愛讐越界特異点カムラン   作:Pon_De_hutago

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6章 経験の差がものをいう

 「フィン・マックールに続き、ベオウルフも消失(しょうしつ)

 

これで3人もやられちゃったわね・・・・。」

 

マタ・ハリが占拠(せんきょ)しているカルデアの管制室(かんせいしつ)

 

黒い(よろい)の男が通信(つうしん)()()っている。

 

「ベオウルフなら間違(まちが)いないと、戦力(せんりょく)保持(ほじ)しすぎてしまった。

 

俺のミスだ。」

 

「いやいや、あの長髪(ちょうはつ)のサーヴァント!反則(はんそく)でしょ!!

 

シグルドの(ヤツ)(なに)やってんの?!」

 

「カルデアの情報(じょうほう)によるとあれはニーベルンゲンの歌の

 

ジークフリートらしいわよ。」

 

「あぁ、なるほど。シグルドそのものを触媒(しょくばい)にして

 

自分と同一視(どういつし)される英霊(えいれい)召喚(しょうかん)したのか。

 

それで(かれ)と同じ眼鏡(メガネ)をかけているのかな。」

 

「なんにしても不死身(ふじみ)英雄(えいゆう)さんは反則(はんそく)でしょ・・・。

 

どうします?」

 

能力(のうりょく)詳細(しょうさい)はカルデアから確認(かくにん)できた。

 

ダビデに作戦(さくせん)(つた)える。(さいわ)(てき)(かた)まってくれてこれ以上(いじょう)(よこ)やりが

 

(はい)らないから(かれ)(たたか)っているうちにマスターとマシュが意味消失(いみしょうしつ)()えるだろう。」

 

「それが・・・、あのマスターやたらとレイシフト適性(てきせい)(たか)くて、

 

やっと数値(すうち)(みだ)れてきたと(おも)ったらマシュと合流(ごうりゅう)して

 

安定域(あんていいき)数値(すうち)(もど)っちゃったのよね・・・・。」

 

へとっとマタ・ハリが()()むと黒い(よろい)の男がフォローを()れる。

 

「やれやれ。異世界(いせかい)まで来て(マシュ)彼氏(かれし)を見ることになるとは思わなかった。

 

これは(てき)マスターの実績(じっせき)(みと)めてダビデが()けた(とき)作戦(さくせん)展開(てんかい)しないとな。」

 

「そんな作戦(さくせん)使(つか)う日は永久(えいきゅう)にこないと思ってたんですけどねぇ。

 

ようやく丁度(ちょうど)いい世界(せかい)に来たと思ったらこれですか。」

 

ロビンが不平(ふへい)()らすのも仕方(しかた)ない。

 

抑止力(よくしりょく)(はたら)いたものおかしい。編纂事象(へんさんじしょう)には()れずに、まともな剪定事象(せんていじしょう)

 

選出(せんしゅつ)して出現(しゅつげん)しているはずが、()る世界を間違(まちが)えたかもしれん。

 

まぁ今更(いまさら)中止(ちゅうし)する()はないがな。」

 

「わかってます。そんじゃあ俺は次の作戦(さくせん)準備(じゅんび)(うつ)らせていただきますっと。」

 

「あぁ、よろしく。マタ・ハリも()(つづ)(たの)む。」

 

「まかせて!」

 

3人の会話(かいわ)()わりそれぞれの役割(やくわり)(もど)る。

 

 

 

 

 「やっと合流(ごうりゅう)出来(でき)たね。ランスロット。」

 

「えぇ、お()たせしました。

 

マスター、ご無事(ぶじ)(なに)より。」

 

ベオウルフとの戦闘(せんとう)()わり、また頭痛(ずつう)がしたがそれも()んで

 

現状報告会(げんじょうほうこくかい)(ひら)く。

 

「マシュも無事(ぶじ)そうだけど、いったいどうなってるの?」

 

「すみません。それが、私も()づいたときにはこの特異点(とくいてん)にいたので・・・。

 

戦線復帰(せんせんふっき)はこの特異点(とくいてん)魔力(まりょく)何故(なぜ)か私にも(おく)られているのでそのおかげかと。」

 

「これも(てき)マスターの計画(けいかく)手順(てじゅん)にふくまれているのか?」

 

ランスロットの懸念(けねん)にヘクトールが(まよ)わず(かえ)す。

 

「いや、マシュをレイシフトさせたのはそうだが、

 

俺たちを召喚(しょうかん)したマスターとしては、さっさとマシュを意味消失(いみしょうしつ)させて

 

自分の世界のマシュ(じょう)ちゃんを()(かえ)らせたいはずだからな。それはない。

 

ジークフリートみたいにマスターの術式(じゅつしき)では()こらいはずのなんらかのイレギュラーだ。」

 

案外(あんがい)、俺と(おな)じく抑止力(よくしりょく)(はたら)いているのかもしれない。確証(かくしょう)はないがな。」

 

ジークフリートの発言(はつげん)(たい)(こた)えの()ない長考(ちょうこう)(はい)りそうな気配(けはい)()

 

ヘクトールが()()るように(はな)(はじ)める。

 

「まぁなんにせよ、有利(ゆうり)(はたら)いているうちに(はや)(しろ)()めた(ほう)がいい。

 

むこうからしたら、サーヴァントが3()()とされるだけでも想定外(そうていがい)だからな。

 

正直(しょうじき)、俺も(おどろ)いてる。」

 

「みんなが丁度(ちょうど)よく()けつけてくれたからだよ。

 

いままでの特異点(とくいてん)もだいたいこんな(かん)じなんだ」

 

「いやいや、さっきのレオニダス一世の召喚(しょうかん)にはオジサン(たす)けられたよ。

 

ありがとう。」

 

「そうとも、(われ)らのマスターは実績(じっせき)もあり、優秀(ゆうしゅう)だ。」

 

 ほほえましい談笑(だんしょう)から本題(ほんだい)にはいる。

 

 「こちらの戦力(せんりょく)現在(げんざい)、ヘクトール、ランスロット、ジークフリート。

 

それとマシュと自分のシャドウサーヴァント。

 

ヘクトールはキャメロット城攻撃用(じょうこうげきよう)宝具(ほうぐ)()っておかないといけないけど

 

そのかわり(みんな)はここの魔力(まりょく)使(つか)放題(ほうだい)ってことだよね。」

 

「あぁ間違(まちが)いない。」

 

「そして敵側(てきがわ)(のこ)りはマスターとロビンフッド、ダビデ。

 

カルデアを占領(せんきょ)してるマタ・ハリだけだね。」

 

「それも間違(まちが)いなし。ただカルデアのことは心配(しんぱい)しなくていい、

 

職員(しょくいん)(きみ)とマシュ以外(いがい)洗脳(せんのう)されているだけで危害(きがい)(くわ)えられない。

 

設備(せつび)(おな)じように計画(けいかく)必要(ひつよう)だからな。

 

サーヴァント(たち)電力(でんりょく)()められて一時的(いちじてき)実体化(じったいか)できなくなっているだろうが

 

特異点(とくいてん)修復(しゅうふく)したあとに()れば全部(ぜんぶ)(なお)せる。

 

問題(もんだい)なのはダビデとあっちのマスターだ。

 

ダビデは(とら)()正直(しょうじき)このメンバーでも(あや)うい。

 

(さら)にあっちのマスターは能力(のうりょく)()からない 。

 

とんでもない火力(かりょく)対軍宝具(たいぐんほうぐ)でマシュ(じょう)ちゃん以外(いがい)()(はら)ってくるかもしれないし

 

固有結界(こゆうけっかい)分断(ぶんだん)してくるかもしれない。まったくの未知数(みちすう)だ。

 

対策(たいさく)のしようがない」

 

(すご)魔術師(まじゅつし)だったんだよね?

 

デミ・サーヴァントの能力(のうりょく)のほかに魔術(まじゅつ)(なに)かやってくるんじゃ?」

 

「いや、(かれ)はもう魔術回路(まじゅつかいろ)刻印(こくいん)ごと()()れて魔術(まじゅつ)使(つか)えない。

 

デミ・サーヴァントの後遺症(こういしょう)だろう。(かれ)はもうサーヴァントとしての(がわ)だけで

 

無理(むり)やり存在(そんざい)をとどめている。

 

この特異点(とくいてん)術式(じゅつしき)もあらかじめ聖杯(せいはい)(ほか)礼装(れいそう)にプログラムしているものだ。

 

聖杯(せいはい)()って(ねん)じるだけで機能(きのう)維持(いじ)させている。」

 

「それで私を召喚(しょうかん)した(さい)魔術(まじゅつ)使(つか)ってこなかったのか

 

しかし(あわ)れなものだ。もとは大層(たいそう)魔術師(まじゅつし)だとフィン・マックールから()いていたが

 

刻印(こくいん)ごと()()れているなら次世代(じせだい)自身(じしん)研究(けんきゅう)(たく)すことも出来(でき)ないな・・・。

 

魔術師(まじゅつし)にとっては()ぬよりも苦痛(くつう)なはずだが・・・。」

 

「あぁ、文字通(もじどお)りマスターは(すべ)てを()けてこの特異点(とくいてん)(つく)ったからな。

 

マシュが()(かえ)ってその()の世界で平穏(へいおん)()らしていければ()いんだよ。」

 

「そんな!そこまでして()(かえ)らせたい人と再会(さいかい)()たしても

 

それではこの特異点(とくいてん)から出ることも出来(でき)ないではないですか!」

 

(たし)かに、マスターはこの特異点(とくいてん)魔力(まりょく)()くなれば自壊(じかい)して()ぬ。

 

そんなことは本人(ほんにん)最初(さいしょ)から分かったうえでの計画(けいかく)だ。

 

(たたか)いにおいても、(かれ)は自分もこの特異点(とくいてん)必要(ひつよう)であれば(まよ)わず、

 

作戦(さくせん)のために消費(しょうひ)するだろう。

 

だからこそ、(さき)(しろ)確実(かくじつ)破壊(はかい)して、自壊(じかい)(うなが)すのが一番(いちばん)だ。

 

そうすればもう()()ちようがないからな。」

 

「それでいこう。自分たちが(はし)って突入出来(とつにゅうでき)距離(きょり)(はい)ったら、

 

ヘクトールが宝具(ほうぐ)でキャメロット(じょう)破壊(はかい)

 

爆発(ばくはつ)(おさ)まり次第(しだい)突入(とつにゅう)して(てき)マスターを無力化(むこうか)する。」

 

異論(いろん)ない。マスターに(まか)せよう。」

 

「あぁ、だが出来(でき)れば(てき)マスターとは(すこ)(はなし)をさせてほしい。

 

(なに)(かれ)妄執(もうしゅう)解消(かいしょう)させるような方法(ほうほう)があるかもしれない。」

 

(めずら)しいですね。ランスロット(きょう)がそのような提案(ていあん)をするのは。」

 

(なに)、これまでに二人から(かれ)(たす)けるように(たの)まれているからな。

 

無下(むげ)には出来(でき)んだけだよ。」

 

「うん。(すく)える人は全部(ぜんぶ)(すく)う。

 

それはいつもと()わらないよ。」

 

「ありがとう御座(ござ)います。マスター。」

 

(はなし)がまとまり一行(いっこう)はキャメロット(じょう)()かう。

 

 

 「そろそろ目標地点(もくひょうちてん)だ。ヘクトール、準備(じゅんび)を。」

 

「あぁ()かっている。」

 

森の中を黙々(もくもく)(すす)んでいく。

 

すると足元(あしもと)(くさ)()められたロープがある。

 

(あや)うく()みそうになった。

 

ロープを(また)いで(すす)むと()()んだ足が(すべ)(また)(ひら)いて

 

(こし)(しず)んでいく。

 

「おっと、(あぶ)ない(あぶ)ない。

 

ロビンフッドの野郎(やろう)。チャッカリ俺の宝具(ほうぐ)射程(しゃてい)(かんが)えて

 

(わな)仕掛(しか)けてやがるな。」

 

ヘクトールに両脇(りょうわき)()たれて()()げられた。

 

(たす)かったよ、ありがとう。」

 

ほっとした瞬間(しゅんかん)(よこ)木々(きぎ)がギィイイイと音を立てて(たお)(はじ)めた。

 

(おく)から(たお)(はじ)めて徐々(じょじょ)(ちか)づいていく。

 

右側(みぎがわ)だけ(たお)れていくのをみると(だれ)かが()して(たお)していってるのか?!

 

足場のロープも警戒(けいかい)しつつ、樹木(じゅもく)(たお)れるのも()けなければいけない。

 

(たお)れた木々(きぎ)(かさ)なり()()がない!

 

ジークフリートが大剣(たいけん)(たお)れてきた木を()()めている。

 

思わず、後ろに下がろうとするとランスロットが引き()めた。

 

「マスター、(そば)(しげ)みにも毒草(どくそう)()えられているようです。

 

気を付けて。」

 

「あっぶな!」

 

よく見れば(たお)れた樹木(じゅもく)(はも)一部茶色(いちぶちゃいろ)変色(へんしょく)して(くさ)っている。

 

そこにも(どく)()られているのだろう。

 

「これは・・・!とても進めそうにないな。

 

(てき)恰好(かっこう)(まと)になるが俺の宝具(ほうぐ)で森ごと切り(ひら)いた方がよさそうだ」

 

ジークフリートが樹木(じゅもく)をゆっくり足元(あしもと)()いて()う。

 

「あぁ、どうせ位置は(つね)に見られてる。

 

気にせずやってくれ。」

 

ヘクトールも(どく)(さわ)ってしまったようで、片目(かため)をつぶって『仕切(しきり)(なお)し』スキルを使(つか)っている。

 

「それでは、『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』」

 

青い光が大きく広がり、大通りほどの一本道が出来(でき)る。

 

キャメロット(じょう)(かべ)が見えるが、今の宝具(ほうぐ)ではビクともしていない。

 

「これでもうヘクトールの宝具(ほうぐ)()()めるな。」

 

「いや、それは早い。

 

マスター、(てき)()ている。すでにダメージを()った。」

 

見るとジークフリートの菩提樹(ぼだいじゅ)()の位置に矢が()()さっている。

 

「いつの()に・・・!

 

ロビンフッドか!」

 

「いや?(かれ)仕掛(しか)けていた木を()(たお)した後は(かえ)ったよ?

 

矢は僕が()った。アーチャーだからね」

 

()()くと一行(いっこう)の後ろにダビデが立っていた。

 

(すで)に手に弓はなく、いつもの(じょう)と石に()()えている。

 

 「(アレフ)、『五つの石(ハメシュ・アヴァニム)』」

 

ヘクトールにまっすぐ石が飛んだと思った時には、

 

石は命中(めいちゅう)していた。

 

ヘクトールの(やり)が自分の立ち位置が悪く、

 

身体(からだ)邪魔(じゃま)をしていて迎撃(げいげき)のために()るえず、

 

それをみたランスロットが()(てい)してかばったようだ。

 

ランスロットが気絶(きぜつ)してその場に(たお)れこむ。

 

警告(けいこく)は今までの戦闘(せんとう)十分(じゅうぶん)だろう。本気(ほんき)で行くよ。」

 

 

 (あぶ)なかった。ランスロットは気絶(きぜつ)したけど、

 

これがヘクトールだったら宝具(ほうぐ)()っていかれて

 

それだけでおしまいだった・・・・。

 

ダビデは道の真ん中に堂々(どうどう)と立っている。

 

そのせいで、接近戦(せっきんせん)しか出来(でき)ない自分達は

 

左右(さゆう)から(なな)めに距離(きょり)を取って接近戦(せっきんせん)をするしかない。

 

実質的(じっしつてき)に、折角(せっかく)あけた道幅(みちはば)を半分程度(ていど)しか使えない。

 

「どんどんいくよ。」

 

ダビデが石を()(つづ)けてくる。

 

気絶(きぜつ)したランスロットから『無毀たる湖光(アロンダイト)』を(うば)うために

 

ヘクトールを後方(こうほう)()がらせようとしている。

 

まだ身体(からだ)反応(はんおう)()()かずに動き(はじ)められない。

 

カーーーンと複数(ふくすう)の石を大盾(おおたて)(ふせ)ぐマシュ。

 

いつものように(あいだ)(はい)ってくれた。

 

 そのまま直進(ちょくしん)しダビデにしかけるマシュ。

 

大盾(おおたて)(なぐ)りかかるが(じょう)で流される。

 

大盾(おおたて)を流した(じょう)の動きでそのままマシュに(なぐ)りかかる。

 

(あわ)てて、大盾(おおたて)(した)()げて(こし)()とすマシュ。

 

間一髪(かんいっぱつ)(ふせ)いだ。

 

いつの()にか、ヘクトールがマシュの後ろに走り、飛び上がった。

 

そのまま(やり)()げおろす。

 

ダビデの後ろは当然(とうぜん)、『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』の影響(えいきょう)がないため

 

ただの森だ。木々(きぎ)(しげ)って()けられない。

 

ダビデの頭上(ずじょう)(やり)()る。

 

「よっこらせ。」

 

「?!えっ?!」

 

瞬間(しゅんかん)マシュが(かま)えている状態(じょうたい)大盾(おおたて)をつかんで引くように()()げる。

 

(たて)(えだ)部分(ぶぶん)(やり)軌道(きどう)を変えて後ろの木々(きぎ)の方へ(おく)るダビデ。

 

マシュごと()()がった大盾(おおたて)今度(こんど)は前に(たお)してヘクトールに()()てる。

 

(たお)れた二人(ふたり)下敷(したじ)きに大盾(おおたて)()んで、『無毀たる湖光(アロンダイト)』を(ひろ)うダビデ。

 

(おそ)るべき『神の加護(スキル)』による怪力(かいりき)

 

(やり)()()さった木が爆発(ばくはつ)し、後ろの木々(きぎ)(たお)れ、さらに大盾(おおたて)下敷(したじ)きにされる。

 

(またた)()に、マシュもヘクトールも(ふう)じられた。

 

 すかさず(あいだ)(はい)ってくれるジークフリート。

 

対面(たいめん)するダビデとジークフリート。

 

(うし)ろにマシュとヘクトールが()るから宝具(ほうぐ)()てない。

 

「君がジークフリートか。

 

もっと人間らしい人物を想像(そうぞう)していたよ。

 

だってほら、(つの)があって、(つばさ)があってまるで

 

(りゅう)じゃないか。」

 

言われてみれば、いつの()にかジークフリートの身体(からだ)には

 

大きな(つの)と、背中(せなか)には小さな(つばさ)()いていた。()まで()えている。

 

さっきまではなかった。

 

「マスター、警戒(けいかい)してくれ

 

今の一連(いちれん)(うご)きを見ただろう。(かれ)油断(ゆだん)できない。

 

さきほどの仲間(なかま)(かえ)ったという発言(はつげん)もブラフかもしれない。」

 

「いや、(ぼく)余計(よけい)(うそ)はつかない。

 

信用(しんよう)()くしては、交渉(こうしょう)上手(うま)くいかなくなるからね。

 

だから今からいう事もホントだ。

 

僕はアーチャーだが(けん)出来(でき)る。(すご)出来(でき)る。

 

背中(せなか)射貫(いぬ)かれた君なんかよりよっぽどね」

 

「くっ・・・・!」

 

剣戟(けんげき)(はじ)まった。

 

 

 ジークフリートの力強(ちからづよ)太刀筋(たちすじ)が、ダビデのしなやかな

 

(さば)きに(かえ)される。

 

ジークフリートも(さば)かれては軌道(きどう)()えて()りつけ、

 

(さば)かれては()りつけを()(かえ)す。

 

このまま時間を(かせ)げば、特異点(とくいてん)修復(しゅうふく)しに来たマスターとマシュが

 

意味消失(いみしょうしつ)して計画(けいかく)成功(せいこう)

 

効率的(こうりつてき)だ。

 

あれだけ精巧(せいこう)作戦(さくせん)突破(とっぱ)されたのは(おどろ)いたが、

 

不確定(ふかくてい)要素(ようそ)()くなれば、僕らが()けるはずがない。

 

相手のマスターが()げていく。

 

流石(さすが)にジークフリートの剣撃(けんげき)をいなしながら()うことは出来(でき)ない。

 

まぁ、(べつ)()げても(なに)出来(でき)ないから問題(もんだい)ないか。

 

最後(さいご)のひとときぐらい、自由に散歩(さんぽ)でもしていてくれ。

 

 横目(よこめ)で見ていると相手のマスターが思いもよらない行動(こうどう)にでた。

 

は?非効率的(ひこうりつてき)だろ?

 

相手のマスターは()げたのではなく木の下敷(したじ)きになっている

 

二人(ふたり)を助けるために()()っていく。

 

 君が今やるべきは、それよりもジークフリートの援護(えんご)じゃないのか?

 

彼がやられたらどうするつもりだ?

 

思考(しこう)がグラついた拍子(ひょうし)にジークフリートが()めてくる。

 

おおっと(あぶ)ない。

 

あんなの見ている(ひま)がない。

 

ジークフリートとの()()いに意識(いしき)(もど)していく。

 

 

 ジークフリートがダビデを引き()けてくれてる(あいだ)

 

マシュとヘクトールを移動(いどう)させないと!

 

(かれ)宝具(ほうぐ)()てないと時間(じかん)()()わない!

 

(いそ)いで二人(ふたり)()()り、『応急手当(フローリペア)』を起動(きどう)する。

 

まず自分とマシュで木を()さえている(あいだ)に、

 

ヘクトールが霊体化(れいたいか)して出てくる。

 

そのあとヘクトールも()わさり、梃子(てこ)原理(げんり)大盾(おおたて)

 

(なな)めに()()げる。

 

隙間(すきま)出来(でき)たらマシュが()()大盾(おおたて)霊体化(れいたいか)して()()す。

 

これで自由になった。

 

 十分退避(じゅうぶんてったい)できることを確認(かくにん)して合図(あいず)を出す。

 

「OK!ジークフリート(たの)んだ!」

 

(はげ)しい()()いを()(ひろ)げる二人(ふたり)方向(ほうこう)大声(おおごえ)(さけ)ぶ。

 

一瞬(いっしゅん)ダビデがこちらに視線(しせん)()けた。

 

「あぁ!行くぞ、マスター!」

 

返事(へんじ)(かえ)ってきたのでヘクトールがダビデに(やり)()げる。

 

(するど)威力(いりょく)(やり)がダビデの後頭部(こうとうぶ)(せま)る。

 

ジークフリートを()しのけ、(かえ)(かたな)(やり)()()める。

 

無毀なる湖光(アロンダイト)』から光を(はな)って(おお)きく()(かえ)すダビデ。

 

そこに

 

邪悪(じゃあく)なる(りゅう)失墜(しっつい)し、世界は今、落陽(らくよう)(いた)る!!『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!!!」

 

「くっ・・・・・・!!」

 

青い大流(たいりゅう)()(はな)たれる。

 

 

 青白い光(エーテル)()()せてくる。

 

こんなの()びれば一溜(ひとたま)りもない。

 

仕方(しかた)ない。

 

「『縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』!!!」

 

ランスロットが仲間(なかま)だった事もあるんだ。

 

()()()()()()()宝具(ほうぐ)があれば真似出来(まねでき)る。

 

青い大流を湖光で()()いていく。

 

ホントは『五つの石(ハメシュ・アヴァニム)以外(いがい)宝具(ほうぐ)使(つか)うつもりは()かった。

 

僕らの勝利条件(しょうりじょうけん)(てき)殲滅(せんめつ)する事じゃない。

 

時間を(かせ)ぐことだ。

 

いくら潤沢(じゅんたく)魔力(まりょく)があると言っても、

 

むやみに消耗(しょうもう)するべきじゃない。

 

この光が()次第(しだい)、ジークフリートにはご退場願(たいじょうねが)うけどね。

 

光が()んで、そのままジークフリートに()()むダビデ。

 

邪悪(じゃあく)なる(りゅう)は、失墜(しっつい)し・・・」

 

?!

 

宝具(ほうぐ)連射速度(れんしゃそくど)異常(いじょう)だ・・・!

 

魔力(まりょく)があると()っても、真名開放(しんめいかいほう)にはタイムラグがあるものだろう・・・!

 

「『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!!」

 

(さら)なる光が()(はな)たれる。

 

付き合ってられない。

 

光の大流を避けるように最小限の接触で、立ち位置をズラしていき回り込む。

 

動けば相手のマスター達にも当たるんだ。

 

そう簡単に追撃出来まい。

 

後方の相手マスターの方向へ目をやるとマシュが大盾を構えていている。

 

自分たちの宝具を自分たちの宝具で受け止めるのか?!

 

非効率的だ!!

 

あまりにも無駄な行為だ!!

 

 「『いまは遥か理想の城』!!」

 

光の大流が横薙ぎに迫ってくる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

無毀なる湖光に魔力を込めて光の大流に押し当てる。

 

それを軸に飛び上がり、宙に舞い幻想大剣・天魔失墜の上を飛び越える。

 

そのまま、空中で魔力固めて思い切り蹴る。

 

ジークフリートの頭上に無毀なる湖光を振り下ろす。

 

「邪悪なる竜は、失墜し世界は今、落陽に至る!!『幻想大剣・天魔失墜』!!!」

 

 反則だろ!!

 

今、宝具の光が途切れたところだ!!

 

たった今、宝具を撃ち終えて、そのまま真名開放をするなんてあり得るのか?!

 

竜の炉心を持っていたジグルドでもここまでじゃなかったぞ!!

 

どんな宝具だ!!

 

 頭上の僕を目掛けて、地対空に追撃してくる。

 

仕方ない・・・・!

 

「’『縛鎖全断・過重湖光』!!」

 

振り下ろす剣にそのまま、湖の魔力を纏わせて大流を斬り開く。

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

二人の怒号が重なる。

 

ようやく地に足が着き、二つの聖剣の刃が交じり合う。

 

このまま、確実に首を取る!!

 

みると眼鏡越しにみるジークフリートの眼は白くむき出し、もうこちらが見えていない。

 

しかし、

 

大剣の柄を廻し、青い光が漏れ出す。

 

「黄金の夢から醒め、揺籃から・・・・」

 

いい加減にしろ・・・・!

 

剣を滑らせて、斬るのではなく腹で思い切り、ジークフリートを撃ち飛ばす。

 

「うがぁっ・・・・・・!!!」

 

打ち上げられたジークフリートが弧を描いて飛んでいく。

 

無毀なる湖光を投げ捨て、本来の自分の武器に戻す。

 

「へー、ダレット、ギメル、ベート、アレフ、全部当てる!!『五つの石』!!!」

 

五着する投石。

 

気絶したまま、受け身も取れずに、落下したジークフリートから

 

宝具を奪う。

 

 「ふぅ・・・・、まったく明らかにコストとリターンが釣り合ってないよね?

 

勘弁してほしいよ。ホント・・・・・。」

 

汗を拭うそぶりをして後方に目をやる。

 

相手のマスター達を見ると彼らは僕ではなく、もっと後ろを向いていた。

 

斜め上に視線を上げている。

 

「ん?」

 

 頭上から影が降る。

 

バカな?この特異点で天候が変わることなんてない。

 

振り向くと、

 

ジークフリートだったものが、

 

膨れ上がり、青い炎を上げて

 

肥大化し、歪になっていく。

 

 

 ジークフリートとダビデの戦いを見ていた。

 

ジークフリートがダビデの宝具を喰らい、

 

次は自分達だと、覚悟したその時、

 

ジークフリートが胸の模様から膨らんでいき、

 

青い炎が見え始める。

 

あれは、ジグルドと同じ炎。

 

 彼のかけていた眼鏡が砕けた。

 

そのままジークフリートはみるみるうちに巨大化し、

 

姿を変えて、黒ずみ、ヒトから離れていった。

 

 「あれは・・・ファヴニール・・・・・!!!」

 

彼は邪竜になっていた。

 

 

 悪竜現象。

 

この場の誰もが、知らずのうちにその現象に立ち会っていた。

 

シグルドにより召喚されたジークフリートは、

 

彼から叡智の結晶と、この特異点の情報、特異点の霊脈とつながるパス、

 

そして本来、サーヴァントジークフリートには存在しない

 

竜の炉心を受け継いでいた。

 

 菩提樹の葉の痕にダメージを受け、度重なる宝具の連続使用。

 

絶えず送り込まれる膨大な魔力、

 

度重なる負荷を受けた竜の炉心が本人も予想だにしない事態を巻き起こした。

 

抑止の守護者として召喚され、本来のサーヴァントの制限から

 

大きく開放されたのも要因だろう。

 

 彼は邪竜となった。

 

もはや彼の意思はなく、

 

ただ、最後まで一心に思っていたダビデを撃退する

 

目的だけを果たすだけの存在へと。

 

 

 次から次へと・・・。

 

ファヴニールだと?!

 

相手マスターが確かにそう言った。

 

 ジークフリートやシグルドが生前戦ったという、邪竜。

 

それがどういう訳か僕の前に現れて、

 

どうやら今から倒さないといけないみたいだ。

 

 こんな時は鼻歌でも歌って、落ち着いて

 

まずは混乱を収めることだ。

 

戦いとは冷静でないといけない。

 

♪~♪~~。

 

よし、落ち着いた。

 

 頭上を見上げる。

 

飛び上がった邪竜が今にも襲い掛かりそうにこちらを見つめている。

 

「さて、ベオウルフは巨人を退治した後、

 

晩年には火竜とも戦ったそうじゃない・・・。

 

なら僕も、竜退治と行きますか・・・!!」

 

彼自身の聖剣を掲げて彼だったものへ向ける。

 

 

 「『幻想大剣・天魔失墜』!!」

 

邪竜へ向けて宝具を放つ。

 

柄を回してみると魔力が溢れてきて驚いた。

 

こういうカラクリだった訳か。

 

 光の大流が邪竜へ向かうが、邪竜の咆哮で散らされる。

 

「まぁ、そう上手くいかないか」

 

旋回して突進してくる邪竜に一太刀。

 

爪と爪の間を斬り裂いて血を浴びる。

 

返す刀で片翼に聖剣の魔力を掃射する。

 

体勢を崩し、ロビンフッドが罠を仕掛けていたエリアに滑り込む邪竜。

 

毒が効くかは知らないけど使えるものは使わないとね。

 

そのまま邪竜に更に聖剣による掃射をする。

 

だが、これで終わるような相手なら英雄譚は生まれない。

 

宝具を仕掛ける。

 

 契約の箱はこの戦いには使わないと、

 

此処へ召喚された時から決めていた。

 

これは僕の個人的な思いたからね。

 

僕が剣を授けた英雄が力を授けた彼らには僕自身も責任を取らないといけない。

 

だから、祈るよ。

 

彼らの望みが天まで届くようにと。

 

「『燔祭の火焔』」

 

 香炉が姿を現す、やがて辺りは香の香りが漂い、紫の煙がすべてを覆う。

 

そこに一筋の光が舞い降り、放たれた神の矢は邪悪なるものを焼き尽くす。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

 

邪竜は唸りをあげる。

 

相手マスター達も囲んで燃える。

 

対抗し、邪竜とは距離をおいてマシュが宝具を展開している。

 

「これだけでも十分だろうけど、念には念をいれておくとするよ。

 

『幻想大剣・天魔失墜』」

 

炎の祭壇に更に、青い閃光を解き放つ。

 

邪竜は再び叫び声を上げ、消滅していく。

 

これでイレギュラーは消えた。

 

あとはこの炎に耐え続けて疲弊した彼らが意味消失するのを待つだけだ。

 

 もうこの場に僕が居る必要はない。

 

今しがた振るった竜殺しの聖剣を放って森に姿を消していく。

 

 

 森に入り、城に戻っていく。

 

罠の無い道を辿り、少しずつ、自信のマスターの元へ向かっていく。

 

 「お疲れさん。一戦終えてすぐで悪いが、マスターから作戦変更の指示だ。」

 

森からロビンフッドが現れる。

 

「構わないさ、なにせ、計画はもう完了したも同然。

 

僕らの役割もそろそろ終わりだ。最後までマスターのために働くさ。」

 

「あぁ、マスターのためならどのような事でもする」

 

ロビンフッドの口調が変だ。何かおかしい。

 

「『縛鎖全断・過重湖光』!!」

 

さっきまで話していたロビンの顔が崩れ始め

 

湖の聖剣と紫の短髪と瞳が見え始める。

 

「しまっ・・・・た・・・・・!」

 

『己が栄光の為でなく』

 

ランスロットの聖剣以外の宝具・・・・・!

 

油断した・・・・!

 

 だが最早全てが遅い。

 

身体を通過した聖剣が霊核を二つに分け、

 

自重でそのまま滑り落ちていく。

 

「貴殿らのような真の戦士に対しこのような決着は非常に心苦しいが、

 

これも貴殿らのマスターを救うという約定を果たすためだ。

 

恨んでもらって構わない。」

 

もう取り返しがつかない。

 

自分ではもうやりようがない。

 

それならば、僕も見込みの薄い賭けに出てみるか・・・。

 

 「なら・・・・。僕からも契約だ。

 

必ず、僕らのマスターを救ってみてくれ・・・・。

 

いいか・・・い、これは交渉の余地のな・・・・・・い・・・・・、

 

取引・・・・・・・」

 

言い果たす前に身体が崩れて消えていく。

 

これで終わりか。と是非もなしと消えていく王の言葉を

 

騎士は聞き洩らさなかった。

 

「あぁ、報酬は後程支払う。」

 

黄金に消える魂に騎士は誓いをたてる。

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