疾走の馬、青嶺の魂となり   作:乾いた重水

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誰か「時間.zip」とか持ってたりしませんか?


7.トレーニングの様子は全カットで

 

 

 

 いよいよ夏合宿。

 ゴツゴツした荷物を持ち、見繕ってもらった私服に着替え、集合場所に集まる。

 集合時間5分前のはずだが既に全員が揃っており、私が最後だったようだ。

 私が来たことに真っ先にゴールドシップが気付いた。

 

 

「ライスー! おせーぞー!」

「一応まだ5分前ですわよ。楽しみにしすぎですの」

「そうだぞゴルシ。旅行じゃなくて合宿だからな?」

「そう言うトレーナーさんこそ1番早く来ていたじゃあありませんか」

「……さぁて、なんのことやら」

 

 

 トレーナー、お前もか。

 まあ高級旅館に行けると言うだけで楽しみになるのは違いない。私だって期待しているのだ。

 

 

 ちなみに交通手段もメジロ家が提供してくれるそうなのだが──

 

 

「なあマックイーン、どうやって行くんだ? バスか?」

「いいえ。そろそろ迎えが来るはずで…………ちょうど見えましたわね。アレですわ」

「「「「……アレ?」」」」

「ええ、アレですわ」

 

 

 来たのは真っ黒な車。正面からは一般的な高級車のように見えるが──

 ──長い。すっごい長い。

 これはもしかしなくても。

 

 

「リム……ジン…………」

「実物初めて見た……」

 

 

 トレーナーと私が呆然として声を漏らした。ちなみに時間ピッタリに到着している。

 中からいかにもな運転手が出てきて、慇懃な挨拶を交わす。

 そのままひょいひょいと荷物をトランクに詰め込んでいった。

 

 

「さあ、乗りますわよ」

「お、おう……」

 

 

 トレーナー、ゴールドシップ及び私は若干尻込みしている。こんな車に乗ったことなどないので当然ではある。

 テイオーは慣れた様子でリムジンに入っていったが。なんで慣れてるんですかねぇ? 

 

 

「ええっと、それじゃあ……」

「し、失礼します……?」

 

 

 車に乗るだけでもこの有様である。高級車、それもリムジンなんかは無意識のうちに「傷つけないようにしよう」「汚さないようにしよう」と考えてしまうのが実に平民らしい。

 シートがとても座りやすい。めっちゃ刺繍入ってる。シートベルトもすごいお洒落。前の座席の後ろに画面ついてる。上品な香りがする。

 こんな感じで至る所から高級感を放出しまくっているせいだと決めつけておこう。そうでもしないと気分が落ち着かない。

 これがお嬢様の日常なのか? 実に恐ろしい……

 

 

「それでは、発車致します」

 

 

 リムジンは静かに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「……適応はええな、お前」

 

 

 電子書籍を読んでいるとゴールドシップから声をかけられた。

 五分経ったら慣れたのだから仕方あるまい。

 

 

「……で、何読んでんの?」

「メ○ドインア○ス」

「うっわマジかよお前……」

 

 

 そんなに引くような本では無いだろう。

 普通のハートフル(hurtful)な冒険活劇なのに。

 

 

「外見の可愛さと読んでる本のエグさが一致してねぇ……」ボソッ

「何か言った?」

「イエ、何デモアリマセン……」

 

 

 ちなみにこの時、テイオーとマックイーンは気楽に会話していたのだが、トレーナーは未だにそわついていた。

 帰りもあるのだから早く慣れた方がいいぞ。

 

 

 

 ─────────

 ──────

 ───

 

 

 

 数時間後、目的地に到着した。

 ご丁寧に「スピカ御一行」という看板まで置いてある。

 荷物は部屋まで上げてくれるとのことなので、その間に施設の案内やトレーニング機材や場所の確認などを済ませておく。

 

 

 その後、部屋の案内に移った。

 部屋はウマ娘四人用の大部屋が一つ。トレーナー用の個室が一つとのこと。

 案内の人について行き、エレベーターで最上階へと上る。

 扉が開かれると──

 

 

 

 

「「「おおぉ……」」」

 

 

 

 

 絶景かな。部屋の調度があらゆるものと調和しており、素晴らしいものとなっている。

 マックイーンの小さなドヤ顔も納得できる。

 まあとっとと着替えてトレーニングに向かうのだが。楽しむのは後だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 初日のトレーニングが終わった。

 砂浜めちゃくちゃ走りづらかったです。

 あと尋常じゃない大きさのタイヤを引かせるんじゃない。むしろ引けたことにビックリしたよ。

 軽くシャワーを浴びてから、大浴場へと向かった。

 

 

 

 

 風呂がデカい! 景色がキレイ! 雰囲気が上品! 

 いやあ素晴らしい。しばらくここを利用できるというのは本当にありがたい。

 風呂場なのでまあ当然他のウマ娘の体も見えるのだが──

 ゴールドシップは流石の恵体。デカいしデカい。

 他三人が貧相なのでより目立つ。

 

 

 

 

 だがしかしマックイーンよ。

 私やテイオーはまだ小柄だからまあ分からなくもない。

 しかしあなたは身長が160cm超えていてその状態なのだ。なんなら私達二人に負けてるんじゃないのか? 

 一体どこに置いてきたというのか。

 

 

 

 

 そんな話はどうでもいいのだ。やはり筋肉の話の方が大事だろう。

 皆走るアスリートだから脚の筋肉が素晴らしいことになっている。

 テイオーやゴールドシップは上半身もきちんと筋肉のラインが浮き出ている。

 マックイーンはやや腹筋が足りないように見えるか。

 私は全身引き締まっている。見た目だけなら1番鍛えられているんじゃないだろうか。

 しかしウマ娘の本格化というのは不思議なものだ。筋肉が増えるのではなく、筋肉の発揮する力が増えるようで、腕相撲では四人の中では弱い方だったりする。

 そもそもウマ娘の筋肉が質量を無視してパワーを出している可能性があるのだから、ウマ娘というのはつくづく変な生物だ。

 しかし結局は筋肉が解決してくれる。本格化の謎もマックイーンの謎も筋肉の前では些細なことだ。

 やはり筋肉……! 筋肉は全てを解決する……!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風呂から上がり、浴衣に着替えたのだが、着方が分からなかったのでテイオーに教えてもらった。危うく左右を間違えるところだったが、間違えても案外間違いではないというのが私の状況なのだ。寝るときにこっそり変えてみようか。

 ゴールドシップが「浴衣を着てやることは一つだろ!」と卓球を薦めてきたので、四人でダブルスをすることにした。

 全員初心者なので初めのうちはあっちへこっちへボールが飛んで行ってしまったが、慣れてくるとしばらくラリーが続くようになり、試合として成立するようになった。

 マックイーンのスマッシュがゴールドシップの左目に直撃したが、ゴールドシップは異常な程頑丈な眼球を持っているのですぐさま復帰した。

 ……鉄串がブッ刺さっても無事なのは本当にどうかしていると思うが。

 

 

 

 

 部屋に戻ると、美味そうな食事が出来上がっていた。実際美味かった。ついでにカロリーや栄養素をまとめた紙も渡してくれた。ありがとうメジロ家。

 1番量を食べていたのはマックイーンだったが。なんとなくカロリーを読み上げようとしたが、今日は気分が良いのでやめておいた。

 

 

 

 

 その後はトレーナーの部屋に向かいミーティングを行う。

 若干アルコールの香りがしたが黙っておいた。まあ初日ぐらいは許されるだろう。

 部屋に戻るともう布団が敷かれていた。ほんの十数分だったと思うのだが……

 

 

 

 

 ゴールドシップがトランプを持ち出して来たので、インディアンポーカーで遊ぶことにした。

 折角なので何か賭けようという話になり、各々が持ち込んだおやつをかけることになった。

 賭けやすいように個包装のものを使い、準備を行う。

 

 

 

 

「一番強いのって2だっけ?」

「それは大富豪でしょう? 分かりやすいように単純に数字の大小にしませんこと?」

「じゃあそれで行こうぜ!」

 

 

 

 

 山札から一枚抜き取り、自分には見えないように頭の上に掲げる。

 

 

 

 

 メジロマックイーン、1。

 トウカイテイオー、1。

 ゴールドシップ、1。

 

 

 

 

 勝ったな。

 ただ他三人も勝ったような表情を一瞬浮かべていた。

 つまり私のカードもかなり低い数字なのだろう。

 そして各々が「他がこんなに低いなら自分は勝っただろう」と考えている。

 そりゃあ全員低い数字になるのはかなりの低確率だ。自分の数字が大きいと信じ切ってしまうだろう。

 つまりやることは一つ。

 その気持ちを煽るように、非常に迷う素振りを見せながら一つだけ追加で賭ける。

 後は勝手に互いを煽りながらドンドン賭けてくれる。

 

 

 

 

「「「「せーの、オープン!」」」」

 

 

 私は2だった。対戦ありがとうございました。

 そそくさと賭け金を回収し始めると、他三人がすぐに私を睨みつけてきた。

 

 

 

 

「ちょっと!? 絶対勝つって分かってたならなんであんな賭け方したのさ!?」

「完全に騙されましたわ……」

「畜生! 2回戦だ! 次は素寒貧にしてやるからな!」

 

 

 

 

 その後は極端に偏った数字が出ることもなく、全員のお菓子がいい感じに混ざったところで終わった。

 

 

 

 

 このような感じで合宿は続いてゆく。

 

 




修学旅行パロを入れようかと思いましたが人数が足りなくて泣く泣く断念しました。

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