゴーランド提督は非常に不機嫌であった。
気流星団での演習宙域からヤマト討伐にかかろうとした時、ズォーダー大帝からの突然の異動命令でテレザート星に着いたゴーランドはデスラーの指揮下に着くように言われた。
テレザート方面軍の総司令官とはデスラーの事だったのだ。
彗星帝国の提督と言う地位でありながら異星人であるデスラーの指揮下につくという事は、ゴーランドにとって余りにも屈辱的な事であった。
しかし、大帝恩自らの命令では従わない訳にはいかず、ゴーランドは渋々デスラーの指揮下に入ったが、そのデスラー本人があまりゴーランドの事を信用もしていなければ、期待もしていない様子で、その事でゴーランドの不快指数は益々募るばかりであった。
そんな中、デスラーがヒアデス方面へ出撃しゴーランドにはテレザート宙域での待機命令が出された。
ゴーランドはこのウサを晴らす為、艦隊の一部をテレザート宙域に残し自らは直掩艦隊を率いてテレザート宙域の近くで見つけた恐竜惑星へとハンティングに向かった。
恐竜惑星近海へと到着したゴーランドは艦に搭載されていた小型艇に乗り恐竜惑星へと向かった。
そして、恐竜惑星に小型艇で降り立ったゴーランド一行。
そのゴーランド一行に興味があるのか、または自分たちの縄張りを荒らしにきた敵対者だと思ったのか恐竜たちがゴーランドの傍に寄って来た。
ゴーランドはそんな恐竜たちに対して愛用している狩猟用の大型連装式レーザーライフルで恐竜たちを次々と撃ち始めた。
レーザーライフルの銃撃を受けて、断末魔の悲鳴を上げながら絶命していく恐竜たち。
「ふぅーすっきりしたぜ」
「いつもながらお見事な腕前です。提督」
自分の近くに居た恐竜たちを狩りまくり、ウサを晴らしたゴーランドは満足そうな表情で小型艇に乗り込み自分の指揮する艦へと戻って行った。
しかし、空へと浮かび上がっていくゴーランドの小型艇を見ている人物がいた。
それは時空管理局の自然観察保護官であった。
この恐竜惑星の存在は管理局の方でも既に認知していた。
この星は、ミッドを始めとする近代管理世界では既に絶滅してしまった恐竜を始めとする多くの古代生物が生息しており、更にデバイスや次元航行艦の製造に必要な鉱物資源も多くある事が判明し、管理局は早速この恐竜惑星を自然保護管理世界と認定し、ここに自然観察保護官を赴任させていた。
六課卒業後のキャロやエリオがなった自然観察保護官の主な任務は保護対象の貴重生物達を密猟者から守る事やケガや病気になった古代生物の保護と治療にあり、その日もこの世界に駐在する自然観察保護官は恐竜惑星の彼方此方をパトロールしていた。
すると、ある自然観察保護官は担当のパトロール区域で多数の恐竜の死骸を発見した。
死骸をよく見てみるとその巨体には、レーザーで出来た銃創があり、これはケガや病気、恐竜同士の争いによって死んだのではないとすぐに分かった。
自然観察保護官はこれが人為的なモノでもしかしたら密猟者が近くに居るのではないかと思い辺りを見回すと小型の宇宙船の様な物が空に飛んでいくのを目撃した。
自然観察保護官は急いでこの惑星にある管理局の本部に連絡を入れ、本部はこの惑星の近くを航行している次元航行艦に連絡を入れた。
恐竜惑星の近くを航行していたのはクロノ・ハラオウンが艦長を務める次元航行艦クラウディアだった。
此処最近、このヒアデス星団近海では資源物資を輸送している次元航行船が消息不明になる事件が相次いで起き、更に調査・救助に向かった管理局の次元航行艦‥それも最新のXV級の次元航行艦が行方不明になる事件が多発しており、管理局では警戒を強めていた。
一番最近になって消息をたった次元航行艦、ノアは、消息を絶つ直前、正体不明の艦隊と遭遇し交戦中と連絡してきた。
管理局の次元航行艦には大口径魔導砲『アルカンシェル』や、少なからぬ小口径速射魔導砲も装備されていたが、それらを使う暇もなく撃破されたものと予想された。
そんな中、恐竜惑星こと、第102自然保護管理世界、プレオから密猟者が恐竜を多数殺して、逃亡したと連絡が入った。
一連の次元航行艦、次元航行船の行方不明事件に何か関係があるかもしれないと思ったクロノはプレオにある管理局の支部に連絡を入れると、急いで第102自然保護管理世界、プレオへと向かった。
恐竜惑星(プレオ)でのハンティングを終え、自身が将旗を掲げるゴストーク級ミサイル艦 ルーベルグⅢに戻ったゴーランドはテレザートへと帰るのかと思いきや、
「全艦!!戦闘隊形FZ!!」
と、艦船が居ないにも関わらず、率いてきた他のミサイル艦に戦闘態勢をとらせた。
「全艦!!破滅ミサイル発射用意!!目標、恐竜惑星!!」
なんとゴーランドは先程、自分がハンティングを行っていた恐竜惑星に対して、艦首に装備されている超大型ミサイルである『破滅ミサイル』を撃ち込もうとしていた。
「全艦!!戦闘隊形FZ配置完了!!」
「破滅ミサイル安全装置解除、発射準備良し!!」
「破滅ミサイル発射!!」
ゴーランドの命令の下、ミサイル艦隊からは二十数発の破滅ミサイルが恐竜惑星へと撃ち込まれた。
やがて、恐竜惑星は、何度も爆発を繰り返し、表面に幾つもの亀裂を作りながら崩壊していき、最終的には眩い閃光と共に宇宙から消え去った。
「見たか?俺の作戦を。間もなくヤマトもああなるのだ。ハハハハハ‥‥」
ゴーランドは恐竜惑星を粉々にした破滅ミサイルの威力を見て、勝利を確信したかのように高笑いをした。
破滅ミサイルを撃ち込まれた直後、第102自然保護世界プレオの管理局支部はクラウディアに通信を入れた。
「クロノ提督!!プレオから緊急通信です!!」
「なに!?通信回線を開け!!」
「了解」
通信士がプレオからの通信回線を開き、パネルに映像を映すが向こうの通信状況が悪いのか、パネルには砂嵐の様な映像しか映らず、通信を送っている通信員の声も所々飛んでいる。
「・・・・こち・・・・プレ・・・・オ・・・・とつ・・・・ぜん・・・・ミサ・・・・攻撃・・・・・受け・・・・・惑星・・・・・崩壊・・・・・しつつ・・・・・あり・・・・・・至急・・・・・・きゅうえん・・・・・・もと・・・・・・・救援を!!・・・・・・・・求む!!・・・・・・・・」
その通信を最後にプレオとは通信が出来なくなった。
「これはっ!?」
「救援を求めているんじゃないですか!?」
クラウディアに研修乗艦している執務官であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと六課卒業後、フェイトの下で執務補佐官を務めているティアナ・ランスターがクロノに訊ねる。
「事態は一刻も争うって事か‥‥」
クロノは焦りで顔を歪めながら言う。
「全速前進!!針路をプレオに向けろ!!」
「了解」
クラウディアは全速でプレオへと向かった。
やがて、プレオのある宙域にクラウディアが到着すると、クルーの目の前には‥‥。
「そ、そんな‥‥」
「プレオが‥‥」
「こ、こんな‥‥」
「一体、何が‥‥」
「ひどい‥‥」
「‥‥」
そこにあるはずだった綺麗な緑と水、古代生物に満ちた惑星(世界)はもはや痕跡すら留めず、宇宙に無数の岩くれが漂うだけだった。
プレオには管理局の自然観察保護官の他、惑星資源開発の作業員や観光スポットとして整備するための開発業の作業員ら数千人の人間がいたのに彼らは自分たちが居た星もろともこの暗黒の虚空に命を散らされた。
「誰が、こんなひどい事を‥‥」
ティアナが痛憤の呻きを漏らし、クロノやフェイトの胸にも抑えがたい憤怒が込み上げていた。
プレオからの最後の通信では、「ミサイル」と言う質量兵器の名前がはっきりと聞こえた。
つまり、そのミサイルを所持していた者とプレオで、恐竜を密漁していた者は同一人物と推察され、クロノ達管理局の中では敵であるのだと認識された。
クロノは早速、プレオの事を管理局、本局の次元航行艦隊司令部に伝えた。
クラウディアからの報告を聞いた司令部の幕僚たちの驚愕は計り知れなかった。
直ちにクロノの下には犯人の捜索と可能ならば首謀者を逮捕するよう命令が下された。
しかし、現状では敵が何者なのか分からない。
まずは敵の正体を掴まなければならないが、質量兵器を多数搭載する艦艇を多く擁する武装勢力など、管理局至上初の事ではないかと思うフェイトとティアナであった。
ヒアデス星団を調査して早数日が経過したが、未だに敵の正体も手掛かりもつかめないままの状況が続いた。
「周辺空域に異常はないか?」
「ありません」
「そうか‥‥」
クロノがブリッジで周囲の状況をオペレーターに訊ねるが、何の変化もない安全な航海が続いていた。
本来ならば喜ぶべき事なのだが、それは今の所何の成果がない事を物語っていた。
「せめて、敵の正体だけでも掴まないとな」
クロノには焦りの色が窺えた。
大勢の同僚や貴重な古代生物、鉱物資源がなす術無く無残に殺され、破壊されて失われたのだ。
彼らやその家族の為にも必ず首謀者を逮捕する。
その為にもまずはその首謀者を見つけてその正体を知らなければならない。
そんな焦りがクロノにはあった。
「艦長、間もなく第132管理外世界テレザートに近づきます」
クラウディアは何事もなく、プレオに隣接する惑星、第132管理外世界テレザートに接近しつつあった。
第132管理外世界、テレザート‥‥此処にはおよそ十年前まで、ミッドをも凌ぐ高度な文明が存在しており、次元航行手段を手中にするのも間近と言われていた為、管理局はコンタクトをとるタイミングを測っていた。
もちろん、コンタクトが成功したらこの世界を管理世界入りさせる魂胆が管理局にあったのは、クロノを始めとするクラウディアのクルーたちは知らない。
恐らく高度に発達した科学技術をロストロギアだとか質量兵器所持だとかで難癖をつけて、無理矢理管理世界入りをさせる計画だったのだろう。
しかし、管理局がこの世界を管理世界入りさせる前にこの世界で大規模な内戦が発生した。
管理局はその事態をコレ幸いと思い、内戦終結後に「戦災復興」を名目にテレザートを管理世界へ編入させようと準備を進めた。
だが、管理局の思惑と違い、テレザートの内戦は次第にエスカレートした揚げ句、住民の全てが死亡してしまい、テレザートの文明は完全に滅んでしまった。
その報告を受けた管理局は住民が死んでしまっては管理世界に編入させても意味は無いと判断し以後テレザートはそのまま放置された。
ただテレザートが滅んだ直後、まだ廃墟には多くのロストロギアが眠っているのではないかと言われ、遺跡発掘を生業とするスクライア一族がテレザートへと派遣され、現地をくまなく調査したが、あまりにも激しい内戦だった為か目ぼしいロストロギアの類は一切見つからなかったと言う事実も管理局がテレザートを放置する要因の一つでもあった。
「操舵手、気を付けて進め。この辺は艦船のエネルギーを吸収するバキューム鉱石が多いからな」
「了解」
クロノは操舵手に細心の注意を払いながら操艦に努める様に指示する。
この辺りには詳しい原理や構造は分からないが艦船のエネルギーを吸い取る特殊な宇宙鉱石が多い。
その為、むやみやたらに動き回るとその宇宙鉱石にエネルギーを吸い尽くされ、航行不能に陥ってしまう。
それは魔導エネルギーで動いている管理局の次元航行艦も例外ではない。
クラウディアはゆっくりではあるが慎重にそして確実にバキューム鉱石の影響を受けることなく、テレザートへと近づいていた。
やがてテレザートの傍に来た時、クラウディアのレーダーが艦船らしき反応をキャッチした。
「艦長、本艦の位置から丁度、テレザートを挟んだ反対側に多数の艦船らしき反応があります!」
「なにっ!? よし、慎重に近づいて解析するぞ!」
オペレーターの報告を受け、クロノが指示を下した。
「ビンゴ‥‥かな?」
「そうあってほしいがね」
クラウディアは注意深く、テレザートの反対側が望める位置に移動する。
すると、すぐさまオペレーターが解析にかかり、ほどなく結果が報告された。
「エネルギー反応を二ヶ所で確認。テレザート付近で約三十隻を確認、いずれも大型艦です。さらに付近のアステロイド帯の中にも一つ反応があります。距離があるので詳しくはわかりませんが、此方も大型艦の模様! それもかなりの高速で互いに接近しています!いずれの艦船もエネルギー反応は強大で、我々(管理局)が保有する次元航行艦の動力エネルギーを凌いでいます!」
「そんな‥‥」
「バカなっ!?」
「映像に出せるか?」
「手前の艦隊ならば。なんとか投影出来ます」
「よし、ただちにパネルに投影」
「了解」
そしてパネルには白と黄緑を基調とし、艦の全体をまるでハリネズミの様にミサイルで武装した艦隊の姿が投影された。
「な、なんだ!?あれは!?」
「全身をミサイルで固めている‥‥」
「艦首には超大型ミサイルらしき突起物が二本‥‥プレオを破壊した事と言い、一連の輸送船や次元航行艦襲撃の犯人は恐らくこの艦隊だろうな‥‥ギリギリまで接近しろ‥‥ただしいつでも次元跳躍出来る用意だけはしておけ‥‥」
「了解」
クロノが怒気を含んだ口調で命令を下す。
人一倍正義感が強いフェイトも拳を固く握り締めた。
何としても彼らを逮捕したい‥‥。
しかし、余りにも数が違い過ぎる上、向こうは全身をハリネズミのようにミサイルで武装した戦闘艦。
一方、こちらはあくまで調査母艦的な艦船でまともに渡り会えるとは思えない。
この場に血気盛んな管理世界拡大派の局員がいれば、「あの艦隊に向けてアルカンシェルを撃ち込め!!」なんて言いそうだが、そんな事をすれば、何隻かは撃沈できるだろうが、その後は残存艦によるミサイルの雨霰の報復を受け、あっという間に此方が撃沈されるだろう。
そう考えると、この場に血気盛んな管理世界拡大・拡張派の局員が居なくて良かったと思う。
それと同時に、今の自分たちには、何も出来ないのだと自分たちの無力さを思い知った。
「それにしても、あのアステロイドに居る艦‥早く、あそこを出なければ、バキューム鉱石にエネルギーを吸い尽くされてしまうぞ」
クロノがアステロイドに居る艦に対して呟いた。
あのアステロイドを構成するのは例のバキューム鉱石だったのだ。
「アステロイド帯に居る艦のエネルギー反応がどんどん下がっています!!」
「やはり、バキューム鉱石にエネルギーを吸い取られたか!!映像をまわせるか?」
「先程より、距離を縮めたので何とか‥‥」
オペレーターがアステロイドから出てきた艦の姿もパネルに投影すると、その艦はどういう訳か、艦の外側にバキューム鉱石を目一杯付着させた状態だった。
「い、一体何を考えているんだ?あの艦の乗員は!?あれでは、バキューム鉱石にエネルギーを吸い取ってくれと言っている様なものではないか!!」
と、クロノは呆れる様に言う。
やがて、ミサイル艦隊にも動きが現れた。
「手前のミサイル艦隊攻撃態勢をとりました!!」
オペレーターの報告を受け、クラウディアのブリッジ内に緊張が走る。
「ミサイル艦隊、ミサイルを一斉に発射しました。目標は恐らくバキューム鉱石を付着させた艦です!!」
オペレーターが緊迫した声を上げた。
無数の中小型ミサイルが奥にいる艦船を見舞う。
((逃げて!!))
と、フェイトとティアナは心の中で、ミサイルの雨に見舞われる船の無事を祈った。
「ミサイル、着弾します!」
「やはり、エネルギーを吸い尽くされて身動きが出来ないのか‥‥」
誰もがあの艦が撃沈されると思った中、クラウディアのクルーたちは信じられない光景を目の当たりにした。
なんと、艦の周りを覆っていたバキューム鉱石がまるで意志を持っているかのように、張り付いていた艦から離れ、艦の周りをリング状にグルグルと回転し始めた。
そして接近してくる多数のミサイルをまるで、はたき落とすかのように動き回ったのだ。
やがて、ミサイルの第一波攻撃が終わると、そこには無傷の戦艦の姿があった。
あの回転したバキューム鉱石が全てのミサイルを叩き落したのだ。
その艦影は水上艦船を意識した造りで高く塔の様に聳える艦橋らしき構造物に煙突。
さらには、昔、地球の戦艦が使っていたであろう古めかしい砲身を持つ砲塔らしき兵装を装備した艦の姿がそこにあった。
「あ、あれだけの数のミサイルを全部叩き落したって言うの!?」
「信じられない‥‥」
フェイトとティアナはさっき見た光景が未だに信じられず唖然としていた。
「バカな!?」
突然オペレーターが声をあげる。
「どうした?」
「あの艦のエネルギーが回復しているんです。さっきまでバキューム鉱石によって、エネルギーを吸い尽くされる寸前だったのに‥‥」
クロノが確認のため、エネルギー計測機を見ると、確かに先程までエネルギーが枯渇寸前だった戦艦のエネルギーが一瞬にして回復している。
あのバキューム鉱石の動きといい、瞬時にエネルギーを回復させた事と言い、分からないことだらけだった。
「ああっ!!」
またもオペレーターが声をあげる。
「今度はどうした!?」
「ミサイル艦から例の超大型ミサイルが発射されました!」
「なに!?」
プレオを破壊したと思われる例の超大型ミサイル(破滅ミサイル)があの戦艦へと発射された。
オペレーターの声に思わずモニターを見た。
「あのミサイルがプレオを‥‥」
ティアナが嫌悪感も露わに呟く。
あれだけの大型ミサイルの飽和攻撃なら、プレオが消滅してもおかしくはないだろう。
第一波攻撃をバキューム鉱石の謎の動きで損害を受けなかったように見えたあの艦だが、今度はそのバキューム鉱石を周りに付着させていない。
さすがにあれだけのミサイル相手では持ちこたえられないだろう。
「何をしている!?逃げろ!」
思わずあの艦に向けるようにクロノが叫んだが、オペレーターからの報告は予想を完全に覆す内容だった。
「奥の艦のエネルギー反応が急激に増加!!エネルギー観測のゲージが振り切れました!」
「何!?」
急激なエネルギー増大、つまり何らかの超高エネルギー砲による攻撃だろう。
そしてクラウディアは今、ミサイル艦隊の真後ろにいる。
「いけない、クロノ!!」
「わかっている!!艦首下げろ!!スラスターがいかれてもいい!かわせっ!!」
クラウディアは急ぎ艦首を下に向けた。
直後、あの艦がいるあたりで眩い閃光が走ったかと思うと、膨大な光の柱が襲いかかって来た。
次の瞬間、艦尾部に大きな衝撃を受け艦全体が大きく震えた。
「うわぁぁぁぁー!!」
「きゃぁぁぁぁぁー!!」
「くっ、被害報告急げ!!」
「艦尾損傷!!第二装甲板までが剥離または損傷を受けました!!」
「第15ブロックにて火災発生!!」
「推進力低下!!スラスターも上手く作動しません!!」
「消火と応急修理急げ!!」
被害報告を聞き、クロノは直ぐに指示を出していく。
クラウディアの損傷は小さくなかったが、次元跳躍は可能だ。
そこで、クラウディアは現宙域からの撤退をすることに決めた。
艦が万全の状態でもあの艦とやり合えるわけないのに損傷した状態であの場にいるのは危険と判断したのだ。
もし、あの艦が此方を敵と認識したらひとたまりもない。
「あのミサイル艦隊はどうなったの?」
フェイトがオペレーターに訊ねると、
「‥‥い、一隻残らず消滅しました‥‥空間転移の形跡も‥ありません‥‥」
「‥‥」
オペレーターからは信じられない報告が返ってきた。
「あれだけの艦隊をたったの一撃で消滅させたというのか!?あの艦は‥‥」
「そんなっ!?」
「信じられない‥‥」
クロノも信じられない口調だ。
事実ならば、先程あの艦が撃ったエネルギー砲はアルカンシェルとは比較にならない程の威力を持つ文字どおりの大量破壊殺戮兵器だ。
「全速で現空間を離脱、一番近い支部は?」
「第17管理世界です」
「よし、では、そこの支部に連絡。受け入れと修理体制をとって貰え」
「了解」
クラウディアが撤退を行っている中、
「艦長、あの艦は危険過ぎます!ご覧になられたでしょう?あの艦の砲撃の威力を!?ここは、直ちにあの艦に停船命令を出し、その上臨検するべきではありませんか!?それにノアもあの艦に撃沈された可能性があるかもしれませんのに!!」
一人の若い士官がミサイル艦隊を葬り去ったあの艦への臨検を主張するが、ブリッジの空気は冷ややかだ。
この士官は、ミサイル艦隊は数が多いため、奇襲する様な形でアルカンシェルを撃ち込もうと進言しなかったが、今は一対一。
数の内では互角でクラウディアが負けることは無いと思ったのだろう。
ティアナに至っては「何、寝言ほざいているの?このバカは?アンタ、そんなに死にたいの?」
と、口を開けばそんな事を言いそうなくらいの呆れ顔をしている。
「あれだけの艦隊を一瞬の間に消滅させた艦だ。それにあの超エネルギー砲の矛先がこちらに向いたらどうなるか、それぐらい君にも十分わかると思うが?」
クロノ自身も少し呆れた口調で言っている。
「あの艦はきっとあのエネルギー砲以外にも飛び道具は持っていると思う‥。それにクラウディアは今傷ついて、怪我人も出ている。ここは、船の修理を優先しましょう。ねっ?」
フェイトが宥めるような口調で言う。
「わ、わかりました‥‥出過ぎたことを言い申し訳ありません」
「わかってくれたなら、それでいい。修理が済み次第またここに戻るが念の為、データ収集ポッドを置いていく」
クロノの指示でデータ収集用ポッドを置き、クラウディアはテレザート宙域を後にした。
第17管理世界へ向かっている途中、休憩室にてクロノとフェイトは休憩していたのが不意に、
「今にしてみると、少しもったいないことをしてしまったかな?」
「何が?」
お茶(リンディ茶にあらず)を口にしながらクロノが残念そうに呟いた。
「ミサイル艦隊を一掃したあの艦の事さ‥臨検ではなく、一船乗りとして、あの艦の乗組員と話をしてみたかったよ」
「そうだね。でも仕方ないよ」
フェイト自身もクロノと同じ思いを抱いていた。
同じ武装をしている艦でもミサイル艦隊はともかく、あの艦にはなぜかさほどの不安は感じなかった。
むしろ、『どこかで見た様な‥‥』と言う懐かしさもあった。
そう思うと、あの艦にノアが撃沈されたと思うのはいささか早急すぎる憶測だ。
憶測のままあの艦を拿捕しようとすれば、あのミサイル艦隊を消滅させたあの超エネルギー砲が自分たちに向けられるかもしれないと思うと少し背筋が寒くなる。
あの艦とコンタクトは取れなかったが、消滅したミサイル艦隊の隊内通信の傍受には成功しており、第17管理世界についたらそこの支部で解析して貰う予定だ。
その後の解析結果で分かった事は、ミサイル艦隊はあの艦が発射した超高エネルギー砲撃で全滅したと確認された。
また、ミサイル艦隊内の通信の中に、何度となく『ヤマト』という単語が出ていたことも判明した。
流石にあのミサイル艦隊の乗員の悲痛な最後の叫び等は聞くに堪えられないので、解析を行った技術官の行為で、通信内容は紙に書かれて手渡された。
フェイトはジッと紙に書かれた『ヤマト』と言う部分を見ていた。
(ヤマト?)
一時期地球に住んでいたフェイトにはその言葉と発音は何度か耳にした事がある。
(あの艦はヤマトと言うの?)
しかし、フェイトが知る今の地球にあれ程の強力な宇宙戦闘艦を建造する技術などは存在しない。
これはどういう事なのだろうか?
たまたま日本語の『ヤマト』という発音に聞こえただけなのだろうか?
それとも明確に『ヤマト』と発音したのだろうか?
フェイトがその答えを知るのはもう少し時間が経ってからの事だった。
まずい・・・後半かなり似てる(というか設定上そのまま・・・)まずいか?
再びリリカル世界のキャラを地球側につかせる予定なのですが誰がいいですか?戦闘機人らは確定しているのですが‥‥
-
Dr.スカリエッティ
-
エルトリア組
-
アインハルト&ヴィヴィオ友御一行様