リリカルな出会いに光あれッ! 作:ナナ
皆は世界には現代の知識では到底説明する事が出来ない不思議が無数に存在するのを知っているだろうか?
古くより船や飛行機、もしくは、その乗務員のみが跡かたなく消える事故が多発する魔の海域バミューダトライアングル。
死を超越し、不老不死、もしくはタイムトラベラーだと一部の人から信じられているフランスの貴族、サンジェルマン伯爵。
古代の時代に置いて、超文明を誇り、それ故に神の怒りに触れて海の底へと沈められたとされる伝説の大陸、アトランティス。
などなど、先ほど述べた通り世界には様々な不思議がある。だから俺はそんな事象や現象、出来事を真っ向から否定するつもりも無いし信じれない事も無いが────……流石にコレは信じられねぇーぜ。
「さーって、マジでどうしよう?」
ここは海鳴市。海や山、丘や行きつけの温泉があったりと割と過ごしやすく住みやすい、良い町だ。そんな便利な割と普通な町で暮らいる俺、
木だ。緑色の木だ。
巨大な根っこを捩じらせ、ビル群の中に突然出現したそれは強固な鉄筋コンクリートなどをぶち破って町全体に浸透している模様。ん? 何でそんな事が分かるかって? それはね──―……
「一番たけぇー場所とかそりゃねぇーぜ」
目測60メートル強。落ちれば一発でザクロ化が約束されている高さにまで持ち上げられた俺はトコトン運がねぇ。いや、まさかゲームを買った帰りに気まぐれで乗ったタイヤ止めがこんな風に持ち上がるだなんて……予想外すぎんだろコノヤロウ。
空は高いな大きいな。眼下には色々と滅茶苦茶な町がいっぱい広がってらぁ。降りる手段なんかも所詮9歳時の脳じゃ割り出せる訳も無く、ごちゃごちゃと考えるのを止めた俺は記念にと思いパシャリと写真を一枚撮ったりする。お、流石は最新機種、綺麗に撮れたな。
(それにこんな大規模な騒ぎだ、どうせレスキューか何か直ぐに来るでしょ。だとするとこの不安定な足場じゃ下手に動く方が悪手──―……ってアレ?)
その時、俺のデジカメの隅にオカシナ物? が映り込む。何だアレ、幻覚か何かか?
信号弾、発煙筒、レーザー光線。どれもが当てはまらない……ってか後者しか当てはまらないそれは分析途中に再度発射され、今度は先ほどよりもひと回り以上に太くなった一本の線でこの広大な空を、俺の視界を走って行った。
(す、スペシューム光線? いや、どちらかと言うとメガ粒子ほ──―)
なんて考える暇は無かった。何故かって?
(……は?)
足元の根が綺麗さっぱりに消えたからだよコンチクショウ!!!
ブロックは支えを失い自由落下を開始。同時に割とのんびりしていた俺の体も重力に引かれ、この60メートルと言う高さから落下し始めた。
さてここで問題、人間が60メートルの高さから落ちるとどうなるでしょうか?
「正解は死、あるのみ」
常識的に考えてたかが9歳時がこんな高さから落ちて助かるはず無いんだよなぁ!
俺には待ち受ける運命に逆らえる訳も無く俺は己の行く末を受け止め、落下中に気を失った。え? 覚悟決まり過ぎだって? 仕方ねぇーだろ、正直こんな高さに持ち上げられた時にはもう覚悟が決まってたんだから────……
「……ま、そんな覚悟も意味がなかったんですけどね」
気が付くとそこは真っ白に清潔感のある病室。全身に走る痛みを自覚しながらここが病室だと分かるとすぐさま震える手でナースコールをイグニッション。駆けつけた看護師に事情を聞いてビックリ仰天、まさかまさかの俺は生き残ったのだ。……大怪我は負ったけどね。
んでその後、主治医を名乗るザ・田中さんに聞いてみた。俺の入院期間ってどんくらいになりますかね? 親のお陰で貯金はたんまりあるけど何分一人暮らしだから家の様子が気になるんだよね。
「両足の重度の骨折の治療具合それとリハビリの期間も含めると、そうだね……全治半年ってところかな?」
「そっちじゃなくて入院期間を……」
「早くて二週間ぐらいじゃない多分」
「多分て、えぇ……」
何とも適当な主治医だな。
なんて考えもしたけど言葉にする事も無く俺はそのままベッドへ再度IN。俺の病人生活が幕を開けた。
最初は良かったが馴れて来るとこの生活は割とキツイ生活でもあった。両足は固定の為にガチガチに石工で固められて両足は重く、毎食出される病人食は栄養重視の考えで作られてる為に食べられないことも無い不味さ。友達なんていないから俺の病室を訪れるのはナースぐらいで娯楽の無いつまらないモノものだった。けれどそんな生活の中にも良い事もあった。
「なぁはやて、別に俺の部屋に毎日来なくてもいいんだぞ。お前にだって他にも友達が────」
「私、学校行った事無いから君の他に同年代の友達おらんよ」
「……Oh shit」
例えば俺が地雷を踏み抜いた原因不明の病に侵される車椅子関西弁幼女、八神はやてちゃんと友達になったりとかだね。
ヤバイな、結構陽気な性格だからてっきり俺と違って友達沢山の人気者だと思ってたのに義務教育である学校に行ったことないって、余りにも予想外過ぎんだろ。
「ご、ゴメンネ」
「かめへんよ。別に私は気にして無いから」
「なら、いいが」
ニコニコっと嬉しそうに笑ってる風を見るにマジで気にして無いようだけど、彼女の境遇を考えるに友達が俺しか居ないってのはこっちが罪悪感MAXだぜ。そしてそんな彼女と何処で出会ったかと言うとそれは俺が暇つぶしにと考え、院内にある図書館へと行った時にまで遡る。
その時の俺は丁度取りたい本が取れるか取れないかぐらいの高いとこにあったので何とか取ろうと頑張っていた。けど乗っていた車椅子はそんな俺の思いも知らず、かけていたブレーキが何の不具合か勝手に解除されクルっとタイヤが回転。車椅子が後退した結果伸びきっていた俺は倒れそうになる。そんなピンチな所に大正義はやてちゃんが登場したんだ。
「ふぅー危ない危ない。大丈夫ですか?」
「な、ナイスだ。車椅子幼女ちゃん……」
「車椅子幼女って、きみも同年代ぐらいよね?」
「確かに」
その後本は結局諦め、俺ははやてちゃんとお喋り開始。割と俺も喋り相手を求めてた事もあって話が弾んだ結果、何故か懐かれてしまった……理由は知らん。でも話の流れ的に俺の身の上と現在、親が長期出張中で1人暮らししていると言う家庭環境を話した辺りが原因……何かな? 訳わかんないよ。そんな訳ではやてちゃんと友達となってからは何故か毎日のように俺の病室へ訪れるようになってしまったんだ。
「ほれ、リンゴだ。食え」
「食えって……そのリンゴは私が持って来た物なんやけど」
「切ったのは俺だ。だからさっさと食いやがれ可愛い子ちゃん」
「ん"ん"ん"」
お、いきなり咳き込むだなんて体調が悪化したのかな? 顔もこの部屋に入った時よりも赤いみたいだし……ナースコール、イグニッションしとく?
「だ、大丈夫や! そこまでする必要はないで!」
そっかそっか、ならいいけど。手に持ったナースコールをぽいっと近くに放り投げた後、はやてへやったリンゴとは別のリンゴをバケットから取り出し、ナイフでザクザクデコレーション。あげたのはうさぎ型だったからな、今度はどんな形にしてやろうか……シンプルに八つ切りでいっか。
「それにしてもか、可愛い子ちゃんて……お世辞とは言えいきなりはいかんよ」
「あ、すまん。滅茶苦茶いい顔で笑ってたもんだから反射的にポロっと本音が口から零れ落ちちまった」
「本音って……」
俺はお世辞が吐けない人間だからな……嘘も付くし建て前も言うが基本的に本音しか喋らないぞ。だからポロっとはやての10年後を想像して出た言葉もしかない事だぜ。
「ま、いいわ。切り替え切り替え……それにしても、へぇ。君、意外と手先が器用なんやね」
「うさぎぐらいなら誰でも作れるだろ」
「いや、簡易的なデザインなら兎も角ここまでリアルなのは無理やと思うで」
まぁそんな感じで毎日はやての相手をしていたら不味い飯やギブスの影響で動きにくい環境も気にはならなくなり入院生活である二週間、楽しく過ごせた。あ、ちゃんとはやてとの交流は続けてるぞ、リハビリの時とか病院で不思議なぐらいよく合うからね。そんでもって退院後での車椅子生活。馴れない環境の中苦戦しながら何とか生活してた所、またも俺の元で不思議な事が起こる。いや、起った。
アレは晩飯に揚げ物をと熱した油を用意してた時だ。
「アジフライ、揚げたら最後、食うまでだ」
なんて自分でもつまらない事を言いながら揚げていると――――それは起こった。
「な、何だ!?」
地震、恐らくは局所的な不可解なモノだ。
やべーな、割と強い揺れだな。こえー家全体が揺れ始め、ガタガタと食器や家具が物音を鳴り響かせてんじゃん。現状車椅子生活である俺にすぐさま机の下に隠れる機動力なんて無ねぇぞ。弱くなった腕力で何とか車椅子を動かすけど……あ。
「……え?」
突然だが皆は極限状態とかにこんな経験したことは無いだろうか? 眼前に映る光景がまるでスローモーションのように流れる現象を。まぁ率直に何が言いたいかというと現在、俺にその現象が起こっています。やべーです。
揚げ物の為に鍋に張った油。それがこの揺れでひっくり返ったのかゆっくりと、ゆっくりと俺へ覆いかぶさろうとしている。もしこのまま油を被ったら俺は大やけどを負う事は想像に難くないだろうな。
(両足骨折の後は油被りの大やけどですか……やべぇーな。俺ってば不運過ぎねぇ?)
この短時間に俺が出来る事は無いと諦めの境地へ至った俺は静かに目を瞑る。これから来る痛みに耐える為に、これから来る恐怖に耐える為に――――……
(あ、でも)
せめて助けは呼びたかったな。
【光あれ!】
体感で1秒、2秒と時が過ぎ、10秒後ぐらい。時間がかなりたったハズなのに痛みはやって来ない。アレか? あまりに高温過ぎて俺の痛覚が駄目になっちゃってる系のアレですか? だったらヤバいな、素早く処置しなきゃ酷い傷跡が残っちまう奴じゃん。
「無事か、我が主」
なんて考えてたら突然俺の耳に知らないボイスが入る。(え)っと思った俺は耐える為に閉じていた瞼をゆっくりと開ける。すると眼前には――――神々しく輝く女性の顔があった。
「無傷のようで安心した」
けど、俺にとってはそれは重要じゃなかった。彼女の綺麗に靡く髪の上、二つピンっと跳ねるそれは俺にとって目が釘付けになってしまう、そんなモノだった。
「初めての召喚。私に驚くのも分かるがとりあえず私の話を――――」
「ッウマ耳ぃ!?」
「――――……みみ?」
コレが俺にとっての始まりの物語。両足を折った後に油を被りそうになると言う不運に見舞われた結果発生した、不思議な不思議な信じられない出会い。