仮面ライダー獄王(ゴクオー)   作:アカミツ書庫

13 / 21
 どうも、アーニャです。 
 今月も更新できました。少し早いかな。 
 今回はダイヤ編の『結』。色々あった話がようやく一段落付きます。……付いたと思います。
 まあ、その辺は読んでもらった人達に判断してもらいたいです。
 とりあえずお読みください。


第十二話 異色の宴

 妖怪達が根城にしている廃墟。今ここに、新たな客人がやって来た。

 茶髪にグレーのスーツを纏った青年、ハヤト。その傍らには、スノーとレーナと呼ばれた二人の少女も控えている。

 対するのは日本妖怪を率いる三幹部。酒呑童子、女天狗、九千坊である。計六体の妖怪は、それぞれの陣営に分かれて向かい合っていた。

 

「お初にお目にかかります。私はルシファー。この度、西洋妖怪の新たな指導者(リーダー)となった者です」

 

 ハヤトは胸に手を当てながら、恭しく礼をする。

 そんな彼に対し、酒呑童子が口を開く。

 

「貴様が新たな指導者だと? サタンはどうしたというのだ」

 

 その問いかけに、ハヤトは頭を上げて、不敵な笑みを浮かべる。

 

「前任者のサタン殿には、公正な戦いの元で、ご退場願いました。彼を討ち滅ぼした私こそがリーダーに相応しいと、全ての西洋妖怪が認めています」

「なんだと……?」

 

 思わぬ発言に、酒呑童子は片眉を上げる。

 サタンとは、西洋妖怪の元締めを務めていた妖怪である。彼もまた、酒呑童子達と肩を並べる程の実力者であった。

 そんな彼が、目の前の若造に敗れたということは、酒呑童子の胸中に驚愕を生んだ。それは他の二体にとっても同様であった。

 

「おいおい、マジかよ。あのサタンが死んだのか?」

「へえ~、見かけによらず結構やるのね」

 

 九千坊と女天狗も、驚きと感心が入り混じったように言う。

 そうすると、ハヤトの隣に立っているスノーとレーナも口を開く。

 

「彼の言っていることは本当です。彼は私達が見ている前で、サタンを殺し、その力と座を奪い取りました」

「まさにぃ、名実ともに私達の支配者様になったってわけぇ。凄いよねぇ」

 

 スノーとレーナ、彼女達も長年サタンと共に西洋妖怪を管理していた古参の妖怪である。

 その彼女らがハヤトを認め、仕えていることからも、サタンの死は事実であることが伺えた。

 酒呑童子は目を閉じて、一つ息を吐く。

 

「……貴様が西洋妖怪の新たな指導者だということは理解した。それで我々に何の用だ。よもや挨拶を交わしに来ただけということもあるまい」

 

 目を開き、無表情で睨みつけながら、酒呑童子は言う。

 その圧に多少押されながらも、ハヤトは引くことなく答える。

 

「実は一つお願いがありましてね。近いうちに我々は事を起こします。そこでは手を出さず、黙って見ていて欲しいのです」

「おいおい、それは失礼じゃないか? いきなりやって来た新参者が、俺達の縄張りで好き勝手やるのを黙って見てろだと?」

「そうね。これまでは真意を探るためにも、あえて放っておいたけど、流石に堂々と宣言されちゃ、こっちも気に食わないわ」

 

 ハヤトの言葉に、九千坊と女天狗が前に出る。二体共、いつでも戦闘を起こせるような気迫であった。

 対して、スノーとレーナも、ハヤトを守るように前に踏み出す。こちらも臨戦態勢であった。

 

「貴方達には悪いですが、『兄さん』の邪魔をさせるつもりはありません」

「そうそう、長い付き合いだけど、こればかりはちょっと譲れないかなぁ」

 

 まさに一触即発という空気である。

 そんな状況を、酒呑童子が片手を上げて制する。

 

「勝手にするが良い。ただし、何か不都合が起きても我々は一切干渉しないぞ」

 

 その言葉に、九千坊と女天狗は驚きの表情を浮かべる。

 ハヤトの方は、一つ深呼吸をしてから。

 

「分かりました、もちろんそのつもりです。ご協力感謝します」

 

 そう言って、一つ礼を行い、部屋から出て行った。スノーとレーナもそれに続く。

 三体の姿が見えなくなると、九千坊が口を開く。

 

「意外だな、お前が余所者を拒まないなんて。どういう風の吹き回しだ?」

 

 酒呑童子はすぐには答えず、瓢箪から盃に、酒を注いでから答える。

 

「何、ただの好奇心だ。サタンを倒したという男が、この国に来て何をするのか、我々にとって益となるか、毒となるのか、それを見極めたいと思っただけだ」

「ふ〜ん、まあ冷静な酒呑らしいわね。でも、アレは相当変わってる男よ?」

 

 女天狗の言葉に、酒呑童子は頷きながら。

 

「ああ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。何を企んでいるのか、しっかりと把握しておかなくてはな」

 

 そう言うと、盃の酒を飲み干すのだった。

 

 ★

 

 雑貨屋《東堂》は、臨時休業の札を掲げてシャッターを閉めていた。

 その内部、生活スペースであるリビングに、三人の人物がいた。

 桜井カズキ、東堂早苗、そして《教会》からやって来たレイ・キリエ。

 レイは目の前に出されたコーヒーカップを見ながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「今日は、貴方達にお話したいことがあります」

 

 そう言うと、レイはコーヒーを一口飲む。

 カズキと早苗は、なんとなく何を聞かされるのか分かっていた。

 

「もしかして、この前出会った『ハヤト』という男についての話、ですか?」

「……はい、その通りです」

 

 カズキの質問を、レイは肯定する。その表情は、暗く重苦しいものだった。

 

「彼は、ハヤト・レンディ。かつては私やダイヤさんと同じ《教会》の遊撃部隊に所属していた男です」

「《教会》の人間……裏切り者ってのはそういうことですか」

 

 カズキの言葉に、レイが頷く。

 

「彼はとても優秀な戦士でした。妖怪との戦いにおいても、多くの敵を討ち果たし、人類を守っていました。私にとっても、ダイヤさんにとっても、誇れる友人でした」

 

 レイは懐かしむように、微笑を浮かべる。だがすぐに表情が曇る。カズキと早苗は、その内心を察する。

 

「ですが半年前、彼は突然妖怪へと身を堕としました。しかもあろうことか、人間としての意識を保ったまま、です」

「なんだって……!?」

 

 その言葉に、カズキは目を見開き驚愕する。隣に座る早苗も、同様であった。

 本来、妖怪になってしまった時点で、人間の意識は消し去られる。そこに多少の個人差はあれど、時間の経過と共に完全に消滅し、妖怪に乗っ取られる。それが妖怪化の法則である。

 だが、それに抗った人間が存在した。その事実はにわかには信じられないことであった。

 

「彼が手に入れた力はルシファー。聖書にも載るこの世で最も有名な堕天使です。普通の人間なら、その強大な力に耐えられず、一瞬で完全に意識を消滅させていたでしょう」

 

 でも――、とレイは続ける。

 

「彼が変身したルシファーは、完全に彼の人格そのままでした。性格も、口調も、戦い方すらも、人間の頃とまるで変わらない。私達は痛感しました。彼が自らの意識を保ったまま、妖怪へと変わり、我々を裏切ったのだと」

 

 そこまで語ると、レイは再びコーヒーを飲む。三分の一程を飲み干すと、話を再開する。

 

「その時、私とダイヤさんは別の任務で部隊から離れていました。……その間に彼は、ハヤトさんは妖怪の力を手に入れて――部隊のメンバーを皆殺しにしたんです」

 

 レイは目を伏せて、絞り出すように言う。

 あまりの衝撃的な内容に、カズキと早苗は思わず息を呑んだ。

 

「私達が戻ると、そこはまさに地獄絵図でした。ある者は頭部を砕かれ、ある者は胴体を真っ二つにされ、またある者は肉体の内側から生えて来た氷によって全身を貫かれていました」

 

 戦慄の内容に、早苗は思わず口元を抑える。

 カズキの方も、かつての仲間にそんなことが出来るハヤトという男に、強い嫌悪を抱いていた。

 

「その時もまだハヤトさんは現場に残っていたので、ダイヤさんが戦いを挑みました。ですが彼の力は圧倒的で、敗北してしまいました」

「あのダイヤが……」

 

 思わず口に出すカズキ。短い付き合いだが、ダイヤが強いということは理解していた。そんな男が負ける程の相手が存在することに驚いていた。

 

「その場はなんとか凌げましたが、それ以来、私達は彼を倒す事を目的に生きて来ました。特に何故、彼が私達を裏切ったのか、それを知るために」

「まさか、貴女達が日本に来たのは――」

「ええ、西洋妖怪が日本に移動しているとの情報を受けて、ハヤトさんもいるんじゃないかと思い、この国に来たんです。かつてダイヤさんが語った三つの理由、その最初の一つがこれなんです」

 

 そう言って、レイは再びコーヒーを飲む。

 カズキと早苗は、互いに顔を見合わせた。思っていた以上に状況が深刻だったからだ。

 そんな二人に向かって、コーヒーを飲み終えたレイが、改めて口を開く。

 

「こんなお話をしに来たのは、他でもありません。貴方達にも力を貸して欲しいからです。ハヤト、いえルシファーの力は脅威です。そんな彼が日本にいれば、必ず厄介なことを起こします。対抗するには、私達全員が力を合わせる必要があるんです」

「……事情は分かりました。でも、ハッキリ言わせてもらうと、俺は赤獅子ダイヤという男を信用できない。それは向こうも同じだと思いますが?」

 

 レイの言葉に、カズキは重苦しい口調で答える。今の話を聞いても、なおカズキの胸中にはダイヤへの不信感が残っていた。

 それを聞いたレイは顔をしかめながら。

 

「確かに、ダイヤさんは貴方達の力を借りることを嫌がるでしょうね。そして、ダイヤさんの言動のおかげで、貴方が不信感を持っていることも分かっています。それでも、私は貴方達に頼りたい。ハッキリ言って、私達だけで彼に勝てるとは思えないんです。彼の力は強い。それこそ、斜陽気味であった西洋妖怪の勢いを、簡単に取り戻せるくらいに」

 

 それを聞いて、カズキは腕を組み、考える素振りを見せる。

 日本に逃げて来た西洋妖怪は、単独でもカズキを圧倒できる程の強さを持っているのは確かだ。そんな相手に対し、ダイヤの存在は有効な戦力であると言える。

 だが、戦うことしか頭にない戦闘狂と、どうやって協力すれば良いのか。それがカズキには分からなかった。

 無言で考え込んでしまうカズキ。向かいに座るレイは、不安そうにその様子を見ている。

 その状況を見かねて、早苗が口を開いた。

 

「とりあえず話は分かったわ。ひとまずアンタ達と協力するかどうかは保留にさせて頂戴。アタシ達としても色々と予想外のことが立て続けに起こって、整理する時間が必要なのよ」

 

 早苗がそう言うと、カズキは少し驚いたように顔を向ける。レイも、少し考える素振りを見せると、一つ頷いてから答える。

 

「分かりました、それではこの場は失礼します。良いお返事を期待していますね」

 

 そう言うと立ち上がり、部屋を出て行った。

 レイが部屋を立ち去るのを見送ると、カズキが口を開く。

 

「……ありがとう、早苗。助かったよ」

「まあ、アンタが悩んでるのは嫌という程分かってるしね。頭冷やして、よく考えてみなさい」

「ああ、そうするよ。本当に厄介な連中が来てしまったものだなぁ」

 

 カズキはそう言いながら、ソファにもたれて天井を眺めるのだった。

 

 ★

 

 レイは人気の少ない道を、一人で歩いていた。

 電車の線路と面している道で、人が通ることはほとんどなかった。

 

「ふう、これで少しは好転すると良いんですが」

 

 そう一人ごちる。

 今回の交渉は、ダイヤには告げずに行っていた。普段のレイならそのようなことをしようと思わないが、ハヤトが明確に動き出した以上、こちらも手を打たねばならないと考えていた。

 

「ん?」

 

 ふと、レイは足を止めた。その場で後ろに振り返る。

 わずかに何者かの気配を感じた。視界の中には誰もいないが、誰かに見られているような感覚を覚える。

 レイは、少し考えると足早にその場から去ろうとする。

 

「おや、そんなに急いでどこに行くつもりですか?」

 

 前に向き直ると、どこからともなくハヤトが現れた。相も変わらず、グレーのスーツを着こなしている。

 

「ハヤト、さん……何故貴方がここに?」

「理由など明白でしょう。貴方に会いに来たんですよ」

 

 警戒するように半歩下がり、腰を落として構えるレイ。それに対し、ハヤトは肩をすくめて何の気無しに答えた。

 

「私に、ですか。貴方が興味を持っているのは、ダイヤさんだけじゃないんですか?」

「そんなことはありませんよ。かつての同胞である貴方にも、きちんと興味を持っていますよ。特に――」

 

 そこまで言うと、ハヤトの瞳が冷たく輝く。

 

「彼を釣る餌としてはね」

 

 ハヤトがそう言った瞬間、レイの背後から何かが急速に近付いてくる気配を感じる。レイはすぐさま振り返り、応戦しようとする。

 しかし、それより一瞬早く、足が動かなくなる。視線を向けると、両足が凍りつき地面に固定されていた。その氷は、ハヤトの両足から地面を伝うように伸びて来ていた。

 

「なっ……」

 

 思わぬ事態にレイは動揺する。その間にも背後から近付いてくる気配が迫ってくる。急いで背後に視線を向ける。

 迫ってくるのは、以前ダイヤ達が戦ったドラキュラであった。ドラキュラは腕を伸ばし、口を大きく開けて鋭い牙を剥き出しにしながら迫ってくる。

 避けることが不可能だと判断したレイは、咄嗟にスカートの中からナイフを取り出し、左手に握ると、勢いを付けて後ろに振り抜く。

 振り抜いたナイフは、ドラキュラの左肩に命中する。しかし、それで止まることはなく、レイの両肩を掴んで、首筋に噛み付いた。

 

「ぐあっ!! ぐうっ……ううっ……」

 

 レイは痛みに顔を歪めて、やがて力尽きたように気絶する。

 ドラキュラは倒れそうになる身体を支え、意識を失っていることを確認すると、首から口を離した。

 

「ご命令通り、彼女の血は吸いました。これで目覚めた時には、彼女は我が下僕になります」

「よくやってくれました、ドラキュラ。貴方を生み出したのは正解でしたね」

 

 そう言うと、ハヤトは足元の氷を解除する。気絶しているレイは、ドラキュラに抱えられて連れられて行く。ハヤトはその後ろを歩き出した。

 

 ★

 

 次の日、カズキと早苗はいつものように店で働いていた。ダイヤや西洋妖怪のことも気がかりだが、いつもの生活を送ることも欠かせない。

 今日もやって来る客達をさばき一段落していると、店の扉を開けて文香が入って来た。

 

「こんにちは~。今日も忙しそうだね」

「こんにちは。毎度繁盛させてもらってます」

「忙しいのが分かってるなら、手伝ってくれても良いんじゃない?」

「いやほら、私は記者だから。接客とかできないし~」

 

 最早定番となりつつある会話を交わしながら、文香は店の棚を物色する。早苗は肩をすくめると、奥の部屋へと消えて行った。

 カズキが立ち上がり、カウンターの整理をしていると、再び扉が開かれる。

 

「こんちは~。大将、やってる?」

 

 店に入って来たのは、ダイヤだった。その顔を見た途端、カズキは複雑な表情を浮かべる。

 

生憎(あいにく)だが、ここは居酒屋じゃないぞ」

「んなこたぁ分かってるよ。冗談の通じない奴だな」

 

 カズキの冷静なツッコミにも、ダイヤは笑いながら流す。そして、同じく店の中に居る文香の方に目を向ける。

 

「どうも、文香ちゃん。今日も可愛いね」

「はあ、どうも……今日は一人なんです?」

「そうそう、それで今日はここに来たんだよ。レイの奴、見なかったか?」

 

 ダイヤの口説き文句も適当に流されるが、特にめげることなく話題を切り替える。

 その質問に、カズキは首をかしげた。

 

「レイさんなら確かに昨日ここに来たが……その後戻ってないのか?」

「やっぱり来てたか。昨日の夕方から連絡取れなくてな、どこに行ったのかと探してるところなんだよ」

 

 あっけらかんと答えるダイヤ。逆にカズキは少し慌てた様子になる。

 

「おい、それって何か事件に巻き込まれたんじゃないのか? それこそ妖怪絡みで何か……」

「バカ言うなよ、アイツは仮にも《教会》の女だぞ? その辺の妖怪に遅れを取るような真似はしねえよ」

「でも、連絡が取れないっていうのは変じゃないですか?」

 

 ここで文香も口を挟んできた。ダイヤはそれには確かに、という風に頷き。

 

「それはそうなんだよな。だから心配して、こうして探し回ってるんだ」

「とても心配してる風には見えないけどな」

「まあ、アイツを信用してるのも事実だからな。とはいえ、手がかり無しでね。どうしたもんかなぁ」

 

 そう言ってダイヤは肩をすくめる。そうしていると、店の奥から早苗が姿を現す。お盆に載せたコーヒーカップを持ちながら。

 

「お待たせ、コーヒーよ。って、アンタまた来てたの?」

「どうも、お邪魔してるよ、早苗ちゃん。今日も美人だねぇ」

 

 少しだけ警戒するような声音で言う早苗に、相変わらずの飄々とした態度でダイヤは答える。

 

「お前、レイさんとはどういう関係なんだ? 単に《教会》の仲間って訳じゃ無さそうだけど」

 

 カウンターから出てきて、早苗をかばうようにしながら、カズキが問う。その様子を見て、楽しそうに笑いながら、ダイヤは答える。

 

「まあ、分かりやすく言うなら、恋人かな? ガキの頃からの付き合いでね、自然とそんな形になってた。オレが本気で惚れた唯一の女だ」

「……その割には、随分と女好きなようだな」

「そりゃ、女の子ってのは等しく愛しいからな。特に美人なら大歓迎。別に結婚してるわけでもなし、好きに遊んでもバチは当たらねえだろ?」

 

 その発言に、カズキは信じられない物を見るような目で、ドン引きした。早苗と文香も、ゴミを見るような目になる。

 

「最低ね、アンタ」

「同感です」

「アレ~? めちゃくちゃ好感度下がってない?」

「むしろ上がる要素なんか無かっただろ」

 

 女性陣の罵倒を受けてなお、態度を改めることの無いダイヤに対し、カズキは再びツッコんでしまう。

 そんな馬鹿話をしていると、ダイヤのポケットから着信音が鳴り始めた。

 

「おっと、噂をすればか?」

 

 そう呟きながらダイヤはスマホを取り出す。画面に映る着信先は、レイの物だった。

 

「どうやら向こうから連絡が来たみたいだ。悪いね、世話かけて」

 

 そう言ってダイヤは画面を操作して、電話を受ける。

 

「もしもし? お前、今どこに――」

『こんにちは、ダイヤ。本日も元気そうで何よりです』

「……なんでテメェが出てくるんだよ、ハヤト」

 

 予想外の相手が出てきたことに、ダイヤは苛立ちを込めた声で聞く。その様子と言葉に、カズキ達にも緊張が走った。

 電話の向こうのハヤトは、淡々と口を開く。

 

『その理由は簡単ですよ。貴方の彼女――レイは今、我々が預かっています。返して欲しければ、一時間後に街外れの採掘場跡地まで来なさい』

「なんだと……ふざけてんのかテメェ」

『私が冗談を言ったことがありますか?』

 

 その言葉にダイヤは口をつぐむ。ハヤトは楽しそうな声音で更に続ける。

 

『もちろん、来るのは貴方一人です。そうでなければ、レイの命は無いと思いなさい』

「おい、待ちやがれ!!」

 

 ダイヤは叫ぶが、無情にも電話を切られる。怒りの形相を浮かべて、スマホを握りつぶさんばかりに力を込める姿に、カズキ達は息を呑む。

 

「……何があった?」

「……レイが、ハヤトにさらわれたらしい」

 

 カズキの問いかけに、ダイヤは搾り出すように答える。カズキ達は目を見開き、驚愕する。

 

「なんだと……!? 今すぐ助けに――」

「いや、オレ一人で行く。そうでなければ、レイを殺すと言いやがった。文香ちゃん、この街の外れにある採掘場って分かる?」

「え、ええ。分かりますけど……」

「ならその場所を教えてくれ。奴はそこにいるらしい」

 

 ダイヤは拳を強く握り、激しい怒りと苛立ちを示しながらも、不敵に笑っていた。その姿を見て、カズキは考える。

 やがて、文香から目的地を教えてもらい、ダイヤは店から出ようとする。その時、カズキは動いた。

 

「ちょっと待て、アンタに一つ聞きたいことがある」

「……なんだよカズキ。あまり時間はねえんだけど?」

 

 扉の前で振り向くダイヤに対し、カズキは静かに歩み寄る。そして、ゆっくりと問いかける。

 

「アンタにとって、レイさんは本当に大切な人か?」

「なんだよ、突然。今聞くことか?」

「いいから答えてくれ。彼女のことを本当に大切に思ってるのか?」

 

 真っ直ぐな視線を向けて詰め寄るカズキ。そんな彼に対し、ダイヤは頬を掻きながら、少し照れ臭そうに答える。

 

「――ああ、大事だよ。なんやかんや言っても、オレにとってはアイツが一番だ。それこそ命を懸けてやっても惜しくないね」

 

 その言葉を聞いて、カズキは何かを思案するように目を閉じる。少しして目を開き、納得したように頷く。

 

「――分かった、その言葉を信じる。俺も彼女を助けるために手を貸すよ」

 

 カズキの申し出にその場にいた全員が驚いた。ダイヤは目を二、三度(まばた)かせてから、口を開く。

 

「そりゃありがたい話だが、いいのか? お前、オレのこと嫌いなんじゃないの?」

「確かに、気に食わないところもたくさんあるよ。でも――」

 

 カズキはそこまで言うと、後ろを振り向き、早苗の方を見る。

 

「――大切な人を傷付けられた時の痛みや苦しみは、俺もよく分かる。だから、そんな悲劇が起こって欲しくない。例えお前みたいな気に食わないような相手のことでもね」

 

 カズキは正面に向き直り、微笑を浮かべてそう言った。

 その言葉に、早苗は嬉しそうに微笑む。文香も感心したように息を吐く。

 ダイヤはしばしの間、無言で佇むが、やがてニヤリと笑った。

 

「ハッ、言ってくれるじゃねえか。だが、そういう奴は嫌いじゃねえな」

 

 そう言うと、ダイヤは右手を差し出す。

 

「お言葉に甘えて頼らせてもらう。――オレの女を取り戻すために、手を貸してくれ」

「ああ。もちろんだ」

 

 カズキも右手を出して、腕を組む形に互いの手を握る。ここに来てようやく、協力関係を結ぶことになったのだった。

 

「あと一つ、今回のことが上手くいったら、この国で暴れるのは控えてくれよ」

「ちゃっかりしてんなぁお前。まあ、考えてやるよ」

 

 ★

 

 一時間後、街外れの採掘場跡地。

 周りに何も無い広場の中央に、ハヤトは無言で佇んでいた。やがて来るであろう一人の男を待つために。

 やがて、その耳に騒がしいエンジン音が聞こえてくる。ハヤトはゆっくりと目を開く。

 白銀のバイクに乗ってやって来る、赤いバンダナを付けた男――ダイヤは、ハヤトの目の前でバイクを停めると、素早く降りて対峙する。

 

「よう、来てやったぜ、ハヤト。レイはどこだ?」

「よく来ましたね、ダイヤ。彼女ならあそこですよ」

 

 ハヤトはそう言って、離れた場所にある崖の上に視線を向ける。ダイヤもそれに従う。

 崖上には、虚ろな瞳で棒立ちしているレイ、その隣にドラキュラが立っていた。

 

「レイ!!」

「声をかけても無駄ですよ。今の彼女はドラキュラに血を吸われた、哀れな奴隷でしかない。我々の言葉は届かない、ドラキュラの命令にのみ従う存在です」

 

 淡々と告げるハヤト。その言葉に、ダイヤは激しい怒りを見せる。

 

「血を吸わせただと……!? なんでそこまでしやがる! オレに用があるなら、アイツを巻き込む必要はねえだろ!」

「そうでもしなければ、貴方と取引はできないでしょう?」

「取引……?」

 

 思わぬ言葉に、ダイヤは訝しむ。

 ハヤトは右手を差し出しながら、微笑を浮かべて言う。

 

「彼女を救いたければ、貴方も妖怪になりなさい、ダイヤ」

「なん……だと……?」

 

 更に予想を超える言葉に、ダイヤは絶句した。

 姿勢はそのままに、ハヤトは淡々と続ける。

 

「かつての私と互角の力を持っている貴方なら、私と同じように妖怪になっても人の心を保つことができるでしょう。そうして、共にこの世界で暴れてやろうじゃありませんか」

「……お前、本当にイかれちまったのか?」

 

 驚きで怒りが収まり、冷静に語れるようになったダイヤは、思わずそう零した。

 その言葉に、ハヤトは笑みを消して、冷たい声音で返す。

 

「酷い言われようですね。私は単に貴方にとってもプラスになる話をしているだけですよ」

「バカ言うな、妖怪なんぞに成り下がるくらいなら、死んだ方がマシだぜ」

「断れば彼女を殺すと言ってもですか?」

 

 ハヤトの宣告に、ダイヤは再び険しい表情になる。

 

「テメェ……」

「貴方が断れば、レイをあの場から飛び降りさせます。ドラキュラの下僕と言っても、それは精神だけの話。人間の身体で飛び降りれば、間違いなく死にますよ」

「そこまで腐りきってるとはな、見損なったぞ、ハヤト。人間だった頃のお前は、もっとマシだった」

「過去のことはどうでも良いことです。さあ、答えなさい、ダイヤ。妖怪となって彼女を救うか、信念を貫いて彼女を殺すか――」

 

 両手を掲げて、非情な二者択一を迫るハヤト。その表情は無感情ながらも、妖怪としての醜悪さを感じさせる雰囲気を漂わせていた。

 ダイヤは拳を握り、激情に身を震わせる。ゆっくりと持ち上げた右手の拳を見て、ダイヤは決断する。

 

「ああ、答えてやるよ。返事はNOだ。妖怪になんて、なりたくないね」

 

 その答えに、ハヤトは表情は変えずに、片眉だけを上げた。そして両手を下げてから、首を左右に振った。

 

「意外ですね。貴方は彼女を見捨てないと思っていましたが」

「……」

「まあ、それが貴方の答えだと言うのなら、最早彼女に用はありません」

 

 ハヤトはそう言うと、左手で合図を出す。

 その合図を受けた崖上のドラキュラが、レイに指示を出す。

 レイはその命令に従い、自ら崖際に向かって歩き出す。その瞳に意思の光は無く、操り人形と言える状態であった。

 そして、そのまま崖から身を投げ出し、飛び降りてしまう――

 

《アヤカシバレット!》

《カマイタチ・ウィンド!》

 

 レイが崖から落ちた瞬間、電子音声が鳴り響く。更に突如、巨大な竜巻が発生し、レイを遥か上空まで打ち上げた。

 

「な、なんだ……!?」

「これは……!」

 

 突然の事態にドラキュラとハヤトは驚愕する。それに対し、ダイヤは慌てることもなく、ニヤリと笑っていた。

 そして、異変はまだ終わらない。

 

《テンクウ・カックウ・シンカク!》

《ゴクオー・ヤタガラス!》

 

 更なる電子音声が鳴り響くと、白と黒に染まった何者かが、上空のレイの元へ飛んでいき、彼女を抱きかかえて地面に降り立つ。

 それは、白のスーツに黒いローブを纏った獄王・ヤタガラスバレットに変身したカズキであった。

 

「ふう、なんとかなったな。ってうおっ!?」

 

 地面に降りたカズキが一息吐いていると、抱きかかえていたレイが突如暴れ出した。拘束から逃れると、カズキに向かって拳を振り回してくる。

 

「くっ、ドラキュラに操られているのか……! 厄介だな!」

 

 的確に急所を狙ってくる相手に、カズキは思わず毒づく。仕方なく、拳を握って迎え撃つ。

 

「すみません……!」

 

 そう謝罪すると、カズキは拳をレイの腹に打ち込む。可能な限り力を抑えて、身体を傷付けないようにする。

 レイは一瞬目を見開くと、そのまま力尽きたのか気絶する。

 

「よし、早苗、文香さん!」

 

 カズキが叫ぶと、物陰から早苗と文香がやって来る。カズキは二人にレイを預ける。

 

「二人共、レイさんを頼む!」

「分かったわ」

「任せといて!」

 

 そう答えると、二人はレイを抱えて離れていく。

 カズキはその背中を見送ると、ダイヤの元へと向かう。

 

「……やってくれましたね、ダイヤ」

 

 一部始終を見届けたハヤトは、不愉快そうな声音で言う。

 ダイヤは余裕の表情で、肩をすくめて答える。

 

「いやぁ、オレも最初は一人で来るつもりだったんだけどな。アイツが協力してくれるって言うからさ」

「最初から眼中に無いであろう俺が隠れていても、警戒されることは無いと思っていたんだが、ここまで上手くいくとは思わなかったよ」

 

 そう言いながら変身を解除したカズキが、ダイヤの横に並び立つ。その光景に、ハヤトは明確に不愉快そうな表情を浮かべる。

 

「……なるほど、日本の仮面ライダー。所詮は素人(アマチュア)だと思って放置していたことが仇になるとは。私も油断していましたね」

「人間の心を持っているとは言っても、妖怪の傲慢さは消しきれないみたいだな。そこが付け入る隙ってわけだ」

「そういうことだな」

 

 カズキの言葉に、ダイヤも同調する。更にダイヤはカズキの肩を組みながら、続けて言う。

 

「どうだい、ハヤト。オレがこの国で出会った、新しいダチの活躍は?」

 

 その言葉に、ハヤトは頭を軽く掻きむしる。やがて、一つため息を吐くと、顔を上げる。

 

「来なさい、ドラキュラ」

「ハッ!」

 

 ハヤトの呼びかけに、ドラキュラがコウモリに包まれて現れる。こちらも苛立っているのか臨戦態勢だった。

 

「こうなったら仕方ありません。貴方の手でこの二人を始末しなさい。その後は逃げた女達です」

「かしこまりました!」

「貴方が死ねば、レイの洗脳は解ける。そうならないようにしっかりとやりなさい」

 

 そう言うと、ハヤトの身体が闇に包まれ始める。そして完全に包まれる直前に、ダイヤに向かって言葉を投げる。

 

「今回は私の負けを認めましょう。また次の策を用意させてもらいます。それでは、ご機嫌よう」

 

 そうして、ハヤトは闇に包まれて消え去った。

 残されたドラキュラは、激しく殺意を見せて、カズキ達を睨みつける。

 

「我が主の命だ、今度こそお前達を皆殺しにしてやる!」

 

 しかし、それだけの殺意を向けられても、カズキ達は臆しなかった。それぞれの変身アイテムを取り出し、堂々と構える。

 

《ゴクオードライバー!》

《クルセイドSMG(エスエムジー)!》

 

「悪いな、お前にまともに付き合うつもりは毛頭ない」

「さっさと倒して、レイを元に戻させてもらうぜ!」

 

 冷静に語るカズキと、荒々しく叫ぶダイヤ。二人は同時にアヤカシバレットを取り出し、ボタンを押し込んでから、それぞれの変身アイテムに装填する。

 

《ラセツ!》

《ウリエル!》

 

 カズキがゴクオードライバーにアヤカシバレットをセットすると、赤黒いエネルギーが放たれて右手に収束する。その右手を自らのこめかみに当てる。

 ダイヤがクルセイドSMGのマガジンにアヤカシバレットを装填すると、白と茶色のエネルギーが放出され、その状態で目の前に銃弾で十字を切る。

 お互いに準備が整うと、同時に叫ぶ。

 

「「変身!!」」

 

《ジゴク・レンゴク・ヘンゴク!》

《ゴクオー・ラセツ!》

《クロス・フェイス・グレイス!》

《クルセイド・ウリエル!》

 

 その叫びに呼応して、収束していたエネルギーが解放、二人の全身を包み込み、ライダースーツを形成する。

 光が収まると、銀色のアンダースーツに黒のアーマー、赤と銀の装飾が入った鬼――獄王と、銀のアンダースーツに茶色のアーマー、白い外套を纏った天使――クルセイドが現れる。

 鬼と天使、二つの異なる力を宿したライダーが、今ここで共に立ち上がったのだ。

 

「獄王、仮面ライダー獄王。お前を地獄に堕とす者だ」

「仮面ライダークルセイド。さあ、懺悔の用意は出来てるか?」

 

 妖怪に対する宣告を口にし、二人はドラキュラと対峙する。

 その威容に、ドラキュラはわずかに気圧された。それだけの力を二人から感じたのだ。

 やがて、カズキ達は武器を構えて走り出す。悪しき妖怪を倒すために――!

 

 ★

 

「人間風情が調子に乗るなよ! 貴様ら全員皆殺しだぁ!」

 

 そう叫びながら、ドラキュラは走り出す。鋭い爪を長く伸ばし、二人の身体を貫こうとする。

 カズキはヘルソードを、ダイヤはトマホークを構えて、それに立ち向かう。三人の距離がゼロになると、全ての得物がぶつかり合う。

 激しい金属音と火花が飛び散り、全員が弾かれる。すぐさま二撃、三撃と攻撃を繰り返し合う。その中でカズキとダイヤが動いた。

 

「ハアッ!」

「オラァ!」

「ぐはぁ!?」

 

 それまで別々のタイミングで動いていた二人が、同時に武器を振り抜く。刀とトマホークがドラキュラの身体に命中、深く切り裂き吹き飛ばした。

 

「ヘッ、今の合わせられるなんてやるじゃねえか。見直したぜ」

「まあ、伊達に一年戦ってないんでね!」

 

 トマホークを肩に担ぎながら、ダイヤが笑う。それに対して、肩をすくめながらも警戒を緩めなかったカズキは、飛んできた瓦礫をヘルソードで弾き飛ばす。

 土煙が晴れると、瓦礫を投げ飛ばしたドラキュラが立っていた。左手にはもう一つ瓦礫を掴んでいる。攻撃が失敗したことを認識すると、続けてもう一つの瓦礫を投げ付ける。

 

「甘ぇ!」

 

 今度はダイヤが、トマホークで瓦礫を打ち砕く。破片が飛び散ると、ドラキュラは舌打ちをする。

 

「チッ、厄介な奴らめ、ならばこれだ!」

 

 ドラキュラが叫ぶと、無数のコウモリが集まり、二つの影を形つくる。コウモリはやがてドラキュラとそっくりの分身へと変化する。

 

「行け、我が分身! 奴らを血祭りにあげろ!」

 

 本体のドラキュラがそう言うと、分身二体が動き出す。それを見て、カズキ達も構え直す。

 

「また分身か。本体と同じ力を持ってるのは厄介だな」

「関係ないね。まとめてぶっ飛ばすだけだ!」

「脳筋思考過ぎるだろ……」

 

 そんな会話を交わすと、カズキ達も走る。今度は二対二の形で激しくぶつかり合う。

 その攻防を、本体のドラキュラが距離を置いて観察する。やがて、目に力を溜め込み始める。

 

「ククク、そのまま遊んでいるがいい。死ねぇ!」

 

 その直後、ドラキュラの目からビームが放たれる。真紅のビームが戦っている四人に迫る。

 

「っ! 伏せろ!」

「おっと!?」

 

 いち早く気付いたカズキは叫びながら、地面に倒れ込む。ダイヤは咄嗟に目の前にいた分身の一体を盾にする。ビームは分身の背中に当たり、その部分を軽く溶かした。

 

「クッ、避けられたか」

「危ねえなぁ。だがちょうど良い、コイツから片付けるぜ!」

「ああ、分かった!」

 

 ダイヤは盾にした分身を投げ飛ばして距離を取る。その隙にガブリエルバレットを取り出し、起動する。カズキも犬神バレットを取り出す。

 

《ガブリエル!》

《イヌガミ!》

 

 ダイヤはガブリエルバレットをSMGに、カズキは犬神バレットをドライバーに、それぞれ装填して変身動作を行う。

 

《バース・ブレス・ノティス!》

《クルセイド・ガブリエル!》

《ゲキコウ・ライコウ・ホウコウ!》

《ゴクオー・イヌガミ!》

 

 ダイヤは胴体の装甲が濃い青になり、手足の装甲が無くなったガブリエルバレットに、カズキは黄色の筋肉質なアーマーに、手足に犬の四肢を模した装甲が追加されたイヌガミバレットに変身した。

 二人は同時に走り出し、地面に転がるドラキュラの分身へと接近する。

 

「ハアッ!」

「オラァ!」

 

 カズキの突き出したかぎ爪が身体を切り裂き、ダイヤの放った水をまとった掌底が顔面を襲う。立ち上がったはずのドラキュラは、それらをまともに食らい、吹き飛ばされる。

 

「今だ、決めるぞ!」

「上等!」

 

 カズキの叫びにダイヤもすぐさま答える。

 カズキはドライバーから取り出した犬神バレットを、ヘルソードの柄に装填。ダイヤは右腕の銀色のリングを、腰に付けたバックルへとかざす。

 

《ファイナルバレット!》

《獄王犬神壊滅斬!》

《ファイナルジャッジメント!》

《クルセイド・トマホーク・ブレイク!》

 

 電子音声と共に、ヘルソードの刀身に白と黄のエネルギーが収束し始める。トマホークにも赤と青のエネルギーが集まり、形を取っていく。

 

「ハアアアアアアッ!」

 

 先に動き出したのはカズキ。ヘルソードを両手で構えて急接近。そこから逆三角形のような軌道で、ドラキュラの身体を切り裂く。

 

「そうらよっとっ!」

 

 続いて接近したダイヤは、トマホークを横向きに構え、一気に振り抜く。トマホークの刃が炸裂し、その胴体を横一文字に切り裂いた。

 当然、耐えられるはずもなく、分身は爆散してコウモリへと戻って行った。

 

「まずは一体!」

「なっ、させんぞ貴様ら!」

「それはこちらのセリフだ!」

 

 トマホークを振り抜いたダイヤに向かって、ドラキュラ本体が飛びかかる。だが、その動きを見逃さなかったカズキが、ヘルガンにアヤカシバレットを装填して対抗する。

 

《アヤカシバレット!》

《ユキオンナ・ブリザード!》

 

 ヘルガンから放たれるのは、氷柱ではなく吹雪。それはドラキュラの全身を瞬く間に飲み込み、氷付けにして動きを封じた。

 

「これでしばらくは動けない、その間に!」

「ああ、もう一体も潰すか!」

 

 カズキ達は二体目の分身へと視線を向ける。本体が動きを封じられたことに動揺していたようだが、すぐに臨戦態勢で向かってくる。

 そんなドラキュラの分身を見ながら、カズキ達は再びアヤカシバレットを取り出す。

 

《ヤタガラス!》

《ラファエル!》

 

 カズキが右手を、ダイヤがSMGを突き出し、放たれた銃弾が分身に命中して動きを止める。そして戻ってきた銃弾が、二人の身体にエネルギーを送り込む。

 

《テンクウ・カックウ・シンカク!》

《ゴクオー・ヤタガラス!》

《ソレス・ディフェンス・ジャスティス!》

《クルセイド・ラファエル!》

 

 カズキは黒いローブを纏った八咫烏バレットに、ダイヤは緑色の装甲と翼を持ったラファエルバレットへと変身した。

 二人は翼を広げると、高速で移動し始める。

 

「ハアアアアッ!」

「オラァァァッ!」

「グハッ!? ガハァ!?」

 

 目にも止まらぬ速さで飛び回る二人によって、分身は連続で切り付けられていく。黒と緑の羽根が舞い散り、その激しさを表している。

 やがて、カズキ達は地面に降り立ち、すぐさま新たなアヤカシバレットを使用する。

 

《アヤカシバレット!》

《カマイタチ・ウィンド!》

 

「喰らえッ!」

「こっちもな!」

 

 カズキはヘルガンから竜巻を放ち、ダイヤは背中の羽根を使って突風を巻き起こす。それをまともに受けた分身は、成すすべなく空中へと吹き飛ばされる。それを見た二人は、再び空へと舞う。

 自らの羽根を使い、竜巻に乗りながら、己の武器にアヤカシバレットを装填する。

 

《ファイナルバレット!》

《獄王八咫烏撃砕弾!》

《クルセイド・ラファエル・ガトリング!》

 

 カズキの持つヘルガンに、白と黒のエネルギーが溜まり始め、同時にダイヤの持つSMGに、緑色のエネルギーが収束し、巨大なガトリング銃を構築する。

 

「オラオラオラァ!」

「――堕ちろ!」

 

 まずダイヤが、ガトリングから銃弾を乱射する。無数に放たれた弾丸が、分身の身体を蜂の巣にしていく。

 次いでカズキが、ヘルガンを両手で構え、一発の弾丸を発射する。それは白と黒で色分けされた羽根の形をしていた。羽根の弾丸は、鋭い音をあげながら猛スピードで突き進み、分身の心臓部分を貫いた。

 

「ぐっ……ぐおおおおッ!?」

 

 それだけのダメージを受ければ当然耐えられるはずもなく、二体目の分身は爆散した。これでドラキュラの分身は全て倒された。残すは本体のみである。

 

《キジン・センジン・カイジン!》

《ゴクオー・ウラ!》

《クロス・フェイス・グレイス!》

《クルセイド・ウリエル!》

 

 カズキとダイヤは、地上に降り立つと同時に三度姿を変える。

 それと同時に、氷付けにされていた本体のドラキュラが、氷の中から飛び出してくる。

 

「貴様らぁ……人間ごときが舐めるなよぉ!!」

「別に舐めてるわけじゃない。取るに足りない存在してはならない生き物だとは思っているがな」

「そうだな、お前らなんぞ舐める価値もない、ただの化け物だ」

「ウオオオオオッ!!」

 

 二人の煽りにドラキュラは激昂、マントを翼に変えて滑空しながら突っ込んでくる。

 それに対し、カズキは落ち着いた様子で専用武器のヘルズロッドを正面に構える。そのまま突っ込んでくるドラキュラの胴体に向かって、先端を突き出した。

 ヘルズロッドの先端が、ドラキュラの胴体に激突する。突進していたドラキュラ自身の勢いもあり、深くめり込み、苦悶の声をあげさせる。

 カズキはそのまま、ヘルズロッドごとドラキュラを持ち上げ、思い切り振り下ろす。その状態では当然逃れることはできず、ドラキュラは背中から叩きつけられた。

 

「グハァ……!?」

「それに、女性に手を出して操る奴なんて、絶対に許せない邪悪だ!」

「そういうこった。特にオレの女に手ぇ出しやがって、この借りは高く付くぜ?」

 

 そう言うと、二人はそれぞれの必殺の構えに入る。カズキはドライバー上部のボタンを二回押し、ダイヤはSMGの銃床を二回引いてから、引き金を引く。

 

《ファイナルバレット!》

《獄王温羅爆裂脚!》

《クルセイド・ウリエル・フィニッシュ!》

 

 電子音声が鳴り響くと、カズキの左足に真紅のエネルギーが集まり始める。その隣では、ダイヤの右足に茶色のエネルギーがまとわりついていく。

 そのエネルギーの充填が、最大まで高まると、二人は同時に跳躍した。

 二人は空中で前方に一回転してから、飛び蹴りの態勢でドラキュラへと向かっていく。

 

「「ハアアアアアアアッ!!」」

 

 叫びながらドラキュラの身体を蹴り抜く。その瞬間、二人のキックから膨大なエネルギーが流れ込み、ドラキュラの身体を駆け巡る。二人は蹴りの衝撃を利用して、宙返りしながら距離を取る。

 

「ガハァ……!? そ、そんな……ば、馬鹿なぁ……!?」

 

 自らの身体が崩壊しかけていることにドラキュラは驚愕して叫ぶ。次の瞬間、内側から大爆発を起こして消滅するのだった。

 

「――終わったな」

「ああ、おかげさまでな」

 

 その最期を見届けて、カズキは深く息を吐き、ダイヤは軽く伸びをする。

 そうしていると、カズキの持つスマホに着信が入る。画面に映る名前は、早苗のものだった。

 

「もしもし、ああ、そうか、良かった。すぐに戻るよ」

 

 カズキは通話を切ると、ダイヤの方へと顔を向ける。

 

「良いニュースだ。レイさんが元に戻ったらしいぞ。意識も戻って、目立った怪我も無いらしい」

本当(マジ)か? そりゃ良かった……今回ばかりは、お前らに感謝しないといけねえな」

「別に大したことはしてないよ。仮面ライダーとして、当たり前のことをしただけだ」

「はあ~、随分とイケメンな精神だことで」

 

 そんな会話をしながら、二人は変身を解除する。そして、カズキがバイクへと向かいながら言う。

 

「さあ、早く戻ろう。お前も彼女に早く会いたいだろう?」

「そりゃもちろん。そんじゃ飛ばしていきますかね!」

 

 そう言うと、二人は己のバイクを駆り、雑貨屋『東堂』へと戻るのであった。

 

 ★

 

 雑貨屋『東堂』、そのリビング。

 正気に戻り、目が覚めたレイが、早苗と文香に介抱されていた。

 

「改めて見ても、怪我は無さそうね。カズキの救出劇が上手くいったみたいで良かったわ」

「仕方ないとはいえ、お腹を殴った時はヒヤヒヤしたけどね。そっちも痣とかが残ってなくて良かったね」

「お二人共、本当にありがとうございました」

 

 二人に身体の様子を確認されながら、レイは感謝を述べる。そんな彼女に、早苗は微笑を浮かべながら言う。

 

「別に、大したことじゃないわ。カズキが協力するって決めたんだもの。アタシ達も全力でサポートするってだけよ」

「そうだね、私達はそのためにここにいるんだから。レイちゃんも気にしなくて大丈夫だよ」

「それでも、私のミスをフォローしてくれたことに、私は感謝しています。ありがとうございます」

「本当に丁寧な人ね」

 

 そんなことを話していると、玄関のドアが開く。そこからカズキとダイヤが入ってきた。

 

「――レイ、元に戻れたみたいだな。本当に良かったぜ」

「ダイヤさん、本当にすみませんでした。私のミスのせいでご迷惑をおかけしてしまって――」

 

 立ち上がって頭を下げるレイ。その言葉をダイヤは遮る。

 

「いや、ハヤトの野郎にハメられたんだろ? アイツが相手じゃ仕方ねえよ。アイツはオレ達のことを知り尽くしてるからな」

「――はい。でも、少々油断していたのは否めません。反省しています」

「それなら今後気を付けてくれりゃ、それでいい。お前が今無事に帰ってきてくれた。それだけで十分だよ」

 

 そう言うと、ダイヤはレイの頭の上に手を置き、優しく撫で始めた。レイもその感触を堪能するように微笑を浮かべる。 

 やがて、ダイヤは振り返ってカズキの方へと視線を向ける。

 

「今回は助かった。改めてサンキューな」

「本当に大したことじゃない。お前の彼女さんが無事で良かったよ」

 

 そう言ってカズキも笑い返す。ダイヤも釣られて笑い、和やかな雰囲気が広がっていった。

 

「――ところで、ダイヤさん」

「ん?」

 

 それまでダイヤに頭を撫でられ続けていたレイが口を開く。その口調は、先程までと異なり少し冷たいものとなっていた。

 

「私がいない間、早苗さんや文香さんを口説いていたって聞いたんですけど、本当ですか?」

「おっ、それは……本当だねぇ」

「ふ~ん……そうですか」

 

 静かに、冷たい声音で語るレイ。それに何かを察したのか、ダイヤは手を離し、一歩下がった。

 

「……私はこの国に居る間は我慢しようかと思っていたのですが、貴方は相変わらず女性のお尻を追いかけ回しているというわけですか。そうですかそうですか」

「あっ、まっずいコレ」

 

 もう完全に冷たい低音へと変わった声を聞き、ダイヤはひきつった顔で後ろに下がり、カズキを盾にするように背後へと回った。

 

「えっ、何?」

「良いからそのままいてくれ……!」

 

 困惑するカズキと対象的に、ダイヤは何かに慌てている。

 そんな二人の前で、レイはゆっくり顔を上げる。その表情は笑みを浮かべているが、どこか暗い雰囲気を携えていた。

 

「――じゃあ、仕方ありませんね。久々にちゃんとお話しましょうか?」

 

 そう言うと、レイはスカートの中からナイフを取り出した。それも一本ではなく、十本近くを一度にである。その行動にカズキは本気で困惑する。

 

「いや、マジでなんなんだよ!?」

「アイツ、オレが女の子にちょっかい出すとああなる時があるんだよ。そんでオレに襲いかかってくる。いわゆるヤンデレ? メンヘラ? まあそういう感じのやつだ」

「そういう感じってなんだよ、って危ねえ!?」

 

 ダイヤに盾にされながらカズキが喚くと、レイが足元にナイフを投げつけてきた。計三本のナイフが床に突き刺さり、カズキは本気で戦慄する。

 

「マジで投げてくんのかよ!? というかお前、俺を盾にするな!?」

「ああなったらアイツは見境なくなるんだよ! それにお前、もうオレのダチだろ!? 身代わりになってくれよ!」

「友達になった覚えは無いし、それでなくても身代わりは嫌だよ!!」

 

 そんなくだらない口論をしている間にも、レイがナイフを投げつけてくる。二人がしゃがんで避けると、ナイフは壁に突き刺さった。

 

「とにかく室内は危ないから、外に逃げるぞ!」

「そうだな、それが良さそうだ!」

 

 そう叫びながら、カズキとダイヤは全速力で外へと駆け出した。

 

「フフフ。そう簡単に逃げられはしませんよ?」

 

 そう言うと、レイも全速力でその後を追いかけていく。

 部屋には呆気に取られていた早苗と文香が残された。

 

「……なんなんだろうね、アレは?」

「さあ……とにかく、これから先も騒がしくなっていきそうね」

 

 呆れたようにため息を吐く早苗。 

 そんな彼女を余所に、二人の男の悲鳴と、一人の女の叫びが、しばらくの間響き続けるのだった。

 




 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 今回もかなりの長い話になってしまいました。ただやるべきことはできたかなと思います。
 今回やりたかったことは、ライダー同士の和解と共闘。和解はそれぞれの大切な人がきっかけになるという展開でした。ここは少し分かり辛かったかもしれません。精進します。
 まあとりあえずこれで、今後はいがみ合うことなく協力していけると思います。それは今後のシナリオ次第でもあるのですが。その辺もどうなるのか楽しんでいただければ。

 あと、話とは関係ないんですけど、先日本作にアンチコメが一件付いてました。すぐに消しましたが、ついにアンチが付くくらいには人気が出てきたのかなぁとも思いました。イェーイ、アンチくん見てる~? 私はこれまで通り自由にやらせてもらうぜぇ~!

 さて、今回はこの辺で。
 次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。