仮面ライダー獄王(ゴクオー)   作:アカミツ書庫

10 / 21
 どうも、アーニャです。
 本日4/23に仮面ライダー獄王は一周年を迎えました。ここまで続けられたのも読者の皆さんのおかげです。
 
 今回はそれを記念して――というわけでもないですが、新章開幕となります。
 新キャラ、新妖怪、そして新ライダー。色々な「新」尽くしになっております。是非、お楽しみください。


第二章 
第九話 紅蓮の男


 都内・某空港。

 今ここに一台の飛行機が着陸した。アメリカから飛んできた国際線だ。

 入り口に接続したタラップの上に、一人の男が立つ。茶髪に赤いバンダナを巻き、サングラスをかけた大男。彼は目の前に広がる景色を見て、何が面白いのか薄く笑みを浮かべる。

 

日本(ジャパン)、久々に来たが相変わらず穏やかだな。どこの国よりも平和に感じる」

 

 そう呟くと、男はタラップを降りて行く。目の前にある移動用のバスへと歩きながら、さらに呟く。

 

「さあて、楽しめるだけの戦い(バトル)があれば良いがな」

 

 サングラス越しの瞳を赤く輝かせながら、男はバスへと乗り込んだ。

 

 ★

 

 文車妖妃との戦いから一週間後。

 早苗は無事に退院し、日常生活に戻りつつあった。

 今日は快気祝いとして文香に誘われ、街に繰り出していた。

 

「ええっ!? じゃあカズキ君から告白されて付き合い始めた……ってコト!?」

「ちょ、声が大きいわよ……!」

 

 大声で叫ぶ文香に対し、顔を赤くしながら小声で返す早苗。一瞬周囲の視線が二人に集まるが、すぐに興味を無くしてそれぞれの生活に戻る。

 早苗は少し息を整えてから、再び小声で話し始める。

 

「その……いきなり告白されて……動転しちゃって、普通にアタシも好きって言っちゃって……」

「うわぁ、カズキ君もやるねぇ。一年だっけ? それだけ一緒にいると、逆に言いにくいと思うけど」

「アタシもそう思ってたわよ。でもアイツ、あんなにストレートにど真ん中を狙ってくるとか……」

 

 その時のことを思い出したのか、早苗は頭を抱える。その顔はさらに赤みを増していた。

 そんな彼女を見て、文香は微笑ましく思い、ニヤニヤと笑う。

 そうしていると、一人の男が近付いて来る。

 赤いバンダナとサングラスを身に付けた茶髪の男。身長は180センチを優に超えているだろう。男は辺りをキョロキョロと見回しながら、早苗達に近付き声をかけてきた。

 

「ああ、すみません、お嬢さん方。この辺りの道に詳しいですか?」

「えっ、ええ、まあ」

「どうしたんですか?」

 

 いきなり声をかけられたことに少し驚くも、早苗は顔を上げる。隣の文香も男の方に視線を向けて、用を尋ねる。

 

「いやぁ、少々道に迷ってしまいましてね。駅はどちらにありますかね?」

「それなら、この道を真っ直ぐ行って、交差点を右に曲がると見えて来るはずですよ」

「おお、そうですか。ありがとうございます。ところでーー」

 

 早苗の言葉に、男は礼を言うと、二人の顔を見て薄く笑みを浮かべる。

 

「お二人共、今はお時間ありますか? 道を教えてくれたお礼に何処かでお茶でもいかがですか?」

「えっ……いやぁ、そういうことは……」

「いきなり言われても、ちょっと困りますねぇ」

 

 男の誘いに、早苗は大いに困惑し、文香もやんわりと断る意思を示す。

 それでも、男は簡単に引き下がらずさらに続ける。

 

「そう言わずに、実はオレ、今日アメリカから日本に着いたところで、あまりやることなくて暇なんですよ。出来れば付き合って――」

 

 そう言おうとすると、男の着ているジャケット、そのポケットから電子音が鳴り響く。男はポケットの中からスマホを取り出し、画面に映る文字を確認すると、一瞬だけ片眉を上げる。

 

「ちょっと失礼」

 

 そう言うと、男は早苗達から離れて、電話に出る。

 

「もしもし――えっ、だってこっちじゃ無いのかよ――いや、それを言うなら――ああもう、分かった分かった、そっちに行くよ、じゃあな」

 

 男は電話を切ると、早苗達の方に向き直り、頭を掻きながら口を開く。

 

「すみません、野暮用が出来てしまいました。お茶はまたの機会にということで」

 

 そう言うと、男は身を翻して足早に去って行った。

 その背中を見ながら、早苗と文香はポカンとしていた。

 

「……なんだったの、アレ」

「アレじゃないかな、ナンパってやつ。私、初めてされちゃったよ」

「それならアタシも初めてよ。まあ、別に要らない経験だったけどね」

「ああ、早苗ちゃんにはカズキ君がいるもんね?」

「っ! 余計なことを言うんじゃないわよ!」

 

 そんな会話をしながら、早苗達も歩き出した。

 対して、歩き去ったはずの男は立ち止まって振り返り、先程とは逆に早苗達の背中を眺めていた。

 

「――アレが東堂早苗と南文香、か。中々可愛いじゃないか」

 

 サングラス越しに赤い瞳を輝かせて、ニヤリと笑い、今度こそ男は歩き去って行った。

 

 ★

 

 一方その頃、桜井カズキは買い物袋を持って、雑貨屋東堂への道を歩いていた。

 早苗の快気祝いということで、今夜はパーティをやることになっている。そのための買い出しを済ませて帰るところだった。

 

「文香さんが早苗を引きつけてくれている間に、さっさと準備を済ませないとな」

 

 一人呟きながら、足早に進んで行くカズキ。その歩みは楽しさと喜びを隠し切れず、軽やかなものであった。

 カズキは歩きながら、一週間前のことを思い出していた。

 自らの告白が受け入れられ、晴れて早苗と恋仲になれた。一年間、共に過ごす内に膨らんだ想いが報われた。それに喜ばない人間はいないだろう。カズキもそうであった。

 

「――フフッ」

 

 思わず笑みを浮かべながら、カズキはさらに歩みを早める。

 そうして進んで行くと、曲がり角に差し掛かる。

 

「ええ、ですからそこじゃなくてですね、そこの通りを曲がってから進むんですよ。というか、自分で地図くらい見てくださいよ、もう」

 

 そんな声が聞こえると同時に、曲がり角から女性が現れた。

 紫色に染まった髪をツインテールにまとめて、眼鏡をかけた女性であった。左目は髪がかかって隠れている。

 女性はスマホで通話しながら歩いており、そのまま曲がり角を曲がってこちらに向かってきた。運悪く、カズキも同じタイミングで歩いてきたことで、正面からぶつかってしまう。

 カズキは軽くよろけるだけで済んだが、女性は勢い余ったのか尻餅をついてしまう。

 

「きゃっ」

「おっと、大丈夫ですか?」

「ええ、すみません、ありがとうございます」

 

 カズキはすぐさま女性に手を差し伸べる。その手を取り、女性は立ち上がる。スカートに付いた砂埃を払いながら、女性は口を開く。

 

「電話中とはいえ、不注意でした。申し訳ありません」

「いえいえ、こちらもすぐに避けるべきでした。怪我はありませんか?」

「はい、それは大丈夫です」

 

 カズキと女性は互いに丁寧に対応し合う。どちらからも真面目な気質が窺えるようであった。

 すると、女性の視線が先程差し伸べられたカズキの右手へと向けられる。

 

「どうかしましたか?」

「いえ、大したことではないのですが――貴方、何かスポーツでもやってましたか?」

「えっ、特にはやってませんけど……何故?」

「――貴方の手、なんだか随分と鍛えられているような気がしまして。立派なものだなと」

 

 そう言われて、カズキは己の右手に視線を落とす。特に意識したことはなかったが、戦いの中で少しは鍛えられていたのかもしれない。

 とはいえ、そんなことを話すわけにはいかないので、カズキは適当に誤魔化すことにした。

 

「そうですね、まあ趣味で鍛えてたりするから、そのせいかもしれませんね」

「なるほど――それは素晴らしいですね。では、アタシはそろそろ」

「ああ、はい、そうですね。では僕もこれで――」

 

 そう言って、お互いに去ろうとしたその時。

 巨大な爆発音が響き、周辺を大きく揺らした。

 

「――っ!?」

 

 驚いたカズキはすぐさま音がした方向に振り向く。

 見ると、繁華街の方向で黒煙が昇っている。さらに遠くからサイレンの音まで聞こえてくる。何かが起こっているのは明白であった。

 

「まさか……行かないと!」

 

 カズキは買い物袋をその場に置き、繁華街の方へと走り出した。

 一方、女性はその場に立ったまま、その光景を眺めていた。そして、今の今まで通話を繋いだままだったスマホを耳に当て、会話を再開する。

 

「アタシです。はい、どうやら現れたみたいです。多分、貴方の近くですね。ああ、それと――貴方が探していた人を見つけましたよ」

 

 女性は他にもいくつか伝えた後、通話を切る。

 そして、眼鏡の奥で紫色の瞳を輝かせて、微笑を浮かべるのだった。

 

 ★

 

 カズキが異変に気付く少し前。

 繁華街は行き交う人々によって、大きな賑わいを見せていた。

 しかし、その中で一人、この場には似つかわしくない風貌をした人間がいた。その人間は男であった。顔立ちは日本人ではなく、西洋風という感じを思わせる。だがその服装は上下共にボロボロで、浮浪者かそれ以下の存在のように感じられる。

 男はフラフラとあてもなく歩き回る。そうしている内に周囲の人間を観察するように視線を彷徨わせる。

 周りにいる人々は、皆それぞれの生活を送るために行動している。仕事をしたり、家族と過ごしたり、友達と遊びに来たり、他にも様々な人々が存在している。

 男はそんな人々を見て、妬むように強く歯軋りをした。

 

「どいつもこいつも、幸せそうだなぁ……楽しそうだなぁ……妬ましいなぁ……」

 

 そう呟くと、男は懐から黒い弾丸――アヤカシバレットを取り出す。

 

「みんなみんな、死んでしまえば良いんだ――!」

 

 吐き出すような叫びと共に、アヤカシバレットのボタンを押し込む。

 

《フランケンシュタイン!》

 

 電子音が鳴り響くと、男は自らの胸にアヤカシバレットを突き刺す。

 すると、男の全身が黒いエネルギーに包まれ、球状になる。その球はどんどん大きくなり、激しいスパークを撒き散らす。周囲の人々は何事かと思い、どよめきだす。

 やがて、エネルギーが霧散すると、そこには三メートルはあろうかという巨人が立っていた。全身がツギハギだらけで無理に縫い合わせたような皮膚を持ち、頭部には巨大なボルトが一本突き刺さっている。瞳には黒目が無く、完全に白く染まっている。

 男が変身した怪物ーーフランケンシュタインは、地面に両腕を付き、大声で叫ぶ。その叫び声は周囲のガラスを砕き、至近距離で聞いてしまった人間の鼓膜と脳を破壊する。少し離れて見ていた人間も、爆音により竦んでしまい身動きが取れなくなる。

 いつまで叫んでいただろうか。フランケンシュタインは叫ぶのをやめると、近くに停まっていた自動車を掴み、近くのビルに向かって投げ飛ばす。壁にぶつかった自動車は当然爆発、爆炎と黒煙が昇る。

 人々の悲鳴と怒号、甲高いサイレンの音が響く中で、フランケンシュタインはゆっくりと歩き出し、辺り一面を破壊していく。

 

「これは――!」

「みんな、早く逃げてください!」

 

 たまたま近くに来ていた早苗と文香は、生き残った人々を逃げるように誘導する。それに従い、人々はなんとかこの場から離れていく。

 しかし、それに気付いたフランケンシュタインは、早苗達に視線を向けてそちらに向かって歩き始める。

 

「早苗、文香さん!」

「カズキ!」

「あれは、妖怪か? 今まで見てきた奴とは随分雰囲気が違うが」

「おそらく、西洋妖怪よ。日本で生まれた妖怪とは別の意味で厄介かもしれないわね」

 

 そのタイミングで走ってやってきたカズキが駆け付ける。カズキは二人を庇うように前に飛び出す。

 フランケンシュタインは一定の速度で歩き続ける。その一歩は人間の何倍もの大きさで、すぐにも距離を詰められることだろう。

 カズキは懐からゴクオードライバーを取り出し、腰に装着する。

 

《ゴクオードライバー!》

 

「二人とも、下がっててくれ!」

「分かったわ、任せるわよ」

「うん、気を付けて!」

 

 早苗と文香はその場から走って離れていく。

 カズキは銀色のアヤカシバレットを取り出し、ボタンを押して起動する。

 

《ラセツ!》

 

 ドライバー上部の右端にあるボタンを押し、側面からマガジンを展開、その中にあるスロットにアヤカシバレットを装填する。

 マガジンを中に戻すと、今度はドライバー上部の中央にあるボタンを押して、エネルギーを解放する。

 赤と黒のエネルギーが全身を覆うと、カズキは両腕を正面でクロスさせてから左右に広げる。銃の形にした右手を自らのこめかみに当てると、そのまま撃ち抜く。

 

「変身!」

 

《ジゴク・レンゴク・ヘンゴク!》

《ゴクオー・ラセツ!》

 

 獄王・羅刹バレットに変身したカズキは、腰からヘルソードとヘルガンを引き抜き、フランケンシュタインと対峙する。

 フランケンシュタインはカズキの存在に気付くと、歩みを止めて睨みつけるかのように視線を向ける。互いに様子を伺うために、無言の時間が流れる。

 先に動き出したのはカズキの方だった。地面を蹴って走り出し、剣を振り上げて、左腕に向かって斬りつける。

 フランケンシュタインの腕は非常に硬質であり、ヘルソードの刃を通さない。振り下ろした勢いがそのまま返され、カズキは後方に吹き飛ばされる。

 

「クソッ、硬い!」

「ウオオオオッ」

 

 カズキが舌打ち混じりに苛立った声をあげると、フランケンシュタインも動き出す。右腕を振り上げると、一気に地面に叩きつけてくる。

 間一髪で避けたカズキだったが、地面が割れた衝撃で吹き飛んできた瓦礫が身体に当たり、ダメージを受ける。

 

「ううっ! ちっ、コイツならどうだ!」

 

 左手で握ったヘルガンを構え、引き金を引く。狙いはフランケンシュタインの顔面である。

 五発の銃弾が放たれる。それは空気を切り裂き、顔面に向かっていく。しかし、それよりも早くフランケンシュタインの腕が動き、盾代わりにする。銃弾が当たっても、硬質な腕には傷一つ付かなかった。

 

「これでも効かないのかよ……! ふざけた硬さをしてやがるな!」

 

 攻撃が全く通用しないということに、カズキは焦りを覚える。

 対するフランケンシュタインは、上半身を起こして二足歩行になると、近くに停まっていたバイクや自動車を掴み、投げつける。

 

「うおっ!? 危ないな!」

 

 容赦なく投げつけられるバイク達を、カズキはなんとか避けていく。

 その隙を突き、フランケンシュタインは走って接近、拳を振り抜く。

 

「なっ……」

 

 カズキは反応が遅れて、拳の直撃を受ける。そのまま数メートル吹き飛ばされ、壁に激突する。仮面の内側で血を吐きながら、地面にうつ伏せに倒れる。その衝撃で変身が解かれ、生身の姿に戻ってしまう。

 

「かはっ……一撃で、いや、前の戦いのダメージも残ってたか……!」

「カズキ!」

「カズキ君!」

 

 倒れるカズキの元に、早苗と文香が駆け寄る。なんとか二人に助け起こされるが、ダメージが大きく戦闘を続けられる状態ではなかった。

 そんな三人に向かって、フランケンシュタインはゆっくりと歩み寄る。重々しい足音を響かせながら、三人を始末するために近付いて来る。

 

「クソッ……どうしたら……」

 

 危機的状況にカズキは焦る。しかし、今の自分にはどうすることもできない。なんとかしなければと考えを巡らせる。

 そんなカズキを嘲笑うようにフランケンシュタインは距離を詰めてくる。

 その時、カズキ達とフランケンシュタインの間に銀色の何かが飛んできて、地面に突き刺さる。それは巨大なトマホークであった。

 

『!?』

 

 その場にいる全員が驚き困惑する。フランケンシュタインも動きを止めて、カズキ達の背後に視線を向ける。カズキ達も背後ーートマホークが飛んできた方向に目を向ける。

 そこに居たのは、茶髪で赤いバンダナを額に巻き、赤いジャケットを身に纏い、サングラスをかけた大男だった。男は何かを放り投げたような態勢から、ゆっくりと上体を起こし、不敵な笑みを浮かべる。

 

「あ、アレは……!」

「さっきのナンパ男!?」

 

 その男を見て、早苗と文香が反応する。確かにその男は、少し前に二人をナンパしてきた男であった。

 その声を聞き、男は二人に視線を向ける。

 

「やあどうも、かわい子ちゃん達。いや、早苗ちゃんと文香ちゃんって呼ばせてもらおうかな?」

「えっ……」

「なんで私達の名前を……」

 

 男が笑顔を浮かべてそう言うと、早苗と文香は困惑する。その様子にカズキも訳が分からず困惑する。

 

「アンタは一体……」

「お前のご同類さ、桜井カズキクン」

「俺の名前まで……ご同類?」

 

 さらに困惑するカズキを横目に、男はズンズンと歩いてくる。やがて男はトマホークが刺さった場所まで辿り着き、カズキ達とフランケンシュタインの間に立つ形になった。

 男はフランケンシュタインを一瞥(いちべつ)すると、ニヤリと笑い、唐突に短機関銃(サブマシンガン)を取り出す。それは銀色がベースになっており、所々に赤い炎を模した模様が描かれている。

 男が銃床を引っ張ると、マガジン部分が下にスライドする。それを確認すると、男は左手で銀色の弾丸を取り出した。

 

「っ! それはまさか――」

「アヤカシバレット……!?」

 

 見覚えのあるモノの存在に気付き、カズキと早苗が驚きの声をあげる。

 男はそれを背中で受けて、首だけで振り返る。

 

「では、お見せしよう。――仮面ライダー!」

 

《ウリエル!》

 

 そう言うと、男は弾丸――アヤカシバレットのボタンを押して起動、それからSMGのマガジンに装填、そのままマガジンを押し込み元に戻す。

 すると、SMGが赤と茶色の光を発し、ロック調の音声を流し始める。男はそれを確認すると、SMGを持った右手を顔の左側に構える。

 引き金を引きながら、腕を左から右へと振り抜く。男の眼前、中空に五つの弾丸が横一直線に浮かぶ。更に、男は腕を振り上げ、引き金を引きながら今度は上から下へ振り下ろす。先に浮かんでいた弾丸と中央で交わるように、縦一直線に五つの弾丸が浮かぶ。

 計十個の弾丸、それは十字を描き、男の眼前に浮かぶ。それを確認すると、銃を振り下ろした態勢のまま、男は叫ぶ。

 

「変身!」

 

《クロス・フェイス・グレイス!》

《クルセイド・ウリエル!》

 

 SMGから銀色のエネルギーが放出されると、まず銀のアンダースーツが形成、その上に茶色の鎖を模したアーマーが装着される。白い外套(がいとう)を身に纏い、背中には羽根のようなマークが刻まれる。各所には十字を象ったマークが刻まれ、最後に赤い複眼が光り輝く。

 変身を遂げた男の姿に、カズキ達は再度驚愕する。

 

「あ、あれは……!?」

 

 その声を聞き、男は仮面の下でニヤリと笑い、答える。

 

「――クルセイド。仮面ライダークルセイドだ」

 

 そして、目の前で様子を伺うフランケンシュタインを見据え、SMGを構える。

 

「さあ、懺悔の用意は出来てるか?」

 

 言うと同時に、引き金を引いて弾丸を発射する。秒間六十発もの弾丸がフランケンシュタインに襲いかかる。腕を盾に防ごうとするが、威力が高いために肉体を傷つけられていく。

 フランケンシュタインは両腕を振り回し、無理矢理弾丸を弾き飛ばす。そして、クルセイドに向かって拳を振り抜く。

 

「おっと、そう来たか」

 

 クルセイドは落ち着いて呟くと、SMGを腰のホルダーに収め、地面に刺さったままだったトマホークの柄を握る。そして、トマホークを引き抜くと、それを振り回して刃で拳を受け止める。激しい火花と甲高い金属音が鳴り響き、鍔迫り合いになる。

 巨大な拳と細身のトマホーク、一見すると一方的な戦いのように感じられるが、実際には互角に受け止めている。言葉を発さないが、フランケンシュタインも驚愕している。

 

「おいおい、この程度で驚かれちゃ困るぜ?」

 

 クルセイドはそう言うと、腕に力を込めて思い切りトマホークを持ち上げる。その勢いでフランケンシュタインの態勢は崩される。その隙を見逃さず、クルセイドはトマホークを素早く振り回す。身の丈程もあるはずのトマホークが、まるで重さなど無いという風に振り回され、フランケンシュタインの肉体を切り裂いていく。

 獄王の攻撃では傷一つ付かなかった妖怪が、いとも簡単に傷付けられていく。そのことに、カズキ達も驚愕していた。

 

「凄い……なんてパワーだ……!」

「まだまだ、驚くには早い!」

 

 クルセイドはそう叫ぶと、トマホークを収めて後ろに下がる。

 次に腰に下げていたSMGを取り出し、銃床を引っ張りマガジンを引き出す。そして、左手で新たに、岩石で作られた巨人が描かれたアヤカシバレットを取り出した。

 

《ゴーレム!》

 

 アヤカシバレットを起動して電子音声を鳴らし、マガジンに装填。そのまま押し込んで収納してから引き金を引く。

 

《モンスバレット!》

《ゴーレム・クリエイション!》

 

 すると、クルセイドの両腕を覆うように岩石が集まっていき、巨大な腕を形成する。それを構えると、クルセイドはフランケンシュタインに向かって走り出した。

 

「その玉袋みてえな汚え顎を、これで吹っ飛ばしてやるぜ!」

 

 そう叫ぶと、クルセイドは飛び上がり、フランケンシュタインの顔面に向かって岩石の拳を振るう。

 

「オラァ! オラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

「グオオオオオオッ!?」

 

 巨大な岩石の拳が目にも止まらぬ速さで振るわれ、ラッシュを叩き込んでいく。

 執拗に顔面を殴られて、フランケンシュタインは苦悶の叫びをあげる。なんとか逃れようともがくが、叩き込まれる拳のラッシュはそれを許さない。

 

「オラァ!!」

「グバァ!?」

 

 最後に強烈な右ストレートが叩き込まれ、フランケンシュタインの巨体が吹き飛ばされる。顔面を執拗に殴られたことで、意識が朦朧としており立ち上がるのにも時間がかかっている。

 その様子を見て、クルセイドは高らかに笑い声をあげる。

 

「ハハハハハハ! 良いねいいね! やっぱり戦い(バトル)は良い! 特に一方的に相手を殴ってる時は気持ち良い! これだから戦い(バトル)はやめられねえ!!」

 

 狂ったように、心底から楽しむように、叫びながら笑うクルセイド。そんな姿を見て、カズキは言い知れない恐怖を覚えた。目の前にいる戦士は、自分とは根本的に違う。そう感じてしまう光景だった。

 そんなことなど露知らず、クルセイドは再びSMGを取り出し、操作する。

 

《ウリエル!》

 

 SMGのマガジンにウリエルバレットを装填すると、銃床を二回引っ張り、マガジンを叩いて元に戻す。

 

《ファイナルバレット!》

《クルセイド・ウリエル・フィニッシュ!》

 

 クルセイドがSMGを放り捨てると、背中に刻まれた翼の模様が実体化する。それは茶色に染まった天使の翼であった。その翼を羽ばたかせると、クルセイドは天高く舞い上がった。

 空へ飛んだクルセイドの右足に、白銀と茶色のエネルギーが集まっていく。やがてエネルギーが完全にチャージされると、翼を再びはためかせ、フランケンシュタインに向けて急降下していく。

 ようやく立ち上がったフランケンシュタインは、上空から迫るクルセイドの存在に気付く。しかし、何かをする前にすでに間近まで接近されていた。

 

「ウオオリャアアアアアアアア!!」

「グオオオオッ!?」

 

 クルセイドの放ったライダーキックが、フランケンシュタインの顔面に命中、そのまま地面に押し倒す形になった。五体を放り出すように地面に倒れたフランケンシュタイン、そんな相手にクルセイドは心底から楽しそうに言う。

 

「じゃあな、楽しかったぜ」

 

 そう言うと、クルセイドは顔面から飛び退き、宙返りを一つしながら距離を取り、地面に着地する。

 それと同時に、フランケンシュタインの全身がスパークに覆われ、やがて大爆発を起こし、消滅した。

 それを確認すると、クルセイドはSMGを拾い、マガジンからアヤカシバレットを取り外す。すると、全身を覆っていたスーツが消滅し、変身が解除される。

 男が両腕を上に伸ばしたり、身体を捻ったりしていると、カズキ達の背後からまた一人の人物が歩いてきた。

 

「あっ、いたいた。もう、アタシが来る前に終わらせないでくださいよ」

 

 それは、先程カズキが出会った紫髪に眼鏡をかけた女性であった。女性は不満げに頬を膨らませると、男の元へ歩み寄った。

 

「なんだよ、レイ。お前が来るのが遅いんだろうが。それともオレが戦わないで、被害が増えた方が良かったか?」

「アタシがいないと、すぐに見境失くしてあちこちに被害出しちゃうじゃないですか。その後処理もアタシの仕事なんですよ? あまり面倒を増やして欲しくないんですけどね」

「なんだよ、うるせえなぁ。今回は壊してないから良いだろ? ほら、アイツが先に壊したところしかないじゃん」

「……それを一々証明するのも大変なんですけどねぇ」

 

 二人は軽い口調で会話を交わす。その様子はまるで長年連れ添ってきた夫婦のように気安く、親しい間柄であることが伺えた。

 早苗と文香に支えられて立ち上がったカズキは、そんな二人に向かって問いを投げかける。

 

「アンタ達、一体何者なんだ……?」

「ん? ああ、失礼。自己紹介を忘れてたぜ」

 

 その言葉に、今になって思い出したように男は反応する。

 

「オレはダイヤ、赤獅子(あかじし)ダイヤ。んで、コイツはレイ・キリエ。オレ達は《教会》からやって来た――仮面ライダーだ」

「どうも、レイ・キリエです。あっ、アタシは仮面ライダーではなくサポーターですのでぇ」

「……締まらねえなぁ」

 

 ドヤ顔で語る男――赤獅子ダイヤだったが、マイペースに訂正する女性――レイ・キリエの言葉に肩を落とす。まるで漫才のようなやり取りであった。

 コロコロと見せる顔を変える二人組に、呆気に取られるカズキ達。

 この出会いが、新たな波乱の幕開けになることを、まだ誰も知ることはなかった。

 




 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 第二章の開幕はいかがでしたでしょうか。個人的にはついにここまで来れたか、という気持ちです。一つの目標が達成されました。
 以下、簡単なキャラ紹介です。

・赤獅子ダイヤ
 25歳、身長188cm、体重70kg。茶髪、赤いバンダナ、赤いジャケット。日米ハーフ。仮面ライダークルセイド


【挿絵表示】


・レイ・キリエ
 25歳、身長162cm、体重48kg、94(H)/58/88。紫髪、ツインテ、眼鏡。アメリカ人。


【挿絵表示】


 イラストは例によってリア友に描いてもらいました。中々に個性的に仕上げてくれました。一周年に相応しい。
 今回で登場した二人が、新たなレギュラーキャラとなります。どんな活躍をしていくのか、今後にもご期待ください。

 さて、今回はこの辺で。次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。