俗世が好きで何が悪い!? 作:みども
羽前京香という例外を除き、ほとんどの魔防隊員は桃の恩恵で得た能力を頼りに戦闘を行う。
……通常兵器が効かない醜鬼に対する最も有効的な対抗手段が魔都の桃の恩恵で得た能力なので、当然の帰結と言えるかもしれないが。
六番組組長である天花の能力は、空間を操ることで瞬間移動や空間ごと相手を切り裂くといった攻撃を行う『
空間もろともねじ切り破壊するという頑強な肉体など何の盾にもならない極めて高い殺傷力、そして自分だけでなく触れた相手も移動することができる瞬間移動による機動性をもつ。
本来空間を操るという能力は使用者に対する負担が大きいはずだが、天花は天才だった。
数度の瞬間移動を行使する程度で疲労することはなく、雷煉の攻撃を易々と回避しその能力で強固な肉体に傷をつけてみせた。
「小癪な……!」
自慢の肉体に傷をつけられ、憤る雷煉。
以前にジョン・ドゥからもボコボコにされて傷をつけられたものの、あの時の相手は特殊な個体である醜鬼。
今回は彼が『廃れ者』と称して見下す存在である人間に傷を受けたということもあり、ただでさえ感情的になりやすい雷煉は冷静さを見失うほどに激怒していた。
「あ、これはマズイね」
そして、その様子を見ていた紫黒がこれはまずいと動く。
相手が悪い。頑強な肉体に依存している雷煉では、特にあのように頭に血が上っていると致命的な一撃を受けかねない。
「ちょっと回収してくる」
「ああ」
壌竜にそう告げると、地面に生み出した影の中に消えていった。
さて、一方雷煉の方は。
紫黒の危惧していた通り、怒りによって冷静さを欠いたおかげで隙だらけとなり、そこをついて瞬間移動で死角に接近した天花に殴られ、空中に瞬間移動させられた。
眼下には未だに残る醜鬼の軍勢がいる。
「ぬうっ!?」
「位置バッチリ」
思惑通りのところに雷煉を飛ばした天花は、そのままとどめの一撃となる広範囲の攻撃を行使する。
醜鬼の群れごと雷煉の飛ばした空中に生み出した空間の歪みに全てを飲み込み、その空間ごと切り裂いて殲滅した。
「空間ごと裂かれれば、防御力なんか関係ないよね」
頑強な肉体を持つ雷煉といえど、天花の言う通り空間ごと切り裂かれては大ダメージを受けることとなる。
さすがに今の一撃くらいならば自慢のタフさで耐えられるかもしれないが、捻じ曲げられて切り裂かれて戦闘続行不能なダメージを負ったことは間違えないだろう。
そして回復力は大したことないので、すぐに魔防隊に見つかって捕獲されるか、最悪肉体を破壊されることとなる。
つまり、雷煉の完敗だった。
……間一髪のところで紫黒が回収したので大した負傷はしなくて済んだが。
とはいえ、醜鬼の軍勢は壊滅。
組長クラスの強さを調べるという目的は一応達することはできたので、今日のところはここまででいいだろうと判断し、雷煉を回収した紫黒はそのまま撤退した。
残された壌竜とジョン・ドゥだが、紫黒が撤退したこともありこの場にもう用はないと壌竜も撤退する。
「我らは既に千里眼の能力を持つ魔防隊に発見されている。止まれば、魔防隊に囲まれることになる」
去り際、双眼鏡のお礼にとわざわざ忠告をしてくれる優しさを見せてくれた。
「情報提供に感謝します」
去っていった壌竜に一礼する。
六番組と七番組の戦力の把握もそれなりにできたので、ジョン・ドゥもこの場に残る理由は既にない。
醜鬼の軍勢に関しては、次の目標である九番組への襲撃にそのまま流用すればいいかと判断し、撤退する。
「──開門」
門を開いて現世へと姿を消す。
魔防隊が駆けつけたときには、既にそこには誰の姿もなかった。