俗世が好きで何が悪い!? 作:みども
死んだと思っていた青羽と再会を果たした優希は、ひとまず落ち着いたところで現状をまだ理解できていない状態だが、自分たちが何であるか見たほうが早いと言った青羽の案内に従い部屋から隠れ里へと出た。
優希がそこで見た光景は、魔都に複数存在する地下洞窟の1つ、青羽たちの住まう隠れ里の全容だった。
理解が追いつかず、地下洞窟の光景に圧倒される優希。
その反応を楽しそうに見ながら、青羽は隠れ里について説明する。
「魔都の地下だよ。私たちは隠れ里って呼んでいる」
「こんな空間があったんだ……」
「魔都の中央にもあるわよ、地下洞窟」
魔防隊にいるならば、てっきり桃の一大産地である十番組の管轄する地下洞窟の存在も知っていると思っていた青羽にとって、優希の反応は意外だった。
優希の方はそもそも地下洞窟の存在そのものを知らなかったらしい。
……管理人として雇用した当初は他に覚えることが多くあったので、出張組の行き先についてまでは話す必要がないと判断した京香が教えていなかったからだが。
魔都中央部にある地下洞窟は、魔都の桃がなる木が多数存在するため、醜鬼や桃を狙うテロリストから資源を守るために魔防隊が常に監視・管理している。
一方で魔都に複数存在するこう言った地下洞窟の中でもこの隠れ里は桃のなる木が存在せず、また入り口も偽装し隠してあるため、魔防隊側も存在を認知していなかった。
まさに、日本政府から隠れる場所を探していた青羽たちにとってはうってつけな住処である。
中は岩をくり抜いて作ったり、ジョン・ドゥが持ち込んだアウトドアグッズなどを用いて作った簡易的な住居があり、20人ほどの人型醜鬼たちが生活をしていた。
優希にあらかた洞窟のことを説明したところで、ココと波音が自己紹介をする。
それを聞いた優希は、青羽が例外的な存在だったのではなく、ここにいる人型醜鬼たちが全員もともと人間であることを知り、鬼童丸の存在もあったので驚愕して思わず尋ねた。
「まさか、あの一本角も──ひょっとして醜鬼は全員元人間なの!?」
「あいつらは完全な化物」
青羽がそれを否定する。
彼女たちとて、望んでこのような存在になったわけではない。
魔都での暮らしが長い彼女たちは、生物と呼ぶかどうかも怪しい黄泉醜鬼たちの発生も知っているため、元人間である人型醜鬼とジョン・ドゥのような特殊な個体を含めた醜鬼たちは明確に違う存在であることを認識していた。
「私たちが特殊なの」
「半分人間で、半分お化けって感じだね」
「全員事故でこうなったのよ」
魔都の桃を瘴気に包まれたこの世界で食した時、適合しなければ稀に起きる人間の醜鬼化。
魔都災害に巻き込まれ、生きるために手を出して起きた事故で、人ならざる存在になってしまった魔都の闇の部分。
それが魔都の資源の有用性に一片の陰りも与えたくないとする日本政府の意向によって隠された犠牲者──人型醜鬼である。
「──でも、魂は人間のつもりだわ」
人型醜鬼となり、陰陽寮に捕まり、非道な待遇で実験動物にされる日々。
望んでなったわけではないのに、人としての尊厳を奪われ、苦痛と暗闇に閉じ込められた。
醜鬼化の副作用で強暴性も増し、怒りのままに人間たちを恨み闇に落ちかけたものもいる。
それでも、肉体が化物になろうとも、自分たちは人間だと胸を張りたい。
この一言を紡ぐ青羽の表情は、普段の自由気ままなものではなく、この里を率い守者の責任を強く持っている真剣な表情だった。
離れ離れとなっていた6年間に何があったのか。
人型醜鬼とはなんなのか。
青羽の言った魔都の闇とは。
自分の知らない世界の事柄について、優希は青羽たちから聞かされることとなる。