疾走の馬、青嶺の魂となり   作:乾いた重水

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原因不明の体調不良でかなり遅れてしまいました。
申し訳ないです。

あとarcaeaやってました

今回有馬を書くにあたって、パーマー育成したり他の馬について調べたりダイタクヘリオスの戦績見てたんですが。
1992年
10/11 毎日王冠
11/01 天皇賞(秋)
11/22 マイルCS
12/20 スプリンターズS
12/27 有馬記念
えっ何この超過密ローテは……(困惑)

ブルボンってHANROじゃなくてCHAMPだったんですね……

あとKey Ingredientはいいぞォ……
from a place of love とかSAN値が削れる削れる


20.鎌の先は

 

 

前

 

 

 

 

 世間がクリスマス一色に染まる時期。

 あらゆる所に紅白や紅緑の物体が溢れ。

 ケーキ屋が過労に陥り。

 その辺でカップルが闊歩し。

 クリスマスプレゼントのために、大型家電量販店が人間で埋め尽くされる。

 

 

 

 

 まあ私にはほとんど関係ないが。

 クリスマスケーキに関してはマックイーンが小さい超高級ケーキをたくさん持ってきてくれた。

 いろんな味を楽しめて実に良かった。

 ただ、そのうちの幾つかには香り付けのための洋酒が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 入ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへへへへっっへへへえへへぇ……」

「テイオーが壊れた!」

「ええっ!? 菓子用の洋酒だけでこれですの!?」

「よっっわ……」

「……だれがよわいってぇ!?」

「うわ面倒臭い酔っ払いのタイプだ!」

 

 

 

 

 テイオーが酔った。

 誰がこんなの予想できるか。

 

 

 

 

「うるさぁい! ぼくはありまでもぜったいにかっちゃうもんに!」

「…………ハッ」

「らいすぅ!? いまはなでわらったでしょ!」

「うん」

「ちょっとぉ!?」

 

 

 

 

 馬時代ですら私より後ろだったのに負けるはずがないだろ。

 そもそも私はアイツと決着をつけるのだ。

 沈みっぱなしのテイオーなんざ無視だ無視。

 

 

 

 

「相変わらず神経が図太いと言いますか……」

「アタシもどっちが勝つかわかんねぇしな……」

「……正直テイオーよりもボーガンの方が怖い」

「「!?」」

「ライス? 流石にアタシでも本人の前で言うのはちょっとどうかと思うぞ……?」

「いや、強さじゃなくて行動の話だよ。テイオーはどう動くかがある程度予想がつくけれど、ボーガンは本当に何してくるのか一切わからなくて本当に怖い。あの菊花然り」

「あー成程……」

「まあわからなくはないですわね……」

「もー! そんなにいうならぼくだっておおにげを──」

「「「やめとけ(やめなさい)」」」

「なんでー!?」

 

 

 

 

 喚くテイオーは適当に放っておくとして。

 

 

 

 

「……ちなみに何か対策は考えておりますの?」

「うーん、対策というかゴリ押しというか……基礎能力自体は私の方が上のはずだから、相手の作戦を力技で突破するとか……ただそもそもの地力を封じて来そうでなんとも……」

「でもよー、不可能じゃないのか? 相手に実力を出させないようにレースを操るのって」

「普通なら。でもボーガンならあり得ると思う」

「随分と彼女を評価しているんですわね」

「…………色々と思い知ったから、ね」

 

 

 本当に恐るべき相手だよ、まったく。

 

 

 

 ─────────

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 ───

 

 

今年の有馬記念について語るスレ

 

 

1:レース好きの名無し

 今年もまたメンツが濃い……! 

 

2:レース好きの名無し

 爆逃げコンビ・メジロパーマー&ダイタクヘリオス

 不憫な帝王・トウカイテイオー

 超絶気性難・レガシーワールド

 ブロコレの兆し・ナイスネイチャ

 鉄の女・イクノディクタス

 みんな大好き・ホワイトストーン

 潜む弓手・キョウエイボーガン

 黒いアレ・ライスシャワー

 

 うーんこの

 

3:レース好きの名無し

 黒いアレは草

 

4:レース好きの名無し

 最近さらに自由度が上がったからな黒いの

 

5:レース好きの名無し

 菊花取ったから本性出して来た感じある

 

6:レース好きの名無し

 今まで隠せていましたか……? 

 

7:レース好きの名無し

 >>6

 駄目みたいですね()

 

8:レース好きの名無し

 ただ遠慮が無くなっただけだな……

 

9:レース好きの名無し

 最近twitchやってるってマ? 

 

10:レース好きの名無し

 >>9

 マジ。ただゲームやってるだけだけどな

 今はthe witnessやってるんだが、ついにアレに気付いた

 

11:レース好きの名無し

 全てを察した時のクソデカため息大好き

 その後ゲームそっと閉じたのもっと好き

 

12:レース好きの名無し

 パーマーとヘリオスの大逃げが見られるの期待しかない

 

13:レース好きの名無し

 パーマーはともかくヘリオスに2500はキツくないか? 

 

14:レース好きの名無し

 いいんだよ沈んでも

 見てて楽しいんだから

 

15:レース好きの名無し

 サンエイサンキュー出ないの? 

 

16:レース好きの名無し

 >>15

 秋華賞→エリ女→有馬記念はキツイって

 

17:レース好きの名無し

 ローテキツいししゃあない

 

18:レース好きの名無し

 ヘリオス「え?」

 

19:レース好きの名無し

 >>18

 毎日王冠→秋天→マイルCS→スプリンターズS→有馬とかイカれてるよ君

 

20:レース好きの名無し

 >>19

 イクノディクタス「そうです。もっと間隔を開けた方がよろしいかと」

 

21:レース好きの名無し

 >>20

 おまいう

 

22:レース好きの名無し

 不憫な帝王……? 

 何回も骨折してスピカの連中に振り回されてるだけじゃん

 

23:レース好きの名無し

 だけ……? 

 

24:レース好きの名無し

 何回も骨折したのに立ち上がるのは不憫じゃなくて不屈なんよ

 

25:レース好きの名無し

 ライスとボーガンの有馬で決着つける宣言、クッソ傲慢で笑った

 アレ上の世代ぶっ潰すの前提として発言してるだろ

 

26:レース好きの名無し

 菊花見てたらできそうな気がするの本当ヤベェなあの二人

 

27:レース好きの名無し

 あんだけ速度出して故障しないか不安

 

28:レース好きの名無し

 今のとこ大丈夫らしいけど

 

29:レース好きの名無し

 爆逃げ二人がハイペース作るから菊花の再現になりそう

 

30:レース好きの名無し

 ボーガンがどうするかだな

 パーマヘリに合わせるかさらに行くか抑えるか

 

31:レース好きの名無し

 当日を待つか

 

 

 

 

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 ──────

 ───

 

 

 有馬記念。決戦の地。

 

 

 変更点は、サンエイサンキューが抜けてキョウエイボーガンが入ったことのみ。

 サンエイサンキュー、秋華賞1着エリ女3着は普通に強いんだよ。本当なんであんなローテ組まされたんだ。

 

 

 私? 

 やっぱり大外16番だったよ。

 ここでも前世再現しなくていいから。

 

 

 ちなみにテイオーにあの惨事の記憶はない。あったら気まずい。

 

 

 まあ、何も気にする事はない。

 結局ステータスでゴリ押すことにした。

 策略なんか関係ない。

 私はただアイツをネジ伏せればいい。

 

 

 

「14万3000人を超えるファンが詰めかけております中山競バ場。グレード1のファンファーレが木霊致します」

 

 

 優駿が、ライバルが、ゲートに入っていく。

 

 

「さあ、いよいよ最後の一人、大外16番、二人目の菊花賞ウマ娘ライスシャワーの枠入りを待つばかりです━━さあ16人枠入り完了しました。

 ゲートが開いて、さあグランプリを制するレースが始まりました!」

 

 

 出遅れなし! 

 

 

 ボーガンはどこだ!? 

 

 

 

 ━━いた! バカ二人の直後! 

 

 

 

 メジロパーマーの後ろにピッタリとついている。

 

 

 あいつまさか。

 

 

 ━━間違いない、明らかにペースがあの時以上だ! 

 

 

 クソ、どうする? 

 

 

 あいつはスリップストリームでスタミナを温存できる。

 そもそも3000であの走りができたんだ、余計無視できないことになった。

 

 

 かと言ってあの3人とその後ろはかなり差がある。

 控えたら追いつけない。

 追いかけたらペースが乱れる。

 

 

 ならば、その中間か。

 

 

 

 

「先頭はメジロパーマーにダイタクヘリオス、そのすぐ後ろにはキョウエイボーガン、この3人が非常に早いペースを作り上げているぞ! そして3バ身離れてライスシャワー、そのまた3バ身後ろには……」

 

 

 

 ─────────

 ──────

 ───

 

 

 

「依然として大逃げでありますメジロパーマーとダイタクにボーガン、さあ4番手ライスシャワーまでは8バ身、その後ろも10バ身離れているぞ! 早く追いかけなければならない!」

 

 

 

 

 ああくそ早すぎる、アイツ何考えてんだ!? 

 まだバ身差つけるのか!? 

 

 

 今は3コーナー。

 今スパート掛けないと確実追いつかない! 

 

 

「━━はぁっ!」

 

 

「さあライスシャワーが上がってきた! トウカイテイオーは後方3番手、まだ来ないのか!? メジロパーマー大逃げ! 宝塚の再現なるか!? 残り400!!」

 

 

 上がれ上がれ上がれ上がれ! 

 中山の直線が短すぎる! 

 

 

 追いつけ、抜かせ! 

 あと5バ身、4バ━━

 

 

 

 

 

 

 

 その時。

 

 

 

 キョウエイボーガンの身体が。

 

 

 

 ぐらりと揺れた。

 

 

 

 

「……ぇ?」

 

 

 

 

 ゆらゆらと速度を失い、外へとヨレて行く。

 

 

 

 

 一瞬見えた横顔には苦悶の表情が浮かんでいて。

 

 

 

 

 私はただ見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

「おおっとキョウエイボーガン一体どうしたのでしょうか!? 故障発生か!?」

 

 

 

 ─────────

 ──────

 ───

 

 

 

 ────4着。

 

 

 正直、結果なんかどうでもよかった。

 

 

 歓声も、メンバーの声も、全てが遠く感じられた。

 

 

 ボーガンが載せられた救急車のサイレンだけが、耳の中で反響し続けていた。

 

 

 

 面会許可が出てから、すぐにボーガンの病室に行った。

 

 

「……来たぞ」

「ああ、お前か……」

 

 

 重い沈黙が病室を覆う。

 

 

 

 

「……脚、治るのか?」

「さあ?」

「さあ、ってお前……!」

「わからんもんはわからん。医者もそう言ってたからな」

 

 

 なぜ。

 何故。

 ナゼ? 

 

 

「ああそうだライス、あの有馬。

 本来との変更点、覚えてるか?」

「……サンエイサンキューではなく、お前が出た」

「そう。そして、サンエイサンキューは有馬でどうなった?」

「…………ぁ」

 

 

 ああクソ、そういう事か。

 

 

 

 

「死神の鎌は、誰であろうと振り下ろされるって事だ」

 

 

 

 運命って奴はどこまで糞なんだ。

 

 

「もちろん、鎌がカス当たりすることもある。テイオーが菊花出られたのはお前の助言だろ。当たり所はこちらで変えられる」

「……だったら、あの宝塚はどうなる?」

「まあ、お前が出なかったら……多分誰かが死ぬ。お前がある程度の対策を持って出れば、死にはしない」

「……」

「ま、タイムリミットまで2年以上あるんだ。今決めることじゃない」

 

 

 私はどうしようか。

 いつの日か考えよう。

 

 

「ボーガン」

「なんだ?」

「……これ」

 

 

 私は紙袋をボーガンに渡す。

 

 

「……絶対に治せよ」

 

 

 私は病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「……なんだこれ」

 

 

 

「……手紙? 私に?」

 

 

 

「……は? ファンレター?」

 

 

 

「……私なんかに届くとは」

 

 

 

「わーお、子供からも来てる」

 

 

 

「これ差出人は……あっ」

 

 

 

「……………………」

 

 

 

「そうか……見ててくれたんだな……」

 

 

 

「あーあ、絶対に治さなくちゃな」

 

 

 

 弓手はまた立ち上がる。

 

 

 

死神は鎌を研ぎ続ける。

 

 

 

 

 来たるべきその時の為に。

 

 

 

 

後

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