----首都 郊外----
死んだように静かな町を3台の車が一列で進んでいく。
車内にはボディーアーマーに身を包んだ人間が六人ずつ乗っている。
その全員が弾倉を抜いた銃を持っていた。
彼らは武偵である。
目的地は武器商人と取引相手の会合場所。
依頼ではなく犯罪者を捕まえて賞金を得るための『賞金稼ぎ』として集まった人達だ。
「レッド1から各員へ。
協力者の情報によれば8人の敵がいる。
拳銃を武装しているが長物はない。
ブルーチームの狙撃位置確保後に突入。
五分以内に片を着けるぞ」
彼らが向かっているのは町外れの洋食店だ。
----店内----
「用意した物はご満足いただけましたかな?」
でっぷりと膨らんだ腹に薄くなった金髪の頭皮、日本人ではない。
男の横には西洋人の男と女が座っており、立っている男も二人いる。
猟奇的な目を持つ赤い髪の女は面倒臭そうにその場にいる。
太った男以外、全員の雰囲気が重い。
その中年男が向かいの若い男に尋ねていた。
「ええ、もちろんです」
対面して座っているのは若く少し頼りなさげな男だ。
目の前に並ぶ人間のような血生臭いものは感じられない。
学者か教師をやっているような、そんな感じだ。
だが、その横に座る少女は少し空気に棘がある。
「そうかい、そりゃ良かった。
次のも手配済みだ。
イスラエル製のサブマシンガンを十数丁。
ちと車代と銃器の遠隔操作装置に金が掛かったがアンタら提示の予算内だぜ」
男は2,3枚の書類を優男に渡す。
金額を示す数字と項目が表になっている。
「どうもありがとうございます。
こちらも予定通り事が進んでおりまして、とても良い心地ですよ」
「こっちも結構な額の前金を貰ったんだ、相応の物は用意する。
だがよお、あんな銃で良いのか?
あんな豆鉄砲じゃあ威力も火力もジジイの小便並だ。
殺すならもっといいのがあるぜ。
三割も増やしてくれりゃランチャーくらいは付けてやるぞ?」
「いいんですよ、目的は別ですし」
「そうだな、お互い相手の注文にケチ付けちゃいかんな。
後は出来払いの分だけだ、よろしく頼むぜあんちゃん」
男は笑いながら安い酒を飲み干す。
どうやら商談は円滑にまとまったようだ。
「あー、ちょっと良いか?
金は米ドルで支払って欲しいんだがな。
ユーロで給料出た日にゃ、アンタの軽そうな頭撃っちまうかもよ?」
若い男が愛想笑いをしながら、明日には振り込みますと言ったときだった。
赤髪の女が不満をもらしたのだ。
「懐のお寒いヨーロッパの銭を渡されても困るんだよ。
聞いてんのかい、フランス女?」
その女の目は若い男の隣に座る少女に向けられていた。
「いつまでもドルが世界通貨と思ってんじゃねえよアメリカン気取りが。
ベルヴァつったか?
雇われ者のお前が商いに絡んでくんなよ」
その容姿からは想像も出来ない男勝りの声が投げ返される。
「あ? 良く聞こえなかったなぁ、排夾だけじゃなく口の滑りも悪いのかいフレンチ製は?」
「そっちは耳ん中も脂肪だらけで穴が塞がったか?
勘定も理解できねえような頭で口挟むなって言ってんだよ」
二人の間に流れる空気は険悪なものになっていく。
だが周りは止めようとはしない。
後ろに立っている男二人はどちらが勝つか賭を始めている。
「理子ってったなお前。
脳味噌が見たいなら今すぐテーブルにぶちまけてやるぜ?」
「鼻の穴増やされたくなかったら黙ってろよ」
ベルヴァの右手が左脇の拳銃へ、理子の右手が右太股の拳銃へ動く。
一触即発の張りつめた空気が店内を圧迫する。
破裂すれば一瞬にして食事の場が血なまぐさいにおいで包まれるだろう。
だがその時、限界まで膨らんだ圧力を抜くかのようにため息が漏れた。
「お前にもムカついてたんだよウォッカ野郎。
何でここにいるんだよ?」
壁にもたれ腕を組み、左手を耳に当てている白髪の少女にベルヴァが食ってかかる。
白い肌に濃い青色の目、背は17頃の少女にしては高い方だ。
目尻の鋭さは北欧系の人間を連想させる。
「言ってなかった?
私はベルヴァに用があるだけ。
だからさっさと終わらせて」
「おいおいアタシは別にゼッイーベに用なんて無いぜ。
これ以上、イライラさせんなよ?」
「私はあると言った」
ゼッイーベと呼ばれた少女はベルヴァの軽口など気にもしていない。
「ところで貴方達はしっかりと臭いを消して歩いてた?
うるさい武偵が来たんだけど?」
ゼッイーベが視線を店の外----道路に向ける。
店内からは見えないが、6人の武偵が突入の準備をしていた。
3台の車の内2台が洋食店の近く、表の道路に路駐し武偵達が密かに近づいていたのだ。
『ブルー1からレッドチームへ準備完了』
『ブルー2からレッドチームへ準備完了』
表道路に展開した突入組のレッドチーム6人とは別の組が位置に着く。
道路を挟んで店の向かいに立つ4階立てのビル屋上に展開した狙撃部隊だ。
2人の狙撃手と1人の観測手、残り2人は護衛に当たっている。
精度に評判のあるレミントン社製M700Pの薬室へ初弾が装填される。
『グリーンチーム準備完了』
店の裏に回ったチームからも連絡が入る。
「30秒後に突入」
レストランへの入り口には4人が列を作っている。
リボルバー拳銃を持った人を先頭に、散弾銃を構える者がその後ろに密着している、短機関銃を握る二人は前方二人の援護に徹する並びだ。
入り口を挟んだ向こうには、扉を開ける役割の二人が居る。
店の中からは確認できない姿勢で綺麗に列を作っている。
恐らく彼らはプロだ。
だが、ベルヴァの目は彼らを捉えていた。
「気づかないもんだなぁ、ミラーの角度に。
バレバレじゃんか、つまんないねえ」
ベルヴァが見ているのは店外にある道路反射鏡だ。
角の向こうを覗ける角度で取り付けている鏡である。
それが店前の道を室内から確認できるように置かれていた。
「ジョージ、アレックス、向かいのビルに狙撃手が居るはずだ、片づけろ。
店の前に居るのはこっちで牽制する。
マックスには車を用意させておけ。
傭兵の戦い方ってのを教えてやる」
ベルヴァは無線で店の外にいる仲間に指示を出す。
店内に居た三人の男も同時に動いた。
小銃を構え、机を倒し安全な壁の後ろや柱の陰に隠れる。
テーブルは身を守るためではなく相手から見える部分を少なくし、グレネード等の破片を遮断するため倒しておく。
「リック、表出口左側に制圧射撃。
ウィリアムとトーマスは裏口を警戒しろ。
Rock'n'Roooooll!」
ベルヴァの構えた戦闘銃から7.62ミリの弾丸が飛び出し、壁越しに武偵が2人射殺された。
先手を取られ武偵側に一瞬の隙が生まれる。
その動揺をリックと呼ばれた男は見逃さず、さらに1人を撃ち抜く。
同時挟撃のため裏口から飛び込んできた武偵は、2人の男の銃弾に倒れる。
武偵側が用意していたのは拳銃用の防弾衣だ、軍用小銃の弾丸は苦もなく繊維を貫いていく。
「ベルヴァ後ろに5人いる。
表の敵を倒したらお客を連れて出口へ。
リックと後ろへ回ってくれ」
階段を上がって2階の窓から男が銃弾の雨を降らす。
客というのは理子や若い男のことだ。
寂れたこの店に他の客などいない。
「OKだトーマス。
ウィリアム、スナイパーを潰すまで裏の敵を入れるなよ!」
「ちょっと待て無駄に殺すな!
先陣を挫けばそれでいいだろ!!
スモークならある、狙撃手からそれで逃げきれる」
だが納得していないのは階段の途中に居る理子だ。
即時撤退し無用な流血を避けるよう勧告する。
「商売相手に会合場所で怪我されたらこっちの名前が下がる。
それに明日まで護衛を頼んだのは、そこの男だ。
関係ねえ奴はすっこんでろ」
傭兵の雇い主である中年の男が若い優男にどうするか訪ねるが、任せるとの返答で全て片づく。
隣にいる理子は苦々しい顔をしたままだが。
「お前はっ---」
怒りで動いた右手を誰かが止める、銀髪の少女だ。
鋭い目で理子が睨みつけるが、ゼッイーベはただ横に首を振るだけだった。
言っても無駄である、そう彼女は言いたいのだ。
たとえ今ここで理子が拳銃を抜き、ベルヴァを撃っても他の仲間が撃ち返すだろう。
外には自分達を捕まえようとする敵もいる、内部で争うのも良くない。
「今は駄目」
ゼッイーベは短く告げる。
理子の提案通りスモークで敵の目から隠れ、逃げるのも手だろう。
撃ち合いが長引けは警察等に気づかれる可能性も、増援が来る可能性もある。
だが、自分達のことに感づいた敵を放っておくのも危険だ。
再び襲来してくるかもしれないからだ。
それを考えたら、目の前の敵は全て返り討ちにすべきではある。
ベルヴァがそこまで考えているかは別として。
「関係ないといやぁ、バーテンダー。
部外者には他言無用って言ったよな?」
店の表に目を向けたままベルヴァが店員へ疑いをかける。
そう、武偵に情報を流したのは金欲しさに目の眩んだ店の人間だったのだ。
ベルヴァは勘で疑ったが、身の危険を感じて護身用の拳銃を店の男は取り出す。
だが、構えるよりも前にベルヴァの後ろにいたリックが軍用カービンの照準をつけてしまう。
短連射が2度響き店員の体は床に崩れ落ちる。
「アレックス、スナイパーは潰したか?」
『現在交戦中。
制圧後にレストラン表側の敵を撃ちますか?』
ベルヴァが銃を向ける表の道には出口の左に1人、右に2人武偵が残っている。
映画や小説なら敵の前に躍り出て華麗に戦うだろう。
だが、実戦は異なる。
銃口の前に飛び出すのは大きな危険を伴う。
だからこそベルヴァは表の敵を安全な位置から制圧できる味方に任せたのだ。
自分は店内から外にいる武偵に圧力をかけるのに徹する。
隠れている近くの壁やガラスを銃弾で撃ち弾いていく。
「そうしろ。
表出口の敵を排除後に客人脱出用の車を回せ。
私とリックは表から裏側に移動して残りを始末する」
『アイ・マム』
店内で銃声が鳴り響いたのと同時に、武偵の陣取るビルでも銃弾の応酬が始まっていた。
屋上に2人の狙撃手、観測手と護衛が各1人ずつの計4名。
残りの2人は4階で屋上への階段を封鎖している。
堅実な配置であり、敵への備えも怠っていない。
だが、敵への備えがあるという安心感、敵は店の中にだけ居るという根拠のない自信に隙があった。
傭兵の男達が武偵達の甘さを肌で感じとれるほど、柔らかい動きなのだ。
「敵だっ!!」
階段の下で土嚢を積みイタリア製のサブマシンガンを構えていた男が叫ぶ。
廊下の角から銃口だけがこちらを覗き撃ってきたからだ。
照準をつけていないため出鱈目な方向に弾が飛んでいるが、それは確かに敵だった。
「屋上の奴は非常口から逃げろ。
敵は拳銃だけじゃない、ライフルも持っている!
突入班にも撤退の指示を!」
『もうしている!
突入組は3人、いや4人!? やられた!
作戦は失敗だ、とにかく逃げるぞっ!』
いつの間にか狩る側から狩られる側へと立場が変わり、
武偵達の動きと心に焦りが生じる。
そして焦りから注意力は落ち、周囲への視野も狭くなる。
「1人が非常口へ向かった・・・・・・今だ、撃て!」
傭兵側は5人で狙撃手のいるビルの制圧に向かっていた。
3人は内部から、2人は非常階段を使って外部から屋上へ向かっていく。
内部で1人が別れ、4階の窓から屋上へと鏡を覗かせて敵の動きを非常口の仲間に伝える。
建物内部の2人は4階にいる護衛の注意を釘付けにする囮だ。
逃げるために非常口の扉へ手をかけた男は扉越しに銃弾に貫かれる。
焦りから敵がいる可能性を考えずに動いたせいで何の回避行動もとれず、気が付く間もなく絶命する。
「非常口からもきている!」
非常口から除く銃口は逃げようと立ち上がり拳銃を構えていた狙撃手の1人を負傷させる。
撃たれた仲間を引きずり3人は身を隠す。
屋上にある唯一の隠れ場所は建物への入り口だけ。
そこだけは小さな小屋のように屋上にあり、建物の中へと入るための扉がある。
「牽制射撃、敵を入れさすな」
敵の入る方向へ拳銃を向け、不規則に発砲する。
今、彼らは非常口と建物の内部2カ所から挟撃されていた。
「おい、下の階はどうなった!?」
非常口を睨みつけ、拳銃を握る武偵の男が味方に怒鳴った。
不安から生まれる焦りに余裕がなくなっている。
だが、味方からの返事がない。
「おい、状況をーーーー」
報告しろ、といいかけてその男の動きが止まる。
4階の窓から壁を使って屋上に移動した傭兵の男が彼を撃ったからだ。
屋上の武偵は全員射殺されたのだ。
男はそのまま銃を構えたまま、内部への入り口へと銃口を向けている。
非常口から来た傭兵の男2人の内の1人は地上の武偵に対して射撃を始めた。
四階立ての建物の上からなら、小口径弾でも十分に届く。
数回、発砲音が響いた後には店の表にいた武偵2人は倒れていた。
「屋上制圧完了。
アレックスは店への援護射撃。
中はどうなっている?」
『ジョージか?
ちょうど良い、今階段の下に敵を追い込んだ。
グレネードを落としてやってくれ』
「了解」
ジョージと呼ばれ男はM67を取り出すとピンを外し、扉を少し開けて中に投げ込む。
手榴弾は音を立てて階段を落ち、爆発した。
「どうだ?」
『ああ、今確認する。
お・・・・・・これで良し。
こっちはクリアだ』
無線機の向こうで、下の階で2度銃声があった。
おそらく、虫の息ではあるだろうが生きていたのだろう。
それに止めをさした音だ。
「ビルを制圧。
表側の敵も排除した!」
『よくやったジョージ。
マックス、店に車を回せ!
客を逃がす』
ベルヴァを先頭にリックが後に続き店を出て左右に分かれる、さらにウィリアムもベルヴァに着いていく。
「さてミスタ・小夜鳴とミス・理子、もう安全だ。
部下が車を表に回す。
ミス・ゼッイーベも乗るかい?」
「そうさせて」
傭兵達の雇い主である中年の男が2人を誘導する。
その後ろにゼッイーベは続いていく。
「ちょっとだけお時間を頂けますか?
彼らの血を採取したいのです」
彼ら、というのは絶命し倒れている武偵達のことだ。
小夜鳴という男の手には小さな注射器が握られている。
「はあ?
変わった趣味をお持ちだミスタ・小夜鳴は」
「私たちの居場所を見つけ、戦いを挑んできたんです。
ある程度は優秀な人材のはず、優秀な血は何時の時代でも必要なのですよ」
「へえ、そうなのかい・・・・・・
そいやアンタ、遺伝子学者だっけ?
先生様の考えることはよくわからんな」
そうですね、と相槌をうち血を集める彼に理子は不愉快そうに横目で睨んでいた。
「乗るよ」
立ち止まる理子の手をゼッイーベが引っ張る。
すぐに来た車には運転席と助手席に1人ずつ男が座っていた。
3列シートの後ろにゼッイーベと理子が。
採血を終えた小夜鳴と中年の男が中央に乗り込み車は発進する。
その数分後にはベルヴァ達が敵の迎撃を完了した。
銃撃戦の場所から数十キロ離れた所で理子とゼッイーベは車を降りた。
なにも言わずに理子は歩き出す。
ゼッイーベはその数歩後ろを歩いていく。
無言のまま幾つかの信号を越える。
「なんで付いて来るの?」
今の理子に学校での明るさはない。
苛立っているためか言葉に冷たさが籠もっている。
突き放すような言い方だった。
「聞きたいことがあるから」
理子から話しかけるのを待っていたのかゼッイーベは本題を切り出す。
断ってもまた付いて来る、そんな感じだ。
「そう・・・・・・とりあえずカフェでも行かない?
立ち話をする気分じゃない」
「そうする」
2人はすぐ近くの喫茶店に入ることにした。
店の奥の方、他の客の声が聞こえにくい席に座り、珈琲が届いたところでゼッイーベが口を開いた。
「あなたと小夜鳴って人は同じ組織だったはずでは?」
ゼッイーベは先の場所で、商売の会合を見ていて気づいたことがあった。
理子が終始不機嫌であったことだ、ずっと誰かを睨んでいた。
そしてその相手は小夜鳴とベルヴァだった。
ベルヴァを快く思わないことは理解できる。
彼女と理子は所属も違えば性格も真反対。
お互いに相手が気に入らないのだろう。
だが、小夜鳴は理子と同じ組織だったはず。
そうゼッイーベは記憶していた。
けれど今日の様子では仲がよいとは思えなかった。
互いに会話がなく、たまにあったかと思えば相手を蔑むような言い方だった。
遺伝的に無能だ、良いところが受け継がれていなかった、など小夜鳴から一方的ではあったが。
「私たちの組織はいくつかのグループが集合体を形成してるだけ。
中の悪いのも良いのも混ざってる」
「そう、じゃあ2人は別のグループ?」
「・・・・・・そういうわけでもない」
理子の言葉は歯切れが悪い。
何か、言いたくないことがあるようだ。
ゼッイーベもそれ以上は小夜鳴との関係について詮索しない。
「このまえ車の中で『私達の組織と仲良くしないの?』と聞かれて少し疑問に思っただけ。
あれってどういう意味?」
「それを言う必要があった。
パソコンに盗聴器が仕掛けてたから」
「それはさよ・・・・・・なんでもない。
事情がわかった」
小夜鳴に関係があるの?
と聞きかけてやめた、話の流れで考えれば関係している。
それを理子は話したくないはず。
その細かい部分を知るのは後でもいい。
内部は複雑なんだ、とだけゼッイーベは思った。
「ゼッイーベはどうして戦うの?」
今度は理子が尋ねる。
「命令があれば」
「そっか、そうなんだ」
ほとんど機械的な回答。
理子の肩から少しだけ力が抜ける。
期待していたような答えを得られなかったからだ。
何か理由があって人は戦う、その理由を。
「理子は人を殺すために戦うと聞いたけど?」
「それは違うよ。
倒したい人がいるだけ。
自分の存在を示す必要があるだけなんだよ」
ゼッイーベの言葉に理子は即座に反論する。
「倒すのと殺すのでは違うのか?」
彼女ににとって、その二つは同義語だった。
けれど理子は首を横に振る。
「相手を負かせばそれで良いの。
自分の方が強いって証明できたらいいだけ。
殺す必要は・・・・・・ない」
「あなたの祖父も似たような考えだった?」
「そうだよ。盗むことが目的で、殺すことは目的じゃない。
不必要に肥えた場所から盗むだけ」
理子の髪は少しウェーブの掛かった金髪。
対してゼッイーベは真っ直ぐな銀髪。
長さも同じくらいで、2人は体格も似ている。
目つきはゼッイーベは鋭く、全体的な雰囲気は冷たい。
理子は丸顔で目も大きく愛らしい。
端から見れば、2人が一緒にいると少し幻想的だ。
「でも今度の計画は死人が出る気がするけど?」
「バスの車体部分を防弾にして、射撃プログラムは人に当てないようにしてる。
絶対とは言えないけど・・・・・・」
理子の目に不安が浮かぶ。
計画がその通りに進むことは珍しい。
狙っているのはただ1人、いやその相棒を含め2人を自分の舞台に上がらせたいだけ。
無用な殺生をしたくないのだ。
「あなたの思惑通りになることを願う。
それと、コレを渡しておく」
ゼッイーベが取り出したのは小型の記憶媒体だ。
「なんのデータ?」
「データと言えるほど詰まってない。
けどここ数年にいきなり消えた裏の武器輸出入ルートの情報。
主に会社に関するもの、個人も少しある」
これには理子も驚く。
銃の規制が段階的に解かれ、この国でも違法銃はある程度出回るようになった。
それに伴い検挙数も上昇している。
だが、消されたと言うのは意味が違う。
「消えた?」
「消された、とも言えるかも。
たぶん襲撃にあって全員殺された。
遺体も回収されている、建物も所有者がいきなり変わって解体されることが多い。
多分、公的な機関で相当大きい実行組織があるんだと思う」
「警察とか公安じゃないの?」
真っ先に浮かぶ国家の治安維持を担うものの名前を挙げる。
だが彼女はそれを否定した。
「この国の表向きの機関なら逮捕を優先する。
世論もうるさいし、自分達の有能性をアピールできるから。
ただ、噂の公安0課っていう可能性もある」
「殺人を許されたあの集団だったよね・・・・・・」
「でもそれ以外かもしれない。
殺人を許されていてもそれを行わない人間もいるらしい。
個人での動きが目立つし、検挙する方が多い
集団で殺しをするとは思えない」
潜入捜査や尾行、盗聴などは情報の漏洩を防ぐため少数で行うことが多い。
そういう意味で公安の人間は少数や個人で行動するのが大半だ。
集まって襲撃するのはそもそも専門外である。
「じゃあ殺害を実行するための組織があると?」
「可能性の話だけど・・・・・・気をつけて欲しい。
あなた個人は強いかもしれないけど、集団になれば弱い敵も脅威になる」
ゼッイーベの目は真剣だった。
理子も彼女の言葉を嘘だとは思っていない。
ありがとう、と短い礼を述べる。
「聞きたいことと言いたいことはそれだけ。
私は帰る」
立ち上がり伝票を持ってゼッイーベは立ち去ろうとする。
その手を理子が掴み立ち止まらせた。
「ゼッイーベは無駄に殺さないで」
手首を握る理子の力は強い。
それだけ彼女の真剣さがゼッイーベに伝わる。
「あなたに教えてもらった事は多い。
無駄な弾は使わない、約束する」
優しく理子の手を握りゼッイーベは店を立ち去った。
感想を送ってくれると嬉しいですっ!
(作者はマゾです。褒められるとつけあがりますが、蔑まれると興奮します)
思ったことをそのままぶつけてください。
なんでもお待ちしております!!