フェルグスとシグルドの宝具がぶつかり合った後、
藤丸立香はジャンヌの宝具がクッションになり、
後ろに吹き飛ばされるだけで済んでいた。
気付けば霧が晴れて、
辺りの景色が森の間から見えるようになった。
「キャメロット城・・・?」
森の上から、なじみのある白亜の城が見えている。
木が邪魔で上部しか見えないが、
城門などはなく、
テーマパークのランドマークの様に
城の部分だけそこにある。
辺りを見回しても他には森しかなく、
おそらくあそこが特異点の元凶だ。
目の前には大きなクレーターが
渓谷を思わせるが、
シグルドの姿もフェルグスの姿も見えない。
「これは探しにはいけないな・・・。
ごめん、シグルド」
またカルデアとの連絡も取れなくなってしまった。
単独で乗り込むのは危険だ。
サークルに戻って
誰か召喚出来るか試してみよう。
「カルデアのマスター!」
後ろから大声がして警戒する。
「我が真名はヘクトール!!
トロイの王パリスの兄で
君達の時代では九偉人とか
祭り上げられちゃってるらしい。
此度はランサーとして召喚された!
敵意はない、
君に協力してもらいたい事がある!!」
真名もクラスも告げる
彼の言葉を聞き入れる。
「カルデアを知っているんですか?」
「あぁ、君らとは別のカルデアで戦っていた。
この特異点の元凶はその時のマスターだ。
その時のよしみで召喚されたが、
彼を止めるために離反した。
さっきまで結界で閉め出されていたが、
君たちのおかげでこうして出てこられた」
「別のカルデア?
この特異点の世界のカルデアの人たちってことですか?」
「いや、この特異点はマスターが
世界を渡った後に造ったものだ。
ややこしい話になるが、
君らとは別に
人理を修復した世界があって、
そこから来た。」
「世界を渡った・・・。
あなた方のマスターは
漂流者なのか。
そういう人達と会ったことがあります。」
女宮本武蔵や下総の天草四郎の顔が浮かぶ。
「話が早くて助かる。
とにかく、うちのマスターは
自分の世界から離れて
自分の計画に都合がいい世界を探して、
その都度、合わない世界を潰していってる。
今回の標的が君の世界ってわけだ。
含みなく我がマスターの
暴挙を止めたい。
君たちの世界を救うのを手伝わせてくれ!」
目の前のヘクトールは
自分が知っている彼よりも
鋭く真剣な眼差しで
まっすぐこちらを見ている。
「もちろん。
助かります。
こちらこそ、よろしくお願いします。」
「あぁ、仮初のマスター。
我が祖国トロイヤに誓う。
必ず、君の世界と
大切な人を守り抜く。」
時は戻り、
ランスロットと藤丸立香がレイシフトをする際。
カルデアの管制室にて。
「以上でミーティングを終えるが何か質問は?」
「いえ、すぐにでも行けます。」
藤丸立香が答える。
「おっけい!ランスロットは問題ないかい?」
「ええ、何も問題なく。
今回同行出来るのは私だけですが、
そこはご安心を!
何せ、円卓最強ですので
不足は十分補います。」
精一杯騎士として
安心させたと思ったが、
何故かマシュは怪訝な顔だ。
「あぁ、正直期待してしまうよ。
よろしく頼む」
本心と苦笑いが混同したような笑顔で
ダ・ヴィンチが返す。
「お任せを!」
その後すぐにレイシフトが始まる。
レイシフト中の事だ。
光の中に壁があった。
目には見えないが
そこから先に進めない。
ただ声がした。
「サー・ランスロット・・・・。
聞こえ・・・・・か。
サー・・・・スロ・・・・ト」
耳馴染みある声だ。
「マシュ?」
「サー・ランスロット・・・・。
お願・・・す。
私達のマスターを・・・・。
どうか・・・・。助け・・・・。」
「なんだ?通信の不具合なのか?
よく聞き取れない。
マスターに何かあったのか!」
「違い・・ま・・。
あなた方のマスターでは・・なく、
私達のマス・・・ターを。
私の声が聞こえる・・・・は
サー・ランスロット・・・・。貴方だけ・・す・・。」
「何?なんの話だ?!
カルデアに問題が起きた訳では
無いんだな?!」
レイシフトが完了していく。
声の方に引きせられると共に
光が増していく。
【挿絵表示】
レイシフトが終わると、
見慣れた部屋に居た。
かなり薄暗いがここは間違いなく、
キャメロット城の円卓の間だ。
ただ、円卓が本来の卓より小さい。
マシュの盾とそう変わらない。
そこには王や円卓の騎士ではなく、
ロビンフッドや
フェルグス・マック・ロイ、
フィン・マックール、
ベオウルフ、ダビデが居た。
その奥にはマタ・ハリと
黒い鎧の男が一人。
この感じはベイリン卿・・・・?
いやガラハット?
オルタか何かになったのか?
別人の様にも感じる。
誰だ・・・?
「ようこそ、サー・ランスロット。
突然の再開で驚くだろうが、
力を貸してほしい。」
再開?一先ず話を合わせよう。
「具体的に何をすればいい?」
「あぁ、人理修復の最後にマシュが死んで、
君たちが退去した後、
儀式の構築に成功してね。
彼女を生き返らせられる。」
「何?死者の蘇生が可能だと?」
「実は理論上で言えば、
カルデアは常に死者の蘇生を
データのやり取りで 行える施設だ。
特異点にレイシフトした者が意味消失した場合、
特異点での存在は消滅し、
世界は存在していたものを補うために
送り込まれた者と同等の存在を
出現させる。」
「それはカルデアで聞いている。
私が必要な理由は?」
「この特異点は、複数の世界をスライドしてきている。
カルデアが観測可能になる地点に浮上すると
修正のためにレイシフトしてくるが、
ほとんどの世界のカルデアには
2017年現在にマシュが存在する。
つまり、レイシフト技術と
生きているマシュが揃う。
特異点に乗り込んできたマスターに
接触し、カルデアに潜入。
マシュを意味消失させ
、接続されているコフィンと聖杯を繋ぎ、
孔から座、座から根源へ接続し
情報を読み取り、
我々の世界のマシュの記録を
コフィンに ダウンロードし、
世界の修正で出現するマシュに
インストールして上書きする。
剪定された世界も根源には
記録されているからね。
貴方にはカルデア潜入と
平行して行うの陽動の戦闘を・・・」
「ちょっと待て!!」
食い気味にランスロットが
怒声を上げて驚く鎧の男。
「それでは、貴殿は
自身の世界のマシュを蘇生させるために、
私の娘を殺す算段に
加担しろというのか!!」
「娘・・・?
あぁ、ガラハットのデミ・サーヴァントだからか。
貴方が彼女をそんな風に思っていたとは
知らなかった。すまない。
だが、消えるのはこの世界の彼女で
君の娘は蘇生させる方では?」
「どちらも同じ事だ!!
貴公は完全に狂っている!!
そこにいる貴様らも
一廉の英霊だろうが!
何故外道に加担している!!」
目線を前に並ぶサーヴァント達に合わせ、
指をふるう。
「我らは、マスターの願いを叶えるために召喚され、
再び集った。 貴殿も同じだと思っていたが?」
フィン・マックールが言い返す。
他の者は様子を伺っている。
「戯けたことを!
私はそのような悪行に手を貸したりはしない!
どのような状況でも親が子を
手にかける事などあるものか!!」
目つきは鋭く、
こめかみにははち切れんばかりに
血管が浮き出ている。
暗い部屋に怒号が響き渡り、
他のサーヴァントは唖然としているが、
鎧の男はひどく悲しそうに口を開く。
「そうか。残念だ。
悪いが作戦終了まで拘束させてもらう。」
黒い鎧の男がプレッシャーを放つが
武器は持っていない。
魔術による拘束か?
セイバー相手に?
「魔術による拘束ではありません。
素手で物理的に身体を抑えてきます!」
またあの声だ。
「戦力はこの場にいるサーヴァントのみです。
霊体化で窓から逃げて下さい」
「了解した。」
驚く一同。
「誰に話している?」
その虚をついて瞬時に霊体化し
窓から外に出る。
「こちらのサーヴァントの中に貴方より
素早いサーヴァント居ません。
このまま逃走して
追いかけてくる者から各個撃破を。
この特異点では魔力切れの心配はありません。
常に全力で戦えます!」
なるほど。それなら。
「『無毀なる湖光』」
「?!」
無毀なる湖光から放たれる
光の噴射で上空でぐんと
城から距離を離し、
弧を描いて森に着地する。
外は霧に覆われていて
着地までは見られない。
「サー・ランスロット・・・。
説明の途中です・・が・・、
霧の影響で城から離れろと・・
話せなく・・・なりま・・・。
マスターとの・・・・
レイシフト・・・・到着までに時間差が・・・。
まずは・・・・
貴方の生存だけを・・考え・・・・て
兄さん・・は・・・
サーヴァントの位置・・・・
完全・・把握し・・・います・・・!」
「だいたいは伝わった。
ありがとう。レディ!」
「・・・・。」
音はほとんど聞こえないが
感謝しているか、
嬉しそうな反応に感じだ。
もう彼女には届かないかもしれないが
宣誓しよう。
「我が真名は円卓の騎士ランスロット
我が真名、我が王に誓って、
我が娘のため必ずや
この特異点の問題を解決する!!」
着地し、
霧に隠れる城の方へ
振り向き剣を掲げる。