俗世が好きで何が悪い!? 作:みども
魔防隊七番組寮。
魔都の中でも特に醜鬼の発生などが多い激戦区である裏鬼門の区画を担当する精鋭部隊、七番組の魔都側の拠点である。
優希の姉である人型醜鬼と化した青羽との交戦、八雷神を名乗る存在による襲撃を受け、人の形態を取る醜鬼の存在を認識するようになりこれまで以上に異常事態が発生するようになっていた。
数日前には通常の醜鬼と異なる紫黒お手製の改造醜鬼の襲撃を受け、これを迎撃。容貌、能力ともに多少通常醜鬼と異なるだけで瞬殺したが、人型醜鬼の襲来を警戒し新たな道を模索するなどしていた。
その一環として、他組員への無窮の鎖形態における優希の貸出を実施したところ、使用者によって能力の異なる形態変化を取るという新たな可能性があることが判明。
……アクシデントもあったが、それはともかく。
雷煉の襲撃以降、人型醜鬼が確認されない日々が続くが、七番組の担当区画で門が発生しそこに現世側から民間人が入り込み醜鬼たちに襲撃を受けているという情報が索敵担当の隊員『大川村 寧』からもたらされた。
「日万凛、朱々、急行しろ!」
「「はい!!」」
一刻を争う魔都災害の被災者の救出のため、七番組組長である『羽前 京香』の指示に基づき、『東 日万凛』と『駿河 朱々』が出動。
魔都災害の被災者の元に駆けつけたのだが──
「──ひまりん!?」
その要救助者に、突如として日万凛が飛ばされるという事態が発生。
驚く朱々に対して、救助に来たはずの日万凛を殴り飛ばした要救助者がマントを脱ぐ。
「マボータイが釣れたぁ」
それは、魔防隊七番組の隊員を釣るために芝居を打った、人型醜鬼であるココだった。
「さぁ〜、シメちゃおっと」
優希の奪還を目指す青羽たちと魔防隊による戦いの火蓋が切られた。
ココを魔都に再度送り、魔防隊との交戦を確認した上で現世を経由して青羽のところに合流したジョン・ドゥ。
ひとまず奇襲が成功したことと、救助部隊に優希の姿はなかったことを伝える。
「なら、こっちに来るわけね」
「同意見です」
ココを襲うふりをしていた醜鬼たちは、ジョン・ドゥの作った通常醜鬼である。
ジョン・ドゥの思うままに操作が可能であり、ココのことを本当に傷つけることはなくすぐに魔防隊との戦闘にも入れる上に、視界の情報を製作者であるジョン・ドゥに送ることも可能である。
これにより、ジョン・ドゥはココたちの方の戦況も逐一確認することができた。
熊童子、波音、アクラが参戦したことで、戦況はココたちの優勢で動いている。
予定通り援軍要請が出され、目的である優希と京香が拠点より出撃し青羽とジョン・ドゥの待ち構える場所に向かってきていた。
「釣れました。間も無く来ます」
俗世で購入したドローンを駆使して、ジョン・ドゥは京香たちの動向をリアルタイムで確認している。
その言葉通り、青羽の待ち構える場所に京香を乗せた優希が走ってきた。
ジョン・ドゥの推測通り、魔都災害の被災者に偽装するという今までにない敵の奇襲を受け、京香は今後の方針についてどうするべきか悩んでいる。
七番組の担当する区画の情勢は、不測の事態に備え寮に待機する隊員を確保しなければならない事情がある。
優希とその方針について協議しながら現場に急行する道中、2人は待ち構えていた青羽に遭遇した。
「出てきたわね」
「あいつは──!」
(やっぱり間違いない! 青羽姉ちゃんじゃないか!)
京香と優希は、以前にも青羽と遭遇したことがある。
その際は半信半疑であったが、改めて再会しその顔を見た優希は彼女が実の姉である青羽だと確信する。
「回避しろ!」
青羽が伸ばす髪に、京香が回避の指示を優希に出す。
それを見ていた青羽は、そのタイミングで叫んだ。
「優希動くな!」
青羽のこの一喝に、長年姉に扱かれ続けていた優希が条件反射で従い急停止してしまった。
想定外の急停止に、上に乗る京香も思わずバランスを崩してしまう。
その隙をつき、青羽の伸ばした髪が優希を捉え、バランスを崩した京香を振り落とした。
「優希!」
「目標達成よ。シーザー!」
「──開門」
直ぐに向かおうとした京香だが、霧になっていたジョン・ドゥが姿をあらわすなり門を作り出し青羽と優希を伴い現世側へと姿を消してしまう。
一瞬のことで、立ち上がった時には全てが終わっていた。
「そん……な……!」
残ったのは、京香1人のみ。
作戦はうまくいき、優希の奪還に成功した青羽たちはジョン・ドゥの門により現世を経由して隠れ里まで撤退。
流石にこれは寧の千里眼でも追跡ができず、魔防隊七番組はまんまと優希をさらわれてしまった。