疾走の馬、青嶺の魂となり   作:乾いた重水

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32.襲来

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 ヤバい。

 

 

 

 

 本当にヤバい。

 

 

 

 

 フォームの改善が進まない。

 

 

 

 

 ある程度までは来た。

 しかしそこからどうしても進まない。

 映像と睨めっこする日々がかなり続いている。

 状況再現のためにマックイーンと併走もしたのだが、それでもダメだった。

 

 

 

 

 何か、何か手は無いのか。

 一旦、トレーニングから離れることすら視野に入れている。

 音ゲーは離れたら改善することがあるけれど、スポーツにおいてそれが起きうるかはわからない。

 

 

 

 

 今度のオールカマーがダメだったら、本気で考えてみよう。

 

 

 

 

 

 

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 ライスシャワー @rice_shower 昨日

 

 

 次走はオールカマーです

 復帰初戦ですが、頑張っていこうと思います

 

 

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「ターボさん、次走が決まりましたよ」

「え!? どこ!? テイオーと一緒のとこ!?」

「いえ、残念ながら。オールカマーです」

「え? でもさ、トレーナー?」

「何でしょうか、ネイチャさん」

「確かライスシャワー出てくるんだよね? こんなこと言っちゃあアレだけどさ……その……勝算とか、あるの?」

「……そうですね。以前であれば出しませんよ」

「……つまり?」

「ええ、今の彼女であれば、おそらく。良い作戦を思いつきました。

 ━━ターボさん、早速トレーニングに行きますよ」

「うん! わかった!」

 

 

 

 

 

 

「……トレーナー、いつの間にライスシャワーの状態なんか手に入れたんだろう…………」

 

 

 

 

 

 

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 時は少し遡って7月。

 

 

 

 

 

 

「私、見に行こうと思います」

「……何を?」

「ナリタブライアンのデビュー戦です」

 

 

 

 

 オフサイドトラップが、そう切り出した。

 ……今のオフトラが見ても、恐らく良くない気がする。

 

 

 

 

「……多分絶望しかないよ?」

「分かってます。それでも」

 

 

 

 

 彼女は、こちらを力強い目で見て、

 

 

 

 

「諦めないために」

 

 

 

 

 そう、口にした。

 

 

 

 

 

 

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「━━ナリタブライアン、大差をつけて今ゴールイン!」

 

 

 

 

 圧倒的なまでの力の差。

 恐らく大半がタイムオーバーを食らっただろう。

 

 

 

 

「ははは、凄いなぁ……」

「……コレが今のブライアン。壁は高いよ?」

「ええ、そりゃあもう実感しましたよ。━━でも」

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に追い続けます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……引退するまでに追いつけなかったら?」

「追いつけるまで引退しませんよ」

「ブライアンが先に引退したら?」

「影だろうが追い続けます」

「無いものを追うのは怖くないのか?」

「影を恐れはしませんよ」

 

 

 

 

 

 

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 トレセンにて。

 マックイーンやテイオー、サンデーサイレンスと会話していた時。*1

 

 

 

 

 

 

「イージーゴアさんって、どんな方だったのですか?」

「…………」

「もしもし?」

「……あー、いや、その、あまり苦手なタイプというか……本人は善意100%でくるから余計タチ悪いんだが………………」

「……例えば?」

「どんな場所であろうが、私を見つけたらすぐに『あっ、サンディ〜〜!!!』ってクソデケェ声で呼びやがる。パーティ会場ですらやりやがったんだぞ? 

 あと何かあったらすぐに私の所に伝えやがる。どんなにクソどうでもいいことであってもな。しかも直接。

 せめて電話なりWhatsAppなり使えって電話番号渡したら、一日中スマホがピロンピロンブーブーブーブー鳴りやがる。

 2日でブロックしたぞ、クソッタレ。

 そしたら『なんでなんで』と泣きつくから余計うるさくなる。

 しかもどっから手に入れたのか私の予定を把握してやがる。

 数百マイル離れた場所まで付いて来やがったこともあるんだぞ?」

「あなたのことが大好きなんですね」

「マジで対応に疲れるんだよ……」

「ああ、それと、良い日本語を教えて差し上げましょう」

「……なんだ?」

 

 

 

 

「日本語には、『噂をすれば』という言葉があります」

 

 

 

 

「……意味は?」

 

 

 

 

「あちらをご覧ください」

 

 

 

 

 

 

 サンデーサイレンスが、ゆっくりと首を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サンディ〜〜!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げえぇぇぇぇぇぇぇっ!!?!?」

 

 

 

 

 即座に逃走を図るサンデーサイレンス。

 しかし、既に加速してこちらに向かって来ていたイージーゴアから逃れられるはずもなく。

 

 

 

 

「久しぶり会いたかった寂しかった声聞きたかったどう元気してる? ちゃんと食べてる? みんなと仲良くしてる? ちょっと痩せてない大丈夫食べさせたげよっか?」

「……! …………!」

 

 

 

 

 完全に正面からホールドされている。

 体格差のせいで窒息してしまっている。

 

 

 

 

「……ぶっはぁ! 窒息死するかと思った! お前無駄にチチでけぇんだよ!」

「あ、ゴメン」

「つーか、何でお前が日本にいるんだよ!?」

「会いたかったから」

「ハァ!?」

 

 

 

 

 ゴアを睨みつけるサンデー。

 この間もガッチリとホールドされている。

 

 

 

 

「サンディ、ちょっと吸わせて?」

「何を……むっぐう!?」

「……ぷはぁ、ありがと!」

「は、いや、ちょ、おま━━!?」

「もっかいする?」

「いらねぇ!!」

 

 

 

 

 ようやく拘束から抜け出し、一気に距離を取る。

 テイオーが「ミチャッタ……ミチャッタ……」と顔を赤くして悶えている。

 

 

 

 

「仲が良いんですのね」

「でしょ!? そう見えるよね!? ねっサンディ?」

「ど! こ! が! 仲良く見えるんだよ!? 目ん玉ショットガンで穴開けたのか!?」

「しないよそんな事。 サンディを見れなくなっちゃう」

「こいつ……!」

 

 

 

 

 高火力フルバーストで攻めるな。サンデーが死にかけてる。

 

 

 

 

「お前仕事は!? あっちじゃ忙しいはずだろ!?」

「うん。あと2時間後にはジェット機乗らなくちゃ」

「何でそんなにスケジュールキッツイのに日本に来てんだよ!? 金と時間をクソの山に投げ捨ててる自覚あんのか!?」

「そんな事ない! サンディがこの世で一番なんだよ!? 最も有効な使い方だよ!」

「イカれてるよお前……」

 

 

 

 

 サンデーは全てを諦めたような目で空を仰いだ。

 アメリカじゃずっとあんな感じだったのか……

 

 

 

 

「もう行かないと。 じゃぁまたね!」

「二度と来んな!」

 

 

 

 

 中指を立てて吐き捨てた。

 

 

 

 

「良い友人ですね」

「勘弁してくれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テイオー? おーい?」

「アワワワワワ……」

「ダメみたいですわね……」

 

 

 

 

 

 

*1
以下、カッコ内は英語




サンxゴアを書きたいがために登場させました(自白)
正直書いてて1番楽しかったです
サンxゴア流行れ……
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