仮面ライダー獄王(ゴクオー)   作:アカミツ書庫

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 どうも、アーニャです。デザイアドライバーを買いました。
 今回は仮面ライダー獄王、第3話となります。いよいよ物語が動き出すかなという話になっております。
 それでは、ご覧ください。


第三話 破邪の犬

「そうだ、お前の望みを叶える力をやろう。その力で、邪魔する者を全て滅ぼしてやるがいい」

「ああ……ありがとうございます!」

 

 酒呑童子はとあるビルの屋上で、一人の人間にアヤカシバレットを渡していた。受け取った人間は、感謝の言葉を述べながら走り去っていった。

 人間が去った後、酒呑童子は眼下の世界を眺める。醜い人間共が支配する世界。いずれは妖怪が奪い取る。だがそのために、邪魔な存在がいることを彼は認識していた。

 

「獄王、か。――試してみるか」

 

 そう呟き、酒呑童子は地面を蹴り、どこかへと姿を消した。

 

 ★

 

 雑貨屋東堂、いつものように常連で賑わう店内であったが、その中で桜井カズキは浮かない顔をしていた。接客はそつなくこなすが元気は無く、常連客にも心配されていた。

 

「いつまでそんな顔してんのよ、しっかりしなさい」

 

 客足が遠のいてきた頃、店の奥から出てきた東堂早苗がカズキの頭を叩きながら言う。カズキは頭を摩り背もたれにもたれかかる。

 

「そうは言ってもなぁ……あの人のことをどうするか、ずっと悩んでるんだよ」

「あの記者の女ね、まあ確かに面倒ではあるわね」

 

 二人が語るのは数日前、妖怪に襲われたところを助けて知り合った女性――南文香のことだった。

 彼女を救うことには成功したが、記者として働いていた彼女から取材を申し込まれてしまったのだ。人目を忍んで活動しているカズキ達にとって、公になるようなことは避けたかった。だが相手がジャーナリストである以上、下手に扱うことは自分達のことをバラされるリスクも伴う。如何にして説得するか、それが悩みの種であった。

 結局、その日はなんとか家に帰し、後日連絡をするということで納得させた。だがそれからどうするかを、まだ決めることができなかった。

 

「ここまで面倒になるなら、いっそ食われてくれた方が良かったかもね?」

「恐ろしいことを言うんじゃないよ」

 

 邪悪な笑みを浮かべて物騒なことを宣う早苗に、カズキは苦笑する。

 

「本当にどうしたものかなぁ」

「なんだ、どうしたんだ」

 

 そう言って店の奥から出てきたのは、雑貨屋東堂の主である東堂健児。健児は大きな欠伸を一つして、ゆっくり歩く。

 

「おやっさん、実はちょっと面倒なことがあって――」

 

 カズキはこれまでに起こったことを健児に説明した。話を聞き終えた健児は、一度頷くと。

 

「ふむ、確かに面倒だな。よりによってマスコミ関係の人間に見られるとは」

「すみません、うっかりしてました」

「まあ不可抗力だろう。それに逆に上手く使えるかもしれないぞ?」

「え?」

 

 健児の言葉に、カズキは首をかしげる。早苗も何を言っているのかという風に見ている。

 

「その女はジャーナリストだ、情報を集めるのは得意だろう。ならこちらに引き込んで、妖怪に関する情報を集めさせれば良い。もちろん報酬を払ってな」

「そ、そんなことをして大丈夫ですか? 彼女が俺達のことをバラさない保証は無いのに……」

「ただ口を封じるだけならそうだろう。ならばここは、ある程度こちらから情報を開示して、事の重大さを理解してもらうのが良いだろう。下手に排斥するよりは、そちらの方が安全だ」

「なるほど……」

 

 健児の提案にカズキは唸る。しかし早苗は不服そうだった。

 

「アタシは反対よ。これ以上、関係無い人間を巻き込むなんて――」

「早苗、それは逆だぞ。あの記者を放っておけば、勝手に色々調べて事件に巻き込まれるだろう。その結果、妖怪に殺されてしまうかもしれない。それを防ぐためにも、こちら側に引き込んでおくべきなんだ」

「……」

 

 淡々と語る健児に、早苗は押し黙る。しばし両者の睨み合いが続く中、カズキが口を開いた。

 

「とりあえず、彼女を呼んで説明するってことで良いですよね? それならすぐにでも連絡してみます」

「構わないが、そんなにすぐに来れるものか?」

「いつ連絡されても良いように待ってるって言ってました」

 

 そう言ってカズキはスマホを取り出し、登録してある番号へと電話をかけた。

 

 ★

 

 数時間後、文香は店の奥にある客間にやって来た。ソファに座り、ペンとメモ帳を持ち、いつでも話が聞ける体勢で待っている。

 その向かいにはカズキが座り、隣には健児が座っている。早苗は二人の後ろで壁に背中を預けて立っている。

 

「ようこそ、南さん。今日は色々と話をさせてもらおうと思います」

「それはどうも、桜井さん。ぜひとも色々聞かせてください!」

 

 前のめりになりながら意気込む文香。その様子に早苗は眉をひそめ、カズキは苦笑する。

 

「先に言っておきますけど、これから話すことは記事にはしないでほしいんです」

「えっ?」

「あまり多くの人に知られたいことではないんです。本当ならあなたにも話すべきではないことなんですけど」

 

 そこでカズキは背後の早苗を見る。早苗は無言で見つめ返し、続きを話すように示した。一息吐いてからカズキは口を開く。

 

「あなたは実際に妖怪に襲われた。そんな人を何も言わずに放置するわけにもいかない。だから説明させてもらいます。心して聞いてください」

 

 テーブルの上に置いていたコップを手に取り、中の麦茶を一口飲んで口を潤す。これから話すことを考えると、口の中が乾くのを止められない。それでも話さなければならないことである以上、止めるわけにはいかなかった。

 

「まず妖怪について。端的に言うと、妖怪とは人間が変化した怪物です。アヤカシバレットという道具を使い、そこに宿った妖怪へと変化するんです」

「だが実際は、妖怪が人間を喰らい、乗っ取ってしまう。アヤカシバレットを使った時点で、遅かれ早かれ元になった人間は死んでしまうんだ」

 

 カズキの言葉を引き継ぐ形で、健児も語る。

 対する文香はいきなりの言葉に、少々面を食らっている。

 

「アレが、元人間……いや、でもあの時も……」

 

 文香が思い出したのは、自分が妖怪に襲われた時のこと。妖怪――野衾は、確かに自分のよく知る同僚の姿をしていた。だが、中身が根本的に違うということも感じた。

 その様子を見て、カズキは続きを話し始める。

 

「そして、妖怪と戦うために、俺は仮面ライダーになりました。このゴクオードライバーとアヤカシバレットで、変身するんです」

 

 カズキが取り出したのはゴクオードライバーと、鬼の羅刹が描かれた銀色のアヤカシバレットだった。

 

「妖怪は人間の平和を脅かす邪悪な存在です。奴らから人々を守り、救うために俺は戦っています。この前あなたを助けたのも、その一環ということです」

「なるほど……分かりました。しかし、何故このことを世間には知らせないんですか? そこまで危険な存在なら、もっと多くの人に注意を促すべきじゃないですか」

 

 メモを取りながら文香は質問する。

 その問いにカズキは口を閉じた。どのように答えるべきか考え、口を開こうとする。

 

「それは――」

「無関係な人間を巻き込まないためには仕方ないことなのよ」

 

 そこまで沈黙を保っていた早苗が口を挟んだ。

 全員の視線が集まる中で、早苗は続ける。

 

「妖怪の存在が広く知られれば、利用しようとしたり、無闇に近付こうとする人間が必ず現れる。そうなってしまえば、私達だけではどうしようもなくなる。誰一人助けられなくなる。それを防ぐためにも今は妖怪の存在を隠す必要があるのよ」

「ありがとう、早苗」

 

 軽く礼を言い、カズキは話の主導権を戻す。

 

「さて、とりあえず妖怪とその危険性については理解してもらえたと思います。そこで最初の話に戻るんですが、このことは決して記事にしないでください。世間に妖怪のことを知られたくないんです」

「それは、そうですが……」

 

 渋る文香に対して、カズキは更に畳み掛ける。

 

「その代わりと言ってはなんですが、俺達に協力してもらえませんか?」

「え?」

「あなたの記者としての力を見込んでの頼み事です。妖怪についての情報を集めて、俺達に売ってください。もちろん報酬は払います。記事を書いて正当な報酬を得ることはできませんが、それを補うことはできるようにします」

 

 カズキの言葉に、文香はしばし考える素振りを見せた。

 文香も事の大きさは理解し始めていたが、これを自分一人の意思で決めて良いものかどうか、悩んでしまう。

 しばしの沈黙が続いた時、早苗の持っていたスマホが震えた。

 早苗はスマホの画面を確認すると、わずかに眉をひそめる。そして、一つため息を吐き。

 

「妖怪が出たみたい。こんな話をしてる時になんて、間が悪いわね」

 

 それを聞いたカズキはすぐさま立ち上がる。テーブルに置いていたゴクオードライバーとアヤカシバレットを手に取り、部屋を出て行こうとする。寸前、扉の前で立ち止まり、文香に向かって声をかけた。

 

「南さん、一緒に来てくれませんか?」

「えっ、私がですか?」

「実際に戦うところを見てもらえれば、答えが決まるかもしれません」

 

 そう言って、カズキは早苗に視線を向ける。

 早苗は真顔で視線を返すが、すぐに仕方ないとでも言いたげに肩をすくめる。

 

「もちろん、アタシも行くわ。さっさと準備しなさい」

「言われなくてもそのつもりさ。南さん、どうですか?」

 

 カズキの言葉に文香は再び考える。少しして、ソファから立ち上がった。

 

「私も行かせてください。まずは自分の目で、真実を確かめてみないと始まりません」

 

 真っ直ぐな瞳で答える文香。それを見てカズキは満足げに笑う。

 

「なら行きましょう。しっかりと見届けてください」

 

 そう言って部屋を出るカズキ。彼の後を追って、文香と早苗も出て行く。

 一人残った健児は、コップの麦茶を飲み干して、一言呟いた。

 

「頑張ってくれよ、若者達。人類の未来のためにも」

 

 ★

 

 街中にあるショッピングモール、その中央広場。人々の憩いの場として知られるこの場所は、今や地獄と化していた。

 真っ赤な血溜まりが至る所に点在し、そこに何かがいたことを物語る。だが、そこにいたはずのものは影も形も見当たらない。

 それもそのはず、たった一匹の妖怪により、全て食い尽くされていたのだから。

 

「ふぅ、たらふく食ったわねぇ」

 

 地獄の中心でそう呟くのは、一見人のような姿をしていた。

 だが、その顔は人間とは思えない程に青白く、口も大きく裂けて細長い舌を出しっぱなしになっている。瞳は黄色く染まっており、人のものより切れ長である。

 胴体は、上半分こそ人間の女性の形だが、下半分は蛇のものになっている。全長2メートル程の長さで、地面を這って移動していた。

 人間と蛇の要素を併せ持った妖怪――蛇女(へびおんな)は、口元に付いた血を拭いながら、ゆっくりと移動していた。次なる獲物を探すために、周囲を見回しながら。

 そんな蛇女の元へ、急いで駆け付けたカズキ達が現れた。

 

「っ! クソッ!」

 

 周囲の惨状を見て、カズキは悔しげに叫ぶ。惨劇を防げなかった自分の不甲斐なさへの苛立ちと、妖怪への怒りが溢れ出していた。

 後ろにいた早苗も、カズキほど露骨ではないものの、不快さを表すように眉をひそめる。

 さらに遅れてやって来た文香は、思わぬ惨状にたじろぎ、吐き気を覚えていた。

 

「こ、これは……まさか、現実にこんな……!」

「――残念だけど、これは現実よ。あの妖怪が人間を食い殺して、この惨状を生み出したのよ」

 

 顔面蒼白になり、口元を押さえて後ずさる文香に対し、あくまでも冷静に早苗は語りかける。経験の差が如実に表れていた。

 そんな3人の行動に、ようやく気付いたのか、蛇女が視線を向けてきた。

 

「なんだお前達は、人間であるなら食うまでだがな」

「――これ以上お前に、食わせるわけにはいかないんだよ」

 

 カズキは怒りを抑えきれず、強く睨みつけながら数歩前に出る。懐からゴクオードライバーを取り出しながら、視線を後ろに向ける。

 

「早苗、いつものやつを頼む」

「ええ、任せなさい」

 

 早苗の返事を聞き、フッと軽く笑みを浮かべ、カズキはドライバーを腰に装着する。自動でベルトが現れ、腰に巻き付いて固定される。

 さらに取り出すのは、羅刹が描かれたアヤカシバレット。顔の右隣まで持ち上げると、側面に付いたボタンを押す。

 

《ラセツ!》

 

 電子音声が鳴り響くと、ドライバー上部に3つ付いているボタンの内、右端のボタンを押す。するとドライバーの右側面から扇型のマガジンが展開される。その一番上のスロットにアヤカシバレットを装填し、マガジンを閉じる。

 閉じると同時に、今度はドライバー上部の真ん中にあるボタンを押す。そうすると、ドライバー正面にある液晶が光りだし、変身に必要なエネルギーが充填されていく。

 カズキは両腕を正面で交差させた後、勢い良く左右に広げる。その両腕にはエネルギーが集められており、光り輝いていた。

 最後に右手を銃の形に変え、自らのこめかみに当てる。

 

「変身!」

 

 叫ぶと同時にこめかみを撃ち抜く。

 凝縮されていたエネルギーが一気に放出され、カズキを中心に円柱状に展開される。全身が包まれ、銀色のアンダースーツが形成される。さらにその上に赤いラインが走っていく。

 上半身には筋肉質な黒いアーマーが装着され、両腕も黒と赤のアーマーが交互に装着される。下半身は黒いアーマーの要所に銀のアーマーが付けられる。

 最後に頭部が変化し、冠を思わせる三本角のアーマーが装着され、複眼が黄色く輝く。

 

《ジゴク・レンゴク・ヘンゴク!》

《ゴクオー・ラセツ!》

 

 電子音声が高らかに響き渡ると、周囲に漂っていたエネルギーが、突風のように解き放たれる。

 光と風の中、カズキは仮面ライダー獄王へと変身を遂げた。

 

「貴様、何者だ!?」

「仮面ライダー獄王。お前を地獄に叩き落とす者だ」

 

 右手にヘルソード、左手にヘルガンを握り、カズキはゆっくり歩き出す。

 その光景に、文香は驚きの表情を浮かべていた。

 

「あれが……仮面ライダー……妖怪と戦う、戦士……」

「そう、あれこそが仮面ライダー獄王。カズキが変身する、人類の希望よ」

 

 文香の呟きに応えて、早苗も呟く。そして、手に持っていたアタッシュケースを地面に置いて、開く。

 ケースの中には、アンテナのようなものが生えた機械が取り付けられていた。早苗がそれに繋がっているキーボードを叩くと、ランプが点灯し、駆動音が響き始める。

 それを見た文香は、首をかしげながら尋ねる。

 

「なんです、それは?」

「これはジャミング装置。20km圏内の電子機器に干渉して、獄王や妖怪に関する記録が残らないようにしてるのよ。今はどんなものであっても、映像や画像を残すことはできない」

「そ、そんなことまで……?」

「完全に効果がある、とは言えないけれど、情報が広まることをかなり抑えてくれるのよ。やらないよりはずっと良いわ」

 

 そう言って、早苗は正面へ視線を向ける。文香も同じように視線を戻した。

 二人が見つめる先で、カズキはヘルガンの銃口を蛇女に向けて、引き金を引いていた。放たれる数発の銃弾、しかしそれは蛇女の胴体に当たると同時に、甲高い音を奏でながら弾かれた。

 

「っ! 蛇の鱗か!」

「その通り! この堅牢な鱗には、そんな攻撃は通用しないんだよ!」

 

 言いながら、蛇女は身体を素早く動かしてカズキに迫る。カズキがその場から飛び退くと同時に、蛇女の体当たりが地面に炸裂、砂煙を巻き起こした。

 砂煙の中、今度はヘルソードを全力で振るうカズキ。しかし、これもまた蛇女の右腕に弾かれ、斬り裂くことは出来なかった。

 

「くっ、なんて硬い鱗だ!」

「そんなものか、仮面ライダー!」

 

 蛇女は左手の爪を伸ばし、振り回すようにして攻撃する。

 カズキが瞬時に後ろへ跳ぶと、鼻先数センチのところを爪が掠めていく。だが、攻撃を空振ったはずの蛇女はニヤリといやらしい笑みを浮かべた。

 蛇女の胴体が震えると、鱗が逆立ち弾丸のように飛び出した。鱗はまるで刃物のように鋭く、風切り音を響かせながらカズキへと迫る。不意を突かれたことで避けることができず、直撃を喰らってしまう。

 

「ぐあっ!?」

 

 吹き飛ばされて地面を転がるカズキ。全身のあちこちに鱗が突き刺さっている。それを一枚ずつ抜きながら、カズキは忌々しげに呟く。

 

「強靭な上に鋭くて、おまけに速いと来たか……厄介な奴だ」

 

 それでも、カズキは立ち上がる。

 

「そういうのに対抗する力は、こっちも持ってるんだよ!」

 

 そう言って、ドライバー上部の左端にあるボタンを押す。ドライバー左側面からマガジンが展開、一番上にある羅刹のアヤカシバレットを取り外し、マガジンを収納する。

 そして、取り出したのは新たなアヤカシバレット。正面の絵柄は遠吠えをあげている一匹の犬。右手でその側面にあるボタンを押すと、荘厳な電子音声が鳴り響く。

 

《イヌガミ!》

 

 次いで、左手でドライバー上部の右端にあるボタンを押す。展開されたマガジンの真ん中にあるスロットに、アヤカシバレットを装填。マガジンをドライバーに戻す。そして最後にドライバー上部の中心にあるボタンを押す。

 ドライバー正面の液晶が黄色く光り、同色のエネルギーが溢れ出していく。エネルギーは円柱状にカズキを包み込み、周囲に誰かが近付くことを許さない。

 カズキは右手を銃の形に変えて、正面に突き出し撃つ真似をする。それを合図にエネルギーが弾け、カズキの姿を変えていく。

 アンダースーツが薄茶色へと変化し、それを覆うようにアーマーが装着されていく。上半身は黄色の筋肉質なアーマーへと変わり、両腕には特に分厚いものが装備される。下半身はベージュを基調とした犬の脚を模したアーマーが装備されていく。最後に頭部が犬を模したものへと変化し、複眼が白く染まる。

 

《ゲキコウ・ライコウ・ホウコウ!》

《ゴクオー・イヌガミ!》

 

 電子音声が鳴り響くのと同時にエネルギーが霧散、カズキの姿は獄王・イヌガミバレットへと変化した。

 その姿に蛇女は一瞬たじろぐが、すぐに気を取り直し、再び身体を震わせて鱗を発射する。先程と同じように風を切るような勢いで迫ってくる鱗に対して、カズキは至って冷静だった。

 カズキは右足を後ろに下げ、息を大きく吸う。そして限界まで吸い切ると、大きく口を開き犬のような遠吠えをあげた。

 

「ウォォォォォォォォォォ!!」

 

 カズキの叫びは空気を震わせ、目に見える衝撃波となり鱗へと向かう。

 衝撃波と鱗がぶつかり合った瞬間、()()()()()()。その光景に蛇女は驚愕し、すぐさま横に飛び退いた。衝撃波は蛇女が先程までいた場所を抉って通り抜けて行った。

 

「な、私の鱗が消し飛んだだと!?」

「――このイヌガミバレットには、強力な破邪の力がある。特に破邪の咆哮は大抵の妖怪の力を無力化できる」

「ふざけた話だ、ならば!」

 

 すると、蛇女は高速で接近し、カズキの目前で飛び跳ねる。そこから縦に一回転し、自らの身体を叩きつけるように動く。

 対するカズキは両腕を上に掲げてクロスさせる。両腕のアーマーが光り輝き、犬の爪を模したかぎ爪が展開されると、蛇女が叩きつけてきた胴体を受け止めた。

 蛇女は驚愕する。渾身の力を込めた一撃が容易く受け止められたのだ。しかも、相手は余裕といった態度を見せている。

 

「な、なんだと!?」

「残念だったな、パワーも高まっているんだよ!」

 

 叫ぶと同時に両腕を大きく振り上げ、蛇女を弾き飛ばす。間髪入れずに爪を振り抜き、胴体の先端――尻尾にあたる部分を貫き、そのままえぐり出し切り飛ばした。

 

「ギャアアアアアアアアア!?」

「痛いか。でも、お前が殺した人間達の苦しみと比べれば、そんなもの取るに足りないだろう」

 

 傷口から血を垂れ流し絶叫する様を見ながら、冷徹な視線を向けるカズキ。妖怪に対する怒り、救えなかった人々への無念、それらが折り重なった故の反応だった。

 対する蛇女は最早冷静な思考が出来なくなっていた。人間だった頃に感じたことの無い恐怖が、その思考を支配していた。

 しばらくその様子を見ていたカズキだが、やがて呆れたように視線を外し、ドライバー上部中央のボタンを二回連続で押す。

 

《ファイナルバレット!》

《獄王犬神粉砕(けん)!》

 

 ドライバーから黄色のエネルギーが全身に広がっていく。それと同時にドライバーから黄色の犬が召喚される。犬は一声雄叫びをあげると、蛇女に向かって走り出す。

 犬は走るうちに五体まで分裂、それぞれが蛇女の身体に噛みついていく。噛みついた歯は深く食い込み、蛇女の動きを阻害する。

 その様子を確認したカズキも走り出す。全身に行き渡ったエネルギーは両腕に集約し、光り輝く。そのままゼロ距離まで接近すると両腕を突き出し、爪を突き刺した。そこから破壊のためのエネルギーが流れ込み、蛇女の身体が崩壊していく。

 

「グウッ、グワァァァァァァァァ!!」

 

 その叫びを最後に、蛇女の身体は爆散した。あとには構えを解いて立つカズキだけが立っていた。

 

「す、凄い……本当に倒してしまうなんて……」

「もう一年は戦ってるもの、これくらいはね」

 

 驚く文香に対し、早苗はどこか自慢するように言う。その様子を遠目に見て、カズキも二人の方へと歩き出す。

 

 ――その瞬間、カズキの立っていた場所が爆撃された。

 

『!?』

 

 カズキは大きく吹き飛ばされ、地面を転がる。早苗と文香もその光景に驚き、何が起きたのか困惑する。

 

「今のは……」

 

 なんとか上体を起こしたカズキは、攻撃が飛んできたであろう方へと視線を向ける。

 ――そこには、鋭い牙と角、腰まで届く白髪を携え、赤黒い筋肉質な肉体を持った異形が立っていた。その両手には身の丈程の大剣と、同じくらいの大きさの瓢箪(ひょうたん)が握られていた。

 その姿を見た時、カズキは戦慄した。

 初めて目にした時から一度も忘れたことのない姿。これまでの戦いの中で二度と会いたくないと思った相手。自身にとっての始まりの敵――酒呑童子(しゅてんどうじ)がそこに立っていた。

 

「酒吞……童子……!」

 

 震える声で絞り出しながら、カズキはゆっくり立ち上がった。

 




 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
 今回で獄王の基本3フォームが出揃いました。

 ・ラセツ……基本形態。バランスの取れた万能型。必殺技はライダーキック
 ・ヤタガラス……スピード形態。空を飛べる。必殺技はライダーチョップ
 ・イヌガミ……パワー形態。破邪の力を持つ。必殺技はライダーパンチ

 今後はこの3フォームをどう使っていくのかも楽しみにしていただければと思います。あと、イヌガミバレットの必殺技の描写は、ウル○ラマンコス○ス・コ○ナモードのサン○ラリーパンチをイメージしてください。
 1話から3話に登場した妖怪も、仮面ライダー伝統の蜘蛛・蝙蝠・蛇を踏襲しております。これを読んでくださっている方々は、気付いてくれていると思いますが。
 さて、今回はガッツリ次回に続くという形で終わりました。私は結構こういう展開好きです。皆さんも是非やきもきしてください。
 
 それでは今回はこの辺で。良ければ感想やお気に入り登録などしていただけると幸いです。
 次回もお楽しみに!
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