蓮仁郎「う…ん?」
幼馴染に渡されていた本を暇潰しに読んでいたはずだったのがいつの間にか寝入ってしまったらしい。家の中でも、外に出かけても寝ているとか、俺の体ってどんだけ睡眠を求めてるんだよ…
外はもう暗く、日が沈んでいる。焚き火の火が照り付けているくらいで他に変わったことは…
蓮仁郎「あれ…?あいつどこ行った?え、っていうか、暗!てか熱っ!」
普通に足燃えそうなくらい熱かった。無意識に足を伸ばして寝てしまったらしい。
蓮仁郎「これって…普通に危ないだろ…どっか行くならせめて消すか、起こしてから行けよ…」
今ここにいない幼馴染に悪態をつきながら、立ち上がって背伸びをする。
そのまま上を見上げる。
蓮仁郎「すげぇな…」
富士山だ。
夜になって昼間に被っていた雲の傘がなくなったようだ。
夜の空と富士山。
山梨に住んでもうすでに10年近く経つ。
こんな景色いつでも見れるものなんだが、こういう雰囲気で見るのも
なかなか良いものではないか。
俺の幼馴染はここに来るたびに、こんな景色をいつも見ているのか?
いや、もしかたらここだけじゃないかもしれない。その場所でしか見えない景色、その時にしか味わえないものを、味わう。
蓮仁郎「そっか…これも…ソロキャンの楽しみ方なのかもな…」
初めてのソロキャン。最初は半ば強制的に連行されたものだったが、
良いもんだな。ソロキャン。
部屋でだらだらと惰眠を貪るのも悪くないが、
ここで過ごすのも悪くない。
まぁ結局は半分くらい寝てたけど。
だが、これは連行した幼馴染に感謝くらいしておかないとだな。
リン「…レン…!レン…!レン…!」
ちょうど良く幼馴染が俺を呼ぶ声が聞こえた。
そんな連呼しなくても、ちゃんと感謝してるから
なでしこ「ひっ…ひっ…ひっく…!」
なんか、泣き声も聞こえるんだけど…
リン「レン…!レン…!」
なでしこ「ひっ…えぇーん!!!待ってよおー!!!!」
蓮仁郎「何やってんだ…あれ…」
俺の幼馴染は夜に鬼ごっこをする趣味でも持っているのか。
いや、でも、まぁ怖いね。普通に怖い。
なんとなく状況は把握した。恐らく何の弾みかわからないが、寝過ごしてしまった「あの子」が泣いて路頭に迷っていたところを俺の幼馴染とばったり遭遇してあの状況になってしまったのだろう。もしかしたら、なんだかんだ面倒見の良い幼馴染だから、様子を見に行っていたのかもしれない。想像しただけで俺も震えてきたわ。俺だったら気絶してそうだ。
蓮仁郎「助けてやるか…」
なんだか面倒なことに巻き込まれそうだ。これもソロキャンの良さなのか?
そんなことを考えていると、ちょうど良く腹の虫が鳴く。
蓮仁郎「あ…そういや、朝飯もまだだったな…」