大天使エイスリンちゃんに罵倒されながら国際交流する話 作:アライ
ハメの仕様上英文がめっちゃずれるので、どうにか改行してみました
朝一の対局後。
雀荘もある程度人が集まり、面子の補充役として出る必要も無くなったので一休みである。
「
控室に置かれた簡易的なパイプ椅子の背にどっと腰掛けていれば、隣でエイスリン先生がホワイトボードに何かを書き連ねながら悩んでいた。
何を書いているのか割と気になったのでこっそり覗いてみようかと変な事を考えていれば、なんとなく察したのかそれとも偶然だったのか、彼女は描いたものをこちらへと向けてきた。
【{③⑥⑧249東942⑧⑥③} {一}】
それを見やれば、少し角が丸っこく描かれた麻雀牌達が出迎える。
形は七対子の聴牌姿に近い物だった。
前の対局で七対子張ってそうだと思う時はあったが、その時の手牌がこれなのだろうか。
なぜシンメトリーなのかは知らない。
「
エイスリン先生は真ん中に置かれた{東}を赤丸で囲み、少し悔し気に思いを馳せている。
んん、赤丸……? 牌が14枚有るが、ここで{東}を選ぶのは正解……という意味なのかもしれない。
「
怪訝な表情をしていれば、それが伝わったのだろうか、今度は{東}の麻雀牌に赤く
ああ、そういえば外国と日本では○×の意味合いが違うんだった。
『
そんなお国の違いを再認識していれば、翻訳アプリを通して彼女から問い掛けられた。
何切る問題だろうか。
えっと、確か東2局の対局だったかな……。正直な所、捨て牌は勿論だが、ドラが何だったのかももう覚えていない。ただ見え見えの萬子のホンイツをやってて、親満和了った事ぐらいしか記憶に残っていないのだが……。
……まあ、エイスリン先生が言いたいのは、この聴牌を維持するかどうかという事だろう。
それなら、簡単な話だ。
とりあえず、{東}と{一}以外の全てを指差してみる。
「
そうすれば、エイスリン先生は大いに戸惑ってしまっていた。
えー。
「
情報が少なすぎるので適当な事を言った感じもあるが、それでも親が染め手をしている中で生牌の{東}と染め色のどちらを捨てるかと聞かれたら、どちらも捨てないと答える人が多いだろう。親の染め手はだいたい5800スタートなので、それに対して待ちが被ってそうなチートイで突っ込むのは大損だ。万が一当たる可能性もあるので、聴牌への牌を通すことすら難しい。
……ああでも、彼女の視点からすれば両方が絶対に当たらない事が分かっているのか。
それはちょっと難しい話になってしまうかもしれない。
恐らく、オカルト中の彼女は一人麻雀をやっている様な感じなのだろう。
自分の和了だけを一直線に目指して、相手の当たり牌を掴んだ時だけオリる。それが彼女の麻雀というわけだ。
彼女が思っている何切る問題の相違。それが感覚の違いによる物だとしたら……。
うーん、ここはちょっとエキセントリックに。
そうだ。サンマをやってみるのも良いかもしれない。
『
そんな風にエイスリン先生に伝えれば、すぐに返信が返ってきた。
えっ、そこでサンマ?!と、内心驚いているに違いない。
突然何を言い出すのかとも思っている事だろう。自分もそう思います。
一般的に麻雀という単語が示されれば、それは四人麻雀の事を表している。ゴールデンタイムに毎日の様に放送されているプロ同士の対局は必ず四麻だし、全国の高校から猛者が集う男女別のインターハイも四麻限定だ。都会で頻繁に行われているアマチュアの大会だって、ほとんどが四麻らしい。もちろん雀荘でも四麻がメインだ。
三麻ことサンマは日の目を見ない変則麻雀なのである。世間一般でもこの認識は変わらない。
唯一ある程度の人口が確保できるネット麻雀でも、やはり勢いは強くは無い。
しかーし。
そんなサンマからは学べる物がたくさん有ると、自分は思っているのです。
奇を
それがまさに麻雀の核となる物であり、ステップアップに最適という訳なのであーる。
『
そんな事を熱意を込めながら翻訳して送れば、確かに伝わったのだろう、エイスリン先生は頷いていた。
いやあ、良かった良かった。
しかし、すぐにサンマをやる、というのは難しいか。あまり賑わいが無い故に、大衆が打つコクマの様な麻雀として大まかなルールが決められておらず、様々なローカルルールやハウスルールがサンマでも多いのだ。
とりあえず、一番良さそうなルールを熟考して探してくる時間が欲しい。
申し訳ないが、エイスリン先生は少し待って貰う事になるだろう。
『
あまり一般的では無い三人麻雀。それをどう上手く調理できるか。
う~ん、今日は眠れないな。
◇
それはそれとして。
「
勝った。
先ほどの対局、オーラスにエイスリン先生を捲って見事、一位に躍り出る事ができた。反省点は多々あったものの、中々良い結果が出せたのではなかろうか。
オカルト中の彼女には初顔合わせでボコボコにされたので、これでリベンジを果たした事になる。
「
彼女は負けず嫌いな性格なので再戦を申し出てくる可能性も有ったが、しかしオカルトパワーを使い果たしてしまったのだろう。
見て分かる程に力が抜けた姿で簡易テーブルへと突っ伏している。これでは対局しても、相対するのはよわよわになってしまった彼女だけだろう。
「
そして、見て分かる程に悔しがっている。なるほど、全力で臨んだ試合が上手く行かず心残りな様子らしい。
ふふん。悔しい……ですよね?
……まあ煽りは置いといて。麻雀という物は、実力が介入する部分はある程度存在するものの、第一に影響されるのは運。
エイスリン先生はまあ、運が悪かっただけだろう。もうちょっとばかり命運を決する天秤が彼女の方に傾いていたら、こちらが負けていたかもしれない。やはり麻雀は運ゲーなのだ。
勝負は時の運、と言うのは少しばかり強い言葉だが、己の雀力を示しとなる安定した平均順位を出すには試行回数が足りなさ過ぎるのは事実。数局打っただけでは、上振れと下振れで大きな差が出てしまうだろう。
止まるのに時間がとても掛かるサイコロを回している様な物である。数百……いや、数千局は打たないと明確な指標として収束する事は無いだろう。気が遠くなる話だ。やがて一喜一憂する気力も無くなってしまうかもしれない。
感情無しにただの麻雀を打ち続けるマシーンには成りたくないものだ。
「
そんな事を考えてみれば、心ここにあらずといった様子のエイスリン先生が、視線の先にある設備品をじっと眺めていた。
ここ、雀荘の控室には様々な用具が置かれている。
否、放置されている。
彼女の目先には、様々な形のダイスがそこそこ大きい透明な容器の中へと入れられていた。
父が集めていた物なのだろうが、こうして雑に置かれているあたり、ただのジャンク品以外の何物でも無い。
「
いわゆる一般的なサイコロである6面ダイスに、何かのボードゲームに使えそうな8面や12面のダイス。
実用性が全く無さそうな奇数面である5面や7面のダイスもある。
これだけ集めればこの雀荘でも有用性が出て来そうなものだが、悲しいかな雀荘で使うダイスは6面限定である。まあ、自分で振る必要すらない自動卓がメインなのも多いけど……。
無理に使おうとするなら起家決めの時ぐらいだろうか。2つのサイコロを振った時に期待値では一番7が出やすくなるので、その分対面が親もしくは仮親になりやすい。ラス親がある北家を除けば、トビの心配が薄いうちに親の恩恵を受けられる起家が順位が良くなる傾向がある。これを不公平だと捉えるのならば、完全に公平になる4面ダイスの出番が出てくるだろう。
まあ、最初の風牌の掴み取りだけで良いと言われたら、4面ダイス君の出番はそこで終わりなんですけどね……。
「
エイスリン先生の視線の先。其処には①と②の二面しかないダイスがあった。造形としては細長い楕円を二つ無理やり組み合わせた様な形となっている。そこそこシンプルで、①と②以外が表にならない奇妙なダイスである。よくこんな物を最初に生み出せたものだ。二分の一を求めたい場合、間違いなく身近なコイントスで代用されてしまうだろうに。
世の中変人ばかりである。
「
そして1面ダイス。なんだこれ。
代表的な名前を言い表せば、メビウスの輪というヤツである裏と表が一体になってしまったダイス。まるで使い古してぐにゃりと形を崩してしまった輪ゴムの様だ。
もちろん1しか出ない、ジョークグッズである。事象は一つのみなのに、確率に任せる必要性は果たしてあるのだろうか。
これが分からない。
……ふむ、どうやら1から20までの全ての面数のダイスがあるようだ。
「
装飾として見ればそこそこ目を引く、七色を持つダイス達。実際に振られる事は生涯に無さそうだが、こうして見る分には鑑賞に値するだけの価値は持っていると言えるだろう。
そんな他愛も無い事を思っていれば、エイスリン先生は乱数を疑似的に発生させる装置達を見て、どういう訳か少しだけ考え込んでしまった。
「
そして、積まれた中から失せ物を探すようにしてそれらを見やった。
ゼロ、零……。それは、外国から来た何も無い事を表す単位元ではあるが、ごく普通に日本でも用いられている言葉だ、流石に聞き逃す事は無い。彼女が言っている事は何とな~く分かった。
しかし、意味は分からない。
0面ダイスって、それ完全に無じゃん。何を言っているんだ。
「
果たしてツッコミを入れるかどうか、そんな風に迷っていれば、すぐに後が続けられた。
「
エイスリン先生は色々なダイスが詰められた透明な箱から目線を外し、角に置かれていた普通の6面ダイスのセットを手に取った。合計4つ。
あっ、そんな所に放置されているダイスが有るとは……。陰に隠れてて気が付かなかったとはいえ、片付けが足りませんねこれは。
「
そんな事を思っていれば、エイスリン先生は掴んだダイスを四つ分、同時にテーブルへと放った。
「
すると、全ての面が赤い一つの点を伴って真上を向いた。
「
四つ全てが1になるのは確率にしておよそ1/1296。
ほう、中々の偶然ですね。
いや偶然なのだろうか。よく分からん。
「
エイスリン先生はゾロ目のダイスを一気に四つ掴み取る。
そして、どういう訳かこちらへと渡してきた。
んん? 一体どういう意味なのだろうか。
彼女の行動の意味も分からないし、当然の事ながら英語も理解できない。
分からない事だらけでちんぷんかんぷんである。
説明を求む。
「
途方に暮れた表情をいつの間にかしていたのだろうか、目敏くその様子を見付けたエイスリン先生は、何やら得意げな面持ちになった。
いわゆるドヤ顔である。
『
すると何を思ったのか、彼女は翻訳アプリを通して文面を送ってきた。早速読んでみる。
んん……バカと天才……?
どういう事なの……? 分からん、さっぱり分からん。
「
含みのあるエイスリン先生の言葉をどうにか解そうと唸っていれば、彼女はこちらの心情も知らずにすたすたとどこかへ行ってしまった。
う~ん、分かりません。お手上げだ。
やはり読解力もとい英語力は永遠の課題ですねこれは。
そんな事を考えながら何となく手慰みに、そのまま握らされていたダイスを振ってみる。
出た目の合計は14。
期待値通りの何とも言えない数値だった。