「フィン・マックールに続き、ベオウルフも消失。
これで3人もやられちゃったわね・・・・。」
マタ・ハリが占拠しているカルデアの管制室と
黒い鎧の男が通信を取り合っている。
「ベオウルフなら間違いないと、戦力を保持しすぎてしまった。
俺のミスだ。」
「いやいや、あの長髪のサーヴァント!反則でしょ!!
シグルドの奴、何やってんの?!」
「カルデアの情報によるとあれはニーベルンゲンの歌の
ジークフリートらしいわよ。」
「あぁ、なるほど。シグルドそのものを触媒にして
自分と同一視される英霊を召喚したのか。
それで彼と同じ眼鏡をかけているのかな。」
「なんにしても不死身の英雄さんは反則でしょ・・・。
どうします?」
「能力の詳細はカルデアから確認できた。
ダビデに作戦を伝える。幸い敵が固まってくれてこれ以上横やりが
入らないから彼と戦っているうちにマスターとマシュが意味消失で消えるだろう。」
「それが・・・、あのマスターやたらとレイシフト適性が高くて、
やっと数値が乱れてきたと思ったらマシュと合流して
安定域に数値が戻っちゃったのよね・・・・。」
へとっとマタ・ハリが落ち込むと黒い鎧の男がフォローを入れる。
「やれやれ。異世界まで来て妹の彼氏を見ることになるとは思わなかった。
これは敵マスターの実績を認めてダビデが負けた時の作戦も展開しないとな。」
「そんな作戦を使う日は永久にこないと思ってたんですけどねぇ。
ようやく丁度いい世界に来たと思ったらこれですか。」
ロビンが不平を漏らすのも仕方ない。
「抑止力が働いたものおかしい。編纂事象には触れずに、まともな剪定事象を
選出して出現しているはずが、出る世界を間違えたかもしれん。
まぁ今更中止する気はないがな。」
「わかってます。そんじゃあ俺は次の作戦の準備に移らせていただきますっと。」
「あぁ、よろしく。マタ・ハリも引き続き頼む。」
「まかせて!」
3人の会話が終わりそれぞれの役割に戻る。
「やっと合流出来たね。ランスロット。」
「えぇ、お待たせしました。
マスター、ご無事で何より。」
ベオウルフとの戦闘が終わり、また頭痛がしたがそれも済んで
現状報告会を開く。
「マシュも無事そうだけど、いったいどうなってるの?」
「すみません。それが、私も気づいたときにはこの特異点にいたので・・・。
戦線復帰はこの特異点の魔力が何故か私にも送られているのでそのおかげかと。」
「これも敵マスターの計画の手順にふくまれているのか?」
ランスロットの懸念にヘクトールが迷わず返す。
「いや、マシュをレイシフトさせたのはそうだが、
俺たちを召喚したマスターとしては、さっさとマシュを意味消失させて
自分の世界のマシュ嬢ちゃんを生き返らせたいはずだからな。それはない。
ジークフリートみたいにマスターの術式では起こらいはずのなんらかのイレギュラーだ。」
「案外、俺と同じく抑止力が働いているのかもしれない。確証はないがな。」
ジークフリートの発言に対し答えの出ない長考に入りそうな気配を見て
ヘクトールが打ち切るように話し始める。
「まぁなんにせよ、有利に働いているうちに早く城に攻めた方がいい。
むこうからしたら、サーヴァントが3騎も落とされるだけでも想定外だからな。
正直、俺も驚いてる。」
「みんなが丁度よく駆けつけてくれたからだよ。
いままでの特異点もだいたいこんな感じなんだ」
「いやいや、さっきのレオニダス一世の召喚にはオジサン助けられたよ。
ありがとう。」
「そうとも、我らのマスターは実績もあり、優秀だ。」
ほほえましい談笑から本題にはいる。
「こちらの戦力は現在、ヘクトール、ランスロット、ジークフリート。
それとマシュと自分のシャドウサーヴァント。
ヘクトールはキャメロット城攻撃用に宝具を取っておかないといけないけど
そのかわり皆はここの魔力で使い放題ってことだよね。」
「あぁ間違いない。」
「そして敵側の残りはマスターとロビンフッド、ダビデ。
カルデアを占領してるマタ・ハリだけだね。」
「それも間違いなし。ただカルデアのことは心配しなくていい、
職員は君とマシュ以外は洗脳されているだけで危害は加えられない。
設備と同じように計画に必要だからな。
サーヴァント達も電力を止められて一時的に実体化できなくなっているだろうが
特異点を修復したあとに帰れば全部直せる。
問題なのはダビデとあっちのマスターだ。
ダビデは虎の子で正直このメンバーでも危うい。
更にあっちのマスターは能力も分からない 。
とんでもない火力の対軍宝具でマシュ嬢ちゃん以外薙ぎ払ってくるかもしれないし
固有結界で分断してくるかもしれない。まったくの未知数だ。
対策のしようがない」
「凄い魔術師だったんだよね?
デミ・サーヴァントの能力のほかに魔術で何かやってくるんじゃ?」
「いや、彼はもう魔術回路が刻印ごと焼き切れて魔術が使えない。
デミ・サーヴァントの後遺症だろう。彼はもうサーヴァントとしての側だけで
無理やり存在をとどめている。
この特異点の術式もあらかじめ聖杯と他の礼装にプログラムしているものだ。
聖杯を持って念じるだけで機能を維持させている。」
「それで私を召喚した際に魔術を使ってこなかったのか
しかし哀れなものだ。もとは大層な魔術師だとフィン・マックールから聞いていたが
刻印ごと焼き切れているなら次世代に自身の研究を託すことも出来ないな・・・。
魔術師にとっては死ぬよりも苦痛なはずだが・・・。」
「あぁ、文字通りマスターは全てを賭けてこの特異点を作ったからな。
マシュが生き返ってその後の世界で平穏に暮らしていければ良いんだよ。」
「そんな!そこまでして生き返らせたい人と再会を果たしても
それではこの特異点から出ることも出来ないではないですか!」
「確かに、マスターはこの特異点の魔力が無くなれば自壊して死ぬ。
そんなことは本人は最初から分かったうえでの計画だ。
戦いにおいても、彼は自分もこの特異点も必要であれば迷わず、
作戦のために消費するだろう。
だからこそ、先に城を確実に破壊して、自壊を促すのが一番だ。
そうすればもう手の打ちようがないからな。」
「それでいこう。自分たちが走って突入出来る距離に入ったら、
ヘクトールが宝具でキャメロット城を破壊。
爆発が収まり次第、突入して敵マスターを無力化する。」
「異論ない。マスターに任せよう。」
「あぁ、だが出来れば敵マスターとは少し話をさせてほしい。
何か彼の妄執を解消させるような方法があるかもしれない。」
「珍しいですね。ランスロット卿がそのような提案をするのは。」
「何、これまでに二人から彼を助けるように頼まれているからな。
無下には出来んだけだよ。」
「うん。救える人は全部救う。
それはいつもと変わらないよ。」
「ありがとう御座います。マスター。」
話がまとまり一行はキャメロット城へ向かう。
「そろそろ目標地点だ。ヘクトール、準備を。」
「あぁ分かっている。」
森の中を黙々と進んでいく。
すると足元に草で染められたロープがある。
危うく踏みそうになった。
ロープを跨いで進むと踏み込んだ足が滑り股を開いて
腰が沈んでいく。
「おっと、危ない危ない。
ロビンフッドの野郎。チャッカリ俺の宝具の射程を考えて
罠を仕掛けてやがるな。」
ヘクトールに両脇を持たれて持ち上げられた。
「助かったよ、ありがとう。」
ほっとした瞬間、横の木々がギィイイイと音を立てて倒れ始めた。
奥から倒れ始めて徐々に近づいていく。
右側だけ倒れていくのをみると誰かが押して倒していってるのか?!
足場のロープも警戒しつつ、樹木が倒れるのも避けなければいけない。
倒れた木々が重なり逃げ場がない!
ジークフリートが大剣で倒れてきた木を受け止めている。
思わず、後ろに下がろうとするとランスロットが引き留めた。
「マスター、傍の茂みにも毒草が植えられているようです。
気を付けて。」
「あっぶな!」
よく見れば倒れた樹木の葉も一部茶色く変色して腐っている。
そこにも毒が塗られているのだろう。
「これは・・・!とても進めそうにないな。
敵の恰好の的になるが俺の宝具で森ごと切り開いた方がよさそうだ」
ジークフリートが樹木をゆっくり足元に置いて言う。
「あぁ、どうせ位置は常に見られてる。
気にせずやってくれ。」
ヘクトールも毒を触ってしまったようで、片目をつぶって『仕切り直し』スキルを使っている。
「それでは、『幻想大剣・天魔失墜』」
青い光が大きく広がり、大通りほどの一本道が出来る。
キャメロット城の壁が見えるが、今の宝具ではビクともしていない。
「これでもうヘクトールの宝具が打ち込めるな。」
「いや、それは早い。
マスター、敵が来ている。すでにダメージを負った。」
見るとジークフリートの菩提樹の葉の位置に矢が突き刺さっている。
「いつの間に・・・!
ロビンフッドか!」
「いや?彼は仕掛けていた木を押し倒した後は帰ったよ?
矢は僕が撃った。アーチャーだからね」
振り向くと一行の後ろにダビデが立っていた。
既に手に弓はなく、いつもの杖と石に持ち替えている。
「1、『五つの石』」
ヘクトールにまっすぐ石が飛んだと思った時には、
石は命中していた。
ヘクトールの槍が自分の立ち位置が悪く、
身体が邪魔をしていて迎撃のために振るえず、
それをみたランスロットが身を挺してかばったようだ。
ランスロットが気絶してその場に倒れこむ。
「警告は今までの戦闘で十分だろう。本気で行くよ。」
危なかった。ランスロットは気絶したけど、
これがヘクトールだったら宝具を持っていかれて
それだけでおしまいだった・・・・。
ダビデは道の真ん中に堂々と立っている。
そのせいで、接近戦しか出来ない自分達は
左右から斜めに距離を取って接近戦をするしかない。
実質的に、折角あけた道幅を半分程度しか使えない。
「どんどんいくよ。」
ダビデが石を投げ続けてくる。
気絶したランスロットから『無毀たる湖光』を奪うために
ヘクトールを後方に下がらせようとしている。
まだ身体の反応が追い付かずに動き始められない。
カーーーンと複数の石を大盾で防ぐマシュ。
いつものように間に入ってくれた。
そのまま直進しダビデにしかけるマシュ。
大盾で殴りかかるが杖で流される。
大盾を流した杖の動きでそのままマシュに殴りかかる。
慌てて、大盾を下に下げて腰を落とすマシュ。
間一髪防いだ。
いつの間にか、ヘクトールがマシュの後ろに走り、飛び上がった。
そのまま槍を投げおろす。
ダビデの後ろは当然、『幻想大剣・天魔失墜』の影響がないため
ただの森だ。木々が茂って避けられない。
ダビデの頭上に槍が降る。
「よっこらせ。」
「?!えっ?!」
瞬間マシュが構えている状態の大盾をつかんで引くように持ち上げる。
盾の枝の部分で槍の軌道を変えて後ろの木々の方へ送るダビデ。
マシュごと持ち上がった大盾を今度は前に倒してヘクトールに押し当てる。
倒れた二人を下敷きに大盾を踏んで、『無毀たる湖光』を拾うダビデ。
恐るべき『神の加護』による怪力。
槍が突き刺さった木が爆発し、後ろの木々が倒れ、さらに大盾が下敷きにされる。
瞬く間に、マシュもヘクトールも封じられた。
すかさず間に入ってくれるジークフリート。
対面するダビデとジークフリート。
後ろにマシュとヘクトールが居るから宝具が撃てない。
「君がジークフリートか。
もっと人間らしい人物を想像していたよ。
だってほら、角があって、翼があってまるで
竜じゃないか。」
言われてみれば、いつの間にかジークフリートの身体には
大きな角と、背中には小さな翼が付いていた。尾まで生えている。
さっきまではなかった。
「マスター、警戒してくれ
今の一連の動きを見ただろう。彼は油断できない。
さきほどの仲間が帰ったという発言もブラフかもしれない。」
「いや、僕は余計な嘘はつかない。
信用を無くしては、交渉が上手くいかなくなるからね。
だから今からいう事もホントだ。
僕はアーチャーだが剣も出来る。凄く出来る。
背中を射貫かれた君なんかよりよっぽどね」
「くっ・・・・!」
剣戟が始まった。
ジークフリートの力強い太刀筋が、ダビデのしなやかな
捌きに返される。
ジークフリートも捌かれては軌道を変えて斬りつけ、
捌かれては斬りつけを繰り返す。
このまま時間を稼げば、特異点を修復しに来たマスターとマシュが
意味消失して計画は成功。
効率的だ。
あれだけ精巧な作戦が突破されたのは驚いたが、
不確定な要素が無くなれば、僕らが負けるはずがない。
相手のマスターが逃げていく。
流石にジークフリートの剣撃をいなしながら追うことは出来ない。
まぁ、別に逃げても何も出来ないから問題ないか。
最後のひとときぐらい、自由に散歩でもしていてくれ。
横目で見ていると相手のマスターが思いもよらない行動にでた。
は?非効率的だろ?
相手のマスターは逃げたのではなく木の下敷きになっている
二人を助けるために駆け寄っていく。
君が今やるべきは、それよりもジークフリートの援護じゃないのか?
彼がやられたらどうするつもりだ?
思考がグラついた拍子にジークフリートが攻めてくる。
おおっと危ない。
あんなの見ている暇がない。
ジークフリートとの撃ち合いに意識を戻していく。
ジークフリートがダビデを引き受けてくれてる間に
マシュとヘクトールを移動させないと!
彼が宝具を撃てないと時間が間に合わない!
急いで二人に駆け寄り、『応急手当』を起動する。
まず自分とマシュで木を押さえている間に、
ヘクトールが霊体化して出てくる。
そのあとヘクトールも合わさり、梃子の原理で大盾を
斜めに持ち上げる。
隙間が出来たらマシュが這い出て大盾を霊体化して取り出す。
これで自由になった。
十分退避できることを確認して合図を出す。
「OK!ジークフリート頼んだ!」
激しい撃ち合いを繰り広げる二人の方向へ大声で叫ぶ。
一瞬ダビデがこちらに視線を向けた。
「あぁ!行くぞ、マスター!」
返事が返ってきたのでヘクトールがダビデに槍を投げる。
鋭い威力の槍がダビデの後頭部に迫る。
ジークフリートを押しのけ、返す刀で槍を受け止める。
『無毀なる湖光』から光を放って大きく打ち返すダビデ。
そこに
「邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る!!『幻想大剣・天魔失墜』!!!!」
「くっ・・・・・・!!」
青い大流が解き放たれる。
青白い光が押し寄せてくる。
こんなの浴びれば一溜りもない。
仕方ない。
「『縛鎖全断・過重湖光』!!!」
ランスロットが仲間だった事もあるんだ。
真名開放ぐらい宝具があれば真似出来る。
青い大流を湖光で斬り裂いていく。
ホントは『五つの石』以外の宝具を使うつもりは無かった。
僕らの勝利条件は敵を殲滅する事じゃない。
時間を稼ぐことだ。
いくら潤沢に魔力があると言っても、
むやみに消耗するべきじゃない。
この光が止み次第、ジークフリートにはご退場願うけどね。
光が止んで、そのままジークフリートに突っ込むダビデ。
「邪悪なる竜は、失墜し・・・」
?!
宝具の連射速度が異常だ・・・!
魔力があると言っても、真名開放にはタイムラグがあるものだろう・・・!
「『幻想大剣・天魔失墜』!!!」
更なる光が解き放たれる。
付き合ってられない。
光の大流を避けるように最小限の接触で、立ち位置をズラしていき回り込む。
動けば相手のマスター達にも当たるんだ。
そう簡単に追撃出来まい。
後方の相手マスターの方向へ目をやるとマシュが大盾を構えていている。
自分たちの宝具を自分たちの宝具で受け止めるのか?!
非効率的だ!!
あまりにも無駄な行為だ!!
「『いまは遥か理想の城』!!」
光の大流が横薙ぎに迫ってくる。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
無毀なる湖光に魔力を込めて光の大流に押し当てる。
それを軸に飛び上がり、宙に舞い幻想大剣・天魔失墜の上を飛び越える。
そのまま、空中で魔力固めて思い切り蹴る。
ジークフリートの頭上に無毀なる湖光を振り下ろす。
「邪悪なる竜は、失墜し世界は今、落陽に至る!!『幻想大剣・天魔失墜』!!!」
反則だろ!!
今、宝具の光が途切れたところだ!!
たった今、宝具を撃ち終えて、そのまま真名開放をするなんてあり得るのか?!
竜の炉心を持っていたジグルドでもここまでじゃなかったぞ!!
どんな宝具だ!!
頭上の僕を目掛けて、地対空に追撃してくる。
仕方ない・・・・!
「’『縛鎖全断・過重湖光』!!」
振り下ろす剣にそのまま、湖の魔力を纏わせて大流を斬り開く。
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
二人の怒号が重なる。
ようやく地に足が着き、二つの聖剣の刃が交じり合う。
このまま、確実に首を取る!!
みると眼鏡越しにみるジークフリートの眼は白くむき出し、もうこちらが見えていない。
しかし、
大剣の柄を廻し、青い光が漏れ出す。
「黄金の夢から醒め、揺籃から・・・・」
いい加減にしろ・・・・!
剣を滑らせて、斬るのではなく腹で思い切り、ジークフリートを撃ち飛ばす。
「うがぁっ・・・・・・!!!」
打ち上げられたジークフリートが弧を描いて飛んでいく。
無毀なる湖光を投げ捨て、本来の自分の武器に戻す。
「へー、ダレット、ギメル、ベート、アレフ、全部当てる!!『五つの石』!!!」
五着する投石。
気絶したまま、受け身も取れずに、落下したジークフリートから
宝具を奪う。
「ふぅ・・・・、まったく明らかにコストとリターンが釣り合ってないよね?
勘弁してほしいよ。ホント・・・・・。」
汗を拭うそぶりをして後方に目をやる。
相手のマスター達を見ると彼らは僕ではなく、もっと後ろを向いていた。
斜め上に視線を上げている。
「ん?」
頭上から影が降る。
バカな?この特異点で天候が変わることなんてない。
振り向くと、
ジークフリートだったものが、
膨れ上がり、青い炎を上げて
肥大化し、歪になっていく。
ジークフリートとダビデの戦いを見ていた。
ジークフリートがダビデの宝具を喰らい、
次は自分達だと、覚悟したその時、
ジークフリートが胸の模様から膨らんでいき、
青い炎が見え始める。
あれは、ジグルドと同じ炎。
彼のかけていた眼鏡が砕けた。
そのままジークフリートはみるみるうちに巨大化し、
姿を変えて、黒ずみ、ヒトから離れていった。
「あれは・・・ファヴニール・・・・・!!!」
彼は邪竜になっていた。
悪竜現象。
この場の誰もが、知らずのうちにその現象に立ち会っていた。
シグルドにより召喚されたジークフリートは、
彼から叡智の結晶と、この特異点の情報、特異点の霊脈とつながるパス、
そして本来、サーヴァントジークフリートには存在しない
竜の炉心を受け継いでいた。
菩提樹の葉の痕にダメージを受け、度重なる宝具の連続使用。
絶えず送り込まれる膨大な魔力、
度重なる負荷を受けた竜の炉心が本人も予想だにしない事態を巻き起こした。
抑止の守護者として召喚され、本来のサーヴァントの制限から
大きく開放されたのも要因だろう。
彼は邪竜となった。
もはや彼の意思はなく、
ただ、最後まで一心に思っていたダビデを撃退する
目的だけを果たすだけの存在へと。
次から次へと・・・。
ファヴニールだと?!
相手マスターが確かにそう言った。
ジークフリートやシグルドが生前戦ったという、邪竜。
それがどういう訳か僕の前に現れて、
どうやら今から倒さないといけないみたいだ。
こんな時は鼻歌でも歌って、落ち着いて
まずは混乱を収めることだ。
戦いとは冷静でないといけない。
♪~♪~~。
よし、落ち着いた。
頭上を見上げる。
飛び上がった邪竜が今にも襲い掛かりそうにこちらを見つめている。
「さて、ベオウルフは巨人を退治した後、
晩年には火竜とも戦ったそうじゃない・・・。
なら僕も、竜退治と行きますか・・・!!」
彼自身の聖剣を掲げて彼だったものへ向ける。
「『幻想大剣・天魔失墜』!!」
邪竜へ向けて宝具を放つ。
柄を回してみると魔力が溢れてきて驚いた。
こういうカラクリだった訳か。
光の大流が邪竜へ向かうが、邪竜の咆哮で散らされる。
「まぁ、そう上手くいかないか」
旋回して突進してくる邪竜に一太刀。
爪と爪の間を斬り裂いて血を浴びる。
返す刀で片翼に聖剣の魔力を掃射する。
体勢を崩し、ロビンフッドが罠を仕掛けていたエリアに滑り込む邪竜。
毒が効くかは知らないけど使えるものは使わないとね。
そのまま邪竜に更に聖剣による掃射をする。
だが、これで終わるような相手なら英雄譚は生まれない。
宝具を仕掛ける。
契約の箱はこの戦いには使わないと、
此処へ召喚された時から決めていた。
これは僕の個人的な思いたからね。
僕が剣を授けた英雄が力を授けた彼らには僕自身も責任を取らないといけない。
だから、祈るよ。
彼らの望みが天まで届くようにと。
「『燔祭の火焔』」
香炉が姿を現す、やがて辺りは香の香りが漂い、紫の煙がすべてを覆う。
そこに一筋の光が舞い降り、放たれた神の矢は邪悪なるものを焼き尽くす。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
邪竜は唸りをあげる。
相手マスター達も囲んで燃える。
対抗し、邪竜とは距離をおいてマシュが宝具を展開している。
「これだけでも十分だろうけど、念には念をいれておくとするよ。
『幻想大剣・天魔失墜』」
炎の祭壇に更に、青い閃光を解き放つ。
邪竜は再び叫び声を上げ、消滅していく。
これでイレギュラーは消えた。
あとはこの炎に耐え続けて疲弊した彼らが意味消失するのを待つだけだ。
もうこの場に僕が居る必要はない。
今しがた振るった竜殺しの聖剣を放って森に姿を消していく。
森に入り、城に戻っていく。
罠の無い道を辿り、少しずつ、自信のマスターの元へ向かっていく。
「お疲れさん。一戦終えてすぐで悪いが、マスターから作戦変更の指示だ。」
森からロビンフッドが現れる。
「構わないさ、なにせ、計画はもう完了したも同然。
僕らの役割もそろそろ終わりだ。最後までマスターのために働くさ。」
「あぁ、マスターのためならどのような事でもする」
ロビンフッドの口調が変だ。何かおかしい。
「『縛鎖全断・過重湖光』!!」
さっきまで話していたロビンの顔が崩れ始め
湖の聖剣と紫の短髪と瞳が見え始める。
「しまっ・・・・た・・・・・!」
『己が栄光の為でなく』
ランスロットの聖剣以外の宝具・・・・・!
油断した・・・・!
だが最早全てが遅い。
身体を通過した聖剣が霊核を二つに分け、
自重でそのまま滑り落ちていく。
「貴殿らのような真の戦士に対しこのような決着は非常に心苦しいが、
これも貴殿らのマスターを救うという約定を果たすためだ。
恨んでもらって構わない。」
もう取り返しがつかない。
自分ではもうやりようがない。
それならば、僕も見込みの薄い賭けに出てみるか・・・。
「なら・・・・。僕からも契約だ。
必ず、僕らのマスターを救ってみてくれ・・・・。
いいか・・・い、これは交渉の余地のな・・・・・・い・・・・・、
取引・・・・・・・」
言い果たす前に身体が崩れて消えていく。
これで終わりか。と是非もなしと消えていく王の言葉を
騎士は聞き洩らさなかった。
「あぁ、報酬は後程支払う。」
黄金に消える魂に騎士は誓いをたてる。