仮面ライダー獄王(ゴクオー)   作:アカミツ書庫

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 新年あけましておめでとうございます。もう2月なんですけど。
 仮面ライダー獄王第六話、今年最初の更新になります。
 ここからより話が動いてくることになると思います。
 どうぞ、お楽しみください。


第六話 水中の虎

 どこかの廃屋の中、埃と瓦礫で溢れたそこに三人の男女の姿があった。

 一人は和服を着流した男――酒呑童子。

 もう一人は背中の開いた山伏服を着こなした女――女天狗。

 そして最後の一人は、金髪に鎖が付いた服を合わせた男――九千坊。

 この廃屋は、妖怪の幹部が集まる溜まり場の一つであった。

 

「とりあえず、目的の祠の一つは破壊できたわ。これで他の祠も見つけやすくなるはずよ」

 

 女天狗がそう告げる。以前、部下の妖怪を使って行った破壊活動の報告であった。

 

「そりゃ良いな。毎度毎度、見つけるのに苦労するんだよなぁ。それがマシになるってんなら、ありがたいことだ」

 

 ソファに座り、テーブルに足を投げ出しながら九千坊は言う。見た目通りのチャラついた、または厳つさを感じさせる態度である。

 

「ええ、全ての祠は繋がっている。一つを破壊することで、それを補うように他の祠の存在が強くなる。そうすれば、私達にも感知しやすくなるからね」

「全く、人間共も厄介な仕掛けを作ってくれたもんだよな。妖怪だけに見えない封印とは」

「まあ可愛らしいじゃない。か弱い人間が必死になって、私達に刃向かおうとしてるんだから」

「相変わらず物好きだなぁ、お前は」

 

 二人は意地の悪い笑みを浮かべて語り合う。その横で、酒呑童子は腕を組んで目を閉じ、沈黙を続けていた。

 

「あら、どうしたの酒呑。何か気になることでもある?」

「……解かれた封印はこれまでのものを合わせても、まだ三つだけだ。五百年かけてこの程度では、我らが主の復活は遠い話のままだ」

「おいおい、相変わらずクソ真面目だなぁ、お前は。そもそも俺達だけじゃどう足掻いても見つけられないんだ。時間がかかるのは仕方ないだろ?」

「そうよ、それに人間を利用するやり方も、ようやく出来るようになったんだから。私達に植え付けられた人間への殺意、それを抑えて仕事が出来るようになったのも、この五百年間で得た十分過ぎる進歩じゃない?」

「…………」

 

 二人の言葉を受けても、酒呑童子の表情が和らぐことはなかった。やがてゆっくり立ち上がると、出口へ向かって歩き出した。

 

「どこへ行くの?」

「新たな同胞を増やしに行く。戦力の調達は、いついかなる時も重要だ」

 

 そう言って廃屋から出ていく酒呑童子。その背中を見守り、九千坊は呆れたようにため息を吐く。

 

「やれやれ、どうにも堅物過ぎて柔軟性が無いな、アイツは」

「まあ、それが酒呑の良いところではあるけどね。それでも封印解除に人間を利用するやり方は、まだ出来なさそうね」

「仕方ねえ、今度は俺が動いてやるか。噂の獄王とやらも、見てみたいしな」

「結構可愛い子だったわよ、写真見る?」

「いや、どうせ撮ってねえだろお前。まあ顔を見りゃ一発で分かるさ」

 

 そこまで言ってから、九千坊はテーブルから足を下ろし、膝の上に腕を乗せる。

 

「精々使える奴かどうか、見定めてやるさ」

 

 そう言って、再び意地の悪い笑みを浮かべるのだった。

 

 ★

 

 前回の戦いから一日後、雑貨屋東堂にて。

 カズキと文香は店に戻っていた。しかし、その表情は勝利の余韻を思わせるものではなく、険しいものだった。

 突如現れた妖怪の幹部、女天狗。翻弄されたことに、特にカズキが悔しさを滲ませていた。

 そして、その前に化け狸が破壊したと思われる謎の祠。そのことも気にかかっていた。

 

「それで俺に話を聞きたいわけか」

 

 店の奥、東堂家の生活スペース内のリビング。そこに置かれたソファに深く腰掛けながら、東堂健児が口を開く。隣には早苗が座っている。その向かいのソファに並んで座るカズキと文香、四人が向かい合う形になっている。

 

「おやっさん、あの妖怪は明らかに何かしらの目的があって、あの山にいました。そして妖怪が壊したと思われる石の祠。あれは一体何なんですか? そろそろ色々と、教えてくれてもいいんじゃないですか」

 

 カズキは淡々と問いかける。その目には健児への信頼と、未だに色んなことを隠しがちな彼に対する多少の不信感が込められていた。

 その視線を正面から受け止めた健児は、少しの間沈黙する。やがて目を閉じ、ふうっと息を吐く。

 

「そうだな、いい加減にちゃんと話しておかないといけないことだな」

 

 その表情は柔らかく、カズキの成長を喜ぶような、優しげなものだった。その様子に、カズキは座り直し聞く姿勢を整える。

 

「――奴らが壊した祠、あれは奴らの頭領、『ぬらりひょん』を封印している結界用の祠だ」

「ぬらりひょん……?」

 

 その言葉にカズキは首をかしげる。健児は気にせず言葉を続ける。

 

「千年前、妖怪共を産み出したとされる総大将、親玉だ。かつて人間との戦いに敗れ、封印されたとされている」

「そんな奴がいたのか、初めて聞きましたよ」

「多くのことを一度に教えても、逆に戦いに臨む意思を挫いてしまうと思ったからな。だが、今のお前なら問題はないだろう」

「まあ、それなら良いですけど」

 

 納得したようにカズキが頷くと、健児はさらに話を進めていく。

 

「ぬらりひょんは、人間との戦いに負けた。だが、当時の人間では奴を殺し切ることは出来なかった。故に仕方なく、封印するという形を取ることになった。およそ五百年前の話だ」

 

 そこまで話すと、健児はテーブルに置いてあったコーヒーカップを手に取り、コーヒーを一口飲む。

 口の中を軽く潤すと、再び口を開く。

 

「その時に用意されたのが、封印を構成するための祠だ。祠は全部で十個あり、それらが全て連動することで結界を生成、ぬらりひょんを完全封印した。お前達が先日見たのは、そのうちの一つだ」

「封印のための結界……じゃあそれが破壊されるのは非常にマズイことなんじゃないんですか!?」

 

 慌てて身を乗り出しながら叫ぶカズキ。それを手で制しながら、健児は続ける。

 

「確かに、祠が破壊されることは封印が緩むことに繋がる。だが、現在残っている祠は七つある。計算上では七つでも十分に封印は機能することが分かっている。今すぐ危機的状況になる、ということはない」

「……それなら良いんですけど」

「だが、祠が破壊されることにはもう一つ問題がある。本来、祠は妖怪には認識できないようになっている。特殊な術式が組み込まれているおかげで、妖怪の目には見えないし、感知することもできない。しかし、祠が連動している影響で、一つ破壊されると他の祠の認識阻害が弱まってしまうんだ」

「待ってください、それじゃ……」

「ああ、祠を破壊されればされるほど、奴らが祠を見つける可能性が高まる。現状は人間を利用しないと発見できないようだが、このまま破壊が続けば時間の問題だろうな」

 

 その言葉に、カズキは山の中で見た、妖怪と一緒に居た男のことを思い出す。あの時一緒にいたのは、妖怪に利用されて祠を探していたのだろう。まんまと利用された挙げ句殺された男に対し、助けられなかった後悔が心に差し込む。思わず拳を握りしめながら、口を開く。

 

「……祠の場所は、全て把握しているんですか?」

「ああ、全てこの関東に存在している。かつての戦いの場所が、この辺りだったからな」

「そうですか、なら残りの祠を全て守ることができれば」

「言うほど簡単じゃないぞ。俺達は表立って行動できないからな」

 

 カズキの言葉を、健児は冷静に否定する。

 すると、これまで黙って聞いていた文香が口を開く。

 

「あの~、東堂さんは随分妖怪に詳しいみたいですけど、一体どこでそんな情報を得てるんですか?」

 

 その問いに、カズキと健児は顔を見合わせる。やがて、健児がゆっくりと頷くと、カズキが変わりに答える。

 

「おやっさんは――先代の獄王だったんだ。かつては《教会》の戦士として戦っていたらしい」

「せ、先代の獄王!?」

 

 カズキの言葉に、文香は大きな声を出して驚き、思わず健児の方を見る。健児は肩をすくめて答える。

 

「一年前までは戦っていたよ。だが、その時に限界を迎えてね、適性を持っていたカズキに引き継いでもらうことになったんだ」

「その時の俺は、完全に素人でしたけどね。でも、妖怪の暴挙を無視することも出来なかったから、必死でやってきました」

「そうだったんですか……じゃあ《教会》というのは?」

「『教会』は、簡単に言えば妖怪と戦うために作られた組織だ。世界各地で人知れず、妖怪から人類を守っている。祠も当時の《教会》が作り上げたものだ」

「なるほど……あれ、じゃあなんで《教会》の人と協力しないんですか?」

 

 その質問に、健児は閉口する。カズキと早苗も気まずそうに黙り込む。困惑する文香だけが取り残される。

 やがて、頭を掻きながら健児が口を開いた。

 

「実は、我々は今《教会》とは縁が切れている状態でね。力を借りることはできないんだよ」

「そんな……それってすごく大変なことなんじゃ……」

「ああ、まあね。だが、それでも賢明に頑張ってくれてはいるんだよ。カズキも早苗もね。これまではそうやってなんとかなってきた。これからもそうであって欲しいと願っているよ」

 

 そう言って、健児は肩をすくめる。すると、それまで黙っていた早苗が口を開く。

 

「父さん、今はそんなことよりも、これからどうするかを考えないといけないんじゃない」

「おっと、そうだったな。とりあえず目下の課題は、妖怪から祠を守ることだ」

 

 早苗の言葉に思い出したように返す健児は、テーブルの上に一枚の地図を広げる。そこには十個の星印が描かれており、さらにそのうちの三つは×印が上から描かれていた。

 

「これが祠が安置されている場所だ。すでに破壊されたものには×印をつけてある。妖怪共がどこから攻めていくかは分からないから、基本的には奴らが姿を現してから対応することになる。そこはこれまで通りだな」

「……こちらから奴らの行動を予測することは、できないんですか?」

 

 真剣な表情を顔に浮かべて、カズキが問いかける。しかし、健児は首を横に振る。

 

「無理だな。奴らは全ての祠の場所を把握しているわけじゃない。つまり、基本的にはしらみ潰しに探すしか無いはずだ。そうなると無軌道かつ無差別に動くことになる。その行動を全て予測することは不可能だ」

「そう、ですね。分かりきっていたことでした。すみません」

 

 カズキは悔しそうな表情になり、口を閉じる。

 

「まあお前からすれば、悔しいことこの上ないだろうが、そう悲観したものでもない。お前がやってきたことは無駄じゃなかったし、これからも続けてくれるなら助かる」

「……ええ、もちろんやめるつもりなんてありませんよ」

 

 カズキの返答に、健児も納得したように頷く。そして一度手を合わせてから言う。

 

「さて、話はここまでにしよう。昨日の今日だからカズキにはしっかり休んでもらわないとな。南さんもありがとう、ゆっくり休んでください」

「えっ、ええ、分かりました。失礼します」

 

 そう言うと、文香は荷物をまとめて部屋から出ていく。その背中を見送り、カズキも立ち上がる。

 

「それじゃ俺も休みます。ありがとうございました、おやっさん」

「ああ、しっかり休んでくれ」

 

 健児の言葉を受けて、カズキも自室へと戻っていく。

 二階への階段を登り、一番手前の自室に入ると、ベッドへと横になる。

 言われた通り疲れが溜まっていたのか、すぐに眠りへと落ちていくのだった。

 

 ★

 

 数日後、海に面したとある商業施設。休日ということもあってか家族連れを中心に賑わいを見せていた。その人混みの中に、奇妙な二人組が現れた。

 一人は金髪に鎖のついた服を着こなした青年――九千坊。もう一人は九千坊より頭一つ分背が高く、筋骨隆々とした肉体をボロが来たシャツで覆った大男である。道行く人々から奇異の視線を向けられながらも、二人は全く気にすることなく歩を進めている。

 

「良いか、ここで暴れれば確実に奴は食い付く。そこを返り討ちにして、奴の首を取れ。できるな?」

「御意」

 

 九千坊がそう言うと、大男は一言で答え、さらに歩き進めていく。

 やがて、広場の中心辺りに着くと、黒い弾丸――アヤカシバレットを取り出し、側面のボタンを押す。

 

《スイコ!》

 

 機械音声が鳴り響くと、男は自身の胸にアヤカシバレットを突き刺す。すると、全身が黒いオーラに包まれ、その姿を人間から妖怪へと変えていく。

 全身は濃い青色の毛に覆われ、両手は鋭い爪を、腰からは長い尻尾が生えている。足は鱗に覆われたものになっており、瞳は鋭く黄色に輝いている。その様はまるで虎を思わせるものであった。

 

「グオオオオオッ!!」

 

 青い虎の妖怪――水虎(すいこ)は、大きな雄叫びをあげると近くにいた人間に飛びかかる。手から伸ばした爪でその喉を貫き、命を奪う。

 その様を皮切りに、人々は恐怖に怯え逃げ惑う。しかし水虎の足はそれを容易く上回り、逃げようとする人々を次々に殺害していく。誰にも止めることはできず、ただただ地獄が広がっていく。

 そんな地獄の中に、激しいエンジン音が響き始める。それはどんどん近付いてくる。水虎は訝しみながらその音が聞こえる方へ顔を向ける。

 向かってくるのは赤と黒のカラーリングで彩られたバイク、それに乗った一人の男だった。男はバイクを停めて降り、水虎の前に立ちはだかる。

 

「今すぐやめろ、妖怪!」

「なんだ貴様は? 人間ごときが妖怪に逆らおうと言うのか」

 

 男――カズキは惨状に対して怒りを見せる。対して水虎は特に気にすることもなく答える。その様子に、カズキの怒りは頂点に達する。

 

「お前のような妖怪が、人間を殺すことは許せない……ここでお前を倒す!」

 

 そう言ってカズキはゴクオードライバーを取り出し、腰に装着する。さらに懐からアヤカシバレットを取り出し、ボタンを押して音声を鳴らす。

 

《ラセツ!》

 

 ドライバーの右上部のボタンを押すと、右側面からマガジンが展開、その一番上のスロットにアヤカシバレットを装填。マガジンを戻し、中央のボタンを押すと、ドライバーからエネルギーが放出され、カズキの全身を包み込む。

 カズキは両腕をクロスさせ、左右に広げ、右手を銃の形にするとこめかみに当てる。

 

「変身!」

 

《ジゴク・レンゴク・ヘンゴク!》

《ゴクオー・ラセツ!》

 

 叫びと同時に自らのこめかみを撃ち抜くと、エネルギーが解放され、カズキの姿が変わる。

 獄王・ラセツバレットへと変身したカズキは、ヘルソードを引き抜き、正面に構える。

 その姿を見た水虎は、一瞬目を見開いた後、歓喜の笑みを浮かべた。

 

「なるほど、貴様が獄王か。貴様を始末することも我の使命だ。ここで死んでもらう」

「勝手なことを。死ぬのはお前だ!」

 

 一人と一体は同時に走り出し、刀と爪をぶつけ合う。何度も互いの得物を振るい、互角の戦いを繰り広げる。

 やがて、カズキは思い切り足を振るい、水虎の腹を蹴りぬく。水虎は数メートル後方に下がるが、倒れること無く立ち続ける。

 姿勢を直した水虎は、両腕に力を込める。すると、二の腕の部分から魚のヒレを思わせる鋭利な突起が生えてくる。それが激しく震えると、水虎の口から水の塊が吐き出され、弾丸のように飛び出す。

 カズキはヘルソードで受け止めるが、かなりの勢いがあり地面を滑るように吹き飛ばされる。

 

「ぐうっ……! 負ける、かぁ!!」

 

 カズキは足に力を込め直して立ち止まり、ヘルソードを思い切り振り上げる。水の塊は後方数メートルへと弾き飛ばされ、地面を抉って消滅した。

 

「ほう、あれを弾き飛ばすか。中々根性があるようだな」

「くうっ……どうやらパワーが必要な相手らしいな……だったら!」

 

 息を荒らげながら、カズキはイヌガミバレットを取り出し、ドライバー内のアヤカシバレットを入れ替える。

 

《ゲキコウ・ライコウ・ホウコウ!》

《ゴクオー・イヌガミ!》

 

 獄王・イヌガミバレットへと変身したカズキ、両腕のかぎ爪を展開し構えながら走り出す。水虎も負けじと爪を再び構えて迎え撃つ。

 両者の爪が交差しクロスカウンターの形になる。わずかに長さが勝っていたカズキのかぎ爪が水虎の顔面を切り裂いた。

 カズキは続けてもう片方のかぎ爪も振るう。一瞬動揺した水虎は、わずかに反応が遅れ、追撃を無防備に受けてしまう。腹を突き刺すことは無かったが、強烈な打撃となり後方へと吹き飛ばす。そのまま海に面する壁に叩き付けられ、水虎は地面に転がった。

 

「ふう、どうやら犬神の力なら効くようだな」

「……なるほど、中々の実力のようだ。これはこちらも本気にならねばな!」

 

 立ち上がった水虎はそう言うと、背後に広がる海へと飛び込んだ。

 

「なっ!?」 

 

 驚いたカズキは様子を確かめるために壁から海を覗き込む。すると、海中から無数の水球が飛び出し、カズキに襲いかかってくる。

 カズキは走って避けたり、刀で切り払って防いでいくが、全てを防ぐことはできず、爆発に巻き込まれて地面を転がる。

 カズキが立ち上がると、海面に数本の水の柱が立ち、その内の一本の上に水虎が立っていた。

 

「驚いたか? 我の本来の戦場は水中なのだ。逃げても無駄だぞ、地上を狙い撃つことなど朝飯前だ。貴様は大人しくここで死ぬしかないのだ!」

 

 そう言うと、水虎は再び海中へ消える。しかしカズキは、慌てることなく海坊主バレットを取り出す。

 

「水中戦か。そういうのは、こっちにもあるぜ!」

 

《ウミボウズ!》

 

 ボタンを押して音声を鳴らすと、ドライバーの右側面のマガジンを展開する。そして、イヌガミバレットが装填されているスロットの一つ下――一番下のスロットにバレットを装填する。

 

《バレットミックス!》

《ゴクオー・イヌガミ・ウォーター!》

 

 マガジンを戻してドライバーのボタンを押すと、カズキの全身が青い光に包まれる。それを確認すると、カズキは躊躇うことなく海へと飛び込んだ。

 海中に入ると、水虎が水球を作って構えていた。飛び込んできたカズキを見て、水虎は驚きの声をあげる。

 

「何っ、自分から飛び込んでくるだと!? 人間が水中で活動できるわけが――!」

「人間を舐めるなよ、お前達を殺す術は、いくらでも作られている!」

 

 そのまま海中で戦闘を再開する二人。カズキは海坊主の力で水中での活動を可能とし、魚のように自在に泳ぎながらかぎ爪を振り回す。

 対する水虎は水球で対抗するが、予想以上に自由に動き回るカズキに翻弄され、じわじわと追い詰められていく。

 

「馬鹿な、我が領域で人間に押されるなどと……!」

「その慢心、その傲慢、故に負けるということを思い知れ!」

 

《ファイナルバレット!》

《獄王犬神粉砕拳・水!》

 

 カズキがドライバーのボタンを二回押すと、両方のかぎ爪に青と黄色のエネルギーが収束する。カズキはその場で身体をひねると、そのまま回転。爪を重ねて一つにすると、ドリルのように高速回転して、水虎へと突っ込んでいく。

 その勢いは海中とは思えないほど早く、水虎の反撃を許すことなく直撃、そのまま地上まで吹き飛ばした。

 

「ぐおおおっ!? き、貴様ぁ……!」

「どうだ、自分のホームグラウンドで負ける気分は。屈辱的か? だが、お前に殺された人々はもっと苦しくて、もっと屈辱的だった。この程度で足りると思うなよ!」

 

 叫ぶカズキはドライバーからイヌガミバレットを取り出し、ヘルソードの柄に装填、黄色のエネルギーが刀身を輝かせ、巨大化させていく。その様相に水虎は恐怖を覚え後ずさる。

 

《ファイナルバレット!》

《獄王犬神壊滅斬!》

 

「ハアアアアアッ!!」

 

 巨大な刀へと変化したヘルソードを、容赦なく叩きつける。圧倒的な質量差に水虎は為す術なく両断された。

 

「ギャアアアアアッ!!」

 

 断末魔の叫びをあげ、水虎は爆散する。

 その様を見届けると、カズキは変身を解除し、一息吐いた。

 

「今回もなんとかなったか、ここはもう大丈夫そうだな――」

 

 そう呟いた瞬間、背後の海から爆音が響き巨大な水しぶきが発生した。

 驚いて振り向くカズキの前に、海から飛び出した一人の男が現れる。

 

「よう、お前が獄王か。水虎を倒すとは中々やるなぁ。アイツは俺の部下の中でも結構なやつだったんだけどな」

「……お前は誰だ」

「おっと、名乗ってなかったな。俺は九千坊。酒吞、女天狗と並ぶ妖怪三大幹部の一人だ。よろしくな」

 

 そう言って男――九千坊は軽快に笑う。カズキはドライバーを装着しようとするが、前回の女天狗との一件を思い出し、動きを止める。

 

「……一体何をしていた。そんな海の中に何も無いだろう」

 

 その質問に、九千坊は目を丸くした後、大声で笑い出した。

 

「ハハハ! おいおい、お前今更誤魔化せると思ってんのか? お前があんなに早く水虎の元に辿り着けたのは、見張りに来たんだろう? ――この海の中にあった祠のことを」

「――っ!!」

 

 思わずカズキは戦慄する。九千坊の言う通り、この地域にあった祠を監視するためにカズキはこの場に来ていた。その時たまたま現れた妖怪に対処していたのだ。

 

「元々、この辺りに祠があるかもしれないっていう情報はあったんだよ。それを確かめるために妖怪を暴れさせて、それを守るために人間が現れるなら祠があるだろうってな。割とざっくりしたやり方のつもりだったが、まさかこんなに上手く釣れるとはなぁ。お前が真面目なおかげで助かったよ」

「…………」

 

 笑いながら語る九千坊に、カズキは悔しげに拳を握る。自らの正義感による行動が、逆に敵に対する利になってしまった。その事実が重くのしかかっていた。

 そうしていると、九千坊は笑いを収め、周囲を見回してから口を開く。

 

「さて、今回は役に立ってくれたから見逃してやる。今後もぜひ役に立ってくれよ、獄王君?」

 

 そう言うと九千坊は海へ飛び込み、姿を消した。後にはカズキだけが取り残される。

 カズキはその場に片膝を付き、地面に拳を打ち付ける。

 

「クソッ……!」

 

 悔しさと怒りを抱えながらも、今は何もすることができない。そう思いながら、カズキはその場に留まるしかなかった。

 

 ★

 

 同じ頃、雑貨屋東堂の地下室。

 東堂健児はモニターに映る情報を眺めながら、現状について考えていた。

 

「残る祠は六つ……いささかマズイ状況だな」

 

 そう呟いて立ち上がると、別のデスクへと向かう。そこには一つのガラスケースが置かれていた。

 健児はケースを開けると、中に入っていたある物を取り出す。

 

「――果たして、これを渡すべきなのか」

 

 その手には、赤い鬼が描かれた銀色の弾丸が握られていた。

 




 今回もお読みいただき、ありがとうございます。
 今回は少々荒削りになりましたが、クオリティよりも完結を目指した結果でございます。今後もこのような感じでやっていきますので、ご了承ください。

 また、Twitterの方で、各話宣伝用のポエムを投稿しております。BLEACHみたいな感じです。それぞれの登場人物に合わせたものを出してますので、良ければそちらもご覧ください。

 それでは今回はこの辺で。
 次回もお楽しみに。
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