レース描写難しいんじゃぁ
菊花賞はテイオーINナカノハヤテOUTとなっています。
ついでに没ネタを晒します。
実はテイオーを秋天に出すルートもありました。
この時点ではクラシック級で秋天勝ったのは戦前のハツピーマイトだけですし、皇帝を超えるという目標なら十分足り得ますしね。
しかしこの時私の中の三女神が
「マック1着テイオー2着にした後に斜行降着で順位入れ替えようぜ」
とかそそのかしてきやがったんですよね。
一瞬ええやんコレと思ったのですが、気分が良かったのでスピカ全員を曇らせるのはやめておきました。
菊花と秋天のどっちに行くかをアンケートで決める案もあったことをここに白状します。
長くなりましたが以下本編です。
まえ
秋が来た。
マックイーンの秋天も、事前に忠告しておいたおかげか斜行せずに1着を取り。
いよいよテイオーの菊花賞の日だ。
パドックに立つテイオーは、覚悟の決まった目で前のみを見つめる。
「1枠1番トウカイテイオー、1番人気です」
「怪我からの復帰初戦ではありますが、凄まじく仕上がったバ体ですね。無敗三冠まであと少しです」
チーム全員がテイオーをじっと見つめる。
私があれほどシゴいてやったんだ。
負けたら承知しないぞ。
そう意を込めてテイオーに視線を送る。
テイオーは私の目線に気づくと、若干目をそらした。
待てや。
─────────
──────
───
「やっほー、テイオー」
「……ナイスネイチャ?」
返しウマの時、テイオーにネイチャが声を掛けた。
その後ろにはレオダーバンやイブキマイカグラ、シャコーグレイド等もいる。
「怪我、ちゃんと治ったんだね。一緒に走れないんじゃないかってヒヤヒヤしてたよ」
「当然でしょ。怪我ぐらいで止まってなんかいられないから」
「……はは、アンタはそういうウマ娘だったねぇ…… 夢に真っ直ぐで、キラキラしてて……でもね」
ネイチャやその他のウマ娘の眼光が強まる。
「……私達は、トウカイテイオーの無敗三冠をただ祝うために来たんじゃない。 復帰明けだからって容赦はしない。 夢を砕こうとも構わない。
──アンタに、テイオーに勝ちに来た!」
帝王への、革命者共の宣戦布告。
「──ボクだって、負けるためにここに来たんじゃない。夢を成しに来た。
鬼に鍛えられたんだ。いかなる手を使おうとも、ボクはキミたちに勝つ!」
テイオーから、尋常ではない圧が噴き出す。
恐れる者、慄く者、──悦ぶ者。
意志が、夢が、全てがぶつかり混じり合う。
ファンファーレが鳴り、ゲートに入って行く。
トウカイテイオーから漏れ出る闘気に萎縮したウマ娘がいるのか、ゲートインにやや時間がかかる。
「各バゲートイン完了──スタートしました第52回菊花賞!
各バ綺麗にスタートを切りました、出遅れはありません。
まず先陣を切ったのはフジヤマサンゲン、そのすぐ後ろにフジアンバーワン、一バ身半離れてホクセイシプレー。
さて注目のトウカイテイオーは中団、サクラヤマトオーの後ろにピッタリとつけています!」
トウカイテイオーがマークしている。
これは予想できたウマ娘が少なかったのか、やや動揺が見られる。
特にマークされているヤマトオーはかなり焦っていた。
(テイオーがマーク!? しかもこんなに近くで!? 『いかなる手も使う』って言ってたけどさぁ!)
11番人気だったのにマークされているという予想外への焦り。
背中に感じる凄まじい圧。
何よりそれを行なっているのがトウカイテイオーなのだ。
当然ではあるが掛かってしまう。
何よりスタート直後の3コーナーの坂でのことだ。
しかし4コーナーの中頃でヤマトオーは何とか落ち着きを取り戻し、スタミナを取り戻そうと速度を下げる。
ある程度下がったところでテイオーはヤマトオーの後ろを離れ、次にワンモアライブの後につく。
この時点で他のウマ娘がテイオーの作戦に気付いた。
潰れるまでマークし、切り替えて行くのだと。
(クソがっ、まるでカエル飛びかよ!)
何人かは悪態をついた。
一度でも後ろに付かれるとマズい。おそらく適当な近くのをマークしている。他のヤツに押し付けなければ。
テイオーから離れていこうと、前へと前へと行ってしまい──
「さて1000メートルの通過タイムは58.9、かなり早いペースになっています!」
──異常なハイペースを生み出した。
前がテイオーにぐちゃぐちゃにされているのを、ナイスネイチャは見ていた。
(うひゃー、なかなかにエゲツないことやってんなー。ちゃんと斜行しないように行ってるし、他は斜行しないように動かなきゃいけないし。後ろで正解だったな)
差しや追込にとってハイペースは有利。であればこのままテイオーに勝手にやってもらうのが得策か。
しかし垂れて来たウマ娘を回避していかなくてはならない。前を塞がれると厄介だ。
垂れウマに対処している間にも、テイオーは死神の如く一人ずつ狩っていく。
前に逃げて行ったウマ娘も、その分スタミナが削られていて──
「さあ第3コーナーの坂に入って行きましたが、先頭集団が大きく減速! やはりハイペースでスタミナが尽きたか!?」
一気に先頭集団との差が縮まる。
そしてテイオーが抜け出した。
今までスリップストリームでスタミナを温存し続けて来たのだ。このままではテイオーの一人勝ちだ。
そして後方で控えていたウマ娘も次々に抜け出して行く。
そのまま先頭集団を抜き、そのままテイオーを抜き──
テイオーを抜いてはいけないことに気づいた。
即座にテイオーにマークされてしまう。
そんな哀れな一人を見ながら、レオダーバンは先頭へと抜け出して行った。
坂を下るとき、テイオーが内から抜いて行くのがチラリと見えた。
そしてテイオーの圧が来る。次はお前だと告げる。
──私の後ろに来るんじゃない!
すぐ後ろのヤツにマークを押し付けようと、若干外に寄った。
寄ってしまった。
「さあ内からトウカイテイオーが一気に抜け出したぁ! 残り400メートル!」
最内をテイオーに抜かれた。直後に自分の失策を呪った。
(クソッ、やられた! ──だが、あんなにかき乱してたならスリップストリームがあってもテイオー自身のスタミナはそこまでないハズ!)
「──ああああああぁぁぁぁっ!」
「レオダーバンも負けじと追い縋る! 外からはナイスネイチャ、イブキマイカグラも来ている!」
四人が並び、抜かし、抜かされ、そして残り100メートル。
テイオーは自身のスタミナが尽きかけているのを感じていた。
レオダーバン、ナイスネイチャ、イブキマイカグラ。おそらくまだ伸びる。
このままでは抜けない。
そう、このままでは。
(切り札は、最後まで取っておくものだぁっ!)
テイオーステップ。足を思いっきりぶん回す。
脚への負担が急増する。左脚に嫌な痛みが走る。
ライスの言葉を思い出す。
(これが『超えちゃいけない限界』かもしれない。本当に痛いし怖い。でも──)
「ボクは、負けられないんだぁぁぁぁっっっ!!!」
ゴール板を──僅かに抜け出し、突き抜ける。
「──トウカイテイオー1着!! 見事無敗三冠を達成しました!!!」
その実況を耳にして、トウカイテイオーはぶっ倒れた。
あと