新しくヤベェウマ娘が実装されました。
あと細江純子(cv.細江純子)も実装されました。
どういうことなの……
前
5月になった。
え? 4月?
勝ったに決まってるだろ、あの二人だぞ!
皐月の2週間後に春天があったのだ。
こうなると常に祝勝会やってる気がして来る。
テイオーは無敗三冠の一歩目、マックイーンはメジロ家念願の天皇賞の楯を手に入れた。
テイオーの次走はもちろんダービー。
マックイーンは宝塚記念でライアンとの再戦を控えている。
あーあ、こっちでもレースに賭けられたらよかったのに。
そうなった場合、今頃テイオーもマックイーンもATM扱いされていそうではあるが。
というか賭けれないのにURAはどこから利益を得ているのだろうか。
一応、レース場への入場料とライブのチケットがあるにはあるが。
後はウマ娘の関連グッズとかか。
それだけで賞金稼げるのか?
……いや待った、前世のどこかのタイミングでオグリキャップによる競馬ブームの経済効果は数兆円規模とか聞いたことがあるぞ。
そして前世以上にレースが人気なこちらの世界だったらグッズの売り上げがそれはもう凄まじいことになってるんじゃないか……?
そういえば、たづなさんがグッズの売り上げの利益をトレーナーと話していたのをどっかで聞いたような……そしてトレーナーの顔が蒼白を通り越して無色になっていたような……
……これ以上は考えるのをよそう。お金の話って怖い。
さて、チームメンバーの私はいよいよ隠れづらくなってきた。
まだ選抜レースすら出ていないのに、ゴールドシップと共に記事が作られていたことがある。
やめて……広めないで……伏兵にさせて……
いやマックイーンと似たようなローテ組めばいいか。そうすれば「マックイーンと同じローテだから問題ないな」と菊花まで引きこもっても不審に思われずに済む。
よしクラシック期にデビューしよう。後は夏の後までお休みだ。
一応デビュー後に負け続ければ評価は下がるには下がるのだが、わざと負けるのは駄目だ。
どうにかして最低限勝って、しかも評価を下げるような勝ち方をしなければならない。
難しいなぁ……
周りに「これフロックだろ」と思わせるようなレース展開を、誰にも気付かれないように作り出さなくてはならない。
走っている時に脳みそが焼き切れそうだなぁこれ。
「スピカメンバーだから強いだろう」という先入観を裏切れば普通に負けるより評価は下がるだろうか。
自分自身を罠にかけるように他のウマ娘を誘導するのか?
初戦であれば全員からマークが来そうだからそれを参考にしつつ再現して行くか。
ただまあこれをするのが非常に難しいのだが。
一応デビューまで1年弱あるのだからゆっくり考えるとしよう。
さて、本日は5月26日。
いよいよ東京優駿、日本ダービーの日だ。
テイオーが勝つのは決定事項ではあるのだが、私にとって重要なのはテイオーの脚だ。
今までの助言で何か変わるのか。それを見届けねばならない。
テイオーに言ったのは「負担のかかる走り方は切り札として温存した方がいい」。
トレーナーに言ったのは「テイオーの脚を毎レース後すぐに検査した方がいい」。
実際に、皐月の時はあの負担のかかる走りをほとんどせずに勝つことができた。
その影響で、前世より若干バ身差は小さかったが。
走法の変化程度ならレース結果自体は変わらないのだろうか。
しかしトレーナーは若干骨に疲労が溜まっている兆候があると言っていた。
であればやはり折れてしまうのか?
私の生命に繋がることであるため細心の注意を払わねば。
ファンファーレが鳴り、レースが始まる。
ただ彼女の脚のみを見つめる。
頼むから折れないでくれ──
「トウカイテイオー抜けた! トウカイテイオー抜けた! トウカイテイオー抜けた! リードは2バ身から3バ身! もう打つ手は無い! もう打つ手は無い! トウカイテイオー、二冠達成!!」
──どうだっ!? 脚は!?
おそらく異常なしに見えるが……
……いや、これは──
「──トレーナー!」
「──ああ分かってる! クソッ、左か! おい! テイオー止まれ!」
テイオーも若干の違和感を感じたのか大人しくトレーナーの指示に従う。
無敗二冠に沸いていた場内の雰囲気が、困惑とどよめきに変化して行く。
テイオーが救護室に運ばれてしばらくの後、アナウンスを告げる音が鳴った。
「会場にお集まりの皆様にお知らせです。第11R・東京優駿にて勝利したトウカイテイオーですが、脚に故障が発生したためウイニングライブへの出演は取り消されます。繰り返します。第11R──」
会場の一部で悲鳴が上がった。
─────────
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───
「おはよう、テイオー」
「あ、おはよう……」
翌日、入院したテイオーの見舞いに行った。
挨拶もどこか元気がない。
不安で眠れなかったのか、目元に隈も出来ている。
テイオーの脚の検査を行ったところ──
「骨にヒビ、か。 早く治るといいね」
「……うん、夏の半ばまでには復帰できるってさ。 早く治して菊花賞を勝たなくちゃ、ね」
──骨にヒビが入った程度で済んだ。
これはつまり、助言程度であっても、故障という大まかな事象は防げなくともより重い症状は回避できるということか。
しかし元々出走できなかった菊花に出られるのだ。
運命は変えられると見て問題は無さそうだ。
だがしかし、たとえ復帰できたとしてもテイオーには厳しい戦いになるだろう。
テイオーと並走していると、3000はテイオーにとってやや長過ぎるように感じられた。
長距離のためのトレーニングも、怪我のリハビリのために開始が遅れるだろう。
その間にも他のウマ娘はトレーニングを重ねて行く。
それをテイオーも分かっているのか、表情に焦りが見られる。
しかし、あのトウカイテイオーなのだ。
もしかしたら奇跡を見せてくれるんじゃないか、と思う。
さて、ダービーが終わったということは、いよいよデビュー戦が始まるということだ。
運命が変えられるのなら。
同世代に一人、絶対に運命を変えなければならないウマ娘がいる。
そのために、デビュー戦に出る前からそのウマ娘に接触して説得しなければ。
昼休み、隣のクラスに向かう。
「──失礼、サンエイサンキューって今いる?」
─────────
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───
──やっと説得が終わった。
直接聞いてみると本当にクソみたいな環境に置かれているなこの子。
状況はやはり前世と似たようなもので、「父親の会社が上手くいかないのを自分が稼いだ賞金でなんとかしなければならないから、できる限りレースに出続ける」というもの。
こんなもん通報したら一発アウトなレベルである。
前世では3歳時に7戦、4歳時はほぼ毎月レースに出るという最悪なローテーションを組んでいた。
むしろよく有馬記念まで故障しなかったなと。
私の後ろで痩せ衰えた馬が苦痛に喘いでいたのを思い出す。
彼女を「クソローテやめろ、勝てるレースも勝てなくなる、G1勝てる実力はあるから数絞って稼げ」と必死に説得してやった。
有馬記念までが非常に辛いことになるし、何よりその後が最悪過ぎる。
本来なら安楽死となるレベルの骨折であるが、馬主が「繁用牝馬にすれば金が稼げる」からと治療を続行、そのまま苦しみ続けることになっていた。
もし、こちらの世界でも同じことになったら。
本当に考えたくもないことになってしまうのではないか。
説得していても「私が稼がなくちゃ」「お父さんは悪くない」などとウジウジしていたため「レース中に足折って死んでも知らんぞ」と半ば脅迫まがいのことをしてしまった。
まあ一応納得はしたようだし、他のウマ娘にも聞いてみろとも言って置いたから大丈夫だと思うが……
これで周囲の人間全員が曇ることは避けられたのだろうか。
もし競馬の神とやらがいるのなら、そいつはかなりの性悪作家だろう。
変えなければならない運命が多すぎる。
後