疾走の馬、青嶺の魂となり   作:乾いた重水

11 / 49
 圧 倒 的 難 産
 レース描写難しいんじゃぁ
 菊花賞はテイオーINナカノハヤテOUTとなっています。




 ついでに没ネタを晒します。
 実はテイオーを秋天に出すルートもありました。
 この時点ではクラシック級で秋天勝ったのは戦前のハツピーマイトだけですし、皇帝を超えるという目標なら十分足り得ますしね。
 しかしこの時私の中の三女神が
「マック1着テイオー2着にした後に斜行降着で順位入れ替えようぜ」
 とかそそのかしてきやがったんですよね。
 一瞬ええやんコレと思ったのですが、気分が良かったのでスピカ全員を曇らせるのはやめておきました。
 菊花と秋天のどっちに行くかをアンケートで決める案もあったことをここに白状します。


 長くなりましたが以下本編です。


11.三冠は成るか

 

 

 

 まえ

 

 

 

 

 

 

 秋が来た。

 

 

 

 

 

 

 マックイーンの秋天も、事前に忠告しておいたおかげか斜行せずに1着を取り。

 

 

 

 

 いよいよテイオーの菊花賞の日だ。

 パドックに立つテイオーは、覚悟の決まった目で前のみを見つめる。

 

 

 

 

「1枠1番トウカイテイオー、1番人気です」

「怪我からの復帰初戦ではありますが、凄まじく仕上がったバ体ですね。無敗三冠まであと少しです」

 

 

 

 

 チーム全員がテイオーをじっと見つめる。

 

 

 

 

 私があれほどシゴいてやったんだ。

 負けたら承知しないぞ。

 

 

 

 

 そう意を込めてテイオーに視線を送る。

 

 

 

 

 テイオーは私の目線に気づくと、若干目をそらした。

 

 

 

 

 待てや。

 

 

 

 

 

 

 ─────────

 ──────

 ───

 

 

 

 

「やっほー、テイオー」

「……ナイスネイチャ?」

 

 

 

 

 返しウマの時、テイオーにネイチャが声を掛けた。

 その後ろにはレオダーバンやイブキマイカグラ、シャコーグレイド等もいる。

 

 

 

 

「怪我、ちゃんと治ったんだね。一緒に走れないんじゃないかってヒヤヒヤしてたよ」

「当然でしょ。怪我ぐらいで止まってなんかいられないから」

「……はは、アンタはそういうウマ娘だったねぇ…… 夢に真っ直ぐで、キラキラしてて……でもね」

 

 

 

 

 ネイチャやその他のウマ娘の眼光が強まる。

 

 

 

 

「……私達は、トウカイテイオーの無敗三冠をただ祝うために来たんじゃない。 復帰明けだからって容赦はしない。 夢を砕こうとも構わない。

 

 

 

 

 ──アンタに、テイオーに勝ちに来た!」

 

 

 

 

 帝王への、革命者共の宣戦布告。

 

 

 

 

「──ボクだって、負けるためにここに来たんじゃない。夢を成しに来た。

 鬼に鍛えられたんだ。いかなる手を使おうとも、ボクはキミたちに勝つ!」

 

 

 

 

 テイオーから、尋常ではない圧が噴き出す。

 恐れる者、慄く者、──悦ぶ者。

 意志が、夢が、全てがぶつかり混じり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファンファーレが鳴り、ゲートに入って行く。

 トウカイテイオーから漏れ出る闘気に萎縮したウマ娘がいるのか、ゲートインにやや時間がかかる。

 

 

 

 

「各バゲートイン完了──スタートしました第52回菊花賞! 

 各バ綺麗にスタートを切りました、出遅れはありません。

 

 

 まず先陣を切ったのはフジヤマサンゲン、そのすぐ後ろにフジアンバーワン、一バ身半離れてホクセイシプレー。

 

 

 さて注目のトウカイテイオーは中団、サクラヤマトオーの後ろにピッタリとつけています!」

 

 

 

 

 トウカイテイオーがマークしている。

 これは予想できたウマ娘が少なかったのか、やや動揺が見られる。

 特にマークされているヤマトオーはかなり焦っていた。

 

 

 

 

(テイオーがマーク!? しかもこんなに近くで!? 『いかなる手も使う』って言ってたけどさぁ!)

 

 

 

 

 11番人気だったのにマークされているという予想外への焦り。

 背中に感じる凄まじい圧。

 何よりそれを行なっているのがトウカイテイオーなのだ。

 

 

 

 

 当然ではあるが掛かってしまう。

 何よりスタート直後の3コーナーの坂でのことだ。

 しかし4コーナーの中頃でヤマトオーは何とか落ち着きを取り戻し、スタミナを取り戻そうと速度を下げる。

 

 

 

 

 ある程度下がったところでテイオーはヤマトオーの後ろを離れ、次にワンモアライブの後につく。

 

 

 

 

 この時点で他のウマ娘がテイオーの作戦に気付いた。

 潰れるまでマークし、切り替えて行くのだと。

 

 

 

 

(クソがっ、まるでカエル飛びかよ!)

 

 

 

 

 何人かは悪態をついた。

 一度でも後ろに付かれるとマズい。おそらく適当な近くのをマークしている。他のヤツに押し付けなければ。

 テイオーから離れていこうと、前へと前へと行ってしまい──

 

 

 

 

「さて1000メートルの通過タイムは58.9、かなり早いペースになっています!」

 

 

 

 

 ──異常なハイペースを生み出した。

 

 

 

 

 前がテイオーにぐちゃぐちゃにされているのを、ナイスネイチャは見ていた。

 

 

 

 

(うひゃー、なかなかにエゲツないことやってんなー。ちゃんと斜行しないように行ってるし、他は斜行しないように動かなきゃいけないし。後ろで正解だったな)

 

 

 

 

 差しや追込にとってハイペースは有利。であればこのままテイオーに勝手にやってもらうのが得策か。

 しかし垂れて来たウマ娘を回避していかなくてはならない。前を塞がれると厄介だ。

 垂れウマに対処している間にも、テイオーは死神の如く一人ずつ狩っていく。

 前に逃げて行ったウマ娘も、その分スタミナが削られていて──

 

 

 

 

「さあ第3コーナーの坂に入って行きましたが、先頭集団が大きく減速! やはりハイペースでスタミナが尽きたか!?」

 

 

 

 

 一気に先頭集団との差が縮まる。

 そしてテイオーが抜け出した。

 今までスリップストリームでスタミナを温存し続けて来たのだ。このままではテイオーの一人勝ちだ。

 そして後方で控えていたウマ娘も次々に抜け出して行く。

 そのまま先頭集団を抜き、そのままテイオーを抜き──

 

 

 

 

 テイオーを抜いてはいけないことに気づいた。

 即座にテイオーにマークされてしまう。

 

 

 

 

 そんな哀れな一人を見ながら、レオダーバンは先頭へと抜け出して行った。

 坂を下るとき、テイオーが内から抜いて行くのがチラリと見えた。

 そしてテイオーの圧が来る。次はお前だと告げる。

 ──私の後ろに来るんじゃない! 

 すぐ後ろのヤツにマークを押し付けようと、若干外に寄った。

 寄ってしまった。

 

 

 

 

「さあ内からトウカイテイオーが一気に抜け出したぁ! 残り400メートル!」

 

 

 

 

 最内をテイオーに抜かれた。直後に自分の失策を呪った。

 

 

 

 

(クソッ、やられた! ──だが、あんなにかき乱してたならスリップストリームがあってもテイオー自身のスタミナはそこまでないハズ!)

 

 

 

 

「──ああああああぁぁぁぁっ!」

「レオダーバンも負けじと追い縋る! 外からはナイスネイチャ、イブキマイカグラも来ている!」

 

 

 

 

 四人が並び、抜かし、抜かされ、そして残り100メートル。

 

 

 

 

 テイオーは自身のスタミナが尽きかけているのを感じていた。

 レオダーバン、ナイスネイチャ、イブキマイカグラ。おそらくまだ伸びる。

 このままでは抜けない。

 

 

 

 

 そう、このままでは。

 

 

 

 

(切り札は、最後まで取っておくものだぁっ!)

 

 

 

 

 テイオーステップ。足を思いっきりぶん回す。

 脚への負担が急増する。左脚に嫌な痛みが走る。

 ライスの言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

(これが『超えちゃいけない限界』かもしれない。本当に痛いし怖い。でも──)

 

 

 

 

 

 

「ボクは、負けられないんだぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴール板を──僅かに抜け出し、突き抜ける。

 

 

 

 

 

 

「──トウカイテイオー1着!! 見事無敗三冠を達成しました!!!」

 

 

 

 

 

 その実況を耳にして、トウカイテイオーはぶっ倒れた。

 

 

 

 

 

 

 あと


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。