今になってこの特異点での
頭痛の理由が分かった。
倒されたサーヴァント達の記憶が
魔力となって大気に流れて
それを回収する聖杯への流れで収束されたものが
意味消失へ向かう自分の周りを通り、
その影響を受けていた。
いままでは断片的なものだったが、
魔力を回収する聖杯が吹き飛んだ影響でなのか、
この場に広がって
上空に霧散したため
ロビンフッドの記憶は全て見えた。
マシュ達も同じものを見ていたようだ。
「彼らの記憶か。
おおよそはフィン・マックールから聞いていたが
実際に目の当たりにすると堪えるな・・・。
レディ?
顔色が優れないが大丈夫かマシュ?」
「頭上の彼は・・・・・。
そんな簡単なことにも気づけないのですか・・・・?
こんなことって・・・・」
「マシュ・・・・?」
心配になって自分からも声をかける。
すると、
「マスター、魔力の供給を全力でお願いします。
頭上の彼は私が対処します」
「え・・・?うん。」
宝具発動の補助のために礼装を起動させる。
「もっと!!全力で!!
ムッか腹が立ちました!!
彼に全力で宝具をブチかまします!!!」
「は、はい!!」
見たこともないような表情で
振り返ったマシュに慌てて
令呪を起動する。
「令呪を持って命ずる!
マシュ、全力で彼を止めてくれ!」
「了解しました!
一発で彼の鼻っ柱をへし折ります!!」
さっきから様子がおかしいマシュは
落下するキャメロット城よりも恐ろしい。
「これが全ての疵、
全ての怨恨を癒す我らが故郷!
顕現せよ!!
これこそが
『いまは遥か理想の城』です!!!!
お兄さん!!」
頭上を見上げて大盾を構えるマシュ。
その瞳はぶれることなく
頭上の城をロックする。
地上にもう一つの白亜の城が顕現し、
頭上の城を待ち受ける。
ロビンも倒された。
多くの特異点、
多くの世界のカルデアを撃退してきた。
今までサーヴァントが撃退される事など
一度としてなかった。
最終特異点で戦略の前提を崩された事はあったが、
展開した作戦が攻略されることなど
初めての経験だ。
ほぼ全てのサーヴァントが撃退された事実を
宙で痛感する男。
だが、
このまま押しつぶせば全てが終わる。
マシュだけは生命を停止させないように
細心の注意を払わなければいけないが
ただそれだけだ。
ようやく、
計画が完遂し妹は生き返る。
男の頭にはそれだけだ。
いや男には脳と言えるものも今はない。
魔術回路同様に、
人の身には過ぎた膨大な魔力が流れ続ける
男の身体は最早生物の体裁を整えていない。
男の身体は最早、石だ。
脳も手足も心臓も既に形があるだけで
意味をなしていない。
ただサーヴァントとしての特性で
自ら組んだ計画だけは忘れすことがなく、
目的を果たすまでは
手も足も動き続ける。
心臓の代わりに魔力の激流が
全身を循環させている。
男のクラスはシールダーでもなく、
セイバーでもなく、
アヴェンジャーだった。
彼は、ベイリンのデミ・サーヴァントでもなく、
ギャラハッドのデミ・サーヴァントのでもなく、
マシュ・キリエライトのデミ・サーヴァントだった。
彼がマシュを降霊させようと
大盾を使って術式を組んでいる試作段階の時、
偶発的に、デミ・サーヴァント化に成功してしまった。
マシュの魂だけでも回収出来たかと安堵したが、
事件が起こった。
マシュの霊基を再現された際に、
ある宝具が紛れ込んでいた。
それは、かの騎士たちが手にしたという、
湖の乙女よりもたらされた、
愛する者を殺す聖剣。
ベイリンが湖の妖精を殺害し、
ギャラハッドが呪いに打ち払った剣は
召喚のアクシデントで
連鎖的に召喚されていた。
男は既にこの計画を試案していた。
そこに聖剣の呪いが降りかかる。
ギャラハッドではない彼は
呪いが振り払えなかった。
男は呪われた。
だが、
男と聖剣の呪いは目的が合致していた。
男は妹だけ死んだ世界を呪っていた。
トリスメギストスの演算の結果、
自分の世界は剪定事象である事を知っていた。
この世界に妹を殺すだけの価値はない。
この程度の世界を消費して
必要な世界に行けるのであれば
躊躇いは無かった。
愛する者を救うために、
愛する者を殺せと
復讐の炎に身を焼かれた。
男の霊基は変化した。
マシュ・キリエライトのデミ・サーヴァントは死に
呪われた聖剣の具現が
その名を冠した。
だがその聖剣に名はない。
男の名は失われ、
男を表すものはクラスだけになった。
大盾を持ち、聖剣を持ち、
円卓の騎士の鎧を着る
歪んだ霊基の復讐者。
それがこの特異点を作り出した男の正体。
特異点の名はカムラン。
数多の英傑が倒れ、屍山血河の果てに、
死と再生が訪れる輝かしい伝説の終着点。
今、その特異点で
白亜と白亜がぶつかろうとしている。
マシュの宝具展開時のセリフは
男の耳にも届いていた。
眼前に見える白亜の城が真性だと、
自分に対して兄と呼ぶ少女の姿が見えていた。
今までには無かったが
何故か眼下の彼女は妹と重なった。
後ろに立つ藤丸立香は自分の様に感じた。
愛おしさが溢れてくる。
形だけの瞳から
涙のような物が出た様に感じる。
腰元の聖剣が力を増す。
相手が愛おしければ愛おしいほど
魔力が溢れて、
黒い靄に包まれる。
靄は城全体に繋がり、
白亜の城から、
不気味なほど黒く、
薄青い光が漏れ出す
孤独の城へと姿を変える。
既に宝具を展開していた彼が、
名もない真名を開放する。
「誉れは厄災に覆る。
最果てにある。
彼方にある。
もはや誰にもたどり着けない理想の国。
されどそこにある孤高の城。
現れ建つは
『■■■・■■・■■■■■■』!!!!!!!」
黒い靄の城が加速し、
白亜の城と衝突する。
それぞれの精神が依り代となった城が重なり、
互いの意思が交差する。
彼女の精神性に触れれば触れるほど
靄が増し、白亜の城がきしみ始める。
「うっ・・・・!うううう!!!
高濃度の悪性情報が押し寄せてくる・・・・!
こんなもの・・・・!
こんなものおおおおおおおお!!!」
雄叫びを上げて持ちこたえようとする。
別々の経験をしてきたが、
同じマシュ・キリエライトとして
彼の暴挙を許すわけにはいかない。
「彼女は・・・・・!私は!!
こんなことは望んでいません!
多くの人を救い、
人理を守って栄光を手にした貴方が
立派に生き続けてくれることを
望んでいたのに!
彼女が思い描いた結末が手に入ったのに!!
それを全て台無しにして
一番して欲しくないことをするなんて!!
こんなに腹立たしい事は他にありません!!
なんてことをしているんですか!!」
押し寄せる悪性情報に抗い
必死に耐える。
「厄災の席は貴方が着くべき席ではありません!!
そこをどいて下さい!!!
お兄さん!!!」
宝具を支えながら、
遮二無二思いの丈を吐き出し続ける。
「ふふふ、ふふふふふふふふふふ!
こんなに兄さんに怒鳴りつけれられる私なんて
想像もしなかった。」
耳元で声がする。
「すみません。何か可笑しくなってしまって・・・。」
「え?」
「そうですよね。こんな風に兄さんに気持ちを伝えられれば、
私が自分から立ち向かえれば兄さんもあんなに過保護にならずに
済んだのかもしれないですね。
・・・貴方は、
困難を自分で乗り越えられた私なんですね!」
「ええ、でも私だけの力じゃありません。
先輩が、大切な人が居たから怖くて震えそうな状況でも
胸を張って構えることが出来るんです!」
話が聞こえていたのか、
ちょうど先輩が私の肩に手を置いて支えてくれた。
「・・・・!凄い世界ですね!
こんな私がいるなんて! 感激です!!」
「はい!素晴らしい世界です!
だから私は、
貴方のお兄さんに一発喰らわせて、
私達の世界を守り通します!!」
「はい。お願いします
頑固者だから殴らないと分からないってダ・ヴィンチ司令官も
よく言ってましたから」
声の主は何かを決意して
笑ったような気がした。
白亜の城が光を増して、
軋みが無くなっていく。
彼女の宝具は彼女の精神の現れ、
少しの憂いもなくなり、
彼女の思いは、
男の狂気を振り払う。
徐々に頭上の城から靄が消え始める。
彼女の城が接した場所からは
靄が振り払われていった。
白亜を取り戻した城は、
そこから少しずつひび割れる。
ひびが広がり、
全体に行きわたる。
半分ほどになった靄が
城の形をとどめられず、
大元の白亜の城が瓦解する。
暗い城の中枢で光が見える。
辺りは全て靄で覆われ
球場の揺り籠に入る男に
彼女の思いが届いた。
男にもこの世界のマシュや藤丸立香が経験した
人理修復の記憶が
送り込まれてきた。
終局特異点の出来事。
特異点からの帰りに藤丸立香に手を伸ばすマシュ。
二人でカルデアの外に出て
美しい空を見上げるシーン。
その時の心情が
男の胸に入り込んできた。
それは愛おしさとは
別の感情を感じた。
彼らの世界の、
彼らの関係性の美しさが
この胸に溢れていく。
あたたかい。
疾うの昔に触覚など失われたが
そう感じた。
彼らの思いに
男の呪いが浄化された。
黒い靄の繭に白い光が入り、
大きく広がったひびから
繭が砕け、
辺りに城はなく
眼下の城に男は落ちていく。
大盾を構えて衝突に備える男だが、
白亜の城は男を通過させ
中へ落とした。
城は落下する呪いの残骸のみを
弾いて聳え立つ。
男が着地した時には、
瓦礫は全て弾かれて、
白亜の城も解除された。
異例のマシュと対面して
暴走した思考が晴れたが、
まだこの霊基は変わらない。
愛する者を殺す聖剣の化身となった彼は
歩みを止めずに
眼前の少女に盾を振るう。
当たり前だ。
どれだけ素晴らしい世界、
素晴らしい経験をした
マシュを見たとしても
自分の妹の命とは代えられない。
もう少しだ!
もう少しで終わるんだ!
もう彼らは数刻も持たない、
先ほどの悪性情報の塊は打ち払われたが
対処するまでのダメージで十分、
意味消失を促せる。
このまま更に聖剣で斬りつけて
彼らを消し去る。
振るった盾はマシュの大盾が
横薙ぎに弾き返す。
はじき出された事により
正面が大きく空いた。
その隙にマシュは自身の大盾を霊体化させ、
男の顔面に左のストレートを喰らわせる。
「ふぐっ・・・・・!!!」
反射的に顔に手を当てようとする男に
止まることなく畳み掛ける。
男は近代的な格闘技の動きと
膨大な魔力量で他の英霊を圧倒するが、
現代に生き、
多くの英霊から教えを受けてきたマシュが
同じように膨大な魔力の供給を受けていたら
戦闘におけるアドバンテージは
ほとんどない。
更には、
フェイントもなにもなく
ただただトップスピードで
渾身の拳を叩きこんでくる。
連打の果てに倒れこむのを装い、
足を滑らせて
彼女の左ひざを蹴って折ろうとするが、
右ひざで左脇を蹴り返されて、
いなされ頭を打った。
「クソっ!
だから戦闘訓練はフェルグス達とやれっていつも言ってるんだ!!」
形だけの頭が脳震盪を起こしたのか、
以前マシュとトレーニングした時の
言葉が口からこぼれた。
ひとしきり満足したような顔をしている彼女は盾を構えて、
こちらの様子を伺っている。
殴り合いなんて付き合う訳がない。
弾き飛ばされた盾を霊体化させ
手元に戻す。
マシュはまだ様子を伺っている。
こちらから打ち込む気もない。
マシュが対面しているが
ランスロットや藤丸立香は
後ろで見守っていて
戦闘に入ってくる気配がない。
にらみ合ってせいぜい時間を稼がせてもらう。
こちらの思考を読んだのか
彼女から動き出す。
大盾を投げてこちらに飛ばしてきた。
知ってるよ。
こっちにぶつけて
戻ってきたのを投げ返して
徐々に近づくんだろ?
相手が投げた軌道を変えられるから
やめろって
昔教えたんだ・・・。
当然来るべき動きを待つように
盾を構える。
すると、
投げた大盾がこちらにぶつかった瞬間を目掛けて
大盾に向かってマシュが回し蹴りをして
着弾の威力を上げた。
「なに?!」
大盾の枝が突き刺さり、
持っていた盾が砕けた。
盾にはこの特異点のために搭載していた
礼装や聖杯が入っている。
まずい・・・!
突き刺さる威力に
流れを合わせて身を傾け始める。
折れた盾がバラバラにならないように
両手で抑えて
マシュの身体と反対方向に放り投げる。
倒れこむマシュと男。
投げられた盾から
トリスメギストスとシバが現れ、
割れた聖杯から魔力が流れ始めて
崩壊する。
魔力で燃え始めるが
倒壊したトリスメギストスが大量の砂になり
鎮火していく。
完全に偶然だ。
鎮火される様子をみて
きょとんとしているマシュ。
無意識に爆発からかばうように
倒れこんだせいか
警戒心が薄れている。
頬けているマシュを起こすのを手伝う。
立ち上がる際に困惑しているマシュ。
「あの・・・・・。」
「・・・・。
マシュ、詰めが甘すぎるぞ・・・・・。」
目を合わせずに、
腰元の聖剣を抜き腹部に斬りつける。
薄く斬りつけた程度だが
悪性情報が傷口から入り込んで
意味消失を促す。
「うううああああああああああああああああ!!!」
悶えて再び倒れこむマシュ。
聖剣を鞘に戻さず、
振り返り構える。
何故なら、もう一人の騎士が構えて決闘を望んでいる。
男と騎士が対面する。
腹部が焼けるように熱い。
発汗が止まらない。
斬りつけられた患部からは
あまり出血していないが、
頭が割れるようにいたい。
耳鳴りが響いて揺れているようだ。
身に覚えのない怨嗟や恨みの声が
木魂している。
目がかすみ、何かの映像が見えてくる。
「は・・・・・・?」
気が付くと私は
薄暗い散らかった部屋にいた。
壁や天井に見覚えがある。
カルデアにある職員用のマイルームだ。
だが、普段見るものとはかけ離れ、
大量の紙や本が積み重なって足の踏み場もない。
壁には埋めつくような数式や図と説明が書かれており、
多くものにはバツがしてあるが、
いくつかはマルで囲ってある。
見渡すと男が一人、何かつぶやきながら、
メモを続けている。
「兄さん・・・・?」
後姿の印象で分かったが、
ひどく青ざめてやつれている。
「私は何故ここに?」
床には儀式の痕跡がある。
兄が降霊したのだろうか?
最終特異点で私が死んでから
どのくらい経っているのだろう?
深く思考をめぐらせていると
ふと思い出した。
私はずっとここに居たのだ。
兄さんの令呪で行くなと言われて、
身体は消滅してしまったが
魂と精神は大盾の中に封じられていた。
兄さんの儀式の拍子に
周囲が知覚出来るようになったのだ。
すぐに兄さんに教えないと。
「兄さん、兄さん・・・・!」
だめだ。
知覚出来るだけで
念話等は出来ないらしい。
今後の研究で出来るようになるのを待つしかない。
月日が経った。
兄さんの研究は難解ですぐには理解出来ず、
研究の参考にした資料もそのままにしていたため
調べながら内容を
確認していくので退屈はしなかった。
でも、
兄さんが睡眠や食事の頻度を落とし始めて
心配になってきた。
髪や髭もそのままにするようになったし、
マタ・ハリさんとも 最低限しか会話しない。
「もう、そんなんじゃマタ・ハリさんに嫌われちゃいますよ・・・!」
ある日兄さんが大盾から
私を召喚しようとした。
私をサーヴァントと仮定して
大盾を触媒に自分の身体に召喚して、
成功すれば私用の身体を
どこからか用意する気らしい。
これを機に兄さんと話せるかもしれないと
召喚に応じてみた。
最初は成功したかどうか
よく分からなかった。
試しに兄さんを呼んでみた。
「兄さん!兄さん、聞こえますか?
これって成功したんですか?」
「マシュ・・・・?」
・・・!
声が通じた!
成功したんだ!
「マシュ・・・・?マシュか・・・!
今お前を私の身体に召喚した。
よく召喚に応じてくれた!
これで一つお前を蘇らせるためのステップが進んだ!」
「ふふ、蘇生させなくても
話が出来る今の状況で十分・・・・
兄さん?
どうされました?」
兄がいきなり蹲り出した。
「兄さん・・・?
兄さん! デミ・サーヴァントになったせいですか?
一度、大盾に退去しますか・・・・・?」
【お前は既に愛する者を殺しているのか?
だが、それでは矛盾する。
私はお前の最も愛するものを殺すための武器だ。
私を持つお前は最も愛する者を私で殺さなければならない。】
黒い靄が現れた。
靄は兄が持っている剣から出ている。
いつの間にあんなものが?
さっきまでは持っていなかった。
【なるほど。お前は別の世界にいる、
愛する者を殺すことを考えているな。
ならば私はお前に協力するまでだ】
「兄さん、様子が変です!
すぐにその剣から離れて下さい!」
「手が・・・・、離れない・・・・!
頭に直接声が・・・・!!!
あああああ、
うあああああああああああああ!!!!」
黒い靄が兄を包み込んで、
繭になった。
繭から兄が出てきた時には、
兄は姿を変えていた。
前髪は伸びて顔が隠れ、
黒い鎧をまとった騎士の姿に。
「うう・・・・。マシュ!
マシュ、どこだ・・・・!
さっきまで声がしていた・・・!
お前は・・・無事なのか・・・・」
頭を押さえながら
懸命に私の名を呼び続ける兄。
「私は無事です!
兄さんこそ、何があったんですか?」
「マシュ・・・・!
どこだ・・・!マシュ!!」
声が聞こえていないようだ。
いったい何故?
さっきまでは声が通じていたようだったのに
【お前の愛するものはここにはいない。
お前が自分で考えていただろう。
この世界のどこにも彼女はいない。
だからお前から会いに行くんだ。】
「やはり・・・そう・・なのか。
あくまでこの世界での復活は
叶わないんだな・・・。
なら、仕方ない・・・・。」
「兄さん!私はここです!
大盾の中です!目を覚まして!」
【そうだ。お前は賢い。既に答えを見出している。
あとは実行に移すだけだ・・・!】
「そうか・・・・・。
その通りだ。すぐに計画に移そう」
兄は顔色を変えて、
実行に必要な計算を式を考え始めた。
もう私では兄を止められない。
私が召喚に応じたばかりに・・・・。
兄が取り返しのつかないことをしてしまった・・・・・。
ごめんない・・・・・。
ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
いくら謝り続けても兄は止まらない。
兄が自分達の世界を破壊した時にも、
特異点を攻略したマスター達を倒した時も
怨嗟の声が頭の中で止まらない。
【なぜこんな事を・・・。俺たちは世界を救ったのに・・・。】
【ようやく過酷な旅が終わったと思ったのに・・・、
もうすぐ家に帰れたのに・・・・。 どうして・・・・!!
どうして!!いや。いやよ!!
私は家に帰りたい!
いやだ!
殺さないで!!
いやだ!!!いやだ!!】
【どうしてなんだ?
君たちも人理のために戦ったマスターなんだろう?
どうしてこんなこと!】
【痛い!いや!私の腕が・・・、
せっかくここまで無事に旅を続けてこれたのに・・・。
ひどい!ひどい!ひどい!】
【なぜだ、なぜなんだ?】 【家に帰して。家族に会いたいの!!】
【幸せになりたかっただけなのに】
【なぜ?】【なぜ?】【なぜ?】
【誰のせい?】
【なぜこんなことに?誰がこんなことを?】
怨嗟の声が木魂する。
兄が特異点を移動する度に増え続ける。
やめて!
もうやめて!
止めて下さい!
もうやめてください!!
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。・・・・・・。
私のせいだ。
私が兄の召喚に応じたりせずに、
大盾の中にじっとしていれば、
あの人たちは死なずに済んだ。
私のせい。私のせい。私のせい。私のせい。私のせい。私のせい。私のせい。私のせい。私のせい。
怖くてたまらない。
こんな罪は抱えきれない。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
兄さん・・・・。
もうやめてください。
もうこれ以上は。
助けて!
助けて!
誰か私を助けて!
先輩・・・・・!!
はっとした。
確かに手を置かれた感触がした。
誰にも聞こえず。
触れないはずなのに。
「マシュ・・・・。
だい・・・ぶ・・・だ・・・ら。
・・・シュ・・・・。
おちつ・・・・て・・・・」
今度は、手を握る感触がした。
溢れて止まらなかった、涙が止まった。
先輩の手だ。
あたたかい。
安心出来る場所。
思い出した。
私はマシュ・キリエライト。
先輩のファーストサーヴァント。
あの人の妹じゃない。
彼女は別のマシュ・キリエライトだ。
「マシュ。
マシュ!・・・・マシュ!!」
声がだんだん大きくはっきりとしてくる。
目が覚めた。
目が覚めると受けた傷は癒えていた。
先輩が応急手当の礼装を起動してくれたようだ。
「マシュ、よかった!目が覚めた!」
「はい、マシュ・キリエライトただいま戻りました。
ご心配おかけしました。」
気付けばギュッと
先輩の手を握っていた。
恥ずかしくなり
急いで手を離す。
「す、すみません。
大変握り心地のよいものでした・・・・!」
藤丸立香も慌てて手を引っ込める。
「い、いや大丈夫!
目が覚めてよかった!」
「今のは・・・・。」
「兄さんが聖剣から送り込んだ悪性情報です。
ちなみに内容はほぼ全てフィクションです・・・。
私が大盾から召喚に応じた時は
あんな状況じゃなかったですし、
兄さんはなんの精神操作も受けてません。
聖剣も喋りません。
終始一貫して兄はあのままの人です。
マシュさんの意味消失を促すために
無理やり作った映像でしたね・・・。」
「は・・・・・・・?」
「それはそれですごいような・・・・・。あはは」
先輩は笑っているが
笑い事ではない。
「もう一度、一発ブチかましてきます。
今度はお城で・・・・・!!!」
「ちょっと待って!
気持ちはわかるけどいかないで!
まだ動かない方がいい・・・・!」
反射的に立ち上がりそうになったのを
先輩が必死に両肩をつかんで止めてくれた。
「もうすぐ終わりそうだから。見守ろうよ」
そう言って先輩が目を向けた先には、
二人の騎士の姿があった。
お互いに息も絶え絶えで
互いが互いに一歩も引かない騎士たちが。
この作品は内容が難しいですか?
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理解不能!!
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難し過ぎる!あんたバカァ?
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難しい
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少し難しい。説明希望
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丁度いい
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簡単
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優しい型月二次創作
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9歳の子にも読んで説明出来る
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児戯に等しい