宿スレDQ3ネタ投下まとめ(仮タイトル)   作:Rasny

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【Stage.20 最大効率優先主義】

 

 

 < GAME SIDE >

 

 

「ふんふ~んふふ~ん♪ ふんふ~ふふふ~ん♪ ふふ~んふふ~ふんふ~んふ~ん♪」

 

 ……街のテーマ、かな。

 レイさんは上機嫌で僕の前を歩いている。僕と二人っきりでネクロゴンド行きが決まってからずっとこんな調子だ。声が洞窟内に反響して魔物に位置を知られるから普通は静かに歩くものだけど、この「東の二代目」にとっては高難度のネクロゴンドも大したことはないらしい。

「いやぁしかし、ガイアの剣がまさか火山爆発を引き起こすことは思わなかったな」

 代々伝わる由緒ある名剣、とか言ってたのにも関わらず、躊躇なくポイッと火口に放り込んだ当の本人は、あっけらかんと振り返って笑った。

「でも本当に良かったのレイさん。お父さんも大事にしてた剣なんでしょ?」

「なあに、戦闘には使えないお飾りの剣だったからね。役に立ったならなによりだよ」

 そう言って、陰から飛び出してきたライオンヘッドを一刀のもとに両断した。続いて到着した地獄の騎士の団体様を、素早く持ち替えたドラゴンテイルで片付ける。僕が血に弱いことを知っているので、魔物の死体を遠くにはじき飛ばしてなるべく僕の目に触れないようにする、という余裕までカマしているんだから、もはや言葉もない。

 強い。っていうか強すぎる。本当にチートキャラだな。

「それに、君とデートできると思えば剣の一本や二本、安いものだよ。はっはっは」

 そうか彼女にとってはデート感覚なのか。ここまでの道程に点々と横たわっている魔物さんたちは、あの世で号泣していることだろう。

 

 今回のこのぶっ飛んだショートカットについて。

 読者様にもいろいろとご心配いただいたんですが、必ずしもすべてのイベントを「僕」が引き受ける必要はないんじゃないか? と思い当たったことで解決いたしました。

 

 ヒントは例のカンダタがらみの話。ロマリアの「金の冠」のイベントは、僕が指示を出しただけでちゃんと進行したわけで(あの時、もしかしたら主人公である僕が出向かないと先に進まないかも、とちょっと不安だった)、だったら他人でも条件が揃えばイベントはこなせるということだ。僕には頼れる仲間たちがいるんだから、あれこれ一人で悩むより素直に相談してみることにしたのだ。

「んじゃ、俺がレイさんの代わりにサマンオサに行って来るッスよ。別にそのガイアの剣を持ってかなきゃダメってことはないッスもんね?」

「その間に、私とエリスがラーの鏡を取ってきましょう。実は先ほどモネ船長がいらっしゃって、手伝いたいとおっしゃいまして。確かにこのあたりのモンスターは強いようですが、人数を集めれば難しくはないでしょう」

「レイ様と勇者様だけというのは……。でもレイ様の大切な剣を使わせていただくことになりますし……ううっ……し、仕方ありません! でも決して妙な気は起こさないでくださいね!? シルバーオーブを持ち帰ることに専念してくださいね!? きちんとお約束していただけるなら、私も私の責務をまっとういたしますわ」

 とまあ、あれよあれよと決まってしまったのである。戦力的には僕なんかいてもいなくてもいいわけで、サマンオサ周りのイベントは今、エリスら3人とモネ船長たちが、ジュリーさんの助けを借りつつ進めている。そっちは丸々彼らに任せて、僕はレイさんとネクロゴンドへシルバーオーブを取りに来たのだった。

 

 

 レイさんが細い行き当たりの通路の奥から、金色に輝くギサギサの剣を持ってきた。

「ふむ、なかなかの業物(わざもの)だね。これもサミエル君に良さそうだ」

 道具として使うとイオラの効果を発揮する「稲妻の剣」に違いない。さっきも『刃の鎧』拾ったし、考えてみればサミサミばっかりいいお土産に当たってるな。エリスやロダムにもなにか持ち帰りたいところだけど、あいにくこのルートに魔法使いや僧侶が装備できそうな物は落ちていない。

 帰りにちょっと寄り道してなにか買って帰ろうかな~、と僕がブツブツ呟いていると、レイさんが苦笑した。

「おいおい、別れる前にかなりの軍資金を渡してきただろう?」

「うん、サマンオサは品揃えがいいって聞いたからね」

 頼りになるレイさんを僕が取ってしまったから、ボストロール討伐には現時点での最高装備で臨んでもらいたい。好きに使っていいよ、と数万ゴールドを預けてきている。

「でもほら、それとこれとは別でしょ。公平にしないと」

「君が無事に帰るだけで彼らは大喜びしてくれるよ。リーダーが仲間への公平さを考えるのは当然だが、君はちょっと気を遣い過ぎだ」

 顔を上げると、レイさんは相変わらずのニコニコ顔で僕を見ている。

「君がワケあって仲間たちに一線を引いてるのは知ってるが、向こうはそれを寂しく感じてるんじゃないかな」

「……そんなことはないと思うけど」

 確かに僕はみんなと少し距離を置いている。でも他人行儀に思われないよう、僕なりに努力はしているつもりだ。

 あの時……アリアハン国王に刑に処せられそうになった時、みんなに心配をかけて、エリスのこともすごく泣かせてしまったから。僕だって反省したから、今回のこともみんなに包み隠さず相談したのだ。

 が、レイさんは軽く肩をすくめるだけで、納得はしてくれなかった。

「なあ青少年。この際はっきり言うが、彼らに関係があることを隠し立てしてるのは良くないぞ。まして本当に隠しておくべきか、それとも伝えるべきか、君自身もどこかで迷ってないか? 彼らもそれを察知して君との距離を感じるんだろう」

 うっ、さすがレイさん、言葉は優しいけどシビアなとこ突いてくるな。

「一人で抱え込んでも悪い方にしかいかないものだ、まずは誰かに相談することだよ。どうだ、私に言ってみなよ。第三者として客観的に判断してあげよう」

「ごめんレイさん、それは言えないよ」

 僕がみんなに言えない秘密。

 それは、アルスが自ら望んでこの世界を捨てた、ということ。

 真実を知ればきっとエリスたちは傷つくし、その他の人間も「世界を捨てて逃げた勇者」なんてレッテルを彼に張るだろう。黙っていることで僕に不信感を持たれようがなんだろうが、「なぜ勇者アルスと僕が交換されたか」という一点において、僕は最後まで「わかりません」で押し通すつもりだ。

 

「しかし秘密を一人で抱えてるのはつらいだろう?」

 レイさんが近づいてきて僕の肩に手を置いた。慈悲の光を湛えたグレイの瞳が僕を間近で見つめる。

「思い切ってこのオネーサンに素直に言ってごらん。ん?」

「いや、でも……」

「もちろん、君がどうしても知られたくないと言うなら私も口裏を合わせるが」

 ずずいと顔が近づいてきた。

「ほら、協力者がいた方がなにかあった時に君も安心だろう」

 さらに顔が近づいてきた。

「あ、あの」

 いつの間にか僕は洞窟の壁面まで追い詰められていた。レイさんますます顔が近い。

「……あんまり頑固だと、私も少ぉし意地になっちゃうなぁ」

「ほひっ!?」

 僕の胸のあたりをレイさんの手がなぜ回している。ちょwwセクハラwwww

「レレレレイさん、こんなところで、そういうのはちょっと……」

「こんなところって?」

「ひやっ!?」

 耳元にふーっと息を吹きかけられて背筋がゾゾっとした。

「いくらなんでも難関ネクロゴンドの洞窟の最深部で油断しすぎでしょー!?」

「油断はしてないよ、モンスターなんかに君を食わせたりしないさ」

「まずあんたに食われかけてるっつーの!!」

 ヤバイヤバイヤバイ、この人思ってた以上に変態だ! さっきから妙に絡んできてウゼェなこいつとか思ってたけどコレが狙いか。

 だけど僕のわがままに付き合ってもらってる手前あんまり邪険にできない、っつーかこんな危険極まりないトコにひとりで放り出されたら生きて戻れないので抵抗しーづーらーいー。どーする、どーする僕!?

 英雄色を好むとはよく言ったもんだ。レイさんこういうのはマジで困りますぅ~!

 

 

 ――と、レイさんの手が止まった。僕の胸を指先で押して首をかしげる。

「なんだこれ?」

 プヨン、プヨン。

 次の瞬間、僕の胸元からヘニョがにょっと顔を出した。そういや出がけのバタバタしてる時に僕についてくるってきかなかったから、ここに押し込んできたんだっけ。

 

 ヘニョは、あのウルウルのつぶらな瞳でレイさんをじっと見つめている。

「そうかヘニョ君だったか。すまないが、ちょっと席を外してくれないかな」

 

 ヘニョはつぶらな瞳でレイさんをじっと見つめている。

「あー、わかるかな、少しの間だけ離れていてもらいたいんだが」

 

 ヘニョはじっと見つめている。

「えーと、あのねヘニョ君……」

 

 見つめている。

「………」

 

 

 

「――――――――先を急ごうか」

 レイさんはガクーッと肩を落として、すごすごと僕から離れた。

 

 一級討伐士レイチェル=サイモン、スライムに敗北。

 

   ◇

 

 洞窟を抜けると、うすい青空の下に半砂漠化した丘陵地帯が広がっていた。枯れかかったブッシュが点在する他は、生き物の影ひとつ見あたらない寂しい風景だ。丘陵地帯の向こうには大きな川が流れていて、対岸には、薄い霧がかかっていてよくわからないが、岩山に囲まれた奥にうっすらと城の尖塔らしきものが見える。

 ――ああそうか、あれはバラモス城だ。

 アルスと同じく、この物語の壮大な無限ループを知ってしまった魔王の居城。ランシールで勇者試験を受けた時に石の人面を通して会話して以来、向こうからの接触は無いけれど……。

(バラモスのおじちゃん、あれから元気でやってるのかなー)

「おい青少年、あまり私から離れないでくれ」

 少し先の方で、レイさんが手招きしている。

「あ、ごめんなさーい」

 僕もレイさんの後に続いて埃っぽい丘を北東に向かって歩く。規格外の一級討伐士に恐れをなしたのか魔物の影も無く、僕らはやがて森に囲まれた祠(ほこら)へと辿り着いた。

 

 祠に入ると奥に壮年の男がひとりいた。ボロボロの身なりで、今にも壊れそうな椅子に疲れ切った様子で腰掛けていたが、僕らの姿を認めるとまろぶように走り寄ってきた。

「まさか、まさかここまで辿り着く人間がいようとは!」

 涙にむせびながら、彼はしっかりと胸に抱え込んでいた麻袋から、銀色に煌めく竜珠の像を取り出した。

 受け取ったそれは、間違いない、シルバーオーブだ。この空間のどこもかしこも壊れ、すすけ、埃が積もって淀んでいるのに、ただひとつそのオーブだけが最後の希望のように美しく磨き上げられ、光を放っている。ジュリーさんに譲られたレッドオーブよりもずっしり手に重く感じるのは、きっと気のせいじゃないよね。

「ご身分のある方とお見受けするが」

 レイさんがひざをついて、今にも崩れ落ちそうな彼を支えて言った。

「ここで、何があったのです?」

「突然だったのだ」

 彼ははらはらと涙を流しながら、その惨劇を語った。

 元々この大陸はひとつの国家が治めていたが、突如、強力なモンスターの大群が襲ってきて、あっという間に壊滅状態に追い込まれてしまったこと。彼はその国の将軍という立場の人間だったが、王の密命で国宝のシルバーオーブを守るため、最後の聖域であったこの祠にオーブを持って逃げ込んだこと。以来十数年、たったひとりで生き延び続けてきたこと。そして伝説に語り継がれる勇者の降臨を、ひたすら待ち続けていたこと――。

 振り絞るように言葉を紡ぐ彼の背後には、手作りらしい墓が並んでいる。彼が貫き通した覚悟の深さに、僕はたまらなくなって……レイさんをジトーっと睨んでしまった。黒衣の剣士は気まずそうに目を逸らしている。

 だーからイチャコラしてる場合じゃないって言ったでしょうが。「伝説の勇者」の実体がこんなんだなんて、このおじさんには口が裂けても言えないよ。

 

「ピキー?」

 胸元でヘニョが鳴いた。うちのヘニョは滅多に声を出さないので、僕は少し驚いた。

「どうやらヘニョ君は気付いたみたいだね」

 レイさんが立ち上がって僕の方に戻ってきた。というか、将軍と名乗った男から目を逸らさずに、後ろ向きのまま距離を取ったのだ。

 そして剣を抜いた。

 この時点で僕も悟った。

 バラモスが現れ、国が滅ぼされてからすでに十年以上も経過している。その間ろくな食べ物も無く、強力な魔物が徘徊する荒れたこの土地で、たったひとりで生き抜くことなど果たして可能だろうか。

『ここまで辿り着く人間がいようとは』と彼は言った。そんな人間は、それこそバラモスにとって脅威となりうる存在だろう。ならばシルバーオーブをエサとして、逆に……。

 

 将軍の両腕が大きくいびつに伸びた。背中からコウモリの翼のようなものが生え始め、あらゆる筋肉が盛り上がり、衣服を押し破って膨らんでいく。

「ああ」

 将軍は自分の腕を見下ろし、なにかを思い出したような顔をした。それから、

「済まぬ……世話をかける」

 小さくつぶやいて、頭を下げた。

 

 レイさんが床を蹴った。次の瞬間には彼の首は宙を飛んでいた。魔物へと変身しかけていた胴体がドスンと音を立てて倒れ、その肉体は瞬く間に砂となって崩れていく。やがて一粒残らず風に流されるように消えてしまった。

 

 チャキ、と剣をしまう音で僕は我に返った。レイさんは笑っている。ニコニコといつもの笑顔だった。

「早く帰ろう。サマンオサ組がどうなったか心配だしね」

 でも急ぐと言った割りには、レイさんは祠を出てもすぐにルーラせず歩き出した。彼女の後ろを黙ってついて行くと、祠からそれほど離れないうちに川が見えてきた。対岸にはここからでもうっすらと魔王城を望める。あの将軍のおじさんも、かつては華やかであったろう王城の成れの果てをここから眺めていたのかな。

「勇者なんかやってると、ああいうのはよくあるんだ」

 レイさんが言った。

「だから私は、どちらかというと人間に肩入れしてしまうんだよ」

 まるで自分は人間じゃないような言い方が少し気になったけど、僕はやっぱり黙っていた。レイさんくらい強くなると、そういう気分になるのかもしれない。弱さゆえに群れるのがヒトであるなら、強さとは異端であることだ。

 この世界での「最強」は間違いなくレイさんだろう。

 だから、世界にひとり。

 

 レイさんが僕に執着する理由が、なんとなくわかったような気がした。

 

   ◇

 

 ヴヴヴヴヴ……! ヴヴヴヴヴ……!

 

 いきなりポケットの中で携帯が震えた。え、アルス? しばらくは連絡できないって言ってなかったっけ。だから僕は、レイさんと二人っきりのミッションをさっさと終わらせようと思ったのに。ほら、少人数での行動だと携帯のことがバレ易くなるし。

 レイさんは不思議そうな顔で僕を見下ろしている。いくらマナーモードにしていたって、こんな密着状態じゃバレるに決まっt……密着状態!? うわこのエロ勇者、いつの間にか僕の肩を抱こうとしてやがった! まったく油断も隙もねえな。いや、今はそれどころじゃない。

「レイさん、あの、えーとですね」

 どーする、どーする僕!? と焦っていたら、レイさんの方からヒョイっと両手を挙げて後ろに下がってくれた。

「どうぞ。私は向こうに行ってるよ」

「あ、ありがと」

 レイさんってたまに物わかりが良過ぎてちょっと反応に困る。勇者って人種はみんなひとクセもふたクセもあって、なかなか付き合うのは難しい。

 ……え? 僕? 僕はごく普通の善良な人間ですよ、ええ。

 

 携帯を開けてみると、僕の古くさい携帯のモノクロ液晶画面には「ARS」と表示されていた。なんだろう、急用だろうか。しつこく鳴り続けている携帯の通話ボタンを押して耳に当てる。

 

『なんだ、繋がっちゃったよ。まだギブアップしてないとは、大したものです』

 

 ――誰だこいつ。

 聞いたことのない声。大人びた柔らかい口調だが、声音は僕と同じくらいの少年ぽいかな。聴力にそれほど自信は無いから、確信は持てないけど……。

『初めまして、あなたがタツミ君ですね?』

「えーと、どなたさま……?」

 彼は僕の問いかけを無視して話し続けた。

『なるほど、確かに声もそっくりだ。相互置換現象にはPCとPLの姿がそっくりになるケースと、まったく違う姿になるケースの2パターンに分かれるんですが、相似のケースは声まで同じになるんですね。でもタツミ君自身は、そこまで似てるとは思わなかったでしょう?』

「……まあ、自分の声を自分で聞くと違和感があるって言うからね。で、君は誰?」

『ここではショウと呼ばれてます。どうぞよろしく』

 ショウ? 誰だっけ。なんか番外じゃしょっちゅう話題に出てるんで読者の皆様も勘違いされている方が多いのではと思いますが、実は本編では、僕は彼のことをまったく知りません。アルスってば教えてくれないんだもーん。

 というわけで、僕は不審に思いつつ質問を重ねた。

「ここでは、って言ったね。別のどこかじゃ名前が違うってこと? もしかして君もこっちの人間なのかな」

『ふふ、鋭いですね、この国のガキなんてぼんやりしてるヤツばかりかと思ってましたが。となると中身も似たのかな? アルス君のあの回転の良さも納得できましたよ』

 なんか嫌味だなー。僕についてはともかく、こいつうちの勇者君についてもなんか言いやがったか?

「ショウ君ったっけ? この携帯の持ち主はどうしたの」

『さあ、僕が聞きたいくらいですよ。この携帯、落ちてたのを拾っただけですから。あなたの方こそアルス君からなにか聞いてないんですか? 妙に仲いいみたいじゃないですか』

 トゲトゲしい言い方に、こっちもイラついてきた。さっきからなんなんだこのガキ。

「悪いけど君に教える気にはなれないよ。どうにも敵意を感じるんだけど、僕の勘違いじゃないよね? 正直、うちの勇者君にも近づいて欲しくないな。なんの用?」

『用? 用ねえ……考えてみれば、僕としてはあなたに用があるのかもしれませんね』

 妙な言い回しでひとり納得すると、ショウと名乗ったその少年は急に声のトーンを落として、そしてとんでもないことを僕に告げた。

 

『わかってないようだから教えてあげますが、その「うちの勇者君」とやらが無限ループで何年も苦しむことになったのは、あなたのせいなんですよ、タツミ君』

「…………え?」

『あなたの存在が、アルス君を散々苦しめ続けてきたんですよ。もう一度言いますよ? あ な た が 無限ループの原因なんです。だから、あなたのその薄っぺらいくだらない人生と名前くらい、アルス君に譲るのは当然なんですよ。わかりますか?』

  

 どうやら僕は弾劾されているらしい。

 むしろ断罪と言うべきか。

 

 罪。

 僕の。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………………………………………………………………………僕の、せいで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おっと、もう行かなきゃ。またすぐ連絡するつもりですが、そちらとは時間の経過が違うんでしばらくあとになっちゃうと思います。それまでに僕が言ったことをよく考えておいてくださいね。では』

 

 ップ ツー ツー……

 

 携帯は一方的に切られ、僕の意識は殺風景な荒野に放り出された。目の前には濁った水の流れる大河と、その向こうにバラモス城。乾いた風が僕の身体をなぜていく。

 それまで大人しくしていたヘニョが、胸元から這い出して足下に飛び降りた。

「いや……うん。大丈夫。思ったより平気みたい」

 自分でもワケのわからないことを呟きながら、僕はヘニョを抱き上げた。

「大丈夫だよヘニョ、なんでもないから」

 ヤだな、仮にも勇者なのに、またスライムに心配されちゃってるよ。

「おーい、終わったかい?」

 振り向くとだいぶ離れたところからレイさんが手を振っていた。まるで子供みたいに両手を振り回してるのがおかしくて思わず笑ってしまう。

「はい、オッケーで~す!」

 僕も両手で大きくマルを作ると、レイさんが走って戻ってきた。そろそろ本当に帰らないと日が暮れてしまう。レイさんは慣れた様子でササッと地面に魔法陣を描くと、ルーラの詠唱を始めた。

 

 まずはサマンオサに戻ってみんなと合流。サマンオサの国王が無事に政権を取り戻していたら、東の海岸にいるスー族のおじいさんの町作りを手伝ってあげるようお願いして、イエローオーブのフラグを立ててからジパングへ。北の浅瀬はそのあとかな。

 当初の予定からはだいぶ狂っちゃったけど、まあ順調だろう。

 うん、順調だ。

 妙な横槍を入れられたくらいで動揺してる場合じゃない。

 

 

 あの将軍のおじさんの、潔い最期を思い出す。

 しっかりしろ、僕。

 とっくに覚悟は決めてるだろう?

 

 

 




久々の再開です。

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