33
前
オールカマー。
ライスさんは、結局間に合わなかった。
ダメならダメなりにやってみるしかない、とは言っていたけれど。
ずっと画面を睨み頭を抱えるのを隣で見て来たから、その努力が報われてほしい、とは切に願う。
ライスさんがパドックに出たけど、やはり分かる人には分かるのか、若干の困惑が生じている。
38:レース好きの名無し
あるえぇ?
39:レース好きの名無し
なんか本当にクッソ調子悪そうなんですけど
40:イッチ
「勝てるかどうかわからない」とか言ってたんで本当にヤバいですね
41:レース好きの名無し
は? G2やぞ?
42:レース好きの名無し
そんなヤバいの出てたっけ
43:レース好きの名無し
>>42
ショウグン
だけどショウグンに負けるのは考えたくない
44:レース好きの名無し
やっぱり春天で燃え尽きたんじゃねぇの
まあ、どうしてもそう考えてしまうよね。
正直、私だって不安だ。
祈るように、縋るように両手を握る。
出走の時間がやってきた。
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ゲートが開く。
あの目立つ青髪が、いつも通り先頭を突っ走る。
その後ろを、あの時よりも近くで追う。
スタミナに関してはあまり問題はなかった。
ならば、実力を出せなくても追いつける位置に着くしかない。
そして、私の判断が他のウマ娘に影響を与えたのか、後続もかなり上がってくる。
そんなことをしたらどうなるかは自明なのに。
何人かは自分のペースで走っているようだが。
ツインターボは、あの時と同じように普段より少し遅く走っている。
━━いや、もっと遅い。
とうとうペースを抑えることを覚えたのか?
まあこれでもかなり速いが。
終盤に近づいた。
今行けば、おそらく勝てる。
春天の最後を思い出して、再現する様にスパートをかける。
ツインターボだけが4角にいる。
そこに私が加わり、どんどんと差を縮めていく。
7バ身、6バ身。
5バ身まで近づいた時。
ターボの耳がピクリと動き。
チラ、とこちらを見た。
そして、体勢が大きく前傾した。
「おおっと、ツインターボ再加速!? 差が縮まらない!」
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275:レース好きの名無し
!?
276:レース好きの名無し
はぁ!?
277:レース好きの名無し
ターボ!?
278:レース好きの名無し
え
279:レース好きの名無し
逆噴射しないのか!?
「ライスさんっ!!」
思わず、身を乗り出した。
信じられない。
再加速。
絶対に沈むだろうと。
必ず追い抜けると思った。
なのに。
差が、縮まらない。
ツインターボさんは、魂も何もかも全てを燃料にして飛んでいる。
ライスさんは驚愕したように目を見開いている。
━━ダメなのか。
暗い予想が頭をよぎった。
しかし。
ライスさんが目を閉じ。
再び開いた時。
明らかに、瞳の色が変わったように見えた。
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なんだあれは。
死に物狂いで走る青い体からは、ジェット機のような轟音が聞こえる。
間違いなく、限界を超えて走っている。
だが。
負けたくない。
二度も!
お前に負けたくはない!
走れ。
走れ。
走れ!
勝つんだ!!
ピシリ、とヒビが入るような感覚。
━━これだ!
目を閉じ、一気に集中する。
目を開けて、ただツインターボのみを見つめる。
魂から、全てを賭けて追う。
4。
3。
2.5。
2。
1.5。
1。
━━ああ、だけれども。
「━━逃げ切った! 逃げ切った! ツインターボ1着! 信じられない逃亡劇!」
━━悔しい。
けれど。
手がかりは、やっと掴めた。
あんなものを見せられたのだから、案外気持ちよく負けたものだ。
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328:レース好きの名無し
ウッソだろ……
329:レース好きの名無し
なにこれ現実?
330:レース好きの名無し
思わずターボ応援したわ
331:レース好きの名無し
逆噴射装置故障してない?
332:レース好きの名無し
>>331
してないよ
エンジンが逆向いてただけ
333:レース好きの名無し
G2の盛り上がりじゃない
334:レース好きの名無し
あそこから追えるライスもライスだけどターボがヤバ過ぎた
負けた。
けれど、その顔はどこか清々しい。
きっと何かを見つけられたんだろう。
ツインターボさんは地面に倒れ、肩で荒い息をついている。
やがて仰向けになり、
「見たかテイオー!! これが諦めないってことだああぁぁぁっっ!!!」
と叫んだ。
ライスさんが笑顔で近寄り、ターボさんの手を取った。
何かを話しているが、ここからでは聞こえない。
けれど、どちらも笑顔だ。
きっと互いの健闘を讃えあっているのだろう。
会場が歓声に包まれた。
後