愛讐越界特異点カムラン   作:Pon_De_hutago

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1章 悪夢、霧、

 ひどく居心地(いごこち)(わる)い。

視線(しせん)頭上(ずじょう)固定(こてい)され、

手も足も(うご)かない。

身体(からだ)感覚(かんかく)もなく、

(にお)いもなく、音もなく、

ただ(くら)い。

五感(ごかん)(なに)とも分からない不愉快(ふゆかい)さが

意識(いしき)(おお)っている。

 (かろ)うじて見える世界は

赤黒(あかぐろ)(ソラ)()けるような(どろ)の海。

男は泣いていた。

目の前には誰もいない。

男は自分自身(じぶんじしん)だ。

 だが()()と思った。

男には必要(ひつよう)な誰かが居ない。

自分には(かなら)ず居る。大切な誰かが。

男はそれに泣いている。大切な彼女がない。

そのことを。

 

 (ひど)く目覚めが悪い。

カルデアのマイルームで起きる。

いつもの背景。

目は覚めているが、頭が重い。

気持ちがそのままベッドに沈む。

 ドアが開く音。

「お目覚めですか。マスター」

「起きてるよ」

いつものやり取りにほっとした。

「管制室から呼び出しです。

昨日未明(みめい)から微小特異点(びしょうとくいてん)と思われる

反応が現れました。

先ほどから数値が()ね上がり、

異常な強度になったとのことです。

準備が整い次第

ダ・ヴィンチ司令代理から説明があるそうです」

「わかった。すぐ行くよ」

 

 カルデア管制室。

「現在、この特異点は規模(きぼ)維持(いじ)したまま

着々と特異点としての強度を増している。

まるで初めから有ったものが、

ひょっこり出てきたみたいにね。

これはここ数ヶ月対処してきた亜種特異点(あしゅとくいてん)とは

(こと)なる現象だ。

ある意味去年一年の

主要な特異点より厄介(やっかい)かもしれない。

何故だか、

2017年現在のブリテン島に出現したこの特異点は

我々の人類史にピッタリくっ付いている。

現地の調査員からは特異点(とくいてん)とは(こと)なる

特殊(とくしゅ)な結界が()られていてカルデアで

観測(かんそく)出来ている以上の情報(じょうほう)は確認出来ないそうだ。

シバがあるからこっちの方がよくわかってるってさ。

冗談じゃないよね。

さて、不幸中の幸いとして

時計塔(とけいとう)からほどほどに離れた場所に出来ているから、

あちらの干渉はなし。

例によってよくわかんない厄ネタより

身内の()め事の方に集中したいってね。」

あきれた様に軽口を言っているが、

ダヴィンチちゃんはあまり笑っていない。

「以上により、

同行サーヴァントを同行させて

すぐにレイシフトしてもらう。

ただ,,,,,,,今回の,,,,,,

特殊(とくしゅ),,,,,一定の,,,,,,,,同行(どうこう)出,,,,,ない

すまないが,,,,,,,こち,,,,,,選りすぐ,,,,,,,

用意,,,,,,」

意識が暗転(あんてん)していく、

どんどんダヴィンチちゃんの声が

聞き取れなくなっていく。

「せ,,,,ん,,,,,ぱ,,,,,,,,,,,,,,い!!」

レイシフトの光が見える。

特異点(とくいてん)へ意識が飛んでいく。

 

 「はっ・・・・・!!」

冷や汗が出た。

レイシフト前に気を失うなんてめったにない。

(あせ)りで脈拍(みゃくはく)が上がっている以外は問題ない。

レイシフトを実行(じっこう)している事も考えると

忘れているだけで 問題なく

行動出来ていたのかもしれいない。

辺りには森が広がっているが

(きり)で遠くまではよく見えない。

「大丈夫?マスター」

「むぎゅ」

(やわ)らかいものが後頭部(こうとうぶ)にあたる

「うわっ!!!」

「ご、ごめんなさい!

安心させようとしたら逆効果(ぎゃくこうか)ね!」

マタ・ハリが(こま)ったように笑っている

「いや大丈夫。ありがとう。

今回のメンバーはマタ・ハリだけであってる?」

「いえ?まさか!私だけじゃ何も出来ないわ

シグルドが今辺りを見て回ってるの

 でも、私たちはカルデアのサーヴァントだけど

この特異点(とくいてん)に呼ばれちゃった みたいなの。

私たちが合流した時には一人だったわ」

「そうなんだ。

ダヴィンチちゃんの説明では

誰かと一緒に来たみたいだけど、

早く合流しないと。」

「ええ。そろそろシグルドも戻ってくる頃よ」

 

 「二人とも、周囲の警戒(けいかい)を。

当方の前方(ぜんぽう)敵影(てきえい)1。 かなり現地に()れている。

ルーンを行使して偵察(ていさつ)していたが

(かす)かな痕跡(こんせき)から着実(ちゃくじつ)近寄(ちかよ)ってきている。

周囲に建物等の身を(かく)せる場所はなく、

交戦(こうせん)()けられない。

当方の未熟(みじゅく)さもあるが、

あちらの情報収集能力(じょうほうしゅうしゅう)の高さは驚異的(きょういてき)だ。

特異点(とくいてん)の結界も彼のものかもしれないな・・・。」

「了解。

相手がこちらの位置(いち)特定(とくてい)するまえに先手(せんて)を取ろう」

「当方もそう考える。

現在残してきたルーンで敵の位置ははっきりわかる。

マスターたちはそこの(しげ)みに身を(かく)しておいてくれ。

姿隠(すがたかく)しのルーンも(わた)しておく」

「分かった。気を付けて」

「頑張ってね」

「了解。敵影(てきえい)排除(はいじょ)する」

 

 木の(えだ)(つた)い、(てき)頭上(ずじょう)近くまで接近(せっきん)する。

本来(ほんらい)戦士の戦い方ではないが

現状の戦力を考えれば

(いた)(かた)ない。最善手(さいぜんしゅ)である。

短剣を持ち、一撃で相手の霊核(れいかく)(くだ)く。

(てき)へめがけて(ちゅう)()こうとした瞬間(しゅんかん)

疑似接続(ぎじせつぞく)宝具召喚(ほうぐしょうかん)

(やき)()くせ『■■■■■■■■(ガラディーーーーーーン)』!!!」

「何ッ?!」

あたりがヒに(つつ)まれる。

なんて事だ。

(てき)はこちらをあぶり出すためだけに

宝具(ほうぐ)を使用した。

よほど魔力が潤沢(じゅんたく)なのか、

こちらの数を把握(はあく)している(ゆえ)戦術(せんじゅつ)なのか。

()(かく)、これを(ふせ)がなければ

マスター達が一溜(ひとたま)りもない。

(てき)の正面に降りて、

渾身(こんしん)の力と最大限の魔力放出(まりょくほうしゅつ)()()つ。

瞬間強化(ブーステッド)!」

マスターからのサポートだ。魔力(まりょく)上乗(うわの)せされた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「!!」

(てき)(おのの)いた。

多少の負傷(ふしょう)はルーンで(なお)せる。

なんとか持ちこたえた。

次は宝具(ほうぐ)(むか)えなければ(たえ)え切れない。

切り分けた火が回りに飛び()るが、

マスター達の位置は死守(ししゅ)した。

続く手を(ふせ)ぐためにすかさず加速(かそく)

破滅の黎明(グラム)大袈裟(おおげさ)

(やわ)らかい動きでいなしてくる。

剣戟(けんげき)のなか、相手の姿が明らかになった。

黒い鎧姿(よろいすがた)(こし)長剣(ちょうけん)(たず)えて、

ガラディーンをふるっている。

顔は(かみ)(かぶと)で見えないが

おそらく2,30代ほどの肉体の男。

我々の時代のものとは違う、

合理性(ごうりせい)特化(とっか)した現代的な剣術(けんじゅつ)

【挿絵表示】

 

相当(そうとう)な使い手だが、貴君(きくん)はどこの勇士(ゆうし)か」

騎士(きし)ではないので名乗(なの)る気はない・・・・。

騎士道(きしどう)(つらぬ)く気もない」

そういう彼の剣技(けんぎ)騎士(きし)と呼ぶにふさわしい

堅実(けんじつ)で抜け目のないものだった。

突然(とつぜん)(うえ)から声がする。

「あいよ。旦那(だんな)。」

(みどり)外套(がいとう)弓兵(きゅうへい)が木の上に(あらわ)れ矢を放つ。

まっすぐマスターへ向かう矢を()うべく、

目の前の騎士(きし)剣戟(けんげき)退(しりぞ)け、

大きく押しのけ後方(こうほう)()ける。

だが矢には間に合わない。

「キャアアアアアアアアアアアア!!」

「マタ・ハリ!!」

一瞬(いっしゅん)マスターが射貫(いぬ)かれなかった事に安堵(あんど)するが

すぐに(あせ)りがもどる。

矢は彼女の霊核(れいかく)のすぐ下に

深々と突き()さっている。

(さけ)び声をあげた彼女はそのまま気絶(きぜつ)した。

木の上の弓兵(きゅうへい)に短剣を投げつけると

「おおっと、あぶないあぶない」と霊体化(れいたいか)して消えていく。

短剣に刻んだ浄化(じょうか)のルーンで霊体(れいたい)追撃(ついげき)する。

黒い騎士(きし)(あいだ)に入り太陽剣で(ふせ)ぐ。

(あわ)てて黒騎士(くろきし)の後ろで 実体化(じったいか)する弓兵(きゅうへい)

短剣を(はじ)いた火の後ろに身を(かく)し姿をくらませる。

ルーンを刻んだ短剣を()げて索敵(さくてき)するが、

かなり距離が離れていて 追撃(ついげき)できない。

確実に徐々(じょじょ)に戦力を(うば)っていく作戦かもしれないが

一先(ひとま)戦闘(せんとう)()えた。

 

「マスター、そちらの容体(ようだい)は」

「矢は抜いて回復させたけど

意識(いしき)が戻らない

木の上に見えたのはロビンフッドだった。

毒矢(どくや)だろうけど 、

解毒(げどく)出来る礼装(れいそう)じゃない。」

「ひとまず、サークルを設置(せっち)して

カルデアとの連絡を(はか)ろう」

「わかった。

そういえば連絡も今出来ないのか・・・。

今日は(すご)い抜けてるかもしれない。」

「いや先ほどの強化は助かった。

突然の事態(じたい)(ゆえ)(いた)(かた)無い」

マスターの(かた)に手を()き、

マタ・ハリを背負(せお)って進む。

 

 

 サークル設置(せっち)

ダヴィンチちゃんと連絡を取る。

了解(りょうかい)した。マタ・ハリはこちらで回収する。

ただ、弱っているせいかマタ・ハリの霊基(れいき)

こちらのものと一致(いっち)せずに エラーが出て戻せない。

なんとかしないと。」

「俺も一度一緒にもどる?」

「いや、レイシフトの(さい)特異点(とくいてん)の結界に干渉(かんしょう)された。

レイシフト後のトラブルはそのせいだ。

今は結界が展開(てんかい)しきっているから

次向かった時には (てき)(わな)直行(ちょっこう)

ってことも有りうる。

それは()けたい。」

「うぅ・・・・・。」

(ひど)く汗をかき苦しむマタ・ハリ。

「・・・! 令呪(れいじゅ)を持って命ずる

カルデアに戻っていてくれマタ・ハリ!」

「!。おっけい!

令呪(れいじゅ)の反応がアンカーになって

計器がとらえた!

部の悪い(かけ)けだったけどうまくいったね!

よし!回収完了!」

「よかった!」

 安堵(あんど)(むね)をなでおろすが

話を次へ進めなければならない。

先輩(せんぱい)特異点(とくいてん)へ向かったサーヴァントは

ランスロット(きょう)のみです。

なぜか他の方々は レイシフトできず、

こちらの調査ではシグルドさんも

レイシフト不可能でした。」

「うむ、

当方もいつの間にか召喚(しょうかん)されていて、

召喚(しょうかん)前カルデアで なにをやっていたか

思い出せない。

レイシフトに干渉(かんしょう)する結界といい、

敵はかなり周到(しゅうとう)にこちらに攻撃(こうげき)

仕掛(しか)けているのかもしれない。」

「やれやれ、こういう時こそ稀代(きだい)の名探偵が

必要なのに特異点(とくいてん)情報(じょうほう)一通(ひととお)りわかったら

倉庫(そうこ)()じこもってしまってね。

まったくもぉ!」

「それと特異点(とくいてん)内部(ないぶ)にもう一層(いっそう)結界があり、

結界の外に出るとサーヴァントが

活動できなくなると思われます。

ただ先輩(せんぱい)たちはその結界の内側にいるので

現状(げんじょう)大きな影響(えいきょう)はないかと。

こちらで観測(かんそく)できる(かぎ)

ランスロット(きょう)も内側に入っています。」

「まぁ、周りにかかってる(きり)

何らかの魔術(まじゅつ)によるものみたいで

今わかってるのはここまでだ。

悪いが地道に探索(たんさく)してない地域を調べていくしかない。

強度が強いだけで規模(きぼ)は小さめなのが

不幸中の幸いだね。」

「フィールドワークは()れっこだから大丈夫!」

「そう言ってもらえると助かるよ。

シグルドも(たの)んだよ」

「任されよ」

そうして一行(いっこう)

深い(きり)の森の奥へと進んでいく。

 

 薄明かりが窓から流れる白亜(はくあ)の石の一室。

ロビンフッドと男が(こし)かける。

「ふう、やっと戻ってこられましたね。」

「あぁ自分たちの居城(きょじょう)に戻るにも一苦労(ひとくろう)だ。

なんせ道が覚えられないから、

お前が居ないと遭難(そうなん)する」

「はは、ご冗談(じょうだん)を」

(たよ)られているのを

飄々(ひょうひょう)(かわ)そうとしたが、

ふと気づき

やってしまったと(あご)に手をやる。

「今のところは計画通りだが

一先(ひとま)ず二人に任せるしかない。

出番まで好きにしていていいぞ」

「て言っても、

サーヴァントですし、

ここ何もないし

旦那(だんな)と話してるのが一番ですよ。

もうフェルグスの兄さんは出撃(しゅつげき)()み。

ベオウルフ、ダビデは待機中(たいきちゅう)

フィン・マックールは(にげ)げたランスロットを

()っている最中。その他も作戦(さくせん)通り。

結界の外の(やつ)も当然動きはなしっと。

まぁ俺が言わなくても

地脈(ちみゃく)経由で全員とパスつながってる旦那(だんな)には

全部伝わるとおもいますけど」

「状況の確認は重要だ。

いつも助かってる。」

「いえいえ、しがない義賊(ぎぞく)ですんで

どうぞお気軽に」

そう言い、ロビンフッドは舞台(ぶたい)役者のような

大袈裟(おおげさ)な手ぶりでお辞儀(おじぎ)する。

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