俗世が好きで何が悪い!? 作:みども
2020年──
世界で男女平等という言葉はなくなっていた。
数十年前、日本各地に突如として出現した謎の門。
その門の先に広がる異空間は、東京都ほどの広さがあり、人類が生きる現世とは異なる世界が広がっていた。
この異空間は魔都と呼ばれた。
──そして、魔都には口にしたものに特殊な能力を与える“桃”という資源と、
一般的に
そして、確認された多くの醜鬼に共通していたのが、人間を確認すると無差別に攻撃するという危険な性質である。
この醜鬼の出現に伴う被害や、誤って門を通り魔都に迷い込んでしまった民間人が醜鬼に襲撃される事件は、“魔都災害”と呼ばれ日本政府は対応を急がれることとなる。
日本政府は魔都に繋がる門を管理下に置き、桃の恩恵により能力を獲得した者たちの中で選抜した醜鬼との戦闘のスペシャリストたちによって編成された
醜鬼による魔都災害の被害は、魔防隊発足以降大きく減少。
魔都を管理下に置いた日本政府は、桃を始めとする現世と異なるこの空間の調査を行い──
「…………」
魔防隊発足に関わる資料を閉じ、単眼鏡を覗く。
見据える先には、無数の醜鬼たちの群れが襲う魔都側に複数存在する人類の拠点の1つ。
四を除く一から十番組の9つの部隊から構成される魔防隊の一角、醜鬼の出現が特に多い激戦区である地域を管轄する“魔防隊二番組”の寮があった。
襲撃する醜鬼は当初100体という膨大な数がいたが、襲撃を察知して迎撃に出てきた二番組の隊長により既に約20──いや、10……あ、今最後の醜鬼がやられたからこれで0となった。
単眼鏡をしまう。
タイマーを止めると、4分28秒。
これまで幾つかの魔防隊の拠点を100体の醜鬼の群れで襲撃してきたけど、桃の一大産地の洞窟にあった拠点を除けば軒並みきっかり5分で殲滅されてきた。
二番組のこのタイム、1つの部隊で迎撃したことを考慮すると最短記録ですね。
資料を再度開いて二番組に関する頁を確認すると、魔都を9の区域に分けた際に鬼門と裏鬼門に位置する地域を管轄する二番組と七番組は特に醜鬼の出現が多いことから、精鋭部隊が配置されているという。
なるほど、この記録もそれを考慮すれば納得。
「
5日かけて準備した醜鬼の群れを使って観測した二番組の組長の強さ。
今回の戦闘で確認したその能力などのデータを記録し、観測していたその場から立ち上がり離れる。
必要な情報は確認しました。
まだ調査していないのは、三番組、六番組、七番組、九番組──そして、現魔防隊のトップである総組長を兼任する人類の率いる十番組。
……嫌な予感がするので、十番組は最後にしておきましょうか。
次は、二番組と双璧をなす精鋭部隊、裏鬼門の地域を管轄する七番組を観測することにします。
次の目標を定め、もうひとつの目的を果たすために歩き出す。
ふと視線を感じて振り向くと、1人に戻った二番組の組長がこちらを見ていた。
──目が合った、ような気も。
「…………」
桃の恩恵を受けても、人類の視力では道具を駆使しなければ絶対に観測できない距離に自分は立っているはず。
見えるはずないので、目が合うはずもない。
……気のせいでしょう。
そう結論付けて、次の目的地に向かうためにその場を立ち去る。
──男女平等という言葉が失われた時代。
それは、桃がもたらす恩恵が人類の“女性”にのみ与えられることによる。
これにより、男女の力関係は崩壊し、世界は女尊男卑の風潮に変わった。
そんな世界で、魔都という脅威が満ちる世界に1人で歩き回る“男性”がいるとすれば、それは魔都災害に巻き込まれた者か──
「──屈服の時間だ」
────ドン
その中で桃の恩恵を受けた女性から何かを与えられた者か──
魔都と現世を繋がる門が生み出される。
「──開門」
もしくは──姿形が人であったとしても、もとより人とは異なる異形の存在に他ならないだろう。