なでしこ「ひっく…ひっく…」
リン「つまり…今日山梨に引っ越してきたばかりで…」
なでしこ「ぅん…」
蓮仁郎「自転車で富士山を見にきたけど寝過ごして…」
なでしこ「ぅん…」
リン「気がついたら真っ暗だったと…」
なでしこ「ぅん…」
蓮仁郎「でも、帰りって真っ直ぐ下りじゃなかったか?」
リン「そうだね。下まですぐだと思うけど…」
なでしこ「むりむりむり!ちょうこわい!」
リン「家に連絡して迎えにきてもらうのは…」
なでしこ「あ!そっか!スマホ…すまほ…すまほ…」
そう言って遭難少女はスマホを探し出した。
本来ならすぐに思いつきそうなものだが…不安な時に冷静な判断ができないというのは良くあることだ無理もない。
俺も中1の頃に行った林間学校であった肝試しのイベントでお化け役の人に脅かされてから一時期1人で暗がりの道を歩けなくなったことがあった。少しでも日が落ちると1人で歩けなくなり、絶対誰かに一緒に夜道を歩いてもらっていた。
その生贄はほぼ半分の確率でお団子幼馴染についてきて貰っていた。
部活の時も待ってもらって一緒に帰ってもらっていた。本当にあの時は助かった。死ぬかと思った。
とまぁ余談はこのくらいにして本題に入ろうと思う。先程スマホを探していた遭難少女だがその手に握られていたのは…
なでしこ「すまほっす!」
リン「……」
蓮仁郎「……まぁよくあるよな。トランプとスマホ間違えるのは…」
リン「……本当にそう思ってるのか?」
蓮仁郎「ごめんなさい」
遭難少女が取り出したのはスマホ……ではなくトランプセット52枚入り430円(税込)だった。いや下手なフォローしちゃったけど、なんで間違えてトランプ持ってきちゃうのか…ひょっとするとこの子は…おっちょこちょいという奴では…
と考えているとぐぅぅううと音が鳴った間違いなく間違いようがなく腹の虫の音だ。
リン「ラーメン食べる…?」
なでしこ「え!くれるの!」
リン「1500円」
蓮仁郎「おい」
なでしこ「じゅ…じゅうごかい払いでお願いします…」
リン「ウソだよ」
そう言うと俺の幼馴染は湯を沸かすためバーナーに火をつける。そんな中で遭難少女は興味津々に色々なことを聞いてきた。俺の幼馴染は律儀にそれに応えている。素直じゃないと言うか、全くもってめんどくさいやつだ。
リン「なんか失礼なこと考えてるだろ」
なんでさっきからナチュラルに心読んでくるんだよ。怖えよ。
リン「私のスマホ貸すから。家の番号言って」
なでしこ「引っ越したばっかりでわかりません!」
蓮仁郎「だったら自分のスマホの番号とかなら覚えてるだろ?」
なでしこ「記憶にございません!」
そうしてまた遭難少女の腹の虫が鳴く。飼い主は元気ないのにお前はよく鳴くなおい。
なでしこ「あ、沸いた!沸いたよ!は…はっくしゅ!」
遭難少女は逐一興味津々だ。可愛いなおい。
まぁ案の定と言うかそりゃこの季節にあんな所で寝ていたら風邪ひくのは当然と言えば当然だ。
リン「レン。ちょっと薪持ってきて」
蓮仁郎「はいよ」
そう言うと俺たちは焚き火に薪をくべて火の勢いを強くする。
その焚き火は暖かく優しい感じがした。
リン「どうぞ」
なでしこ「ありがとう!カレー麺!カレー麺!」
蓮仁郎「なんか…俺まで悪いな…」
リン「1500円」
蓮仁郎「俺からも金取るのかよ!」
リン「1500円」
蓮仁郎「え、リンさん?じょ、冗談だよね?」
リン「1500円」
蓮仁郎「い、いや、あのお金を取るにしてもですね?1500円は高くないですかね?せめて300円…いや、500円くらいならわかるんですけど…」
リン「ウソだよ」
蓮仁郎「引っ張りすぎだわ」
リン「じゃあ、後で500円ね」
蓮仁郎「結局取るのかよ」
なでしこ「ぷっ、あははは!2人ともお笑い芸人さんみたい!」
蓮仁郎「まぁじゃあウケたところで、さっさと食うか」
なでしこ「うん!いただきます!」