俗世が好きで何が悪い!?   作:みども

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青羽VS天花②

 交渉は決裂。

 日本政府に対する信用を既になくしている青羽に、天花と京香の言葉は届かなかった。

 

「熱いのいくわよ!」

 

 巻き込まれないように通信機を携えている連絡用の醜鬼に優希を預けると、青羽が有する能力の1つであるビームを放つ。

 その破壊力は初めて京香と遭遇戦を展開した時の様子見のような一撃ではない、手加減なしの本気の破壊光線である。

 

 直撃コース上にいた天花は能力で退避。光線から少しずれていたが十分にその破壊の圏内にいた京香は咄嗟に地面を蹴って躱す。

 その横を突き抜けていき、光線は直撃した洞窟の岩壁を容易く破壊し大穴をあけた。

 

「──!」

 

 即座に体勢を立て直した京香に、2人が光線により分断されることを狙っていた鬼童丸が襲いかかる。

 

 しかし京香も魔防隊の組長の1人。実力至上主義のこの組織において、優希と出会うまで散々周りから最大の武器である能力がハズレだという評価を受けながらも組長の地位を獲得するに至ったその強さは伊達ではない。

 即座に鬼童丸の攻撃を察知し紙一重でかわすと、すかさずすれ違いざまにその脚に剣戟を一閃叩き込み、鬼童丸の頑強な肉体に対して一条の傷を作った。

 

「ふ──」

 

 かつて、故郷を滅ぼした仇である鬼童丸と対峙した時、京香は怒りに我を忘れて窮地に陥る部下を放置し撤退する背中に追撃を仕掛けようとした。

 一対一ならば、それでもよかったかもしれない。

 だが、主人の意向を無視して朱々達の救援に入った優希を見て、いかに自分が短慮だったかを思い知らされた。

 怒りや恨みだけに囚われては、周りは見えなくなり、剣も鈍る。

 心は感情で燃やし気力として、頭は冷静に常に勝利に向けて剣を振る。

 改めて精神の修行に打ち込み、京香の振るう刀はより一層の鋭さを増していた。

 あれだけ遠かった鬼童丸に、こうして傷をつけられるほどに。

 

 一撃当たれば人間などは虫のようにつぶれるだろう鬼童丸の拳が振り回される。

 それらを見切り、躱し、往なし、冷静にその挙動を見極め、一分の隙に刀を打ち込む。

 

 それがまた鬼童丸の拳に傷をつけ、小さな血飛沫を噴かせた。

 

 優希が使えない分、火力は劣るが。

 それでも、もともと能力ではなく刀で鬼童丸を倒すことを目指していた京香にとっては、さしたる問題ではなかった。

 

「お前に殺された人の分だけ、刻んで倒す!」

 

 骨にも届かぬ浅い傷であろうと、それは小さくとも着実に効いている。

 ならば根を上げるまで傷を与え続ければ良い。

 一撃が軽ければ、その分だけ数を打ち込めば良い。

 

 傷を抑える鬼童丸に、刀を構え京香は対峙する。

 

 

 

 そして、鬼童丸との戦いに集中する京香の背中を狙う青羽。

 だが、敵は京香だけではない。

 その途上の空間がわずかに歪んだのを見た瞬間に、青羽は人型醜鬼特有の人間離れした鋭敏な感覚と身体能力を用いて間一髪のところで退避し、直後に青羽が先ほどまでいた空間がねじ曲がってその中に巻き込まれた一部の岩肌を切り裂いた。

 

 ジョン・ドゥから聞いていた、天花の空間を操る能力。

 京香たちの元には行かせないというかのように、青羽の両脇の空間が再度歪む。

 

 通常の醜鬼では防御も回避も困難なその攻撃を見て、青羽は不敵に笑った。

 

(──遅いわね)

 

 天花の能力である天御鳥命(アメノミトリ)は、相手から見れば突然空間がゆがんで周りのものを取り込み切り裂くという回避も防御も非常に困難な攻撃である。

 それでも、些細で見分けにくいが空間が歪むという前兆がある。

 能力を得た人間だろうが、人間よりもはるかに強力な醜鬼たちだろうが、あの雷煉ですら気づく間も無く攻撃を食らうほど短時間でわかりにくい前兆だが、複数の桃を摂取し人外の力を得た青羽にとっては()()()()()()()攻撃だった。

 

 瞬時にその攻撃も交わすと、人には到底捉えられない身のこなしで壁を、天井を、床を跳ね回り、まるで跳弾のように天花を翻弄して襲いかかった。

 

(天井も壁も利用した立体的な超高速移動……! 点で捉えられない──さすが、お義姉さん)

 

 だが、天花もまた魔防隊の組長の地位を与えられている1人。

 自分を狙ってくる青羽が攻撃する瞬間に、瞬間移動でその場から退避して岩を砕く攻撃をかわすと、一瞬天花の姿を見失った青羽に対して即座により範囲を広くした空間を切り裂く攻撃を仕掛けた。

 

 ──否、仕掛けようとした。

 

「──!?」

 

 自分を囮にした完璧なカウンター。

 だが、青羽は天花の想像を遥かに超える速さで転移先の位置を感じ取ると、天花が攻撃する隙も与えず一直線に突っ込んで来たのである。

 

 間一髪のところで攻撃を中断し即座に瞬間移動で退避した天花だが、さすがに今のは肝が冷える攻撃だった。

 

「大暴れしますね。自分たちの住処でしょうに」

 

「ここは放棄よ。仲間たちは別の隠れ里に避難してる」

 

 殴っただけで岩壁が崩れる様に先ほど受けた衝撃を隠すようためにも呆れ半分に軽口を飛ばす天花に対し、青羽は隠し持っていた魔都の桃を栄養補助スティックよろしくかじりながら放棄する場所だから関係ないと律儀に答える。

 

「桃の過剰摂取は危険です」

 

「この体になってからはエネルギー源よ」

 

 魔都の桃を複数摂取するのは、普通の人間にとっては命に関わる危険な行為のため忠告する天花だが、青羽の方は聞く耳持たずの状態。

 

 それもそのはず。

 何しろ現状、青羽から見れば優希の命の恩人であり本人の合意のもとで奴隷契約をしている京香に対し、天花は愛する弟に言い寄る危険分子である。

 そんな女の言葉に耳を貸すはずもなく、叩きのめすのに手加減などするはずもない。

 

「しばき倒す! 弟に言い寄る危ない女は特にね!」

 

 

 

 

 鬼童丸は京香と、青羽は天花と対峙する中。

 その様子を見るしかできない優希。

 その優希の耳に、彼を守っている醜鬼が携える通信機から、ココの声が聞こえてきた。

 

「──ゴメン、青羽姉……アタシ、負けちゃった……」

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