愛讐越界特異点カムラン   作:Pon_De_hutago

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4章 選択肢はひとつ

 追(お)ってきたフィン・マックールとの

戦闘(せんとう)が始まる。

霧(きり)の深い森の中、

ランスロットはフィン・マックールの

魔術(まじゅつ)の猛攻(もうこう)を躱(かわ)しながら走る。

木々(きぎ)を挟(はさ)んで並走(へいそう)する二人、

槍(やり)が振(ふ)るえない木々(きぎ)の集(あつ)まりへ

誘導(ゆうどう)するも、

ランスロットへ向(む)けた魔術(まじゅつ)が

周(まわ)りの樹木(じゅもく)の除去(じょきょ)にもなっていている。

巧(うま)い・・・・!

流石(さすが)は輝(かがや)けるフィン・マックール。

しかも、こちらは霧(きり)でギリギリまで

木々(きぎ)の配置(はいち)が見えないが

彼(かれ)には周囲(しゅうい)全(すべ)てが

見えているようだ。

おそらく魔術(まじゅつ)で

感知(かんち)しているのだろう。

敵(てき)の虚(きょ)を突(つ)くのは難(むずか)しいか。

ならば・・・。

「『無毀なる湖光(アロンダイト)』」

湖(みずうみ)の魔力(まりょく)を直線(ちょくせん)で放(はな)つのではなく弾(はじ)けさせた。

敵(てき)に当(あ)たるだろうが

おそらく大(たい)した効果(こうか)は無(な)いだろう。

目くらましだ。

止まらず放(はな)たれるフィンの

水の魔術(まじゅつ)の連射(れんしゃ)を躱(かわ)しながら、

向(む)かう先の木々(きぎ)を蹴(け)って

枝(えだ)を伝(つた)い、上昇(じょうしょう)する。

パルクールという奴(やつ)だ。

木々(きぎ)の頭(あたま)が見える位置(いち)まで

上昇(じょうしょう)し彼(かれ)の頭上(ずじょう)めがけて降下(こうか)する。

当然(とうぜん)のように槍(やり)の穂先(ほさき)を掲(かか)げて

迎(むか)え撃(う)ってくる。

だが、打(う)ち合(あ)いで

私が負けることはない。

穂先(ほさき)を剣(けん)で取(と)らえ、

素早(すばや)く持(も)ち手(て)に刃(は)を当(あ)てて滑(すべ)り込(こ)む。

「もらった!!」

流(なが)れるように袈裟斬(けさぎ)りを放(はな)つが

そこにはあるべきフィンの身体(からだ)がない。

彼(かれ)の魔槍(まそう)は魔術(まじゅつ)で宙(ちゅう)に浮(う)いていた。

しまった。

思(おも)った時にはもう遅(おそ)い。

着地(ちゃくち)したところで死を覚悟(かくご)した。

地面(じめん)が深(ふか)くぬかるんでいて

身体(からだ)がそのままハマっていった。

我(わ)が聖剣(せいけん)ごと肩(かた)の高(たか)さまで

ぬかるんだ地面(じめん)に埋(う)まってしまった。

頭上(ずじょう)にはフィンの

魔術(まじゅつ)が展開(てんかい)される。

「霊体化(れいたいか)して抜(ぬ)けようとは思(おも)わないことだ。

いかなセイバーでも霊体化(れいたいか)した状態(じょうたい)では

我(わ)が魔術(まじゅつ)で浄化(じょうか)しきってしまうからな」

霧(きり)の中(なか)からフィンが姿(すがた)を見せた。

「なに安心(あんしん)しろ。

君(きみ)をこれ以上(いじょう)攻撃(こうげき)する気はない。

話をしよう。

君(きみ)は我々(われわれ)の仲間(なかま)のランスロットではないのだろう?」

 

 不敵(ふてき)に笑(え)みを浮(う)かべて

彼(かれ)は歩(あゆ)みを寄(よ)せてくる。

すると、いきなり彼(かれ)は自身(じしん)の親指(おやゆび)を

口に押(お)し込(こ)んできた。

「ッ?!」

「『親指かむかむ智慧もりもり(フィンタン・フィネガス)』

驚(おどろ)かせてすまないが、

少(すこ)し複雑(ふくざつ)な話をするからね。

これで円滑(えんかつ)に話が進(すす)むだろう」

「マスターに似(に)て手段(しゅだん)を選(えら)ばないな」

「我等(われら)は皆(みな)そうさ」

そういう彼(かれ)は少(すこ)し懐(なつ)かしむように微笑(ほほえ)み、

この特異点(とくいてん)の謎(なぞ)を

話(はな)し始(はじ)めた。

 

 男(おとこ)らは人理修復(じんりしゅうふく)を成(な)し、

最後(さいご)にマシュを失(うしな)った。

男は不可能(ふかのう)と分(わ)かっていても

なんとか彼女(かのじょ)を蘇生(そせい)させようと

研究(けんきゅう)に執心(しゅうしん)していた。

マスターとしての業務(ぎょうむ)は

継続(けいぞく)していたいし、

気持(きも)ちの支(ささ)えになるならと

誰(だれ)も止(と)めなかったと言(い)う。

その後(あと)我々(われわれ)と同じように

いくつかの亜種(あしゅ)特異点(とくいてん)

と接触(せっしょく)した。

「君達(きみたち)も下総(しもうさ)にレイシフトしたのか」

「あぁ、我々(われわれ)の場合(ばあい)は

数騎(すうき)落(お)としたところで

割(わり)に合わないと帰(かえ)られたけどね。

だがそこで、

天草四郎(あまくさしろう)から

漂流者(ドリフター)という存在(そんざい)を知(し)った。

そこからマスターの研究(けんきゅう)に

現実味(げんじつみ)が出(で)てしまった。

他の世界(せかい)に行(い)ければ足(た)りない物(もの)を

集(あつ)められるからね。」

「だが、漂流者(ドリフター)などなろうとして

なれるモノではないだろう」

「それがなれるのだよ。

我々(われわれ)のマスターは令呪(れいじゅ)での

転移(てんい)を利用(りよう)して魔術錠(まじゅつじょう)のかかった

所長(しょちょう)の部屋(へや)からも

研究(けんきゅう)のための資料(しりょう)を引(ひ)っ張(ぱ)ってきてね。

そこには虚数空間(きょすうくうかん)を観測(けいそく)する計測器(けいそくき)と

虚数空間(きょすうくうかん)を渡(わた)る船(ふね)の設計図(せっけいず)があった。

ペーパームーンだが、シャドウボーダーだか。

とにかくそれで

自分(じぶん)たちの世界(せかい)とは別(べつ)の世界(せかい)に

潜伏(せんぷく)出来(でき)るようになった彼は、

複数(ふくすう)の聖杯(せいはい)を使(つか)って

自分(じぶん)たちの世界(せかい)を破壊(はかい)した」

「は?!」

「終(お)わったことだ。話を続(つづ)けるぞ」

「それで根無(ねな)し草(ぐさ)になった我々(われわれ)は

虚数空間(きょすうくうかん)で特異点(とくいてん)を展開(てんかい)し

マシュの盾(たて)をアンカーにして

浮上(ふじょう)。浮(う)いたらそこは異世界(いせかい)だ。

たまたま浮(う)いて出(で)た場所(ばしょ)がブリテン島(とう)でね。

そこに合(あ)わせて特異点(とくいてん)を調整(ちょうせい)して

地脈(ちみゃく)と特異点(とくいてん)の核(かく)となる聖杯(せいはい)を接続(せつぞく)して

魔力(まりょく)を補給(ほきゅう)できる ようにした。

これがスライド(転移)式(しき)特異点(とくいてん)誕生(たんじょう)秘話(ひわ)だ。」

 

 「頭(あたま)が痛(いた)くなってきた。もっと親指(おやゆび)をくれ」

「まだ半分(はんぶn)だ。」

「嘘(うそ)だろ?!」

口を塞(ふさ)ぐように親指(おやゆび)を突(つ)っ込(こ)まれた。

「この特異点(とくいてん)が存続(そんぞく)出来(でき)ているのは

結界(けっかい)で最適(さいてき)なサイズに特異点(とくいてん)を固定(こてい)して

シバで常(つね)に観測(かんそく)を続(つづ)けていているからだ。

トリスメギストスの演算(えんざん)も同様(どうよう)にな。

あとは浮上(ふじょう)した後(あと)、アンカーを地脈(ちみゃく)に刺(さ)すと

魔力(まりょく)の流(なが)れを一時的(いちじてき)に誘導(ゆうどう)できるので

聖杯(せいはい)に無理(むり)やりつなげて補充(ほじゅう)している。

それらの礼装(れいそう)とマシュの盾(たて)を聖杯(せいはい)で

組(く)み合(あ)わせたのがあのキャメロット城(じょう)。

要(よう)するに特異点(とくいてん)管理(かんり)システムだな。」

 「それでもこの溢(あふ)れるほどの

魔力供給(まりょくきょうきゅう)は説明(せつめい)できないだろう。

どうしている?」

「せっかち山のたぬきさんだな君は。

カルデアと接触(せつぞく)する度(たび)にサーヴァントを撃破(げきは)して

魔力(まりょく)を聖杯(せいはい)に溜(た)めている。

ここで流(なが)れる魔力(まりょく)は全(すべ)て

トリスメギストスで計算(けいさん)した

効率的(こうりつてき)な流(なが)れにそって

聖杯(せいはい)に還元(かんげん)されている。

もう何十(なんじゅう)の世界(せかい)、何百(なんびゃく)のサーヴァントと

戦(たたか)っているからな。

最初(さいしょ)はそうでもなかったが

今は有(あ)り余(あま)っている。」

「そんな魔力(まりょく)を使(つか)えるサーヴァントが6騎(き)もか。

いやマタ・ハリ嬢(じょう)は数(かず)に入れなくてもいいか」

「まぁそうだが、6騎(き)と考(かんが)えてくれ。

あの姿(すがた)を見ただろう

彼(かれ)はデミ・サーヴァントだ。

マシュを蘇生(そせい)させるために

盾(たて)で色々(いろいろ)やっていた

副産物(ふくさんぶつ)らしくてね。

再召喚(さいしょうかん)された時からあの姿(すがた)だ。

以来(いらい)一度(いちど)も彼(かれ)は前線(ぜんせん)に出ていないから

能力(のうりょく)までは分からない。」

「マシュの盾(たて)から得(え)た能力(のうりょく)なら

ギャラハッドのもので間違(まちが)いないだろう。

万(まん)が一(いち)他(ほか)の円卓(えんたく)だとしても

どちらにしろ全員(ぜんいん)知(し)り合(あ)いだからな・・・。

問題(もんだい)ないだろう。」

「一番(いちばん)良(い)いのは

キャメロット城(じょう)を破壊(はかい)することだ。

彼(かれ)はデミ・サーヴァントの不安定(ふあんてい)な肉体(にくたい)を

過剰(かじょう)な魔力(まりょく)で無理(むり)やり

形成(けいせい)し続(つづ)けている。

普段(ふだん)戦闘(せんとう)に参加(さんか)しないのも

魔力(まりょく)の消耗(しょうもう)を抑(おさ)えるためだろう。

供給(きょうきゅう)が消(き)えれば我々(われわれ)以上(いじょう)に能力(のうりょく)が下がり、

自壊(じかい)し始(はじ)める。」

「そうか・・・。だがどうやって?」

「ヘクトールを探(さが)せ。

霧(きり)の結界(けっかい)の外に出されて隔離(かくり)されているが、

君(きみ)のマスターと協力(きょうりょく)してなんとか合流(ごうりゅう)してほしい。

彼(かれ)の宝具(ほうぐ)を防(ふせ)ぐ手段(しゅだん)が我(われ)らにはない。

だからこそ離反(りはん)した時点(じてん)で

即刻(そっこく)結界(けっかい)の外に追(お)いやられた」

 

 瞬時(しゅんじ)の変化(へんか)に二人(ふたり)とも気(き)づいた。

ここから少(すこ)し離(はな)れた地点(ちてん)で

赤い光が見えて広がった。

離(はな)れたところで森が燃(も)えている。

 

「今(いま)のは?」

「我々(われわれ)じゃない。

あんな光を出せる者(もの)はいないからな。

まだ召喚(しょうかん)されていないサーヴァントに

シグルドが居(い)るが彼(かれ)は火の魔術(まじゅつ)を嫌悪(けんお)している。

消去法(しょうきょほう)であれが我(われ)らがマスターの能力(のうりょく)だ。」

「円卓(えんたく)で言えば

あれはガウェイン卿(きょう)の攻撃(こうげき)の様(よう)だが、

あの男(おとこ)からはガウェイン卿(きょう)の要素(ようそ)は

感(かん)じなかった。これは・・・。

やはり貴殿(きでん)の言う通(とお)り、ヘクトールとの合流(ごうりゅう)が必要(ひつよう)だな。」

「あぁ、そうしてくれ。

戦闘(せんとう)が始(はじ)まっているという事(こと)は

君(きみ)のマスターもレイシフトしてきたようだ。」

 「そういう訳(わけ)だ。

マスターと合流(ごうりゅう)する。出してくれ」

「おいおい、冗談(じょうだん )はよ(・)し(・)子(・)さ(・)ん(・)だ。

我(わ)がマスターが直接不利(ちょくせついふり)になるような事(こと)は

するはずないだろ。

情報(じょうほう)はあくまで君(きみ)らに公平(こうへい)に勝(か)つ可能性(かのうせい)を

与(あた)えるためだ。

マスターを裏切(うらぎ)っている訳(わけ)ではない。

そもそも霧(きり)の結界(けっかい)を解(と)く手段(しゅだん)が

君(きみ)らにあるかも不明(ふめい)だ。

此処(ここ)で試(ため)させてもらう。」

「ふざけるな!

こちらとてマスターの危機(きき)だ。

そんな茶番(ちゃばん)に付き合うつもりはない!」

「だが、君(きみ)はそこから抜(ぬ)け出(だ)せない。

いくら騒(さわ)いでくれてもいいが

終(お)わるまでそこに居(い)てくれ」

「そういう訳(わけ)にはいかないな・・・!」

地中(ちちゅう)に残(のこ)りの肩(かた)から上も沈(しず)めた。

ぬかるみ切(き)った地面(じめん)に更(さら)に

無毀なる湖光(アロンダイト)の湖(みずうみ)の魔力(まりょく)で

水かさを徐々(じょじょ)に増(ま)して泳(およ)げるようにした。

さっきまでずっと立(た)ち泳(およ)ぎをしていた。

「何(なに)?!」

フィン・マックールは足場(あしば)に魔力(まりょく)を固(かた)めて

立っていて気づかなかった。

「水にし(・)た(・)た(・)る(・)いい男という訳(わけ)か!」

急(いそ)いで展開(てんかい)していた魔術(まじゅつ)を地面(じめん)にたたき落(おと)すが、

一瞬(いっしゅん)隙(すき)を作(つく)れれば十分(じゅうぶん)。

地中(ちちゅう)から大回(おおまわ)りして霊体化(れいたいか)し、

フィンの後(うし)ろに浮上(ふじょう)した。

そのまま後(うし)ろから

湖(みずうみ)の魔力(まりょく)を剣撃(けんげき)に乗(の)せて飛(と)ばす。

無防備(むぼうび)な背中(せなか)に直撃(ちょくげき)するが

、霞(かすみ)のように消(き)えた。

フィンの魔術(まじゅつ)・・・・!

霞(かすみ)の右側(みぎがわ)後方(こうほう)から

霧(きり)に紛(まぎ)れて魔槍(まそう)が伸(の)びる。

カァアアアンと音が響(ひび)く。

「これを止めるとは・・・!

まいったな」

冷(ひ)や汗(あせ)をかきながらも

笑顔(えがお)を絶(た)やさなフィン。

「貴公(きこう)もなかなか食(く)わせてくれる!」

刃(やいば)を合(あ)わせれば、霧(きり)の中でも

敵(てき)の動(うご)きは把握(はあく)できる。

もう逃(に)がさない。

剣戟(けんげき)が続(つづ)き、フィンが距離(きょり)を取(と)ろうとするも、

確実(かくじつ)に捉(とら)え距離(きょり)を保(たも)つ。

お互(たが)いに魔力(まりょく)で言(い)えば

宝具(ほうぐ)を連射(れんしゃ)出来(でき)るが、

激(はげ)しい剣戟(けんげき)の中(なか)、

詠唱(えいしょう)の隙(すき)が無い。

互(たが)いに生前(せいぜん)からの剣(けん)(槍(やり))の

技術(やり)に頼(たよ)るのみ。

だが、それだけに

少(すこ)しでも集中(しゅうちゅう)を切(き)らせば

直(す)ぐに霊核(れいかく)を突(つ)かれて

やられる緊張感(きんちょうかん)が押(お)し寄(よ)せる。

 

 互(たが)いに打開(だかい)出来(でき)ぬまま、

時間が流れ、

戟(げき)が続く、

もはや先ほどの赤い光から

だいぶ時間が経(た)ってしまっていた。

この状況(じょうきょう)では

マスターの事を気(き)に掛(か)ける余地(よち)もなく

ただ、無事(ぶじ)を祈(いの)るしかない。

この思考(しこう)すらも、

敗因(はいいん)になりうる状況(じょうきょう)。

思考(しこう)を眼前(がんぜん)の敵(てき)にのみ使(つか)・・・・・。

激(はげ)しい閃光(せんこう)がした。

虹(にじ)が横(よこ)から飛(と)んできたような

眼(め)が眩(くら)む刹那(せつな)。

グランと大地(だいち)が揺(ゆ)れた。

周(まわ)りの木々(きぎ)は倒(たお)れ、

大地(だいち)の色をした湖(みずうみ)が波(なみ)を寄(よ)せる。

まさか、先(さき)ほどの脱出劇(だっしゅつげき)が

このような事になるとは。

互(たが)いに魔力(まりょく)を足場(あしば)に固(かた)め、

地(ち)のように立っていたが

大波(おおなみ)がたっては、体勢(たいせい)が崩(くず)れる。

「ぐわっ・・・!!」

フィンが先に波(なみ)にあ(・)お(・)ら(・)れ(・)沈(しず)んでいく、

私(わたし)は波(なみ)に寄(よ)せられて

大地(だいち)よりも高く上がった。

この状況(じょうきょう)では打(う)ち合(あ)えない。

しかし、

ここで身(み)を隠(かく)しても

場(ば)が混沌(こんとん)として

どちらが有利(ゆうり)になるかは

運(うん)に身(み)をゆだねることになる。

互(たが)いに相手(あいて)を見失(みうしな)う前に

決着(けっちゃく)をつけなければいけない

「爽(さわ)やかに決(き)めるとしよう!」

フィンが動(うご)いた。

魔槍(まそう)の穂先(ほさき)に魔力(まりょく)が集(あつ)まる。

水が湧(わ)き、

刃(やいば)に変(か)えて撃(う)ち出(だ)される。

「堕(お)ちたる神霊(しんれい)をも屠(ほふ)る魔(ま)の一撃(いちげき)!

その身(み)で味(あじ)わえ!」

「輝(かがや)きは水面(みなも)の如(ごと)く。

欄々(らんらん)と燃(も)え盛(さか)れ我(わ)が聖剣(せいけん)!」

足元(あしもと)の魔力(まりょく)の展開(てんかい)を増(ふ)やし、

高低差(こうていさ)を利用(りよう)して落下(らっか)の様(よう)に加速(かそく)する

「『無敗の(マク・ア)』」

「『縛鎖全断(アロンダイト)・過重湖光(オーバーロード)!!!』」

「『紫靫草(ルイン)』」

落下(らっか)と滑走(かっそう)の掛(か)け合(あ)わせの加速(かそく)に

宝具(ほうぐ)の一撃(いちげき)がすり抜(ぬ)ける。

魔槍(まそう)を抜(ぬ)けてフィンの

右肩(みぎかた)から左脇腹(ひだりわきばら)にかけて一線(いっせん)が通(とお)る。

 

 眩(まばゆ)いひかりが弾(はじ)けた。

大地(だいち)が揺(ゆ)れた。

虹(にじ)が見(み)えた。

フェルグスの宝具(ほうぐ)?!

マスターはどうなった?!

眼(め)が眩(くら)んで視線(しせん)をやっても

霧(きり)の向(む)こうが見(み)えない。

身体(からだ)が沈(しず)む。

いつの間(ま)に足を踏(ふ)み外(はず)したのか。

沼(ぬま)のような地面(じめん)に身体(からだ)が落(お)ちていく。

ランスロットが宙(ちゅう)から迫(せま)る。

もはや考える余地(よち)がない。

宝具(ほうぐ)を撃(う)つ!

魔槍(まそう)を掲(かか)げて解(と)き放(はな)つ。

が、気付(きづ)けば水面(みなも)の光(ひかり)が

私(わたし)の身体(からだ)を透(す)き通(とお)る。

湖面(こめん)が陽(ひ)を撒(ま)くように

暖(あたた)かな光(ひかり)が染(し)みわたる。

「なるほど・・・・・」

これはこたえるな・・・。

マスターとの信頼(しんらい)の差(さ)というやつか。

私(わたし)はマスターの力を信じていながら、

霧(きり)の先の状況(じょうきょう)が変(か)わるなり

マスターの身(み)を案(あん)じた。

彼はその一考(いっこう)すら捨(す)てて

この一撃(いちげき)を放(はな)った。

素晴(すば)らしい・・・。

こんなサーヴァントのマスターなら

我(わ)がマスターを任(まか)せられるかもしれない。

あぁ、マスター。

どうか貴方(あなた)の安(やす)らぎにたどり着(つ)けますように。

輝(かがや)く五体(ごたい)が湖(みずうみ)の底(そこ)へと落(お)ちていく。

 

 「お疲(つか)れ様(さま)!

ようやく第五特異点オケアノスの

攻略(こうりゃく)が完了(かんりょう)したね。」

レイシフトから戻(もど)ってきた男(おとこ)たちを

ダ・ヴィンチが迎(むか)える。

「あぁ、もう二度(にどと)と海には出ない。」

「そんなぁ!

ビーチにバカンスに行くと

152日前に約束(やくそく)しましたよ!兄(にい)さん!」

「くッs・・・。ウ゛う゛ん。」

悪(わる)い言葉(ことば)を言いそうになって咳払(せきばら)いした。

「そうだった。

あと一回だけだ・・・。」

「はい!」

満面(まんめん)の笑(え)みのマシュ。

「二人とも律儀(りちぎ)ねぇ・・・。」

疲(つか)れ切(き)った男とマシュを見て

マタ・ハリも微笑(ほほえ)む。

「まぁまぁ。

おかげで新しくヘクトールとダビデが

仲間(なかま)になってくれたんだ! 大成功(だいせいこう)だよ!」

「確(たし)かに。

ダビデ王に兜輝(かぶとかがや)くヘクトールとは大物(おおもの)だ。

改(あらた)めてよろしく頼(たの)む」

「ヘイヘイ。そう硬(かた)くならずに。

気楽(きらく)にいきましょうや」

「こちらこそよろしく頼(たの)むよマスター。

これからの旅(たび)はお任(まか)せあれ。」

二人の言葉(ことば)のあと後(うし)ろから

がっしりと肩(かた)を組(く)まれた。

フェルグスとフィンだ。

「もちろん。

俺(おれ)たちも更(さら)に活躍(かつやく)してみせよう。

何(なに)せ我(われ)らがマスターは

戦闘(せんとう)だけでなく

愛(あい)も知(し)る真(まこと)の英雄(えいゆう)!

この身(み)を預(あず)けるにふさわしいお方(かた)だ!」

「えぇ、そうね!」と

マタ・ハリが頬(ほお)にキスしてくる。

「はい!

お二人のためにも一刻(いっこく)も早い

人理(じんり)の修復(しゅうふく)を!」

距離(きょり)を取(と)ろうとするマシュの手をおさえる。

「三人だぞマシュ。

家族は常(つね)にセット扱(あつか)いだ。

一人でどっかに行くんじゃない」

「寂(さび)しいものね!」

「ふわぁ・・・!」

マタ・ハリがマシュと重(かさ)なって抱(だ)き着(つ)いてきた。

マシュの眼はいつになくチカチカと輝いて

嬉(うれ)しさで興奮(こうふん)していた。

「あぁ!マスター達(たち)のためにこれからも輝(かがや)こう!」

「おう!」「勿論(もちろん)!」「無論(むろん)!」と

ベオウルフとランスロット、

シグルドも応(こた)える。

「まったく、周(まわ)りが大英雄(だいえいゆう)ばかりで

しがない義賊(ぎぞく)はお役御免(やくごめん)だなこりゃ」

雄々(おお)しい集団(しゅうだん)のなかに小さくなるロビンフッドが

仕方(しかた)なしと、そっと呟(つぶや)いた。

「何(なに)言ってる。副官(ふくかん)だろロビン」

「ははは、マスターもキッツイ冗談(じょうだん)言いますね。」

「いや冗談(じょうだん)ではないだろう。

通信(つうしん)や念話(ねんわ)が出来(でき)ない状況(じょうきょう)では君(きみ)が伝達役(でんたつやく)だ。

戦闘面(せんとうめん)でも君(きみ)の機転(きてん)に助(たす)けられることは多(おお)い」

マスターに続(つづ)きフィンが褒(ほ)めるので

ロビンは「はいはい」とフードを被(かぶ)る。

「さぁて、君達(きみたち)!

どうせた(・)ら(・)ふ(・)く(・)飲(の)むんだろう?

この万能(ばんのう)の天才(てんさい)が手配済(てはいず)みさ!

食堂班(しょくどうはん)の職員達(しょくいんたち)が宴会(えんかい)の準備(じゅんび)して待(ま)っているよ」

おぉ!!と歓声(かんせい)が上(あ)がる。

「物資(ぶっし)の事(こと)は気(き)にするな。

なんせ今回(こんかい)は海賊(かいぞく)相手(あいて)だったからな。

持(も)てるだけ酒(さけ)と物資(ぶっし)を回収(かいしゅう)してきた!

思(おも)う存分(ぞんぶん)飲(の)めるぞ!!」

「流石(さすが)マスター」と声(こえ)が上(あ)がり口笛(くちぶえ)が響(ひび)く。

 サーヴァント達(たち)が先に扉(とびら)を出(で)ていくなか、

三人で一塊(ひとかたまり)になっている状態(じょうたい)の

男が立ち止まって

「あぁ、そうだ。

明日は報告(ほうこく)も兼(か)ねて

また四人で紅茶(こうちゃ)を飲(の)もうダ・ヴィンチ」

「お(・)う(・)とも。

すっかり恒例(こうれい)だからね!

楽(たの)しみにしてるよ」

「四人かはマルガレータが

酔(よ)いつぶれてなきゃだけど」

「もう家族はセットなんじゃないの!」

「君(きみ)は深酒(ふかざけ)すると起(お)きないからな」

ふくれるマタ・ハリに

マシュが笑顔(えがお)で応(こた)える。

「その時(とき)は私(わたし)が起(お)こしますよ」

「ふふっ、ありがとう!

お願(ねが)いするわ!」

 あぁ、思(おも)えばたった数ヶ月(すうかげつ)の期間(きかん)に

40年近い期間(きかん)で

身(み)に付(つ)けた魔術師(まじゅつし)としての

考(かんが)え方(かた)が無(な)くなってしまったな。

だが、

こんな日々(ひび)がずっと続(つづ)けばいい。

 「あぁ、私(わたし)も同感(どうかん)だマスター」

意識(いしき)が遠(とお)のいて

マスターの記憶(きおく)を見ていたフィン・マックール。

このまま地(ち)の底(そこ)へと

落(お)ちて消(き)えていく。

 

 ぐ(・)お(・)ん(・)と

水の音(おと)がして

上へと徐々(じょじょ)に

後方(こうほう)に進(すす)んでいく。

「ぶはっ・・・・!」

水面(みなも)へ上(あ)がり、

地面(じめん)に引(ひ)き上(あ)げられた。

「おい!大丈夫(だいじょうぶ)か」

「はは、大丈夫(だいじょうぶ)ではないさ、

君(きみ)に霊核(れいかく)を破壊(はかい)されたからな。

だが、助(たす)かった。

引(ひ)き上(あ)げられなければ忘(わす)れていた。

貴殿(きでん)に渡(わた)すものがある。」

そう言(い)い、フィンはベルトに付(つ)けていた

革(かわ)の袋(ふくろ)をランスロットに渡(わた)す。

「なんだ?

私(わたし)は貴殿(きでん)ほどの者(もの)が

あのまま水の底(そこ)では忍(しの)びないと思(おも)っただけだ。

たとえ、そのあと直(す)ぐに

座(ざ)に還(かえ)るとしてもな。」

「流石(さすが)は伊達男(だておとこ)だな。

よくそんな事(こと)を自然(しぜん)にやってのける・・・。

今(いま)渡(わた)したのは、

私(わたし)の宝具(ほうぐ)で浄(きよ)めた水だ・・・。

解毒(げどく)効果(こうか)がある・・・。

ロビンフッドが居(い)るからな・・・。

きっと役(やく)に立(た)つだろう・・・・。」

もう口も動(うご)かせなくなってきた。

いよいよ消(き)える時(とき)か。

「頼(たの)む、我(わ)らがマスターを・・・・。

救(すく)って・・・くれ・・・。」

もう声(こえ)が出(で)なくて

はっきりと口に出来(でき)ない。

諦(あきら)めたように消(き)える

その時、

「あぁ、しかと受(う)け取(と)った。」

動(うご)かない口で笑(わら)った。

フィンマックールが光となり、

空(そら)に還(かえ)る。

広(ひろ)がる空は青く、

霧(きり)も消(き)えていた。

 

 目が覚(さ)めるとそこは、

澄(すみ)み切(き)った空と

視界(しかい)の限(かぎ)り広(ひろ)がり続(つづ)ける森。

そして

「キャメロット城(じょう)。」

私(わたし)は管制室(かんせいしつ)でシグルドさんと

敵性(てきせい)サーヴァントフェルグス・マック・ロイの

戦闘(せんとう)をモニターしていて、

そこから・・・。

何(なに)も覚(おぼ)えていない。

何故(なぜ)私(わたし)はレイシフトしているのか。

見渡(みわた)したがそこには自分(じぶん)一人。

「先輩(せんぱい)を探(さが)さないと」

使命感(しめいかん)の様(よう)に立(た)ち上(あ)がり、

足を動(うご)かす。

みると、終局特異点(しゅうきょくとくいてん)以降(いこう)

ほとんどする事(こと)が出来(でき)なかった。

ギャラハッドさんの力をその身(み)に宿(やど)している。

身体(からだ)にはどこからか

膨大(ぼうだい)な魔力(まりょく)が心地(ここち)よく流(なが)れてくる。

「これは・・・。」

おそらくこの魔力量(まりょくりょう)で

一時的(いちじてき)に能力(のうりょく)が発現(はっき)出来(でき)るように

なっているだけだろう。

 ゴンッ。

森の奥(おく)から鈍(にぶ)い金属音(きんぞくおん)が鳴(な)り響(ひび)く。

「先輩(せんぱい)!」

少女(しょうじょ)は森の中(なか)へ駆(か)けて行(い)った。

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