愛讐越界特異点カムラン   作:Pon_De_hutago

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最終章 スクラップを聴きながら

 もはやどれだけ打ち合ったのかも分からない。

私が打ち込んでは彼がいなし、

彼が打ち返しては私がいなしての繰り返しだ。

近代の動きを駆使して

実によく戦っている。

彼がもとはただの魔術師だとは信じられない。

今、後ろでマシュとマスターが

話している声が聞こえた。

マシュは目が覚めたのか。

なら・・・。

たまには父として尊敬されるところでも見せておこう。

疲れた四肢に力が戻る。

必ず彼を救って見せる。

今もなお剣戟が止まないが、

ここで勝負をしかけてみる。

 「マスター!勝負をしかけます!

タイミングをみて援護を!」

「わかった!思いっきり行って!」

「我が王に誓って!」

剣戟を続けていくうちに、

彼の動きの癖が分かってきた。

彼の動きには起こりがないが、

一定のパターンで動きをしているので

徐々に読めるようになっていた。

全てパターン通りに合わせて防ぎ、

動揺した隙に宝具を叩きこむ・・・!

振り下ろされた剣を受け、

刃をすべてらした所を

相手は首を狙ってくる。

首に剣先を向けたところで

すべらせた刀身を上げて止める。

持ち上げられたお互いの剣を受けながら

呼吸を合わせて受けている位置を下げていく。

下げたところで胸を突いてくるから絡めて、

相手の剣の持ちてを押さえる。

握ったままの拳で私に当身をして、

私が受けて距離を取る。

また一からやり直し。

このようなパターンを複数種類繰り返して戦っている。

私が狙うのは距離を取って仕切り直す際、

仕切り直さずに

宝具の一撃でそのまま決める。

そうここだ・・・!

必殺の一撃を繰り出す。

 

 ランスロットがマスターに合図した。

マシュが意味消失せずに、

意識が戻っている・・・・!

藤丸立香・・・・。

彼はマシュにとって

相当特別な存在のようだ。

すぐにランスロットとの決闘を切り上げて、

再び聖剣の一撃を与えなければ。

今度は藤丸立香も一緒に。

 妙だ・・・・。

妙に動きがスムーズだ。

一連の動きが息を合わせたようにしっくり動く。

動きの癖を覚えられたらしい。

ランスロットが何か仕掛けてくる。

何を仕掛けてくるかは

分からないが、

このまま仕切り直しのタイミングで

仕切り直さず、

そのまま一撃受ける覚悟で

ランスロットの首を飛ばす。

どうせ、藤丸立香もマシュも

もう戦う余力はないだろう。

死にかけでも

無理に刃を二人の身体に押し当てて

ミッションコンプリートだ。

そろそろタイミングだ。

魔力防御を最大まで引き上げて

聖剣に乗せる。

 膨大な魔力量の魔力防御で

聖剣の一撃を与えるそれは、

最早、対人宝具の領域になる。

超高密度の一撃は並みの宝具すら破壊する。

聖剣から溢れる靄が圧縮され聖剣に纏う。

刀身は光を逃がさない程に黒く

まるで死の孔を思わせる。

今だ・・・・!

「『縛鎖全断・過重湖光』!!!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおお!!!」

お互いに渾身の縦振りと横振りが交差する。

押し負けた方がやられる。

「令呪をもって命ずる!

ランスロット、君の思いを貫き通して!!」

令呪によるブーストで一気に劣勢になる。

 全魔力をこの一刀にかけろ。

自分が消滅するギリギリの限界まで振り絞れ!!!

もっと、

彼の聖剣の輝きを奪うほど

魔力を圧縮させろ!!

「令呪を持って己が肉体に命ず!!!

我に勝利の輝きを!!!!」

劣勢が覆る。

刀身の魔力は圧縮を繰り返す。

より高度に密度の上がった聖剣が

彼の宝具を飲み込む勢いで加速する。

「瞬間強化!!」

マスターからの最後の一押しが入った。

再び力が拮抗し

互いが互いを斬りつける事しか

考えていない。

顔を見合わせ、

睨み合い、

前に前にと

己が意思をぶつけ合う。

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」」

戦士の雄叫びが重なり、

鋭い圧が周囲にまで広がっていく。

互いの踏み込みに

大地耐え切れず、

足元に溝が出来始める。

互いの聖剣が押し合い、

火花が見える。

 この時、

ぶつかり合う聖剣には

大きな差があった。

拮抗していた力だが、

愛する者を殺す聖剣の方は担い手が、

供給源である聖杯を失い、

周囲の大源と、復讐者の自己回復に

頼る他なくなっていた。

故の虎の子の令呪の使用だ。

更には愛する者を殺す聖剣の性質上、

マシュ以外の相手にはブーストが掛からない。

加えて、

先ほどマシュを斬りつけた事により

形式上聖剣の呪いの誓約が切れて

供給される魔力の量が

大きく下がっている。

今の聖剣は担いの手の

忘却補正の効力により

機能を残しているに過ぎない。

この戦いの結末は・・・・。

 

 無毀なる湖光が

愛する者を殺す聖剣を通過する。

二つに折れた黒い聖剣を抜けて

更に男の身体に湖の光が透き通る。

だが、

男は止まらない、

折れた聖剣の残った刃でそのまま突き進む。

リーチが短くなったそれは首ではなく、

ランスロットの右脇に突き刺さった。

「ぐっ・・・・・ううっ!!!」「ぬっううう!!!」

お互いに顔を歪ませる二人。

勝負は決まったが

止まらないのだから

続けるしかない。

最大の魔力防御を纏った聖剣は撃ち破られた。

ならば、

彼の聖剣を上回る聖剣で対抗するしかない。

「令呪を持って己が霊基に命ず!!

失われた宝具の使用を!」

令呪と共に、

遠く後方で砕けた円卓の盾が光、

召喚サークルが回り出す。

「円卓疑似接続開始。

宝具召喚。

過去にして未来の王!」

星の聖剣。

黄金に輝ける最後の幻想。

約束された勝利の

「『■■■■■ (エクス・・・・・)』」

だが、

星の聖剣が振るわれる事は無い。

男の顔に深く拳がめり込む。

「ぶぉああ・・・・・・・!!!!!」

先ほどより更に顔を歪ませたランスロットが

全力で振りかぶって殴り飛ばした。

「貴様がその剣に触れる資格はない!

約束された勝利など与えはしない!!!」

 

 あまりの暴挙故、殴りつけたが、

無毀なる湖光の一撃を浴びた彼には

もう、戦う力はない。

もはや魔力は底をつき、

自身の霊基を維持することも難しい。

愛する者を殺す聖剣は砕かれ、

彼を縛るものはないにもない。

アヴェンジャーとしての特性も薄れ、

あれではまるで

からっぽの霊基のサーヴァントだ。

引き裂かれた身体を修復することもできず、

無理な宝具の使用に耐えきれなかった

右腕が焼け落ちる。

再び起き上がることも難しい身体でそれでもまだ向かってこようとしている。

聖剣の呪いでも、

アヴェンジャーの特性でもない。

彼自身の意思で。

「ごふっ・・・・・。

ごふ、令呪・・・・持って・・・

め、いずる!!」

口からは血が泡立ち、

血を吐き出しながら

少しずつ話す事しか出来ない。

「ふ・・・・・、

おのが・・・・

肉体(霊基)よ・・・・・。

最後まで・・・・・

役目を・・・・

ぐぶ・・・

はた、せぇ・・・・!!!!!」

懸命に立ち上がり、

折れた聖剣の剣先を拾い上げて

こちらに向かってくる。

最後の魔力で

魔力防御を纏わせて振り上げる。

騎士として応えぬわけにもいくまいよ・・・。

 こちらも、脇に聖剣が突き刺さり、

右腕を上げることが出来ない。

彼同様、今まで潤沢に送られていた魔力も

聖杯の破壊によって無くなった。

自身の魔力炉を加速させるだけの量が残っていたから、

今まで戦えていたが、

それも、もう限界だ。

私もこれが最後の一振りだ。

「我が名は円卓の騎士ランスロット。

貴殿のサーヴァント達との約定により、

この一撃で貴殿を戦いの連鎖から救い上げる!!」

魔力を回せ。

「最果てに至れ。

限界を・・・・・

超えよ!」

己が身体に言い聞かせる。

「彼方の王よ、この光をご覧あれ!」

後ろのマシュやマスター。

約定を果たしたサーヴァントを想い、

最後に膝をつきそうになっては

王の顔を思い浮かべる。

『縛鎖全断・過重湖光』おおおおおおおおおおおおお」

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおお!!!」」

振り下ろす刹那。

彼は力尽きて

動きが止まったように感じたが

構わず聖剣を振り押す。

彼の身体に染み渡る湖光は

水面の如く抜けていく。

 一撃を受けた彼は石になっていた。

彼の形をした石は

やがて動きが止まり。

最後に小さく口が動いたように見えた。

石が砕け砂になった彼は

風にあおられ

天に昇り、

虚空に戻りつつある空へと

還っていった。

 

 あたたかい光が全身を突き抜けた。

痛みはない。

あと少し。

あと少しで届きそうだった手は

もう動かない。

もう無理かと思って前をみた。

でもそこには、

芝の上に立って泣く少女がいた。

「兄さん・・・・。兄さん・・・・・。

もう・・・・、でも・・・・・・。」

 あぁ、彼女は傷だらけで戦う

俺を見て泣いているのか。

もうやめて休んでほしいと。

でも彼女は知っていた。

彼は止まることなく進んでいくと。

彼女は彼のそういう姿勢に

共感を覚え懐いていた。

だから、

頑張ってと言いたいのだ。

自分のためでも

彼のためでもない。

ただその行動そのものが

結果を無視して美しいから

自身の気持ちも忘れて

応援してしまうのだ。

涙を拭いて彼女が

顔を上げて、

目が合った。

彼女も目が合った事に気付いて笑顔を見せた。

「あぁ・・・、マシュ。

そこにいたのか。

よかっ・・・・た・・・・・・・」

口が動かなくなり

言葉が止まった。

動かなく不自由な身体を捨てて

彼女を抱きしめた。

彼女も強く抱き返し

また泣き始めた。

やがて彼らはそらへと還った。

 

 特異点の主が消え、

特異点そのものも消えかけている中、

満身創痍で、帰還について思い出した。

まだマタ・ハリにカルデアが占領されているのだ。

慌てた3人とは裏腹に、

すぐに通信が回復し、

大急ぎてダヴィンチちゃんが

自分達をカルデアに戻してくれた。

マタ・ハリが戦いが終わったのを見て

すぐに洗脳を解いたのだ。

カルデアが通常の動きへと戻ったのだ。

レイシフトから戻ったランスロットとマシュは

急いで医務室に運ばれ、

残った自分は待っていたマタ・ハリと話した。

「これ、

もう要らないからあげるわ。

最初から失敗した時は

そうするって決めてたの」

彼女から聖杯を受け取った。

「いいの?」

「ええ、

ホントに必要ないもの。

それに急いで追いかけないと私だけ置いてかれちゃうわ!」

そう言って彼女は笑顔で自ら還っていった。

 その後にダヴィンチちゃんとホームズが

慌てて駆け寄ってきた。

「お疲れ様!君は大丈夫かい?

あと、マタ・ハリは・・・・?!」

足を止める間もなく

ダヴィンチちゃんが聞いてきた。

「大きなケガはないよ。

どっと疲れたけど。

マタ・ハリなら今帰ったよ」

「おお、それはよかった。

あとでゆっくり休んでくれ・・・って、

帰った?!

これだけ騒ぎ起こしといて、もう帰ったの?!」

「うん・・・。

置いてかれちゃうからって・・・。」

気圧されておぼつか無いしゃべりになった。

「まぁ、事件は解決したという事で済ませていいだろう。

だが、今後はこのような事のないように対策しなければ。

まさか推理中にカルデアを乗っ取られて

実体化出来なくなるとは。実に歯がゆかった。」

「あぁ、そうしてくれたまえ!

まったくこっちは職員まるまる洗脳されるなんて・・・。

あーっもう、くやしい!

いっそ、それ用の発明をして職員全員に配給するか・・・」

ダヴィンチちゃんには今回の事は

相当応えたらしく

気が動転して、

まだ本調子ではないようだ。

「こほん、その話はまたいずれ。

見たまえ、マスターの体力が限界のようだ」

うとうとしているのがバレた。

「そうだった!ごめんよ。

聖杯の保管は私たちに任せて

すぐに休んでおくれ!」

「うん。あとは任せた・・・・・!」

そうしてマイルームに戻り

泥の様に眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ

 

 藍色の空に、星々が煌めく。

見渡す限り星の光が続く空を、

山々が囲んでいる。

足元には青い花が一面に咲き乱れて

、美しく花びらが風に舞って煌めいている。

「おーーい!

貴方ー!マシュー!おまたせー!!」

マタ・ハリが花の中を

軽やかに駆け寄ってくる。

「マタ・ハリさーーーん!

こっちです!こっちー!」

マシュが手を振って、男が腰を上げる。

「おっ、意外と早かったな。

もっと時間かかると思ってた。」

男は白衣にネクタイ、スーツの姿で人の時の姿に戻っている。

「だって、置いて行かれたくないもの!

走ってきたわ・・・!」

マタ・ハリを抱きしめて、

マシュも混ざり、

マシュの背中に腕を回して、

二人を抱きしめるように組みかえる。

「置いてかないさ。家族だから。

もう絶対に離れない。」

「はい」「ええ」と返ってきて

また強く抱きしめる。

「それと、お付きの義賊もここに。

荷物の準備は出来てますよー!旦那方ー!」

大きなカバンを担いでロビンが歩いてくる。

「さすが副官!」

「ええ、まぁ・・・。

それより他の連中は呼ばないんですかい?

俺だけ家族団らんに混ざってたら

後がこわい。」

気恥ずかしそうに頭をかくロビン。

「来たくなれば、好きに来る連中だ。

会いたい時は、その時呼べばいい。」

笑いながら振り返らずに歩き始める男。

「そういえば、これからどこへ行くんですか?」

「そりゃあれだ・・・・。

ビーチでバカンス」

「ホントですか!」

「あぁ、約束だからな」

付いてきたマシュと手をつなぐ。

もう片方の手はマタ・ハリと指を絡ませてつなぐ。

彼らの先は一片の曇りもなく、

星の光に照らされている。

足元には花々が咲き乱れる。

星々の海へ彼らは歩みを続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

著作 ポン・デ(@Pon_De_hutago)




ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
こちらの一連の物語は私が6年ほどかけて構想を練り先日文字に直したものです。
そんな作品をお読みいただけて感激です。

Twitter(@1_5kamuran_info)https://twitter.com/1_5kamuran_info
pixivにてイメージイラストUP→ https://www.pixiv.net/artworks/97800670
pixivFANBOXにてキャラデ、マテリアル等公開予定です。興味のある方は是非
FANBOX→ https://pon-de-hutago.fanbox.cc/

この作品は内容が難しいですか?

  • 理解不能!!
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  • 優しい型月二次創作
  • 9歳の子にも読んで説明出来る
  • 児戯に等しい
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