青春ブタ野郎は同輩ジャーナルの苦悩を知らない   作:まっしろ水仙

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青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない
1話.知らないことは残酷で、素晴らしい


 この日、徘徊係固定シンボルのバニーさんに出遭った。

 

 3日から始まるゴールデンウィーク。

 最終日である今日、ぽかぽかした陽気の中40分ほど、自転車を漕いでいた。

 一度通れば慣れるこの道を、のんびりと、カメラに収めながら進む。もちろん、撮るときは降りている。

 

 そんな気まぐれで、20分弱遅れた時間を左手首に感じながら目的地である、ここ、図書館へとたどり着く。

 半分ほど埋まっている駐輪場に、知り合いの相棒を見つけつつ、自転車から降り、鍵をかける。

 首に引っ提げた一眼レフの記録を漁り、スローペースで進む。今日も「グッドショット」とひとりごと。

 

 大学生らしき人物とすれ違う。奇異なものを見る視線が刺さった。

 

 館内へと入り、いつ来ても慣れない静寂にさらされる。

 司書さんからの視線がそろそろ出てくるので、カメラから顔をあげる。

 そこには……

 

 バニーが歩いていた。しかも、悠然と。「 私がルールだ」と言わんばかりに。

 その姿は、バニーガールという従業員ではなく、1人の女王であった。

 

 頭の回路かショートしながら、安全地帯となっている部分より、沸騰のように、深海から浅瀬へと、ポコポコ情報が流れる。

 

「えぇ……」

 

 と声がもれる。いや、もれてしまった。

 

「あら、君も」

 

 彼女(バニーのすがた)の名前は『桜島麻衣(さくらじままい)』。こと、日本において知らぬ者は5歳以下、とまことしやかにささやかれている(自分のみ)超絶有名人なのだ。

 まぁ、2年ほど前に活動休止を発表したらしいので、あながち間違いではないだろう。

 

「私が見えるてるんだ」

 

 三人称視点となっている頭を元にもどす。

 彼女の言い草から察するに、周囲から見られてないのだろうか。さらに、『も』と、言っていたので見えているひとが1人以上居るのだろう。

 え? なぜ、こんなに頭が回っているのかって? フリーズしているに決まっているだろバカヤロー

 

「ハイ」

 

 まずい。反射的に答えてしまった。

 とりあえず

 

「写真、取ってイイデスカ?」

「駄目に決まってるじゃない。こんな姿撮られたら日本中で有ること無いこと書かれるに決まってるわ」

 

 SOKUTU! まあ、図書館(こんなトコ)バニー(そんなナリ)でいるのだ。大? スキャンダルだろう。なら何故、そんな格好してるのか。ワケガワカラナイヨ

 幻では無いことは確認できた。が、有名人がいるのにここでは喧騒の跡がなにもない。

 司書さんに「そんなお洋服では…………」みたいに言われることには間違い無いはずだ。

 そんなこと言われた雰囲気は1ミリもない。

 

「デスヨネー」

 

 その声を聞いた途端。「話す事はない」と、言いそうに足を進める。

 遭遇したときからぱちぱちしていた瞼を開け覚悟を決める。こんなのに怯んていたら、いざというとき、妹のために動けなくなるじゃないか。

 息を吸う。

 

「桜島先輩、です、よね?」

 

 振り返って先輩をみる。

 ボリュームを下げた声が静寂にひびく。

 その声を聞いた先輩が止まる。止まった位置は1メートルくらい、僕から離れている

 僕の身長は162.2センチ。ぱっと見僕のほうが低身長なのだ! 

 つまり、見下されている。

 全身から放たれるプレッシャー? に気後れし、右足が半歩下がる

 その瞳に呆れがあるのは気のせいだろうか? 

 

「はぁ、君も、峰ヶ原高校の生徒なの?」

 

 そう言って先輩は腰に手を当て、反対の手をぷらぷらさせる。呆れがあるのはホントのようだ。

 というか、そのしぐさはズルくないか? 

 意識しないようにしていた青少年の努力かバカらしくなってくる。

 

「はい。二年一組の牧之原未里です。牧之原サービスエリアの『牧之原』に、未知の『未』、七里ヶ浜の『(さと)』で、『牧之原未里(まきのはらみさと)』です」

「私は桜島麻衣。まあ、知っていると思うからそれでいいわね」

「モチロンです」

 

 対応、雑じゃない? ついさっきやったみたいに。

 先輩は興味なさげだし。

 

「牧之原未里君」

「ハイ」

「一応、忠告しておいてあげる」

「忠告?」

 

『忠告』その言葉を反すうする。

 女王様なら、いち庶民に配慮なんてしないと思うが。

 

「今日、見たことは忘れたなさい」

 

 えぇ……。と思う

 人間って、そう意識すればするほど忘れづらいものなんですよ、先輩。と、脳が紡ごうとしたとき。

 

「このことを誰かに話したりしたら、頭のおかしな人だと思われて、頭のおかしな人生を送ることになるんだから」

 

 まあ、日本のアイドルであるこの人が、バニーになって営業時間内のここにいるし、撮影カメラはなしだ。

 二年ぐらい活動休止してたけど、普通、大騒ぎになるほどの有名人なのだ。

 やばい。認識されたうえに、アドバイスをくれる。この状況、ニヤけそう。

 思考を戻す。

 

「それと、金輪際、私に関わらないように」

「へい」

「分かったのなら、『はい』。親に習わなかった?」

「…………」

 

 とっても嫌そうな顔を作る。

『先輩』と、呼んだときから、いやそ〜な雰囲気を少しだけ醸し出し、『忠告』のときから、大人が子供に再三告げるように、めんどくさい、という片鱗があった。

 むっとした、あざとい表情を作ると思ったが、出てきたのは大きなため息。

 同じ事を誰かに言ったのだろうか。

 そうして、彼女は去っていく。

 

 最後にもう一度

 

「写真、取っていいですか!?」

 

 さっきから、5メートル離れただろうか。

 彼女は振り返り。

 自分の強みを完全に理解したいい顔で

 

「ダメ」

 

 と、言った。

 

 芸能人ならファンサしろよ! 

 

 そんな言葉が、心に、木霊した……

 

 

 

 無視すれば良かった、と後悔する。

 少しだけでもいいだろ、と見苦しく思うと

 

 

 

 

 

「あのー、お客様。館内ではお静かにお願いします……」

 

 

 

 恥ずかしくなった。

 視線がイタイ。主に背中から。

 クソウサギが嘲笑った気がした。

 

 

 

 〜☆☆☆〜

 

 

 

「アイツ、なにやってんだ」

 

 梓川咲太は思わず声をもらしていた。

 野生のバニーガールが去った図書館の中で、声が木霊した。知ったトーンで。『写真、撮っていいですか』。

 苦労して作った友達の声が静寂を切り裂いた。

 彼は住んでいるマンションの隣室の住人であり、挨拶に来たのが初対面。とある調べ物の途中で再開し、それからなあなあでの付き合いとなった。

 深夜に相談をしても、『仕方ない』と言って付き合ってくれる大切な友人なのだか。

 バニーガール、もとい、麻衣に向かって放ったのであろう言葉は静寂となっている。

 妹の所望する本を読むふりをして、周囲を見回す。

 タブレットPCを操作している社会人は、いぶかしそうに顔を向けると楽しそうに、肩をゆらしている。

 遠目で見たあいつ──牧之原未里という──は、耳を朱くし、速歩きで本の森へ入っていった。

 勉強中の女子大学生は、ちらりとあいつを一瞥し、何ごともなかったかのように、勉学に励んでいた。

 森へと侵入した未里は、お気に召すものがなかったのか、手に何ももっていない。貸し出しカウンター周辺まで進むと、恥ずかしいのか、お気に召すものがあったのか、すたすたと僕たちの使う席まで進んでくる。

 途中、きょろりと首を動かし、ぱちりと目が合う。

 進行方向を変えているのをみるに、先程麻衣がいた席を御所望のようだ。

 

 ひらり、と右手を本から離して軽く振る。

『王子様のくれた毒リンゴ』というタイトルが目に入る。少し気の立っている未里は、麻衣からの置土産なのかもしれない。

 

「よぉ」

「ああ」

 

 この短い会話の中、誰が見ても不機嫌な未里は、空きっぱなしの椅子にショルダーバックを掛け、苛ついたように目を閉じながら座る。

 反対側に座る彼は、絵画の描かれた白シャツの上に、グレーのチャック付きパーカーを羽織っている。さらに、黒のジーンズを履き、如何にも『休日の学生』という雰囲気だ。

 シャツのシワと気だるげな姿から学生の義務である『勉学』が抜け落ちているが、今はゴールデンウィークであることを踏まえると仕方のないことだ。

 また、首に提げている一眼レフが妙に馴染んでおり、玄人のように見えることから、外見年齢が少し上ではないかと錯覚させる。

 

「咲太」

 

 名指しで言われてしまったので反応する。

 

「ん、なんだ?」

 

 未里の言葉に軽く返す。

 あいつはさっきの叫びをごまかしたかったのか、まだ恥ずかしいのか、声のボリュームを小さくし、本を読むふりをしてこちらを見つめる。

 

「あのク……ウサギ、何だったんだろうな、咲太」

「ウサギって……桜島先輩のことか?」

 

 先ほど『忠告』をされたが、バニーガールのことを知っているようだ。

 同じ事を知っているやつに隠す意味はない。

 

「ああ、何やっているのか知らないけど、バニープラス有名人なのに騒がれてなかったからな」

「僕みたいなヤツでも知っているような人だからな、桜島先輩は」

「咲太は愛しの妹のためにネットを断っているからね」

 

 カラカラと未里が笑う。

 軽くからかわれたが、後悔はしていない。

 そもそも、乗り越えてなければからかってこない。

 

「一応聞くけど、観えてたのか? あの人」

 

 僕がからかいに乗ってこず、無視したので「ちぇっ」と舌打ちをしている。

 ひと呼吸置いて口を開くと。

 

「見えてたよ、この目でね。……もしかして誰も見てなかったの?」

「だな」

 

 未里の口から掠れた音が出る。天を仰ぎそうになっていたが既の所で止まる。

 ゆっくりと頭を下げ、なにかをぶつけたらしき小さな振動が本ごしに伝わってくる。

 机に付けた本により表情は見えないが、なにか呻いていて「マジだったのかー」やら、「アレかなぁ、どう見ても」等ほそぼそとした声がでている。

 たしかに、未里の言っているわからないでもない。

 麻衣の現状を呼び込むことができるのは、思いつく限り────

 

「アレ……だよな……」

 

 ────ただ一つしか存在しない。

 

 同意を求めるように未里がつぶやく。

 僕が信じられないような理不尽を、初めて感じ、僕の知る限り、二人──僕を含めると三人かもしれない──の人生を変えたモノ。

 

「オマエが考えているモノで合ってるんじゃないか?」

 

 そう、アレの名は────

 

 

 

 

 

 片方は悩ましい声で。

 もう片方は無関心を振る舞った声で。

 

 

 

 

 

「「思春期症候群」」

 

 

 

 

 

 ────と、言ったはずだ。

 

 

 

 

 

 〜☆★☆★☆★〜

 

 

 

 原因は理解った。

 だが、まあ……やることも、できることもない。

 咲太は帰り、時間が無為に過ぎていく。

 僕は本を持って立ち上がる。もちろん、本を借りるため。

 明日の事は明日の僕に任せるしかない。

 

 そうして、明日へ向かい歩いて行く。

 いつ、どこで、なにがあるのかわからない。

 それが人生。偶然にして運命。

 たらい回しや後回しは良くないことだ。

 わかっているから、そうするしかない。

 今を楽しむためには、ね? 

 

 

 そういや、明日部活だったな。

 

 

 …………ヤベーよ。双葉のところにいけねーじゃん‼

 こんなこと思い描いたのに!!?? 

 

 …………はっっっっっっっっず!! !!! 

 

 かなりイタい。イタすぎる。

 人生への致命的ダメージが!! 

 

 やめやめ。

 先輩のことは明後日の僕にまかせよ。

 そうしよう!




 こんにちは。そしてはじめまして。
 作者のまっしろ水仙です。

 駄文なのでお目汚しをば。

 語彙力がないので、句読点や地の文が難しいッピ。
 あと、キャラブレが無いかしんぱい。

 では、読了ありがとうございました。
 ちなみに、

 まきのはら みさと 
  牧之原   未 里  という名前です。主人公君は。

 他の作者様方や先駆者アニキアネキの方々の使うルビ振りどうやるんでしょうか?

《追記》
 多機能フォームを使えばいけるんですね。編集完了後のやつを見てなかったので気づきませんでした。
 自分で書いていてなんですけど、愉快過ぎません?未里君
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