大天使エイスリンちゃんに罵倒されながら国際交流する話 作:アライ
亀進行なのであります
九種九牌の流局もギリギリ出来ない様な配牌を貰った東3局。
当然和了れる筈もなく。
「ツモ。1000、2000ですね」
上家(西) ドラ{⑤}
{二③④⑤⑤⑥⑦} ツモ{二} {6横66} {横234}
上家に座るお客さんが速攻で仕掛け、手変わり前に単騎をツモって早和了り。
局は流れ、東4局へと成った。
親は、対面に座っている彼女である……。
東4局。
自家(西) 配牌 ドラ{⑨}
{二七八②③④⑥⑨2467南}
さて、どうにかしてエイスリン先生の親を流さなければいけないのだが……。
見たところ、普通に面前で行けそうな手なのが憎い話である。役牌トイツがあったら何も考えずに一鳴きするだけだったが、タンヤオを目指してこの手牌を鳴くとなるとドラは必ず出ていくし、片和了りが最後まで残ると辛い。
普段なら手なりでリーチを目指しているだろう、結構良い部類の三向聴だが、この場面では中々に選択が難しい配牌である。
とりあえず一段目のツモでどうなるか、判断してから決める事にしよう。
六巡目 手牌
{二三七八九②②③④2467} ツモ{3}
横に良く伸びたので面前で進める事にしたのだが、あまり気乗りはしない。
理由は自分の河にある。
河
{南中⑨⑥⑨}
ドラの{⑨}が対子である。何という事でしょう。もし未来のツモが見えていたとしたら、ここで絶好の立直が出来ていましたね。
……見切るのが早すぎと言われたら確かにそうなのだが、やはり使いづらい端牌は切りたくなるもの。うーん、悲しい。
まあそれはさておき、何を切ろうか。
手牌
{二三七八九②②③④23467}
切る牌の候補としては、一概にこれと言える牌は無い。
これだけでは判断出来ないので、相手の河も勿論考慮に入れる。
上家(南)お客さん :河
{西東白①⑤⑧}
下家(北)おっさん :河
{一西②⑦八}
対面(東)エイスリン:河
{西一二①中⑦}
{②}切りならば聴牌までの受け入れ枚数は一番多く、一応三色も狙えるが、愚形待ちになりやすい。{⑨}の雀頭があれば真っ先に切る牌だったのだが……。まあ、気にしてもしょうがないか。
となると、ターツオーバーなのでリャンメンターツ落としになる。{二三}、{③④}、{67}のどれかから選ぶ事とすれば、枚数や場況で優劣を付けていかなければならない。
正直まだ序盤なのではっきりとは言えないが、三人の河を見るに索子が高い。待ち牌を吸収されやすい、または初めから持たれている可能性が高い以上、{67}の待ちはあまり良さそうには見えないだろう。となると、索子を落としたくなるが……。問題は残り枚数である。
索子を切った時に残る、いわゆる亜リャンメンである{③④}は場況は良いものの、見えていない分での残り枚数が合計4枚しか無い。これでは殆ど愚形待ちと変わらないだろう。
萬子の方は十分に枚数が有るので省くとして、最終的には{③④}と{67}の選択になるのだろうが……。
う~む……。
手牌
{二三七八九②②③④23467}
打:{④}
こっちで、どうでしょうか……。
多分、合っているはず……。
とりあえず、目指すは先制リーチ。彼女よりも早く、リーチしなければ。
数巡後。
「リーチ」
下家(北)おっさん :河
{一西②⑦八1}
{1横五}
意外にも先にリーチしたのは、今まで蚊帳の外で燻っていたおっさん(英語が得意)であった。
リーチしても和了れずに流局したり、三位の競争相手から親被りを受けたりと散々な内容だったが、どうやらここで逆転の手が入ったのだろうか、力強く宣言牌を切り出している。
自家 手牌
{二三七八九②②23467北} ツモ{①}
対してこちらはターツ落としをして字牌を引き入れただけ。持ってきたツモ牌も比較的通り易そうだとはいえ、無筋は無筋。ここは素直に{②}落としでオリる事にしよう。
ちょっと前に持ってきた{北}は生牌。一時的に抱えておくだけの牌だったのだが、こうなってしまっては切り辛い。
おっさんにはぜひ、そのまま頑張って待ちを自力で引いてきて欲しいものである。
もし和了れば親は流れるし、親被りで点も削れるので、みんなハッピーに違いない(二名除く)。
最悪なのは、親であるエイスリン先生がリーチに怯まずに真正面から突っ込んでくる事だが……。
……普通に有り得る可能性である。
というか、オカルトの関係上そっちの確率の方が高いのでは無いだろうか。当たり牌をビタ止めし、リーチに真っ向勝負をしてくる……いや、リーチはせずとも無理やり形式聴牌を取られる事だってあるのか。
う~ん、やはりオカルト全開の彼女は恐ろしい。
「
「ノーテン」
「ノーテン」
「テンパイ」
リーチ後、特に何も起こらずにそのまま流局した。
聴牌宣言と共に、リーチ者の手牌が倒される。
おっさん 手牌
{四四⑥⑦⑧34赤5678北北}
宣言牌は{五}。おっさんは待ちをリャンメンに取らずにシャボでリーチしたようだった。高目の{北}ツモを狙い、枚数よりも打点を取ったらしい。
それはまあおいといて……。
エイスリン先生がノーテンだったのは驚いた。彼女のオカルトの都合上、意地でも聴牌を取って連荘してくると思ったが、結果は親流れ。
ラス牌の{北}を運悪く引いてしまったか、それとも単純に最後まで聴牌できなかったか。手牌が伏せられている以上こちらからは知る術は無いが、恐らく前者だと思っている。
オカルト中のエイスリン先生は打点が高いだけでは無く、鉄壁の守備力を持っているらしい。
これはかなり厄介だ。
いわゆる一般的な麻雀。そこでは、高和了低放銃のプレイスタイルが基本的には推奨される。だいたい和了率と放銃率の差が10%あれば優秀な打ち手とされるが、オカルト中のエイスリン先生の場合、30%ぐらい有りそうな気がする。
こわい。
東風戦でもこんな数値は出てこないぞ。
……まあ、今はとりあえず、南入した事を喜ぼう……。
南一局一本場 ドラ{7}
「リーチ」
上家(東)お客さん :河
{白二西五⑦九}
{⑧八赤五⑤四九}
{発}
下家(西)おっさん :河
{白一6(発)八39}
{29⑦西三横北}
対面(北)エイスリン:河
{東中291三}
{六⑨⑧横③⑧}
下家のおっさんが安牌である{北}切りリーチをして、対面のエイスリン先生にまたもや追っかけた。
追っかけリーチというのは大抵ある程度の打点、もしくは良形の聴牌になっているものだ。
自家 手牌
{四五六②②②南南南⑨344}
対してこちらの手牌。ダブ南暗刻が目立つ手だが、二軒リーチに対して切れる牌は少ない。
オリ打ちするならば、ほぼ安全牌だろう南の暗刻落としをすれば何とか巡目が足りるか。
次巡。
手牌
{四五六②②②南南南⑨344} ツモ{北}
持ってきたのはリーチ者に対して完全安牌の{北}。かつ三枚切れの牌である。字牌を軽く縦に回転させてから、手牌の行く末を考えてみる。
一応聴牌出来る可能性も有るので、{南}を落とすのは完全に手牌の価値を見切ってからにしたい所だ。
18巡目。
上家(東)お客さん :河
{白二西五⑦九}
{⑧八赤五⑤四九}
{発⑨1八七七}
下家(西)おっさん :河
{白一6(発)八39}
{29⑦西三横北}
{東4七二}
対面(北)エイスリン:河
{東中291三}
{六⑨⑧横③⑧西}
{六1中白}
自家 手牌
{二四五六②②②南南南八34} ツモ{2}
自家(南):河
{西北東東白一}
{91北3九③}
{北⑨4東中}
残りツモが無い状況で、一応張る事には成功した。押した牌は無く、テンパイする為に切った牌は全てリーチ者に対する現物のみだったので、全体的に運が良かったのだろう。
それはそれとして、待ちの選択である。{八}は三枚切れかつ完全安牌なので、当然{八}を切って{二}の単騎待ちになるのだが……。
ここで一つ問題が発生する。現状、対面に座っているエイスリン先生が、ハイテイ牌をツモる事になっているのだ。
なんてこったい。
普段ならば南家である自分にハイテイが回ってくるのだが、下家のおっさんが捨てた{発}を上家のお客さんが鳴いていたのでズレてしまっていた。ハイテイでツモられると、もちろん御馴染みのあの役が付いてくる。
それを防ぐ為にも、上家から出てきた牌をどうにかして鳴くべきだったのだろうが……。敢えて自分はスルーした。
上家の{七}。これを鳴けば、リーチ者のツモ数は変わらずともハイテイをずらす事が出来たのに。それなのにも関わらず、鳴きを入れなかったのは聴牌への望みが残っていたからである。これは明確なミスだ。
今回は偶然有効牌を引き入れたが、確率が薄い以上、聴牌よりも鳴きを優先した方が良かった。
う~ん……こういうのが自分の弱い所なんだろうなあ……。
猛省である。
打:{八}
{二}の地獄単騎待ち。だが、そんな事よりもエイスリン先生にハイテイをツモられる方が怖い。下家のおっさんがツモる分には平たくなるのであまり問題は無いのだが……。
「これで俺のツモ番は最後だな」
おっさんはハイテイ一つ手前の牌を持って来ると、内側に傾けて逆さまにその牌を眺め始める。が、何故かすぐに疲れを吐き出す様に息をした。
「ここでコレを引いてくるか。ツイてないな……」
理由はすぐに分かった。
まるで諦めモードである。
打:{南}
嘆きながら牌が捨てられた。表を向いたのは生牌の{南}。
確かに、ここでこの牌を引いてきたら、おっさん視点では辛いものがある。
場風であり、かつここまで一切見なかった牌なので、当たる可能性は大いに有ると推測したのだろう。
しかし、今回は自分が暗刻で持っていただけなのでセーフである。
自分からは4枚見えてるんで、単騎にも絶対に当たらない。いや~良かったですね。
ん?
4枚見え……?
「
おっさんが捨てた牌をエイスリン先生が確認すると、少し間を開けて王牌と仕切られたハイテイ牌をツモろうとする。
今思い出した。
あかん、アレが出来るじゃないですか。
「カン!!」
ハイテイ牌に触れようとしたエイスリン先生の指がびくりと大きく振れた。
何が起こったのか、分からずに目を白黒させている。
だいぶ発声が遅れたが、ツモ牌に触れる前に鳴いたので一応成立である。
手牌
{二四五六②②②234} カン{南南南横南}
手牌から{南}の暗刻を倒し、副露をする。
まさか、点数がどうしても欲しいという状況以外で大明カンをする事になるとは思わなかった。
ハイテイ一つ手前の牌で大明カンをすれば、ツモってくる嶺上牌でハイテイ牌を王牌へと埋もれさせる事が出来る。
原理を知っていれば誰だってするなんて事のない話だが、いざその場面になると反応が遅れてしまうというものだ。
ふふん。ともかく、これでエイスリン先生にハイテイが回ることは無い。
「
当然これは滅多に起こり得ない例である。今に至るまでに遭遇した事が無いレアケースなのだろう、エイスリン先生は場の状況を上手く把握出来ていない様だった。
「大明カンとは確かに珍しいな。これで留学生ちゃんにはハイテイは回らなくなったのか」
対して、おっさんは一連の流れを見て何やら感心した面持ちになっていた。多分だが、おっさんも初めて遭遇する出来事だったのだろう。それはまあ良いとして。
なーに他人事みたいな顔してるんでしょうか。
「この雀荘で使ってるルールはコクマ(国民麻雀大会)のルールで、その中に責任払いっていうヤツが有るんですけど……」
「えっ、嘘だろ……」
大明カンをしたのは下家のおっさんからである。通常では、大三元や大四喜の最後の牌を鳴かせた人に発生する責任払いだが、どういう訳かコクマでは大明カンをして嶺上で和了した時にも発生する。
正直、存在意義を疑っていたルールだが、まさかこうして恩恵を受ける可能性が出てくるとは思わなかった。
もし和了れば、ダブ南嶺上で6400点である。酷い役だ。
「よし、じゃあリンシャン牌ツモりまーす」
「勘弁してくれ……」
一つ山から降ろされていた嶺上牌を手に取る。
おっさんには積年(一日)の恨みが有るので煽りを忘れない。
今なら地獄単騎もツモれる様な気がしてきた。
手牌
{二四五六②②②234} カン{南南南横南} ツモ{⑥}
あっ、はい。
知っていました。そんな簡単に上手くいくワケないって……。
「ノーテン」
「テンパイ……」
「テンパイ」
「
おっさん 手牌
{三四五①①③④⑦⑧⑨678}
エイスリン 手牌
{二三①①赤⑤⑥⑦555567}
結果はまたもや流局。東家のお客さんの親流れとなった。
って二人とも高打点良形テンパイなのに、よく流局しましたね……。
何もかもが紙一重な局だった気がする。
局は巡り、オーラスの南4局。
点数状況
南家 お客さん :23300
西家 星川 :31300
北家 おっさん :13900
東家 エイスリン :31500
供託を安和了りの速攻でお客さんが回収し、ラス争いから一つ抜きん出たぐらいで、点数差に大きな変動は無かった。
ラス親であるエイスリン先生はトップ目とはいえ、200点差。誰かにツモられれば、喰いタンの300・500でも席順の関係上、無条件で2位に落ちてしまう。ヘコんでいた筈のお客さんも素点が回復して来ているので、親被り次第では3位落ちの可能性もある。
この局は全速力で和了りに向かってくるだろう。
こちらも1000点の和了りだけでトップに成れる以上、速攻をしなければ。
自家(西) 配牌 ドラ{七}
{七九①①②③⑨38東東北発} ツモ{②}
さて、これは一体どうやって早和了りへと結びつければいいだろうか。少々難しい話である。
和了りトップのオーラス。対子の字牌がオタ風じゃなかったらどれほど和了り易かったか、そう安々とは行かせてくれないらしい。ツイてるかツイてないかで言えば、まあツイていないのだろう。
打:{北}
とりあえず、手なりで進める事にしよう。
「
エイスリン 手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} ポン{横白白白}
打:{発}
一巡目にて、役牌の{白}をエイスリン先生が1鳴き。
そして役牌の発を河へと放った。オーラスなので、今まで使って来なかった鳴きを普通に解禁したのだろう。
切ってきたのは{発}で、こちらが重なりを期待していた唯一の役牌。これで1枚切れとなり、重なりと鳴きを期待するのは厳しくなった。う~ん、難しい。
でもこれが麻雀という物だろう。
そう自分に都合が良い流れになる確約も無いのだから。
自家(西) 配牌 ドラ{七}
{七九①①②②③⑨38東東発} ツモ{⑥}
やっぱり麻雀は運ゲーである。
6巡目 手牌 ドラ{七}
{七七九①①②②③④78東東} ツモ{9}
一盃口が狙えそうだが、二枚目のペン{③}待ちは場に筒子が高く、かなり厳しいか。
しかし、他にこれを切れば必ず良い結果になるという牌も無い。どれを選択するか、一打一打全てに裏目が有るというのだから難しい話だ。果たしてこれが、全雀士が納得する打ち筋かと言われたら、分からない。
打:{④}
8巡目 手牌
{七九①①②②③789東東白} ツモ{①}
{④}を切った後に{①}ツモ。{④}を切っていなければ、カン{八}待ちの役無し愚形聴牌だった。
とはいえ、ドラ傍リーチは流石に和了り辛いかもしれない。
やっぱり麻雀は難しい。
「ポン」
9巡目 手牌
{七九①②②③789東東} ポン{①①横①}
打:{②}
下家から四枚目の{①}を鳴き、ネックだったペン{③}の待ちを解消。そして、カン{八}の役有り聴牌。
「...!」
仕掛けの手出しを見た対面のエイスリン先生が僅かに揺れ動く。
1副露だが、チャンタ仕掛けなのがバレバレな河をしているうえに、{①}鳴きのポン出し{②}。
彼女に限らず、同卓者全員に聴牌だと間違いなくバレているだろう。
「
聴牌を察知したのか、鳴きを入れてくる。
エイスリン 手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏} チー{横二三四} {横白白白}
打:{②}
速度を合わせたのだろう鳴き。一向聴か、それとも聴牌か。
聴牌と仮定した場合、彼女の手が良形ならばこちらは待ちが良くない分、負ける可能性は高いだろう。
だがそれも麻雀が織りなす偏りではどうなるか分からない。最終的な結果は、和了れるか和了れないかの二つだけなのだから。
さて、和了り牌を迎えに行こう。
「ツモ」
手牌
{七九①②③789東東} ポン{①①横①} ツモ{八}
咲の世界では大明カンからのリンシャンツモにはツモ符が乗るみたいです