疾走の馬、青嶺の魂となり   作:乾いた重水

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Q.更新遅かったな
A.忙しかったんです
 エタったわけじゃないのでご安心を
 なぜなら次回フィナーレなので


47最後の春天

 

 

 

 

 

ステイヤーズステークスも似たような感じで勝った。

また半バ身差キープしただけだが。

いろんな所で「人の心が無い」とかひどいことを言われたが無茶はしていないので問題ない。

ライオンが死んでもスターを取得できれば問題ないのと同じだ。

「こうすれば勝てる」とオフトラやダークに示したつもりなのだが「余計なこと吹き込むんじゃねぇ!」とトレーナーとボーガンに怒られてしまった。

何故だ。

その後ゴールドシップに「常に距離キープしてヌルヌル動くの気持ち悪い」と化け物を見る目で言われたので軽く締め上げておいた。

近場にフックがあったら吊るしていたのに。

 

 

 

 

そして有馬記念。

 

 

 

 

『ツインターボの先頭は終わらないっ! ナリタブライアンは伸びを欠くか!?』

 

 

『ツインターボ、史上初の秋シニア三冠達成! 有終の美を飾りました!!』

 

 

 

 

有馬は、ツインターボが勝った。

ちょっと何が起きてるかわからない。

マジで何した南坂T。

私が原因とか言われても何一つ理解できない。

 

 

ツインターボからは、ダービーの時のオフトラに似た雰囲気を纏っていた。

魂からの覚悟。

しかし暴走にも似たオフトラのそれとは異なり、抑えて制御下に置いていた。

その技術には舌を巻くものがあった。

実行したツインターボ、そして彼女を指導した南坂トレーナー。

流石だ。

ターボが引退してしまうのが悔やまれる。

ネイチャ? まだ走ってるよ。

いつまで走るんだこのヒト。

 

 

 

 

ブライアン。

あの状態のツインターボに怯えていた。

前に“恐ろしいモノ”がいたからか、一定以上詰めることができなくなっていた。

明らかにダービーのせいだな。

なんか……すまんかった。

これを重く見たブライアン陣営が休養を選択。

次はいつになるやら。

 

 

さて年も明け。

オフトラの復帰戦はバレンタインステークス。

その後は取得賞金を稼ぐためオープン・G3あたりを高頻度で出る予定だ。

そういえばオフトラって未だに重賞未勝利なんだよな。

勝たせなくては。

 

 

私の次走は京都記念━━ではなく、春天直行。

「お前が加減できないのはわかったからもう春天と宝塚以外出るな」とはボーガンの言。

私から言わせて貰えば、前回の春天みたいなことをしてないので十分に加減したつもりなのだが。

 

 

数を減らすのは足の負担をできる限り減らすためだ。

だが宝塚での事故対策などと言っても一般人には信じられないだろうし、何も理由がないのに春天を回避するのはあまり印象がよろしくない。

というか有馬記念サボったのでちょっとお上の気分がよろしくない。

「春天三連覇かかってるんだぞ出ろよ絶対出ろよ」という意志が上から漏れてきている。

確かに集客力が欠けるのは良くない。

お金は大事。

 

 

 

 

そして、今日はその天皇賞・春。

 

 

 

 

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━━━

 

 

 

 

今回の相手はただ一人。

 

 

「今日はよろしくお願いします、ライスシャワーさん」

「こちらこそ、ミホノブルボン」

 

 

ミホノブルボンだ。

まさか春天に出るとはな。

 

 

「後はキョウエイボーガンさんがいれば完璧だったのですが」

「ああ……ボーガン、ブルボンが出るって言った時『ブルボン出んのかよ引退しなきゃよかった!』って数時間喚いてたよ」

 

 

ちらっと観客席を見る。

そこには歯を食いしばり血涙を流すボーガンがいた。

握りしめる柵がミシミシと歪んでいく。

舌を出して煽ってやると中指で返事された。

おおこわいこわい。

 

 

「まあ……なんというか、随分と淋しいレースだな?」

「7人しかいませんからね」

 

 

コースを見回す。

私たちの他には5人しかいない。

その5人全員がこっちを見てきているのだけれど。

 

 

「一体誰のせいなのやら」

「9割以上あなたが原因だと思われますが」

「へえ。ブルボンが1割以下というのは、所詮その程度ということで?」

「訂正します。私とあなたで10割です。内訳は……今から決めましょうか」

 

 

ピリピリと空気が張り詰める。

いつの間にブルボンが煽りを学習したのかは知らない。

「お前とボーガンのせいだろ」と言われたら否定できない。

例の番組は割とバズった。

私とボーガンはともかく、ブルボンがあんな発言をするのが珍しかったようだ。

 

 

 

 

発走時刻が迫る。

ブルボンが強い眼光を以ってこちらに向き直った。

 

 

「ライスさん。あなたは私の三冠を阻みました。

……今度は、私があなたの三連覇を阻む番です」

 

 

あの時の意趣返しということらしい。

 

 

「━━やってみろ」

 

 

「━━望むところです」

 

 

 

 

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レースは、馬の時とは違った形で進んだ。

ブルボンがいるから当然ではあるが。

そして、ブルボンがいるからこそ、本来の得意範囲で競えた。

ブルボンが正確に前を走り、私がずっとマークし続ける。

 

 

4角の終わりが近づいた時、私はこの時間が惜しいと思った。

 

 

まともに走れる最後のレース。

走り続けることの叶わなかったミホノブルボン号(ライバル)と、このレースで、この世界で競えるという喜び。

 

 

とても、惜しい。

 

 

ゴールが近づく。

 

 

私にとっては正真正銘のラスト(最後の)スパート。

 

 

ブルボンが横に並ぶ。

競り合い、抜かし合い、ゴールに駆ける。

全力は出せなくとも、私達は本気だった。

 

 

それは、とても楽しかった。

両者の顔に笑顔が浮かぶ。

 

 

終わりが近い私。

まだ先があるブルボン。

 

 

 

 

その差を示すかのように、ブルボンが僅かに前に出た。

 

 

 

 

『ミホノブルボンが僅かに抜けて今ゴールイン!! あの時の、菊花賞のリベンジを、今果たしました!!』

 

 

 

 

悔しいが、悔いはない。

 

 

 

 

「……なあブルボン」

「なんでしょう」

「KGQEも凱旋門も出るんだよな?」

「はい」

「……勝てよ。たとえ私が見てなくとも」

「……はい。必ず」

 

 

 

 

 

 

 

 

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