緋弾のアリア 雀蜂の二十六刻印   作:ドレスデン

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アリアの思い、あかりの願い、彼女の視点

----朝、午前6時25分

 

 朝日が昇り、小鳥の鳴き声が聞こえ始める。

 ソファの上でキンジは目を覚ました。

 なぜベッドではなくソファで寝ていたか?

 それは彼の背後で優雅に朝食を楽しむお嬢様が原因だ。

 

「……あぁ、やっぱり夢じゃなかった」

 

 入学式当日からアリアはキンジの部屋に来ている。

 学校でもアリアの目が離れることがない。

 可愛い彼女が出来たということなら彼も喜んだだろう。

 アリアは愛らしい、将来は美人系でも可愛い系でもどちらに出も育つはずだ。

 だが問題はそこではなかった。

 

「やっと起きたの? 遅いわね」

「別にそこまで遅くねえよ。っていうかそろそろ出て行ってくれないか?」

「アンタが私のパートナー……いえ、奴隷になるまでは出て行かないわ」

 

 先日、アリアが押しかけてた時は”パートナー”にするだった。

 だが、その後のキンジの行動が彼女の地雷を踏み抜いたのだ。

 その結果「相棒」から「奴隷」へと格下げされた。

 

「胸を触っただけじゃなく、は……はだ……っ」

 

 思い出し、怒りと羞恥で紅く顔を染めたアリアがうつむいてしまう。

 アリアがキンジの自室に訪れたのは一昨日。

 

 

 そう、ここからが遠山キンジの悩みが始まったのだ。

 

 

 呼び鈴が鳴り、扉を開けた直後にキンジの牙城はあっさりと崩れ去った。

 そして口論となり家主であるはずの彼は追い出されてしまう。

 

 強襲科に戻れと詰め寄る彼女に、首を横に振るキンジ。

 時間が経てば諦めるだろうと考えたのが運の尽きだった。

 数時間後に部屋に戻ると彼は驚愕の事実に直面したのだ。

 

 水の流れる音、恐らくは髪を濯ぐ最中だったのだろう。

 そう彼が帰宅したとき、アリアはシャワーの最中だったのだ。

 

 キンジは迷いそして焦った。

 この場から逃げるか? それとも武器を奪い主導権を握るか?

 キンジは後者を取ったのだ?

 

(なぜ、俺はあの時あんな事をしたんだろう?)

 

 脱衣所まで音も無く潜り込み、アリアの小太刀に手をかける。

 そこで誤算が生じた。

 

 浴室の扉が開いたのだ。

 若々しい肌に湯気を浮かべたアリアが一糸まとわぬ姿で出てきた。

 それに気付いた彼が顔を上げて目に入ってきたのは、子供のように小さな裸足。

 細くて柔らかそうな太ももには無駄な脂肪がない。

 

 健康的な脚の付け根の上には縦の溝が隠れもせず露わになっていた。

 幼さ特有の白い腹部が見え、その上には豊かではないが柔らかな曲線と髪の色と同じくらい淡い桃色が頂点に二つ。

 最後に目にしたのは全身の血が集まったのかと思うくらい、紅く頬を染めたアリアの顔だった。

 

 その直後でキンジの記憶は途切れている。

 アリアの鋭い蹴りが彼の意識を彼方へと飛ばしたからだ。

 

「兎に角、アンタはすぐに強襲科に戻りなさいっ!」

 

 顔を赤くしながらもアリアが机を叩く。

 気まずさも相まってキンジも強くは出れない。

 

「アリア、来た時にも言ったが俺は一般の高校に移るつもりでいる。

 お前とパートナーになるのは無理だ」

「私は"無理"って言葉が嫌いなの。それにキンジは強襲科に戻るべきなのよ」

「なんでそんなことがお前にわかるんだ?」

「私の直感がそう言っているのよ」

 

 ここで話が平行線になる。

 彼女はパートナーになれと結論しかキンジに伝えない。

 だがそれでキンジが納得できるだろうか?

 理由を聞いても「直感」という答えだけ。

 もしくは明確な理由を聞くことができなかった。

 

「「……」」

 

 二人が目を合わせたまま押し黙る。

 この話題を終わらせたいキンジは朝食を済ますと歯を磨いて玄関へと向かった。

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 自分を置いて立ち去ろうとする彼にアリアが声をかける。

 置いてあった鞄を手に取ると彼女も急いで玄関に向かう。

 

「ついて来るなよ、周りに誤解されるだろ」

「そういって逃げる気でしょ? そうはさせないわ」

「同じクラスで隣の席だろ? そこまでする必要はないはずだよな?」

「私にはアンタの力が必要なの、絶対に逃がさないわ」

 

 そういってアリアが詰め寄る。

 見上げる彼女の目に、鼻をかすめた甘い匂い。

 強気な少女にキンジは何も言えなかった。

 

「……俺は武偵をやめたいんだよ」

 

 目を背けドアを開けつつ消え入りそうな声で呟く。

 その言葉にアリアは少しだけ眉を動かした。

 

 

 

 

----バス停

 

 

 武偵校行の停留所に着くと、伽耶と理子がじゃれあっていた。

 伽耶に背中からもたれ掛かり、頭を撫でられご機嫌でいる。

 もともと猫っぽい理子であるが今の彼女はそれそのものだった。

 

「あっ、キーくんだっ」

 

 キンジの姿が見えると理子は一直線に彼へと向かっていく。

 当のキンジはアリアに加え理子も来たので迷惑そうに顔を歪める。

 

 助けろよ、と彼は伽耶に目で訴えかけるが受け流される。

 理子が離れて寂しいが、ご機嫌斜めのアリアが怖いからだ。

 

「おおぉ、さっそく美少女転校生と同伴ですかぁ?」

 

 アリアが一緒にいることに気が付くと理子はさも楽しそうに笑みを浮かべている。

 その目はおもちゃを見つけた子猫のようだ。

 

「変なことを言うな、俺たちはそんなんじゃねえよ」

「またまたぁ、朝からご一緒なんて~。

 お・あ・つ・い ですね~」

 

 朝からハイテンションで茶化す理子にキンジが呆れている。

 その横でアリアが理子を睨みつけた。

 

「ひっ、怖いよっー」

 

 伽耶の後ろに理子は隠れ、顔だけ出して威嚇する。

 アリアもどちらかといえば猫っぽいところがある。

 二人がにらみ合っていると子猫の喧嘩のようだ。

 しゃっー! という鳴き声が聞こえてもおかしくない。

 

「まあまあ二人とも、仲良くしようよ」

 

 間に挟まれることになった伽耶が仲裁に入る。

 その顔は案外まんざらそうでもない、伽耶も楽しんでいるからだ。

 

 バスの最後部では、まだ威嚇しあってるアリアと理子の間にはキンジと伽耶が座った。

 本人たちは気づいてないかもしれないが、注目の的になっている。

 いや、キンジだけは頭を抱えていた。

 

「伽耶、それは新しい銃? 小銃かしら?」

 

 膝の間にガンケースを挟んでいる伽耶にアリアが問いかける。

 

「そうそう、新しい散弾銃なんだ。低致死性の弾薬を使うために買ったの」

 

 ジッパーを下すと中から少し変わった散弾銃が姿を見せる。

 スイス製の散弾銃で各種の装備を取り付けれるようにMIL-STD-1913をフォアエンド下部とアッパーレシーバ上部に備えている。

 その他に弾薬ケースも入れてある。

 英国のFiocchi社の低致死性弾薬を伽耶は手に入れていた。

 

「なんで買ったの?」

「蘭豹先生に散弾銃を用意しろって言われたんだ。

 一般からの編入だし一ヶ月は五時間目以降の専門科目でお手伝いだって」

 

 先日、アリアと伽耶は模擬戦を行った。

 結果はアリア優勢の引分け。

 そのあと蘭豹先生に呼ばれ説明を受けた。

 

 伽耶の銃を撃つ構え、構えたままでの足の運びが基本に則ったものであるので一年生のお手本とすること。

 一般からの編入せいなので、いくら海外で銃を扱ったことがあったとしても実力を見極める必要があること。

 また入学式の前に勝手に依頼を受けていたことも発覚したためそのことに対してもお叱りを受けた(武藤が誘ったものではあるため厳重には怒られなかったが)。

 

「それじゃまた後でね」

 

 教室が別のキンジ達と別れ、伽耶は自分の教室に向かう。

 

 

 

 

 一般科目の授業を終えた後、教務科で彼女は蘭豹に今日の説明を受けていた。

 

「なんや珍しい銃やな? ほんでも特に問題はなさそうやな」

「やっぱり変ですか? 一応使う銃はスイス製がいいので……」

「ま、ええんやけどな」

 

 各部を点検した蘭豹が書類にサインを入れた。

 武偵校の生徒は使用する銃器を決まった時期に一括で認可してもらう必要がある。

 今回は時期がずれているので教務科の先生が直々に署名しているのだ。

 

「ほいよ、返すわ。ほんでこれが今日やることや、目えとおしとけ」

「はい。今日は一年生の実技指導なんですね?」

 

 普段は粗暴な言動が目立つ蘭豹先生であるが、銃の扱いは丁寧だ。

 部品の動きは円滑であるか、油を塗りすぎていないかもしっかり確認してもらった。

 

「せやで、一般の中学から入ってきたヒヨっ子どもや。

 強襲科の生徒だけやなくて全学科の生徒が来るからな」

「え? 全員ですか?」

 

 驚いてせいで渡された資料を落としそうになる。

 

「なに驚いとんねん。

 一般中から来る奴は少ないし、お前は強襲科以外の生徒の見本や。

 強襲科はウチの担当やし、専門の教員がしっかり教える。

 やけど他にも拳銃の扱いを勉強しに来る奴がおるから若手の教員とお前で面倒見てもらうで。

 他にも何人か教員とか手伝いがおるから安心しとき」

「なるほど、わかりました。では準備にかかります」

 

 伽耶は一礼すると射撃訓練場へと向かい、担当の教員や生徒と合流した。

 四限目と五限目の間は少し長めに休み時間が設定されている。

 演習に向けての準備のために時間がいるからだ。

 

「では伽耶さんは自動拳銃を使用してください。

 この銃を撃ったことはありますか?」

「はい、大丈夫です」

 

 伽耶が渡されたのはベルギー製の自動拳銃だった。

 使いこまれているがよく手入れされている。

 遊底の動きやサムセイフティの動きに問題はない。

 

「では行きましょう」

 

 引率するのは30台前半の筋肉質の男性、後ろに二人若手の男性教員が続く。

 伽耶の他にはもう三人ほど二年次の生徒がいて伽耶は一番最後に並んだ。

 

 レンジでは既に30名ほどの一年生が待っていた。

 車輌科や探偵科などの普段は銃を使わない生徒たちだ。

 

「では、皆さん注目してください」

 

 引率の教員が全員の前に立ち説明をはじめる。

 

「皆さんは一般の中学校からこの武偵校に編入してきました。

 恐らく銃を撃ったことはあったとしても、人に向けたことは無いはずです。

 

 再度忠告しておきますが武偵が人を殺すことは禁止されています。

 軍人や警察官のように危険人物を射殺することはできません。

 

 あくまでも自分または一般人の生命に危険が及ぶ可能性がある時のみ正当防衛が認められます。

 そのため武偵が銃を撃つときは、対象への威嚇・無力化などを目的としてください」

 

 武偵は人を殺してはいけない。

 これは警察と武偵の明確な役割の違いを表してもいる。

 

 多発する凶悪犯罪の対抗するため、警察は人員の強化を組織の変化を段階的に行ってきた。

 銀行強盗や誘拐など解決に急を要し、なおかつ実力を求められるもの。

 狡猾な犯罪者や組織により大規模な捜査網と人員が必要なもの。

 この二つに警察は力を入れている。

 

 確かに効果はあり、検挙率は上がっている。

 だが、良いコトばかりではない----

 

「皆さんが目指すものは犯罪の解決ではなく、依頼の達成です。

 常に構え、あたりを見渡し、依頼人の期待に応えることを目標とします」

 

 事件の解決と処理の能力を高めた結果、市民の言い争いや小さな犯罪を予防することができなくなっている。

 いわば犯罪への受動的な組織に近くなった。

 

「そのための武装探偵が我々です。

 そして武偵は武器を持ちます。

 今香から君たちには現代での一般的な武器『銃』の扱いを学んでもらいます」

 

 武偵は秩序を守るためではなく、民間の頼りになる存在である。

 個人や団体の護衛、地域の犯罪への抑止力、民事不介入ではあるが誰かの助けが必要な案件。

 それらを行うのが武装探偵----武偵である。

 

 例えば市町村の巡回。

 市長や学校などが警察にパトロールの地点を指示することはできない。

 

 仕方がないので父兄や教職員が見回りを行う例はあった。

 しかし、犯罪への専門的な知識のない彼らが立っていたとしても犯罪者への抑止力にはならない。

 だが武偵ならそれができる。

 

 他にも犯罪が起こりそうではある場所や不良たちの暴走行為。

 暴力団の恐喝への対応など、彼らは事件が起きる前から行動できる。

 

 そういう意味では武偵とは犯罪に対して能動的に行動できるのだ。

 

 組織的に動き、大きな力で事件を解決する警察。

 少数で動き、犯罪の小さな目を潰す武偵。

 

「では、今から二年生が実弾を用いた射撃を行います」

 

 まず、伽耶の横にいる男子生徒に合図が送られる。

 シューティングゴーグルと耳栓をつけると彼は台の上に置いてある回転式拳銃を手に取る。

 

 レンジでは暴発を防ぐため、発砲時以外は銃に弾倉は外に出すのが通例だ。

 弾薬が込められているのを確認し弾倉を銃に入れる。

 

 胸の前で一度構え腕を伸ばし、照星の山と照門の谷が一直線になるように的に向ける。

 撃鉄を起こし発砲すると円のほぼ中心あたりに穴が開く。

 

「いいですか、正しい姿勢と狙いがあれば弾丸は当たります。

 基礎基本を決して疎かにしないこと。

 私たちが扱うのは本物であることを認識してください

 では、続きもお願いします」

 

 残り五発を撃ち終ると弾倉を外して台に置く。

 いよいよ伽耶の番が回ってきた。

 誰かに見られてるのはあまり気が落ち着くものでない。

 

「Stand by ......」

 

 けれど銃を握ればその感覚もなくなる。

 心は落ち着き、身に染みついた動作が勝手に再生される。

 弾倉を挿入し、遊底を動かし、的を狙う。

 

「Target!」

 

 一定の間隔で全ての弾薬を発砲し、弾倉を外しサムセイフティで遊底を固定する。

 安全な状態で台に置くところまでが一年生への見本だった。

 

「では、大体どのようにするかわかりましたね?

 今からは君たちにそれぞれマガジン2つ分ずつ撃ってもらいます。

 列を作って並んでください」

 

 この後の生徒への指導は主に教員が担当する。

 伽耶や他の生徒はお手本として、銃を構えた姿勢で維持する。

 二時限続けて行われた射撃実習は六限目の鐘とともに終わりを告げた。

 

 

 

 

----夕方、射撃演習場

 

 専門科目の実習も終わり、伽耶を含め数名が自主的に射撃訓練をしているところだ。

 新しく持ってきた散弾銃に緑色の装弾(ショットシェル)を詰め込んでいく。

 

(非致死性弾薬といっても頭部を狙ってはいけない)

 

 ドットサイトを覗いた向こうに立つ人型の的のどこを狙うか?

 今は鉄の板だが本番では生身の人間になる。

 その標的の腹部から大腿までの間に狙いをつける。

 

 引き金を絞ると拳銃とは比較にならない反動が肩を押す。

 滑腔銃身の内側をワッズに押し出され、15個のラバーパレットが散らばっていく。

 腹部に着弾すると小気味のいい音が帰ってくる。

 

「ん……悪くはないけど……」

 

 撃ち終り一息つくと誰かが傍に寄って来るのを感じた。

 それに加えて何故か好奇な視線も感じるので銃を台の上に置く。

 

「どなたですか……あれ?」

「あのっ! 目線を少し下にっ!」

「そっちか」

 

 視線を少し下にずらすと小動物のような少女が立っていた。

 栗色の髪を頭の両側で短く括っている。

 

「小学生? 迷子?」

「いきなりひどいっ!? 私はこれでも高1です!」

「ごめんごめん。で、私に何か用かな?」

 

 どうみても小学生、よくて中学生のような子に知り合いなどいないはず。

 話しかけられるような用があるのか伽耶は頭をひねる。

 

「噂であなたがアリア先輩と模擬戦をして引き分けたと聞いたんですっ!

 本当ですか!?」

「おう、うぷっ、ちょ、ちょっと落ち着いて!」

 

 少女はいきなり詰め寄り伽耶の肩(には届かなかったので肘)を掴んで前後に揺らす。

 伽耶は目を回しそうになりつつも何とか意識を保つ。

 

「あああっ! ごめんなさい! ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」

「うぷすっ、うっ、だ、大丈夫。

 だいじょぶだから、えう、冷静に……」

 

 目の酔いが収まり改めて目の前の女子生徒の話に耳を傾ける。

 

「とりあえず名前聞いてもいいかな?」

「ごめんなさい、名前も名乗らずに……私は間宮あかり、強襲科の一年です。

 二年の八雲伽耶さんですよね?」

 

「そうだよ。名前を知ってるって言うことは、私を探してたの?」

「はい、そうなんです!

 アリア先輩と八雲先輩が模擬戦したって本当ですか?

 それで引き分けたって言うのも?」

 

 間宮と名乗る少女の言葉に、入学式直前のことを思い出す。

 確かにアリアと伽耶は戦ったが、贔屓目に見て引分け。

 普通に考えたらアリアの勝利だった。

 

「蘭豹先生に言われてやらされたやつねぇ……

 引分けって言えるほど良い戦いでもなかったよ?

 追いつめているつもりだったけど、私が翻弄されてたし。

 最後の射撃も私は反射的だったけど……アリアには狙うだけの余裕があった。

 それに……」

「それに?」

 

 ここで一度伽耶が話を区切る。

 今、彼女が思い出しているのは戦闘のことではなく、その後のことだ。

 

「あんまり汗を掻いてなかった」

「えっ? ……なんでわかったんです?」

「そのあとシャワーを浴びる前に抱き着いたから」

「はい?」

「で、腋と首に手を突っ込んでみたけど全然湿ってなかった」

「あの……」

 

 危ない人に声を掛けたのでは?

 そんな考えが間宮の表情に現れ、疑いを持った目が伽耶を見ている。

 

「あっごめん、一人でしゃべってしまって。

 ところで、用件は何かな?」

「いえ、あの、アリア先輩と引き分けた人に色々と聞こうと思って……

 私、アリア先輩の戦姉妹(アミカ)になりたくて」

「アミカ?」

 

 聞きなれない単語に伽耶が首を傾げる?

 

「知らないんですか?」

「ごめんね、知らないんだ。良かったら教えてくれる?」

「えっとですね……」

 

 話を聞くところによると武偵校には先輩と後輩が一対一で指導していく制度があることだ。

 そしてこの少女、間宮あかりはアリアとその契約を結ぶのが夢だという。

 模擬戦のうわさを聞いた間宮は少しでもアリアの情報を得るために伽耶を探したらしい。

 

「そういうことだったんだ。

 でも、教えてあげられる情報なんてあんまりないかな……ごめんね」

「そうですか……」

「ところで、なんでアリアの戦姉妹に?」

「私はアリア先輩みたいになりたいんです!

 先輩みたいに強くて、武偵の道をしっかりと進む人になりたいんです」

 

 心の底から尊敬しているといった感じだ。

 真っ直ぐにアリアの像を追う目は宝石のように輝いている。

 小さな体には似合わないほど言葉には力強い芯が通っている。

 聞いている伽耶が驚くほどだ。

 

「頑張ってね、私は応援してるよ!

 何かあったらまた声を掛けて? その時は手伝うからね」

「はいっ! 絶対にアリア先輩のアミカになります!」

 

 手を振って伽耶と別れ彼女はどこかへと向かっていった。

 銃を片付けると伽耶もその場を離れ帰り道につく。

 

 外に出た伽耶の目を何かが横切る。

 黄色と黒色の縞模様に透明な羽。

 地面で獲物を捕らえた雀蜂。

 目の前で起きた自然の摂理に立ち止まる。

 

「誰だって必死なんだよね……」

 

 間宮という少女もアリアも芯の通った強さを感じた。

 自分には無いものを彼女たちは持っている。

 

「こんな経験したことなかったかなぁ」

 

 呟きながら歩き始める。

 

 

----校舎内 廊下

 

「あれ、アリア? 今帰るところ?」

「そうだけど、伽耶もなのね」

 

 蘭豹先生に会った後、廊下を歩いているとアリアと偶然出会った。

 紙を手に何か考えていたようだ。

 

「何その紙?」

「戦姉妹の申請書よ、よくわからない子から来てのよ?

 成績もそこまで……いや、全くよくないのに」

「そうなんだ? 申請はその子が初めて?」

「え? いや、うーん、ひぃふうみぃ……よく覚えてないわ」

 

 指を折って数えていたアリアが途中であきらめる。

 それほど申請が多いということらしい。

 

「で、全部断ったの?」

「そうよ。みんな来るのはいいけど、有名だからとかくだらない理由が多すぎるわ。

 どうせ今度の子もそうでしょうけど」

 

 どうやらアリアは自分の知名度の高さで寄ってくる生徒には興味がないらしい。

 

「でも、それだけ人気があるって本人の魅力だと思うよ。やっぱりアリアは凄いね」

「……ありがと」

 

 伽耶の直球的な言い方に恥ずかしそうにアリアが顔をそらす。

 アリアは疲れていたのか、バス亭では空をぼんやり眺めたままだった。

 

 それとは別に、伽耶は間宮という少女のことを思い出していた。

 アリアはあの子のことも拒絶するんだろうか?

 少し面識のある分だけ彼女が気になる。

 

「ところで申請した来た子の名前は?」

「え? えぇっとね……間宮あかりって子らしいわ」

「え!? あ、さっきの子か!」

「なに? 知り合いなの?」

「さっき射撃場で会ったんだ、アリアのことをとても尊敬していたよ」

「ふぅん……わかったわ、ありがとう」

 

 アリアの目が少しだけ間宮という少女に興味を持った。

 申請用紙にもう一度目を通すと彼女はどこかへと向かう。

 

「どこに行くの? バスはもうすぐだよ?」

「今からこの子をテストしに行くわ、またね」

 

 伽耶が驚く暇もなく、アリアの姿はどこかへと消えていった。

 

「が、頑張ってね~」

 

 アリアとあかり、どちらに向けた言葉だろうか。

 伽耶は見えない背中に手を振った。




文章が下手な上に更新が遅く、申し訳ありません。

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