俗世が好きで何が悪い!?   作:みども

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六番組と七番組②

 前回の二番組寮に対する醜鬼の群れによる攻撃から一週間後。

 

 五日間かけて百体からなる醜鬼の群れを生成を終えたジョン・ドゥは、予定通り戦力調査のため六番組寮を襲撃するべく群れを率いて動き始めた。

 

 しかし、まずは偵察にと単眼鏡を利用して六番組寮を覗いていたところ、寮から出てきた六番組の組長ら魔防隊員3名が、能力によって何処かへ移動してしまった。

 

 戦力を把握するためには、各組における最高戦力となる組長が残っている状態、つまり組長自らが迎撃に出る状況が望ましかったため、ジョン・ドゥは目標を六番組寮から七番組寮に変更する。

 醜鬼の群れはひとまず待機させて、門を利用し現世を経由して七番組寮の監視にちょうどいい場所へと移動した。

 

 そして移動したところ、覚えのある2人組がいた。

 

「……霧岩か」

「何、僕の支配下になりたいからって出向いてくれたのかな?」

 

「訂正を要求します。自分の名前はジョン・ドゥです」

 

 以前に戦った八雷神を名乗る存在である、紫黒と壌竜である。

 

 何の目的で魔防隊の拠点に近いこの地にいるのか。

 前回のこともありお互い相手を敵として認識しているはずだが、この場でやりあうつもりはないのかジョン・ドゥの姿を確認しても2人は臨戦態勢を取らなかった。

 ジョン・ドゥとしても今回の目的はあくまで魔防隊七番組寮への襲撃と戦力の把握が目的であり、相手側にその意思がないならば腹立たしい存在ではあるがわざわざ八雷神とやりあう必要はないと判断する。

 但し勝手に紫黒のつけた名前で呼ぶ壌竜に対し、訂正は要求しておく。

 ……因みに、中でも一層気にくわない存在である傲慢な態度を見せる紫黒は無視である。

 

「すまなかった。では、ジョン・ドゥと」

 

 悪気があったわけではなく紫黒が散々そう呼んでいたので誤解していただけである。

 呼び名にこだわりがあるわけではない壌竜は、謝罪した上でジョン・ドゥの意思を尊重して呼び名を訂正した。

 

「訂正しなくていいよ壌竜、そいつは霧岩だ」

 

「…………」

 

「取り合うと面倒になりそうだから無視するとは、面倒ごとを避けるという利口な判断だけど僕からしたら非常に不愉快だ」

 

 面倒臭くなるからもう何も口出ししないと黙り込んだ壌竜に、突っかかる紫黒。

 因みに雷煉だが、彼女たちがこんな会話に興じている間ジョン・ドゥが襲撃を予定していた魔防隊七番組及び魔防隊同士の模擬戦である魔都交流戦のためにこちらに来ていた六番組に襲撃を仕掛け、戦闘を行っている。

 当人はノリノリで暴れているが、自分が戦っている中で仲間たちがジョン・ドゥとこんな会話に興じていたと知れば怒り出して結局紫黒にからかわれそうである。

 

 一方、無視していたのに会話に割り込んできた紫黒に対して、ジョン・ドゥは不快感を隠すことなく黙れと言わんばかりに睨みつけた。

 

「自分は紫黒の存在が不愉快です」

 

「珍しく意見が合うね、僕も君の存在が不愉快極まりないよ()()()()

 

「其方に訂正は要求しません。尚の事不愉快です」

 

「君は僕を苛立たせる天才だね。なら呼んであげるよ、ジョ・ディーくん」

 

「……その存在、消失するまで破壊しましょうか」

 

「出来るものならやってみなよ三下」

 

(……私を挟んで睨み合わないで欲しいのだが)

 

 相性が悪いとは、戦闘面以外にもこういうことを指す言葉かと、にらみ合う2人に挟まれる中で壌竜は思うのだった。

 

「此処に来た目的は……我々と同じか」

 

 この調子で八雷神にとって厄介なことこの上ないジョン・ドゥとの戦闘に発展すれば、余計な消耗を受ける上に魔防隊の介入も誘う可能性が高い。

 何より居心地が悪いので話題を変えようと思い、壌竜がジョン・ドゥに対して目的を尋ねる。

 ……とはいえ、魔防隊の拠点に来たということは考えていることは同じだろうという結論に返事の前にたどり着いたが。

 

「横槍、漁夫の利に対する警戒は無用です。自分の目的は魔防隊の戦力把握、発生する遺体・捕虜は不要です」

 

 色々な意味で相性が悪い紫黒よりも、会話が成り立つ壌竜からの言葉に、ジョン・ドゥの態度が軟化する。

 温厚で冷静な面のある壌竜の言葉ならば、本能的に敵意を向けたくなる相手とはいえ会話に応じることはするらしい。

 ジョン・ドゥ自身、もとより好戦的な思考をしているわけではない。紫黒に関しては色々な意味で気にくわないのでこのような喧嘩腰になってしまうが、本能に囚われて八雷神には見つけ次第敵対行動を起こすというほど理性がないわけではない。

 

 八雷神が魔防隊を襲撃する理由は不明だが、ジョン・ドゥの目的は魔防隊の戦力を調べること。

 八雷神の襲撃を止めるつもりも、この機に雷煉や壌竜を背中から攻撃しようというつもりもない。

 そしてこの襲撃の結果魔防隊に損害が出ようと、それはそれ。遺体や捕虜といった戦利品になるものが出たところで、興味はないのでそれを賭けて八雷神と争うつもりはない。

 そのことを告げると、邪魔するつもりはないと理解した壌竜は意識をジョン・ドゥから雷煉たちの様子に向けた。

 

 そしてジョン・ドゥも紫黒は気に入らないが、目的の方を優先させるために、邪魔はしないが利用は遠慮なくさせてもらおうと単眼鏡を取り出し雷煉と魔防隊との戦闘の様子を観測する。

 すると、隣に立つ壌竜がジョン・ドゥの使う単眼鏡を見て素朴な疑問を口にした。

 

「それは?」

 

「単眼鏡です。遠距離の事象の観測に利用する俗世の道具です」

 

 壌竜の疑問に答えるジョン・ドゥ。

 すると背囊から双眼鏡を取り出し、壌竜に渡した。

 

「どうぞ」

 

「…………」

 

 欲しかったわけではないのだが……。

 そう思いながらも、貰ったならと早速使ってみる壌竜。

 この距離でも問題はないのだが、双眼鏡を覗いてみると雷煉たちの様子がよりはっきりと確認できた。

 

「面白い道具だ」

 

「人間もそうだけど、人間たちの作るものも面白いよ」

 

 素直な意見を述べる壌竜に、ジョン・ドゥ並に俗世の産物を楽しむ趣味のある紫黒が頷く。

 この辺の趣味が合うのもまた、同族嫌悪ということで2人の相性の悪さにつながっているのだろうか。

 

「お、本命が出てきた」

 

 それはともかく。

 紫黒が言った通り、雷煉たちの戦闘の局面は次の段階へと移り変わったらしく。

 雷煉以外の醜鬼はほぼ壊滅に追い込まれ、本命の標的としている魔防隊の組長が雷煉の前に出てきた。

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