大天使エイスリンちゃんに罵倒されながら国際交流する話 作:アライ
全てが分かんね~
英語苦手なんで文法ミスかなりあると思います。
ゆるして……
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炬燵に入りながら談笑する我が母とニュージーランドからやって来た女の子。経緯としては、玄関で小さな喧噪を耳聡く聞き付けた母が、流れるままに受け入れて今に至る。
すらすらと母の口から語られる歓待の言葉。母さんも昔、父さんと同じ職場で働いていたらしいから、英語を話せてもおかしくないのか……。
いくつか聞いた覚えのあるフレーズが混じっているが、悲しいかな、自分は半分もそれを理解できていない。小さくなっているとは稚拙な比喩表現だが、今の自分の状況を表せばまさにその通りだろう。
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やたらフレンドリーな母と、途端に不遜な態度では無くなってしまった留学生。よく分からない会話を交わしている。よく分からない事が目の前で繰り広げられている。なるほど、人生は分からない事だらけだ。
それにしても、留学生の来訪に対する驚嘆の念は今の母からはあまり感じられない。もしかすると、母さんも予めホームステイの事を知っていたのだろうか。
ふむ……。
どうやら、知らされていないのは自分だけみたいですね。
どうしてでしょうか。
◇
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矢継ぎ早に繰り出されてきた母の問い掛けを、何なりと留学生は返していた。日本語に置き換えれば取り留めの無い会話なのだろうが、脳は理解できない言語としてそれを処理し右から左へと受け流してしまう。朝起きてすぐの寝惚け眼な状態で、卵焼きをつついている時に流れてくるテレビのニュースの様に意識せずとも耳に聞き入れる事ができる──そんな時が、いつか自分にも来るのだろうか。いや、無理ですね。
今の状況は炬燵を軸にして横に母さん。そしてトイメンに金髪留学生。まるで三麻だ。
そういえば、一度炬燵の上で麻雀やってみたいなあ。
ある程度暖房が聞いているとはいえ、冬の自動卓の下はやはり少々寒いのだ。
これ、自分いる?
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ぱあっと花開く様に破顔した母は、善は急げと言わんばかりに炬燵を抜け出し台所へ足早に去っていった。二人だけの舞台はまもなく崩壊してしまう。
早速、ラックの上に置かれている収納棚が開かれる音や、擦れた茶器が立てる金属質な音が聞こえてくる。そういえば、もうすぐお昼の時間だった。
「あちゃ~夕飯にも使うのに、卵切らしちゃってた……。すぐに買いに行ってくるから、あんたはエイスリンちゃんとよろしくやっといて~」
ついでに、結構待たせちゃうかもしれないけどごめんね~って言っといて! と母は
この間、わずか30秒。
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余りの勢いに留学生は少し引いていたものの、その表情には笑みが見えた。母の圧力は初対面の人でもだいたいこんなものだから、結構戸惑う方も多いらしい。今回は一応、それが良い方向に流れたのだろうか。うん。
さて、これからどうしよう。
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ぐでっと炬燵の台に正面から留学生は突っ伏した。柔らかそうなブロンドの髪がふわりと舞い降りる。初めての炬燵は相当に暖かったのだろう、幸せを一片に拾い集めた様な顔をしている。
「...」
「──」
刹那、目が合った。
当然だ、炬燵を通して真反対に座っているのだから。無理矢理にでも視線を横へ外さない限り、必ず視界の内へ入ってくる。
母も酷いものだ、我が子が英語を話せないのを分かっている筈なのに、ほっぽりだしてどこかへ行ってしまうとは。いやまあ、食べさせて貰ってる身が言えた事ではないのだけれども。
「...」
「──」
留学生が透き通る蒼の双眸でこちらを射抜いてくる。何故こんなにもガン見してくるのでしょうか。
気まずい。ただひたすらに気まずい。今なら蛇に睨まれた蛙の気分も分かるというものだ。いや、違う……蛙では無い。そう、ナメクジだ。塩をかけられたナメクジの様に小さくなりたい気分だった。
彼女の視線から逃れようと、隠れる様に少しだけ身を屈める。
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誰が忍者だ。
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口の端の方を小さく上げながら、少し奥歯を噛んでいる様な表情をしている。そう、それはまるで笑いを堪えているかの如く。母と談話していた時とは大違いである。
言語は分からずとも、そこに内包されている含みがどのような感情なのか、分からないほどこちらも馬鹿ではない。
こいつ中々に良い性格しているな。
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忍者呼ばわりに対する遺憾の意の表明を肌で感じたのか、留学生は何やら両手を左右に広げながら肩を竦めて見せた。海外の映画とかでよく見る、分からない時の仕草だろう。ボディランゲージである。自己紹介しろ、という事だろうか。
……正直、厳しいかもしれない。
日本の学校で配られる英語の教科書では当然、この様な時の対処法もとい返答の仕方が載ってある。無論、その内容を覚えていない訳では無いが──正直な所、変な英語を笑われるのが怖い。
基本的に学び舎で教わる英語というのは少々お堅いものだと言われている。故に、英語を母国語として話すネイティブスピーカーはそんな事言わないぞ、と良く
くだらないプライドの発露である。
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そんな心情を知ってか知らずか、深い溜息を吐いた留学生は、紐で肩にかかっていたホワイトボードを手前に持ってきて何やら文字を書き始めた。ペンと板を直接擦れ合わせている様な音が、静かな六畳間に響き渡る。
すぐに書き終えたのか、裏返してきた。
【 Aislinn's English Lecture 】
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唐突に留学生は両手を軽く交差させ、乾いた音と共に拍手をし始めた。その豹変ぶりに思わず硬直してしまうが、しかし彼女はそれを気にせずお前もやれと言わんばかりに、こちらを覗いてくる。
ふむ。
やはり、同調圧力に弱いのは国民柄なのだろう。個としてではなく集合体として生きる。それが島国民族の定めなのだ。
……いや、ニュージーランドも島国だから関係ありませんでした。
「ドンドン、パフパフ~」
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留学生は直角に押し付ける様に。対してこちらは神社で礼拝する時の様に、型を真正面から合わせていく。
それはただ手を叩いているという行為だけなのに、少し国が違えば様式も大きく変わってしまうものだ。一言だけでは表せない深さがあると言えるだろう。
表現の仕方も千差万別である。
自分は何をやらされているんだろう。
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留学生は再度画板を裏返し、何やら文字を書き換え始めた。
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【 Aislinn Wishart 】
良く聞きなれた自己紹介の表現。マイネームイズって普通に本場でも使うんだね。
でも、どうして途中で止まったのかな。
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留学生はこれ見よがしに、ホワイトボードを両手で軽く揺らしてくる。読めって事ですか。
「ウーン……」
綺麗な筆記体だ。しかし、どうしてここまで読み辛い表現が流行っているのだろうか。
昔、市民図書館に置いてあった異国小説の原本を一度興味本位で眺めてみた事は有るのだが、もはや暗号に近い文章だった記憶が自分の中には存在する。それに比べればまだマシなのだろうが、やはり中々に読み辛い。
Aislinnは、エイスリンで良いだろう。母との談話でいくらか聞き覚えがあるので間違いは無い筈。
「エイスリン……」
しかし、Wishartはどう読めば良いのだろうか。Wishとart? ジョンさんちの息子さんをジョンソンと呼ぶように、重なってできた名のだろうか。ううむ。
「ウィッシャート?」
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答えを聞いた留学生ちゃんは、何か苦い物を食べた時の様な何とも言えない表情になってしまった。それと諦観にも近い声。
合ってるかどうかぐらい教えてくれ。
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何やら静止の声を上げた留学生──エイスリンちゃん(仮)は、また画板を裏返し何かを書き始めてしまった。
否、描き始めてしまった。字を画くなんてモノじゃない、白のキャンバスに絵の具の付いた絵筆を振るう様に、縦横無尽にペンを動かしている。
しばし待つ事、数分間。
結構、長い。
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エイスリンちゃん(仮)がこちらに向けてきた画板には、簡易的だが迫力のある絵が描かれていた。
いにしえの焔の中に身を宿し、邪を滅する為に大剣を振るう不動の王。そのもう一つの片手には、悪を縛り上げる為に環状に結ばれたしめ縄。そして、一番に目を引く憤怒の表情。
非常に強い既視感を感じる。
絵上手いなこの子。
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彼女が発した言葉には、何やらどこかで聞いた事のある様な回りくどさが含まれていた。
どっちだよ。
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う~ん。朧げだが、彼女の言いたい事が分かったような気がする。
あれか。日本をにほんと呼ぶか、にっぽんと呼ぶか、そんな感じだろうか。
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彼女はノーテンの時の牌みたいに一度その画板を下に伏せると、次なる物の為に喉を震わせた。
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紡がれるソプラノボイスが鼓膜を揺さぶってくる。
その名前、しかとこの耳で覚えた。
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エイスリン・ウィッシュアートと呼ばれる子が、こちらへ自己紹介を促してくる。
ふむ。潮時か……。仕方がない。ここまで来たら覚悟を決めようではないか。
腹をくくるというヤツである。横文字で表せば、ジャパニーズ・セップク。
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◇
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けちょんけちょんに酷評されてる気がする。
ホワイドボードの上は、キレた赤ペン先生の如く訂正文字で一杯になってしまった。バツマークでもう溢れんばかりだ。少なからず、正解は有るみたいだが……。
外国だとチェックマークの意味が反対なのを思い出す。ペケがバツだと覚えてると、凄まじい違和感を覚えてしまうものだ……。
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エイスリン先生は一通り言い終えると、画板の隅に
やっと、終わったか……。もう気が狂いそうよ。
「ただいま~。さっそくご飯作るね~」
大きく嘆息すると、ちょうど良いタイミングで玄関が開かれたのか、帰宅してきた母の間延びした声が聞こえてくる。色んな食材が目一杯に詰められているのだろうか、扉越しにでもゆさゆさと揺れる音が伝わってきた。
そういえば、お腹が空いてきたな……。
頭を回せばそれだけ減るものも減るという事だろうか。
まあ、ほぼ教わっていただけなんだが。
どちらかと言うと、先生の方が大変だっただろう。
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留学生先生ことエイスリン先生はすべての力を出し切ったのか、ふにゃあとなってしまった。
良くある炬燵と一体になっている人物のイラストが、脳内に浮かび上がってくる。彼女は結構似合いそうなものだ。
「...」
「──」
そんな事を考えていると、前と同じ様に沈黙が戻ってくる。
何なんだろうこの空気。何故、自分は今日出会ったばかりの留学生から英語を教わっているのだろう。
お昼ご飯はオムライスだった。
おいしい。
初めての料理なのだろう、少し戸惑っていたが一口すれば一変。
エイスリン先生も喜んでいた。
なぜエイスリン【先生】かというと、NEW HORIZONのエレン先生が思い浮かんだからです。金髪の英語教師すきぃ
主人公の名前はあんまり出てこないんで覚えなくていいです(適当)