愛讐越界特異点カムラン   作:Pon_De_hutago

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2章 虹の先にあるもの

 フィールドワークを続けているが

森ばかりで何も見つからない。

カルデアからマシュが地道に

マッピングしてくれているから

迷わずに済んでいるけど、

やはり(きり)をどうにかしたい。

ランスロットは反応が出たり

消えたりしていて、 位置も都度(つど)大きく

変わるためすぐに合流は難しいそうだ。

 (さいわ)いなことにシグルドが

いつもより調子がいいようだ。

膨大(ぼうだい)魔力(まりょく)適切(てきせつ)に流れ込んでいるらしい。

シグルドの考察(こうさつ)では

特異点(とくていん)外周(がいしゅう)沿()って()られた結界(けっかい)

魔力(まりょく)の流れを気流(きりゅう)のような流れで

コントロールしているらしく

異常(いじょう)大気中(たいきちゅう)大源(マナ)()いらしい。

ダヴィンチちゃんの計測(けいそく)によると

第七特異点(バビロニア)よりちょっと数値(すうち)が高いとか。

おかげでサーヴァント自身の魔力(まりょく)

完結(かんけつ)出来るから一戦(いっせん)した割に

ほとんど(つか)れがない。

「マスター、(てき)(あらわ)れた。

(きり)(せい)かこの距離(きょり)まで気づかなかった。」

大きな剣を持った大傷のある大男。

フェルグス・マック・ロイが

そこにいた。

攻撃するそぶりもなく、

堂々(どうどう)とそこにいる。

「俺の名はフェルグス・マック・ロイ!

アルスター時代(サイクル)はコノート最強の騎士(きし)

(らん)(とお)色男(いろおとこ)だ!

貴公(きこう)らにはここで死んでもらう。

もっともこの特異点(とくていん)関与(かんよ)せず、

手を引くならその(かぎ)りではないがな」

押しつぶされそうなプレッシャーを(はな)ちながら、

小さくえくぼを浮かばせる。

「悪いけど、それは出来ない。

この特異点(とくていん)修正(しゅうせい)しないといけない」

「そうか。その決断(けつだん)敬意(けいい)を。

まぁ()いの無いようにやってくれ」

フェルグスが(かま)え始める。

「シグルド(たの)んだ」

委細(いさい)承知(しょうち)

両雄(りょうゆう)剣先(けんさき)(むす)ぶ。

 剣戟(けんげき)から始まったが、(おどろ)くことに

当方の方が膂力(りょりょく)、スピード共に

上回(うわまわ)っているのに

(たく)みな剣技(けんぎ)ですべて()()された。

称賛(しょうさん)するしかない。

(かろう)うじて距離(きょり)をとりルーンによる攻撃に

切り替えるも相手の剣が(むち)のように()()()伸びる。

()げた短剣も(はじ)き落されてしまう。

ルーンを(きざ)んでも虹霓(こうげい)(ひか)りかき消されしまう。

「どうした戦士(せんし)()()なしか?」

おまけにすぐに距離(きょり)()められる。

「ゲオルギウスを出す!」

マスターがシャドウサーヴァントを召喚(しょうかん)

当方とフェルグスとの(あいだ)に入り入れ替わり(スイッチ)する。

「今のうちに立て直しを!」

承知(しょうち)した!」

 周囲(しゅうい)にありったけのルーンをばら()き、

(りゅう)炉心(ろしん)加速(かそく)させ、最大限(さいだいげん)魔力放出(まりょくほうしゅつ)をする。

渾身(こんしん)の力で破滅の黎明(グラム)()()ろす。

 

 まいったな・・・・。

我がマスターは優秀(ゆうしゅう)過ぎて、

()()()()しまう。

(てき)の数を制限(せいげん)し、そこから(さら)分断(ぶんだん)

(きり)で合流を妨害(ぼうがい)

(てき)単独(たんどく)(たたか)うしかない。

おまけにこちらは結界の効果で

地脈(ちみゃく)魔力(まりょく)をまるまる使えるようなもの。

これじゃ戦う前から勝ったも同然(どうぜん)ではないか。

正直、手ごたえがない。

おかげで余計(よけい)な事を考えてしまう。

 

 今のマスターに付いたのはもう1年以上前だ。

人理修復(じんりしゅうふく)任務(にんむ)遂行(すいこう)していた男には妹の様に

可愛(かわい)がっていた少女がいた。

全ての特異点(とくいてん)修正(しゅうせい)したあとの戦いで少女は

死んでしまったらしい。

俺は同じ戦場(せんじょう)にはいたが、

同じ場所には居なかった。

不甲斐(ふがい)ない。

見事(みごと)人類史(じんるいし)(すく)った彼は、勝利の美酒(びしゅ)

(あた)えらるはずが、絶望(ぜつぼう)()ちた。

その後、任務(にんぬ)()え俺たちは退去(たいきょ)した。

が、その後再召喚(さいしょうかん)された。

この特異点(とくいてん)に。

目的は少女を(よみがえ)らせるためだそうだ。

魔術(まじゅつ)に弱い俺にもわかる。

そんな事は不可能だ。

少女は普通(ふつう)に殺されたのではなく

マスターを守るために焼き消えたそうだ。

スカサハはクー・フーリンの息子コンラに

生き物を生き返らせる魔術(まじゅつ)(さず)けたそうだが、

遺体(いたい)がないものは神代(しんだい)魔女(まじょ)でも無理らしい。

だが男は言った。可能だと。

男は自分が()()る全てのリソースを(つい)やし

膨大(ぼうだい)な計算により

不可能な魔術式(まじゅつしき)構築(こうちく)に成功したらしい。

もっとも、

この人理(じんり)が不安定な状況(じょうきょう)()()()()ものだとか。

 男には(つら)く苦しい試練(しれん)

達成(たっせい)した栄誉(えいよ)があった。

(まも)り切った世界があった。

だが男はそれら全てを()げうち、

この特異点(とくいてん)を作った。

人類史(じんるいし)()わらせるためじゃない。

少女を蘇生(そせい)させる装置(そうち)として。

男に帰る世界は最早(もはや)無い。

この計画のため

消費してしまったらしい。

男は世界を(すく)った英雄(えいゆう)だ。

英雄(えいゆう)がそこまでして

一人の少女を助けようとしている。

 それだけで

同じ英雄(えいゆう)として手を()すには十分だ。

だから気が乗らない戦いにも身を(とう)じる。

今この瞬間(しゅんかん)も。

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

シャドウサーヴァントとの()ち合いの

合間(あいま)巧妙(こうみょう)に入り込む。

破滅の黎明(グラム)がトップスピードで降りかかる。

これはいなせない。だが・・・・。

「『虹霓剣(カラドボルグ)!』」

瞬間(しゅんかん)(あた)りは虹色(にじいる)(つつ)まれ、

太陽の魔剣(まけん)()き飛ばされた。

 

 「ぐわあッ!!」

虹霓剣(カラドボルグ)()き飛ばされたが、

着地(ちゃくち)したのは先ほどの地面ではない。

さっきまで立っていた場所は

大きくV字に()け、地表(ちひょう)(あら)わになっている。

その生まれたばかりの斜面(しゃめん)

(ちゅう)に浮いた身体(からだ)()(もど)された。

 体中(からだじゅう)()けている。

ガッツが無ければ終わりだった。

周りに配置(はいち)していたルーンも

クッションになったがほとんどは

(にじ)の光と共に消えてしまった。

 (くず)れそうな(むね)から(りゅう)炉心(ろしん)

無理やり加速(かそく)させて回復(かいふく)(はか)る。

「シグルド!」

「マスター!!こちらには来るな!!

(いそ)ぎ次のシャドウサーヴァントの召喚(しょうかん)を!!!」

「マスター!

シグルドさんの霊基(れいき)がもう持ちません!

即刻(そっこく)撤退(てったい)推奨(すいしょう)します!」

マシュからの通信(つうしん)(ひび)く。

()げられればな・・・!」

糸目(いとめ)戦士(せんし)斜面(しゃめん)(すべ)()りてくる。

マスターを(ねら)われないのは(さいわ)いだが、

もう彼と()ち合う余力(よりょく)はない。

マスターだけでも()がさなければならない・・・・!

今、礼装(れいそう)から応急手当(フローリペア)起動(きどう)してもらい

多少(たしょう)はマシになったがもう何分(なんぷん)

持ちこたえれない。

可能性は(ひく)いが、

もう宝具(ほうぐ)で無理やり逆転(ぎゃくてん)するしかない。

(さいわ)い、魔力(まりょく)だけは潤沢(じゅんたく)状況(じょうきょう)だ。

この場面(ばめん)だけ切り()けられれば

あとから回復(かいふく)(はか)れる。

今この瞬間(しゅんかん)に全力をかけて(いど)む。

マスターがシャドウサーヴァントで

援護(えんご)してくれているがフェルグスは

全て軽く流している。

青き炎をたぎらせろ・・・!

絶技(ぜつぎ)用意(ようい)・・・・!

太陽の魔剣(まけん)よ、その身で破壊(はかい)()()こせ!!

壊刧の天輪(ベルヴェルク・グラム)』!!!」

 

この霊基(れいき)()みこんだ動作(どうさ)

大地を()みしめて、

破滅の黎明(グラム)(こぶし)(たた)き付ける。

その(はず)が、

(あま)く見ていた。

()()かれた大地の強度(きょうど)は低く

(こぶし)をふるうための()()みの(さい)

大きくガクッと下へ()ちた。

体勢(たいせい)(くず)宝具(ほうぐ)不発(ふはつ)()わった。

 「やはりマスターの計略(けいりゃく)優秀(ゆうしゅう)過ぎる。

これだけの英霊(えいれい)がこの(ざま)とは

いやはや(こま)ったものだ・・・。」

その時、ゲオルギウスのシャドウサーヴァントが

後ろからフェルグスを

がっしり(おさ)()む。

彼もガッツで()えていたようだ。

今にも消えそうな状態(じょうたい)

本人(ほんにん)さながらの

守護(しゅご)をしてくれている。

この(すき)(のこ)っている

ルーンを起動(きどう)させる。

勝利のルーン(トゥール)

地面に()らばっていた

ルーンを空中(くうちゅう)投影(とうえい)する。

空気がレンズ(じょう)(かた)まり

しっかりとした足場になる。

もう一撃(いちげき)破滅の黎明(グラム)()(はな)つ。

 

 シャドウサーヴァントが後ろから

(つか)んできた時は(おどろ)いた。

もうとっくに消えていると思っていた。

()しむらくは ()(はら)えなくとも

宝具(ほうぐ)()てるということ。

 あぁ。マスターの力にはなるが、

何十何百と英霊(えいれい)(ほふ)っては

剪定(せんてい)される世界を(つぶ)しているのだ。

止められるものなら止めてほしい。

それでもパスを(とお)して男の記憶(きおく)が流れる(たび)

()がマスターを(すく)わねばと 決意(けつい)する。

()ながら女々(めめ)しい事を考えているな。

男を(すく)うには(ねが)いを(かな)えてやるのも

(ひと)つの手ではある。

だが、堂々(どうどう)健全(けんぜん)(おこな)

と言う事も出来ない。

(たたか)いと女にしか頭を使えん俺には正直、

問題が(ふくざつ)雑過ぎる。

だから問題の解決(かいけつ)手段(しゅだん)があるなら

(てき)でもなんでもいい、

やってほしい。

けれども、

()がマスターに(あらが)うには

俺を(たお)せる程度(ていど)能力(のうりょく)必要(ひつよう)だ。

(ゆえ)に全力で(たたか)う。

()けたいのに

勝たざる()えないとは

まったく面倒(めんどう)()()けたものだ。

目の前に居る男の覇気(はき)(すご)い。

(かれ)(よう)戦士(せんし)

勝ってもらいたいものだ。

  ↑  (トゥール)!!」

眼前(がんぜん)戦士(せんし)(さけ)び、

大地に(きざ)まれた()()()(ちゅう)(あら)れ、

戦士(せんし)はそこに立ち上がる。

再び太陽の(きら)めきを(はな)つ。

身体(からだ)(ふる)()つ。

久々(ひさびさ)高揚感(こうようかん)口角(こうかく)()()がる。

全力で(むか)()っても

(さら)勝負(しょうぶ)の見えない感覚(かんかく)

これで全力で宝具(ほうぐ)(はな)てる。

(しん)虹霓(こうげい)をお見せしよう・・・!」

魔剣(まけん)完了。

貴殿(きでん)矜持(きょうじ)、見せてもらう。」

口上(こうじょう)途中(とちゅう)だが耳に(のこ)る。

なかなかこたる言葉だな・・・。

「これなるは破滅(はめつ)黎明(れいめい)壊刧の天輪(ベルヴェルク・グラム)』!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

どうか、

この(にじ)彼方(かなた)意志(いし)(とど)き、

(われ)らの(ねが)いが()たされますように。

(にじ)(ごと)く、(ひと)しき無限長(むげんちょう)。されど(けん)

それなるは螺旋(らせん)虹霓(こうげい)

()びろ!『極・虹霓剣(カレドヴールフ・カラドボルグ)』!!!!」

(にじ)が大地に()みこみ

螺旋(らせん)伝播(でんぱ)する。

宝具(ほうぐ)()()す、

戦士(せんし)を飲み込むように。

足場は()れ、

身体(からだ)は吹き飛ばされそうなはずだが、

戦士(せんし)は全力の攻撃(こうげき)のモーションを

途切(とぎ)れさせない。

だがもう間に合わない。

(しゅ)御業(みわざ)をここに!『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』」

(やさ)しい光が突然(とつぜん)広がる。

あちらのマスターが出した

シャドウサーヴァントの宝具(ほうぐ)か。

シャドウサーヴァントには結界の効果がないから

十分(じゅうぶん)押し切れる出力(しゅつりょく)だ。

だが、押し切ったところで

(かれ)の準備が(ととの)った。

宝具(ほうぐ)が来る。

()(はな)たれた太陽剣は閃光(せんこう)となり、

俺の霊核(れいかく)()れてくる。

(すで)(はな)たれた剣を

どうする事も出来ない彼は

全ての魔力(まりょく)(とう)じて

この一撃(いちげき)()けている。

「うおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおお!!

ブリュンヒルデえええええええええええ

えええええええええええええええええええええ!!!」

(にじ)の波の中心(ちゅうしん)で太陽の光が(きら)めき、

(はげ)しい白が広がっていく。

 

【挿絵表示】

 

 

 「(はげ)しい閃光(せんこう)映像(えいぞう)見えませんが、

(てき)サーヴァントの消失(しょうしつ)観測(かんそく)

勝ちました!」

よっしゃああああ!!

と声が上がる。

「やりましたよ!マタ・ハリさん!」

回復(かいふく)()え、管制室(かんせいしつ)で一緒に見守(みまも)っていた彼女と

両手を合わせて(よろこ)ぶ。

「ええ!やったわね!」

満面(まんめん)()みを()かべる彼女は

(かろ)やかに立ち上がり、

通路(つうろ)に出て歩き出した彼女は

(おど)(はじ)める。

モニターはまだ光に(おお)われ、

白いまま見るもののない職員達(しょくいんたち)

視線(しせん)(あつ)め、

ヒューヒューと歓声(かんせい)があがる。

美しい体躯(たいく)()せる(おど)りは

徐々(じょじょ)に他の職員達(しょくいんたち)

釘付(くぎづ)けにしていき、

全ての職員(しょくいん)

彼女を見ているように感じる。

彼女から目が(はな)せず

確認(かくにん)は出来ない。

 「おいおい、

いくら(うれ)しくても管制室(かんせいしつ)(おど)る....の.....は...........」

ダ・ヴィンチ司令官(しれいかん)代理(だいり)

注意(注意)(うなが)そうとするも

()()()()()中断(ちゅうだん)された。

いつの()にか管制室(かんせいしつ)には

(あま)(にお)いに(つつ)まれている。

(むす)び、(ひら)き、私という女に(おぼ)れて頂戴(ちょうだい)!」

陽の眼を持つ女(マタ・ハリ)

(おど)りを()えた彼女の周りには、

手繰(たぐ)り糸が切れた人形のように

立ち止まっている人影(ひとかげ)のみ。

全員瞳孔(どうこう)(ひら)き、

マタ・ハリ同様(どうよう)(ひとみ)(ひか)っている。

宝具(ほうぐ)による洗脳(せんのう)完了(かんりょう)した。

ダヴィンチもマシュも同様(どうよう)に。

(さき)ほどとは(ちが)い、

ニンマリと(わら)う彼女は

胸元(むなもと)谷間(たにま)から装備(そうび)していた

聖杯(せいはい)現界(げんかい)させる。

管制室(かんせいしつ)のロックを確認(かくにん)し、

職員(しょくいん)(あやつ)通信(つうしん)(つな)ぐ。

第一(だいいち)段階(だんかい)完了(かんりょう)よ。マスター

ここは当たりの世界みたい!」

「あぁ、よくやった。

流石一番(いちばん)信頼(しんらい)出来るサーヴァントだ」

モニターには黒い(くろい)の男とロビンフッドが(うつ)っている。

 

 (だれ)視点(してん)だろうか。

カルデアの一室(いっしつ)

ミーティングをしている光景(こうけい)が見える。

「君たち、出会ってからまだ数週間なのに、

いやに馴染(なじ)んでるね!

まるで兄妹(きょうだい)みたいだ」

にやけながらダヴィンチが言う。

兄妹(きょうだい)・・・・!

なら兄さんですね!マスター」

「やめてくれ。社会的印象(いんしょう)が悪くなる。」

「?!え・・・?何故(なぜ)ですか?」

困惑(こんわく)するマシュに適当(てきとう)(かえ)す。

「知らなくていい・・・。

任務(にんむ)が始まって以来(いらい)ベッタリだ。

プライベートで無理に

(かま)わなくてもいいんだぞ」

目を合わせずに、紅茶(こうちゃ)砂糖(さとう)をまぜながら話す男。

「無理になんて!

いえ、お(いや)なら(やめ)めますが・・・。」

急に(くら)表情(ひょうじょう)になるマシュが

横目(よこめ)からでも視界(しかい)に入ってしまった。

面倒(めんどう)だ・・・。

「したいときだけしろ・・・。

不安(ふあん)になることはない」

「・・・・!はい、兄さん!!」

(うれ)しそうに(わら)うマシュを見て思わず

微笑(ほほえ)んでしまった。

彼女は研究(けんきゅう)のためサンプルでしかない。

人として(あつか)ってはいけない。

魔術師(まじゅつし)として()たり前のことを

いまさら頭の中で反芻(はんすう)させる。

 

 彼女は16(さい)誕生日(たんじょうび)に大きな事件(じけん)にあった。

今まで(だれ)とも(せっ)せずに

ガラス(しつ)()われてた彼女は

ようやくマスターとしてやって来た、

()りすぐりのメンバー(たち)と友人になり

人並(ひとな)みの感情(かんじょう)芽生(めば)えたところで

全て(うしな)った。

友人以外のマスター候補(こうほ)も全員(うしな)った。

マリスビリーに戦術顧問(せんじゅつこもん)として

()ばれていた俺は管制室(かんせいしつ)から

飛んでいき、貴重(きちょう)研究(けんきゅう)サンプルを

(たす)けにいった。

そして、死にかけの彼女を

(はげ)まして救出(きゅうしゅつ)(こころ)みた。

そうして、あれよあれよと

人類最後(じんるいさいご)のマスターになった。

たまたまレイシフト適性(てきせい)があったばっかりに。

そこから雛鳥(ひなどり)()()()()みたいに(なつ)かれた。

 おまけに新任(しんにん)のアニムスフィアのご令嬢(ごれいじょう)

最初(さいしょ)のレイシフトで死亡(しぼう)

(ほか)適任者(てきにんしゃ)がいなくてダヴィンチが

カルデアの司令官(しれいかん)になった。

まったく(ほか)職員(しょくいん)猫可愛(ねこかわい)がりするから

カルデアはマシュの託児所(たくじしょ)みたいだ。

 

 「任務(にんむ)の話に(はな)すけど、

現在(げんざい)我々(われわれ)協力(きょうりょく)してくれているサーヴァントは

マタ・ハリとロビンフッドのみ。

君の作戦通(さくせんどお)規模(きぼ)が大きく

ひっ(ぱく)している特異点(とくいてん)から

対処(たいしょ)しているが、

最初(さいしょ)のバビロニアは

英雄王(えいゆうおう)がサーヴァントを

召喚(しょうかん)していて協力(きょうりょく)してくれたから

()てたが、もっと直接的(ちょくせつてき)戦闘(せんとう)

出来るサーヴァントを

仲間(なかま)にしないといずれ手詰(てづ)まりだ。」

「あぁ、俺とマシュとロビンじゃ

英雄王(えいゆうおう)みたいトップサーヴァントの

相手(あいて)は無理だ。

次のエルサレムの情報(じょうほう)から

必要(ひつよう)になりそうなサーヴァント

英雄王(えいゆうおう)から見せてもらった

宝具(ほうぐ)一覧(いちらん)から選別(せんべつ)して

聖遺物(せいいぶつ)として投影(とうえい)召喚(しょうかん)(こころ)みる。

俺が降霊術(こうれいじゅつ)大家(たいか)()でよかったな」

「まったくだ。

君の(よう)戦闘面(せんとうめん)研究面(けんきゅうめん)

優秀(ゆうしゅう)な人間を

没落貴族(ぼつらくきぞく)魔術師(まじゅつし)の中から見つけて

(やと)って来るなんで、

マリスビリーの人材確保能力(じんさいかくほ)天才的(てんさいてき)だ」

「まぁ、1994年の冬木(ふゆき)儀式(ぎしき)

時計塔(とけいとう)のパワーバランスが(くず)れたからな。

研究(けんきゅう)(こも)ってたらいつの()にか

ポストを取られてたんだ。

流石に冠位(ロード)用意(ようい)した霊地(れいち)

報酬(ほうしゅう)じゃ(ことわ)れん。」

「なるほどね。

今日(きょう)のミーティングはお(ひら)きにするけど、

君らこの後の予定は?」

「・・・・。

45分後に仮眠(かみん)を取るが、それまで何かするか?」

「えっと。それなら食堂(しょくどう)でトランプでも」

了解(りょうかい)した。この前、ロビンとダヴィンチに

(しぼ)られたからな。 タダのゲームは魅力的(みりょくてき)だ」

「・・・!それはよかったです!」

ふふっとダヴィンチが部屋を後にして、

男たちも続く。

 

 「は・・・・・・・?」

土砂(どしゃ)の上で目が()める。

宝具(ほうぐ)()ち合いで

フェルグス・マック・ロイを撃破(げきは)したあと、

(かれ)宝具(ほうぐ)による地形破壊で

土砂(どしゃ)()まれて気絶(きぜつ)した。

(むね)から下と左腕(ひだりうで)がない。

 「なん・・・

だ・・・・?

すべて思い出した・・・!!

俺はマスターのカルデアから

呼び出されたサーヴァントではない・・・!

(かれ)もマスターではない!!

(わす)れさせられていた!

彼女に(あやつ)られていた!

マタ・ハリの宝具(ほうぐ)で!!」

 そうだ。当方はエルサレム攻略(こうりゃく)のために

原罪(メロダック)』を触媒(しょくばい)召喚(しょうかん)されたサーヴァント。

(ふたた)び、この特異点(とくいてん)()ばれた(さい)に、

あの男の(おそ)ろしい計画(けいかく)()めるべく離反(りはん)した。

あの男に(やぶ)れて拘束(こうそく)された当方は

マタ・ハリの宝具(ほうぐ)洗脳(せんのう)され、

スパイの片棒(かたぼう)(かつ)がされたという(わけ)か・・・!

 まずい、このまま当方は消えてしまう。

マスターは!

彼がいた場所は地形破壊(ちけいはかい)影響(えいきょう)が少ない。

シャドウサーヴァントが(まも)ってくれたのだろう。

彼は(すで)に次の行動(こうどう)(うつ)しているのか。

姿(すがた)が見えない。

上からでは当方の位置は(かく)れて見えそうにない、

もともとパスが(つな)がっていないのだから

生存(せいぞん)有無(うむ)確認(かくにん)出来なかっただろう。

仕方(しかた)あるまい。

だが、

あの男を止めるために彼には

勝利(しょうり)してもらわなければならない。

意識(いしき)(うす)れていく。

当方はもう合流出来ない。

()わりに彼のために

誰かを(おく)らなければ。

彼にあの男の事を(おし)えなければ・・・!

今持てるものをすべて(たく)す。

(たの)む、彼を止めてくれ・・・・・!

右手で(つづ)ったルーンが円を(つな)ぎ、

儀式(ぎしき)(おこな)われる。

 

 マタ・ハリに占領(せんりょう)された管制室(かんせいしつ)

電力(でんりょく)供給()ほきゅうを少しずつ制限(せいげん)して

稼働中(かどうちゅう)のサーヴァントに気取(けど)られないように

現界(げんかい)出来ないようにしていく。

藤丸立香(ふじまる りつか)意味消失(いみしょうしつ)(ふせ)ぐための

モニタリングを()め、

黒い(よろい)の男や仲間(なかま)のモニターに

()()える。

 「順調(じゅんちょう)(すす)んでいるけれど、

フェルグスの戦闘(せんとう)影響(えいきょう)二層目(にそうめ)の結界が

(やぶ)られちゃったわね」

英雄(えいゆう)シグルドとの戦闘(せんとう)だ。仕方(しかた)ない。

それより

サーヴァントの損失(そんしつ)が出るとは思わなかった」

「まぁフェルグスの兄さんがあの宝具(ほうぐ)使うのも

ここ来てから(はつ)ですしね。

今まで全戦全勝(ぜんせんぜんしょう)なのが、おかしいんすよ」

(おも)く考え()むマスターの空気(くうき)()えるように

両手(りょうて)(たい)らにジェスチャーするロビン。

計画(けいかく)予定通(よていどお)第二段階(だいにだんかい)移行(いこう)する。

こちらも損失(そんしつ)は出ているが

(てき)マスターは単独(たんどく)

戦力(せんりょく)はシャドウサーヴァントのみだ。

二層(にそう)の外にいたヘクトールと合流しても

意味消失(いみしょうしつ)()えられず

消えていくだけだろう。

そのあと彼を(たお)せばいい。」

了解(りょうかい)

まぁ一騎(いっき)だけなのが(さいわ)いしましたな。」

「その一騎(いっき)問題(もんだい)なんだがな・・・・。

ヘクトールについてはベオウルフに(まか)せよう。

フィン・マックールもそろそろ()わっている(ころ)だろう

報告(ほうこく)があり次第(しだい)()かわせてくれ。」

「わかったわ。」

笑顔(えがお)(こた)えるマタ・ハリ。

 「機材(きざい)設備(せつび)調整(ちょうせい)完了(かんりょう)

あとは何をすればいいんだい?」

「レオナルド、あなたには特別(とくべつ)仕事(しごと)があるの

私と一緒(いっしょ)にコフィンに来てちょうだい!

マシュもね!」

了解(りょうかい)」「わかりました」と待機(たいき)する。

(きり)()えたから確認(かくにん)していたが、

以降(いこう)計器(けいき)もすべて第二段階(だいにだんかい)のために

()いてくれ、

仲間(なかま)を見ていても意味(いみ)がない」

(つた)えておくわ、この後も()()けてね」

「あぁ、ありがとう」

通信(つうしん)()わり、

画面(がめん)から映像(えいぞう)途絶(とだ)える。

 

 「マシュ、準備(じゅんび)できたかしら?」

「はい、準備完了(じゅんびかんりょう)です」

コフィンに(はい)るマシュに

笑顔(えがお)見送(みおく)るマタ・ハリ。

タブレットからダヴィンチが

コフィンの術式(じゅつしき)調整(ちょうせい)し、

聖杯(せいはい)接続(せつぞく)する。

「よし!じゃあ(はじ)めよっか!

(じつ)興味深(きょうみぶか)術式(じゅつしき)だ。

ホントに可能(かのう)なのかやりがいがあるよ!」

万能(ばんのう)天才(てんさい)がやるんだもの、

絶対(てんさい)うまくいくはずよ」

二人(ふたり)美女(みじょ)(こと)なった笑顔(えがお)

(むか)()わせになる。

(たし)かに、

この人理(じんり)不安定(ふあんてい)状況(じょうきょう)

利用(りよう)する方法(ほうほう)としては

堅実的(けんじつてき)なプランに見える。

実際(じっさい)、こんな(こと)やる人間はいないから

まったく予想外(よそうがい)(こと)()きても

おかしくはないけど」

「ふふっ、あなたたちホントに仲良(なかよ)しね!

マスターも同じことを言っていたわ」

「? そうなのかい?

これが()わったら直接(ちょくせつ)()ってみたいね」

はっと両手(りょうて)を口に押えるマタ・ハリ。

「ええ、(よろこ)ぶわ」と笑顔(えがお)()わせる。

 「それとマシュ、あなたはレイシフトしたら

私の宝具(ほうぐ)()けた後の(こと)

全部(ぜんぶ)(わす)れてちょうだい。

いつも(どお)りそのまま

マスターを(さが)して合流するといいわ」

「わかりました。マタ・ハリさん」

「良い子ね」と頭を()でそうになるが

とっさに止めて手を()るマタ・ハリ。

「それじゃあマシュ!

人類未踏(じんるいみとう)(こころ)みに(いど)んでみようか・・・!」

「はい、マシュ・キリエライト出撃します!」

レイシフトの(おと)(ひび)(わた)る。

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