俗世が好きで何が悪い!?   作:みども

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六番組と七番組③

 魔防隊七番組──

 

 裏鬼門に位置する醜鬼の発生が多い激戦区を担当するこの部隊は、月山大井沢事件の被害者の中で唯一の生き残りである『羽前(うぜん) 京香(きょうか)』が組長を務める。

 彼女の能力は契約を交わした存在を奴隷としその力を引き出し使役する『無窮の鎖(スレイブ)』。

 そして、魔都災害で故郷と家族を失ったことで醜鬼に対する復讐を誓い、桃の恩恵に頼らず醜鬼を屠る技を獲得した唯一の存在である。

 契約相手の力により左右される無窮の鎖は運によるところが大きいが、能力無しというならば間違えなく彼女は人類の中でも最強の強さを持つ存在である。

 

 そして、今の京香の奴隷とされているのは()()()()だった。

 

 彼の名前は『和倉(わくら) 優希(ゆうき)』。

 6年前に魔都災害で実姉である青羽を失い、最近には自身も魔都災害に遭遇した不運の持ち主。

 そして、その際に救助に来た京香と運命的な出会いを果たし、無窮の鎖の契約を交わしたこの物語の主人公だった。

 

 

 

 

 少し前に京香の提案により、六番組と七番組で魔都交流戦を行うことになり、そしてその日を迎えた両組。

 競技内容は一騎打ちという隊員同士の一対一の模擬戦を行い、残すは隊長同士の試合となったところにあって、突如として彼女たちは雷煉率いる醜鬼の軍勢の襲撃を受けた。

 魔都交流戦用に十番組所属の隊員が展開していた結界を破壊され、戦闘に発展。

 急遽共同戦線で醜鬼の迎撃を行うこととなった。

 

 通常の醜鬼はともかく、雷煉は醜鬼たちと比較して別格の存在である。

 火球や落雷といった強力かつ迅速な遠距離攻撃手段と、自ら鋼のごときと称する極めて頑強な肉体を駆使した肉弾戦。遠距離から近距離戦までこなせる攻防ともに隙のない力を持つ。

 その上、これでもまだ全力ではない。

 

 そんな雷煉は、魔防隊六番組の副組長である『(あずま) 八千穂(やちほ)』と交戦。

 魔防隊に数多くの優秀な人材を輩出してきた名門である東家の出身である八千穂は、発動のトリガーとなるポージングにより時間を5秒戻す、または5秒止めることができる『東の辰刻(ゴールデン・アワー)』という強力な能力を持つ。

 

 だが一度の行使で極度の疲労が募るため使用回数に制限がある上に、強力ながら能力そのものには攻撃性がないため、戦闘そのものに関しては武器などに依存せざるを得ず、時間を戻せるとしても強力な攻撃が当たれば生身の体は大きなダメージを受けてしまう。

 こういった能力に対し、通常の醜鬼とは比べ物にならない頑強さと落雷や火炎といった直接的で強力な破壊力を有する攻撃手段を持つ雷煉は、非常に相性の悪い相手だった。

 

 東の辰刻を駆使し対抗するが、相性の悪さは覆せず。

 傷1つ与えることもできずに疲労困憊で継戦が困難となった八千穂に対し、雷煉はようやく準備運動が終わったと言わんばかりの余裕。

 ほぼ完封で八千穂を追い詰めたところで、非戦闘員を退避させ雷煉の周囲にいた醜鬼の軍勢を殲滅した六番組組長である『出雲(いずも) 天花(てんか)』が登場して、八千穂に代わり雷煉と対峙した。

 

 一方、七番組の方は醜鬼の群れの主力を迎撃。

 優希という通常醜鬼とは比較にならないポテンシャルを持つ奴隷を持ったことで能力も開花した京香、普段から激戦区である裏鬼門の区画を担当することもあり醜鬼の群れ相手でもひるまず立ち向かう七番組の面々の活躍により、此方は魔防隊優勢で醜鬼たちが順調に駆逐されて行った。

 

 

 

 

 

 その様子を観察する紫黒たち。

 群れの方は、なすすべもなくこのまま駆逐されて終わるだろう。

 確認できるだけで魔防隊側の能力は、契約対象の力を引き出し操る隷属の能力、奴隷の方は人間離れした容姿に似合う醜鬼を圧倒する戦闘能力を有し、他には純粋な肉体の強化能力に、巨大化といったところ。

 ……奴隷の乗り手が2人になった。全く同じ能力という可能性は低いので、あれは他者の能力をコピーできる類だと推測。

 雷煉と対峙していた相手の能力は、あの回避の正確さを見るに未来予知に類するものだと推測するジョン・ドゥ。

 

「ふーん、時間を操れるんだ……面白いね」

 

 壌竜の隣で、八千穂の様子を見て紫黒はその能力に対しジョン・ドゥよりも正確な推測に達した。

 

「…………」

 

 紫黒の言葉に、改めて雷煉との戦闘の様子を思い返してみるジョン・ドゥ。

 ……未来予測にしろ、時を戻しているにしろ、正直見分けがつかないが。

 

 そうこうしているうちに疲労困憊となった八千穂が、六番組組長の天花に交代する。

 雷煉の周りにいた醜鬼の軍勢をたやすく殲滅する手腕に、天花が他の平隊員とは違う()()である事を確認した紫黒の表情が変わった。

 

「本命の登場だ。さて、どんなものか見せて貰おうかな」

 

「…………」

 

 これまでジョン・ドゥは幾つかの魔防隊の拠点を襲撃しており、組長という存在が他の隊員に比較して別格の強さを持つことは承知している。

 六番組、そして七番組の組長は今回初めて見るため、醜鬼の群れならばたやすく殲滅する一方で雷煉という強力な存在が相手となればどのような展開になるのか。青羽たちの計画のためにも把握しておく必要があると、観測に集中することに。

 

 組長の強さがどれほどのものか知りたがっているのは、紫黒たちも同様。

 標的と呼んでいるだけのことはあり、紫黒たちの目的もまた魔防隊の組長である。

 

 

 

 

 

 

「まず、お前から片付けていこうか」

 

「フン。少しは楽しめそうだ、標的め」

 

 挑発するように人差し指を向ける天花に対し、醜鬼の軍勢を短時間で片付けたことに準備運動程度でヘトヘトになる輩よりは少しは楽しめそうだと好戦的な笑みを浮かべる雷煉。

 

 八雷神と魔防隊六番組組長が、魔都を舞台に激突する。

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