疾走の馬、青嶺の魂となり   作:乾いた重水

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 データ吹っ飛んだので遅れました

 アニメは2期2話までしか見てないのですが、ここまで変わってたら別にもういいよなぁってなってます。

 あとウチのライスは声が若干低かったりします。



10.ユメヲカケル

 

まえ

 

 

 

 また夏がやってくる。

 

 

 マックイーンは宝塚で残念ながらライアンに負けてしまった。

 その後スイーツをやけ食いしていたことを思い出す。

 そんなに食べたら太るぞと忠告してやったのに「それは明日からの私が考えますわー!」と抜かしやがった。

 きっと某球団が負け続きのせいもあるかもしれない。

 

 

 しかしコイツの芸人適性の高さは一体何処から来たのか。

 以前メジロ家のウマ娘と会ったことがあったのだが、メジロアルダンは清楚なお嬢様の見本みたいな人だったのに、どうしてここまで差がついたのか。

 青は藍より出でて藍より青しとは言うが、マックイーンの場合は虹色に光り輝く不純物のように思える。

 これでレースはクソ強いのだから不思議なものだ。

 

 

 

 さて、テイオーは現在メジロ家のリハビリテーション施設に缶詰になっている。

「菊花に出て勝つ!」と張り切って治療に専念している。

 注射からは逃げ出すのだが。

 以前逃げるテイオーを取り押さえたことがあった。

 酷く嫌がるテイオーに、工具で手をやらかすよりは全然痛くないと言ってやったら凄い目で見られた。

 一時期機械いじりにハマったことがあり、その時にちょっと事故っただけなのだが。

 別に隠すものでも無いかと残った傷跡を見せたらドン引きされた。その隙に注射が打たれた。テイオーは独特な声で鳴いた。

 直後に私が主治医に捕まった。

 そのまま連行されて傷跡を治療された。

 唐突だったので驚いたが、痕が綺麗さっぱり無くなっていたので技術の高さに驚いたものだ。

 

 

 ちなみにマックイーンはこの後ダイエットに苦しむ羽目に陥った。

 馬鹿じゃねぇの? 

 

 

 

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 ───

 

 

 テイオーも復帰して、再びの夏合宿に向かう。

 私のデビューはまだまだ先だが、本格化も既に来ているのでゴリゴリ鍛えていく。

 しかし本格化というものは厄介で、ゲーセンの滞在時間がドンドン伸びていってしまった。その分スコアを詰められるから良いのだけれど。

 ただ本格化が来ても身長は伸びなかった。胸は若干デカくなった。正直邪魔。

 ミホノブルボンもサクラバクシンオーもあんなデカいものぶら下げてよく走れるな。絶対痛いと思うのだが。

 

 

 そういえばゴールドシップっていつデビューするんだ? 

 

 

 

 

 トレーニングの休憩時間。

 ちょっと試したいことがある。

 軽い靴に竹を加工したものを取り付け、接地面積を広げる。

 その作業をトレーナーや他三人が見つめて来る。

 まあ期待しておくといい。

 人間や馬には不可能だろうが、ウマ娘の軽さと膂力ならば。

 

 

 靴を履き、海に向かって走る。

 そのまま海面の上へと──

 

 

「──行けた!」

 

 

 海の上を走れてしまった。

 いやまさか本当に出来るとは。

 陸地にいる四人から驚愕の目線を感じる。

 正直かなり走りづらい。バランスが崩れる崩れる。

 だが、m◯im◯iやD◯Rで鍛えた体幹は伊達じゃない。

 ゴリ押しで海の上を走って行く。

 少しでも足を止めると沈んでしまうので、大きく円を描いて元の場所に戻る。

 

 

「なあライス! なんだよ今の! その靴貸してくれよ! 頼む!」

「え、ええっと、靴のサイズ合わないから新しく作るしかないよ」

「じゃあ作り方を教えてくれ!」

 

 

 陸地に着くと真っ先にゴールドシップが詰め寄って来た。こういうの好きそうだもんね君。

 

 

「ボクなら合うんじゃない? 貸してよ!」

 

 

 確かにテイオーならば履けるだろう。

 早速テイオーに貸した。

 テイオーは意気揚々と海に向かって行き──

 

 

「わっ、とと、あっ、ああっ!」

 

 

 すぐに海にダイブした。

 しかしこの程度で諦めるテイオーではない。やがて4度目で走れるようになった。

 

 

 海の上を走るテイオーを見ると、何処かで見かけたゲームを思い出す。

 何だったっけアレ、女の子が海の上で砲撃し合うやつだった気がする。

 そんなことを考えていると、トレーナーが近寄って来た。

 

 

「なあライス、アレ全員分作ってくれないか? アレはいいトレーニングになる気がしてな……」

「え、あー、その……」

「後で焼肉奢るかr「やります」……判断はええな…………」

 

 

 おいそこ、チョロいとか言わない。

 

 

 

 ─────────

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 ───

 

 

 

 今日は休息日。

 ボクたちは旅館にあったカラオケの機械でスコアを競ってる。

 みんな、選ぶ曲には個人差があって。

 ボクは「恋はダービー」とか「SEVEN」とか。

 マックイーンはライブの曲ばっかり。

 ゴルシは般若心経とか4分33秒とかの何でカラオケにあるのか分かんない曲。

 ライスは雑多なのかな。邦楽洋楽限らず、聞いたことない言語の曲も歌ってた。「conflict」っていう曲らしいけど、なんて言ってるのかさっぱりだった。

 まあどんな曲でもボクが1番だけどね! 

 ただトレーナーも結構上手かったな。選曲がうまぴょい伝説だったから思わず笑っちゃったけど。

 

 

 で、マックイーンがユメヲカケルを歌ってた時。

 

 

「限界だって超えてみせる、ねぇ……」

 

 

 ってライスが呟いてた。

 

 

「? 何か思うところでもあるの?」

「うん、まあ……

 

 ……………超えちゃいけない限界だってある、ってだけ」

 

 

 この時のライスの目が。

 悔いるような、謝るような。

 どこか遠い目で、でもどこか怖くて。

 多分、過去に何か良くないことがあったんだろうけど。

 絶対に聞いちゃいけないことだって思った。

 ライスに怪我を恐れるところがあるのも、これが原因なんじゃないかなって。

 

 

 気になるけど、自分から言うまでは聞かないでおこう。

 

 

 

 ─────────

 ──────

 ───

 

 

「うあああああああぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」

 

 

 テイオーの必死に喘ぐ声が聞こえる。

 走っている距離は3000メートル、菊花賞と同じ距離。

 

 

 ただ、残り200メートルが──伸びない。

 何度繰り返しても、目標タイムに届かない。

 間違い無く、距離適性の壁だ。

 

 

 テイオーの顔に焦りが浮かんでいる。

 ダービーの後に骨にヒビが入り、それを必死に治して来たのに、今度は距離適性という新たな障害が現れたのだ。

 しかも、ダービーで骨が折れかけたという事実が、無自覚のうちに心に壁を作っている。

 テイオーの往く道は、何故こんなにも苦しいのか。

 

 

 数日後、テイオーがチームメンバーを呼び寄せた。

 何の用かと思っていたら──テイオーが頭を下げた。

 

 

「お願い! みんなの時間をボクに全部ください!」

 

 

「見てて分かったと思うけど、マトモにやったら3000メートルを走りきれない」

 

 

「だから、どんな手を使ってでも勝ちを狙いにいく!」

 

 

「マックイーン、ゴルシ、ボクの前を走ってください!」

 

 

「ライス。 キミの、──キミのマーク技術をボクに全部ください!」

 

 

 急に何を言い出すかと思えば、敬語まで使って要求してきた。

 

 

 基本的にあらゆる分野において、技術というのは資産だ。

 特にここはレースの世界。

 それなのに、技術をタダで寄越せということのどれだけ無茶なことか。

 

 

 

 ああ、しかし、だと言うのに。

 

 

 

 

「…………本気で行くけどいいんだな?」

「っ! 分かってる! ありがとう!」

 

 

 

 

 私は、彼女に夢を賭けているのだから。

 全く、愉快なものだ。

 

 

 

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